アイテム番号: SCP-1035-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-1035-JPの扉は財団が家屋内に設置した3台の投光器によって24時間照らされます。SCP-1035-JPの周囲環境は300lx以上の状態を維持してください。家屋内部には停電などを考慮し予備電源が併設されます。電球の交換の際は予備の投光器でSCP-1035-JPを照らしながら行ってください。
家屋内部にはセキュリティ担当者を3名常住させ、非常時は機動部隊こ-111が出動します。
SCP-1035-JPが設置されている家屋や土地は法的にはエージェント・ポーラが所有しており、家主に扮した上での近隣住人に対する偽装工作や一般人の購入防止を行っています。担当の不動産業者も財団のフロント企業に置き換えられており、ここを拠点にプロトコル1035-JPに則った地域調査を実施してください。
実験を行う際は、主任研究員である岩場博士の許可を得たうえで行ってください。
説明: SCP-1035-JPは茨城県 ██市 ██町 ██にある日本家屋内の一室です。SCP-1035-JPは非活性時では個室トイレの様相を呈しており、通常の物品同様に使用出来ます。
SCP-1035-JPの異常性は対象の周辺が0.01lx以下の環境に変化した際に発生します。(壁などを隔てた空間の状態はこれに影響を与えません。)
SCP-1035-JP周辺を上記の環境へと変えた場合、未知の原理でSCP-1035-JPの扉が即座に解放されます。そして、その瞬間に内部が非活性時とは異なる、最低でも奥行500m以上、幅600m以上であると予想される異空間へと変化します。現在、内部が完全な暗所であることから正確な形状は把握できてはいません。扉が最初から解放されていた場合や扉を封鎖していた場合でもこの異常は発生します。なお、ドローンで内部を観測した際、非活性化時と同じ内部しか映し出されないという現象が発生し、よって、この空間は人間が侵入した時のみ観測できるようになると思われます。
SCP-1035-JPの異常性はSCP-1035-JPを直接照らす範囲で光を発生させると消失します。外部から光を当てる場合はSCP-1035-JPの扉を照らす範囲で、内部で光を発生させる場合は照らす場所などは指定されず発生させた瞬間に適用されます。このプロセスは異常発生中の内部に人間がいたとしても進行し、その際、侵入していた人間は生死を問わずSCP-1035-JP内に設置されている洋式トイレの上に立っている状態で発見されます。
2008年現在、異常発生中のSCP-1035-JP内には一体の実体が確認されています。実体の正確な形状は把握できていません。また、対象は侵入した人間に対して敵対的であると思われ、実験により3名のDクラス職員が死亡しました。
これらの異常性の他に昼夜問わず「赤ん坊の泣き声」のような音が聞こえるという報告が上がっています。
補遺: SCP-1035-JPは2008年 7月11日に発覚した池田一家惨殺事件を切っ掛けに発見されました。当時、SCP-1035-JPがある家屋には池田 ██氏を含む4人の家族が生活しており、上記日時に「何日も家人が家から出てこない。」という通報を受けた警察官がSCP-1035-JP内で死亡している一家全員を発見しました。死体の状態などから事件発生は発見時からおよそ3日前であると思われ、警察はその期間に絞った捜査をしましたが犯人の特定には至りませんでした。
遺体は全て劣悪な状態であり、特に2名の子供に関しては頭部の変形や手足の複雑骨折などが見られました。なお、池田 ██氏の手元には点灯状態を維持された懐中電灯が握られており、これによりSCP-1035-JPの異常から一時的に離脱したのではないかと思われます。
2008年 7月現在、家屋周辺や地下、その他異常の起点となったと思われる物品や事象に関する調査を実施しましたが明確な原因の特定には至っていません。また、池田氏より以前の事件や住人についての調査も実施しましたが、異常団体の存在や前入居者の不審死なども確認されなかったため、この異常性の発生は事件発覚の数日前であると思われます。
以下はDクラス職員を起用したSCP-1035-JP内への侵入調査の記録です。
概要: 本調査記録はDクラス職員を異常発生中のSCP-1035-JP内に侵入させた際の映像記録です。実験に参加させたDクラス職員には録画機能付き赤外線ゴーグルと緊急用の懐中電灯を配布し、ベルト式のGPSを装着させています。
参加職員: D-123 (年齢:37歳 性別:男性)
担当研究者: 岩場博士
〈再生〉
[00:02:10] SCP-1035-JPを照らしていた投光器が消され、暗視カメラへと切り替わる。
[00:03:11] SCP-1035-JPの扉が独りでに開く。
D-123: お、おい、勝手に開いたぞ?
岩場博士: 今からその中を調査してもらう。勿論、君に拒否権などは無い。進んでくれ。それと懐中電灯はギリギリまで使うな。調査を優先させろ。
D-123: で、でも…クソ…![D-123が侵入を開始する]
[00:16:05] コンクリートと思われる床が敷かれた空間が映し出される。(暗所の為、周囲2m程度の範囲のみしか視認出来ない)
D-123: …何なんだよここ…。すげえ寒いし、なんでこんなに地面が濡れてんだ。
岩場博士: カメラ以外で周囲は目視できるか。
D-123: 見えるわけねえだろ。自分の手すら分からねえのに。…なあ。一体ここは何なんだ?
岩場博士: それを調べるのが君の仕事だ。何か気になる事があるならば報告してくれ。
D-123: 気になるも何も、俺がもうどれだけ歩いていると思ってんだよ。それ自体変だろ。(GPSの情報では侵入地点から既に400m以上離れたことを指し示している)
岩場博士: 然程大きな問題ではない。調査を続けてくれ。
D-123: …畜生。何がどうなってんだ。
[00:44:55] 液体が激しく零れる音がする。
D-123: …水…?
[00:52:09] D-123がしばらく歩いた後、台座部分に穴があけられた木製の椅子が映し出される。
D-123: …これは…血か?
[1:08:19] D-123が周囲を見回す。
岩場博士: どうしたD-123。
[5秒間の沈黙]
D-123: …今、子供の声が…。
岩場博士: 子供? こちらでは確認できていない。
D-123: …いや…確かに聞こえたんだ。一人じゃなかった。…沢山の赤ん坊の声だ。
[1:18:09] D-123がその場で立ち止まる。
岩場博士: 大丈夫か、D-123。
D-123: ま、まただ…。ど、どんどん…増えてる…。
岩場博士: D-123、正確な今の状況を説明しろ。今、君に何が起きている。
[1:20:54] 映像に人影のような物が写る。
D-123: な、泣き声が…そこら中から…[耳を塞いでいると思われる][D-123の大声]
[1:25:02] 突如、人影がD-123に急接近する。
D-123: 殺されてる! 俺の周りで皆殺されてる!
[1:25:06] D-123との通信や映像の送信が断絶する。
[1:25:10] D-123の悲鳴が聞こえる。
岩場博士: D-123。応答しろD-123。D-123!
D-123: [悲鳴]
岩場博士: D-123! ライトだ! ライトを使え!
〈終了〉
終了報告書: 映像終了後、即座にSCP-1035-JPは非活性化しました。しかし、SCP-1035-JP内で頭部を[編集済]されかつ生殖器を切り取られた状態で死亡しているD-123が発見されました。なお、D-123の手元には点灯状態の懐中電灯が握られていました。
参加職員: D-339(年齢:29歳 性別:女性)
担当研究者: 岩場博士
補足: SCP-1035-JP内部と外部の空間的繋がりを確認する為、Dクラス職員の腰にはロープが括り付けてある。
〈再生〉
[00:05:05] SCP-1035-JPの扉が独りでに開く。
岩場博士: では、中に入ってくれ。
D-339: な、何なのよこれ…。
[00:05:10] D-339が内部に侵入する。
岩場博士: D-339。内部の状況はどうだ。
D-339: どうっていったって…暗いし、寒いし…分かんないわよ。
岩場博士: では、君の入ってきた扉の方はどうだ。
[00:05:57] D-339が入って来た扉が映し出される。(扉は解放されている)
D-339: 別に、問題ないけど…。[悲鳴]
[00:6:04] D-339が自身の後方を映す。
岩場博士: どうした、D-339。
D-339: い、今、誰かが私の後ろを…! [3秒間の沈黙]ラ、ライトが無い! そんな…! あ、あんた誰よ!
[00:06:12] 何かが切断される音と共にSCP-1035-JPの扉が閉じる。(ロープが切断されたと思われる)
D-339: え、ちょ、ちょっと待ってよ! 何よこれ! あ、開けてよ! ここから出してよ!
[00:06:18] SCP-1035-JP内部、外部から解放を試みるが失敗する。(外部からライトを当てるが効果は無い)
D-339: 嫌よ! こんな所で一人なんて! 出して! お願い出して!…嫌あ!
岩場博士: D-339、落ち着け。我々も対処している最中だ。
D-339: 今! 誰かが、誰かが私の髪を引っ張ったの! いやあ! こんな訳の分からない所もういやあ!
[00:06:47] D-339が扉を叩き続ける。
D-339: 出して! ここから出してよ! ここから…。
[00:07:17] 突如、D-339が一切の行為を止める。
岩場博士: どうした、D-339。…返事をしろD-339。
D-339: …産みたくない。
[00:07:26] 水中内で気泡が発生した時のような音が観測される。
D-339: 嫌あ! 入ってこないで! 産みたくなんかない! やめて! 嫌! [悲鳴]あたしはあんた達のママじゃない!
[岩場博士による強制開放の許可が降りる]
D-339: [悲鳴]ここから出たいのよお!
〈終了〉
終了報告書: 映像終了直後、突如SCP-1035-JPの扉が解放されました。結果、腹部が破裂した状態で死亡しているD-339が発見されました。また、所持していたライトも消失していました。
参加職員: D-912(年齢:26歳 性別:男性)
担当研究員: 岩場博士
補足: この実験ではSCP-1035-JPの最深部調査を目的とするためD-912には懐中電灯を配布していません。
〈再生〉
[00:05:32] D-912がSCP-1035-JP内部に侵入する。
岩場博士: D-912。君には最深部にまで進んでもらう。万が一の場合はこちらに戻るのではなく、さらに奥へと逃げることを原則とする。こちらも救出作戦の準備は完了している。
[10秒間の沈黙]
岩場博士: D-912、分かったのなら返事をしろ。
D-912: …分かった。[D-912が内部に侵入する]
[00:20:44] 侵入調査記録001の時と同様の光景が映し出される。
岩場博士: D-912、何か変わったことは無いか。
D-912: …寒いこと以外にか?
岩場博士: そうだ。
D-912: …とても辛い。
岩場博士: 辛い?…それは具体的にはどういった感情だ?
D-912: …何かに縛られてる。そんな感じが、そこら中に…。
[D-912がその場でうずくまる]
岩場博士: どうした。
D-912: …出たいんだ。こいつら…。心の底から…。[呻き声]寒い…寒い。
[10秒間の沈黙]
D-912: …今、誰かいたよな。
岩場博士: …いや、こちらでは確認できていない。D-912、こいつらとはいったい誰だ。
[5秒間の沈黙]
岩場博士: 覚えていないのか?
D-912: …そういう訳じゃ…。
[00:26:23] 遠くで金属製の何かが落ちる音がする。
[5秒間の沈黙]
岩場博士: D-912。音のした方向に向かってくれ。
D-912: …分かった。
[1:06:00] 出発地点から2000m離れた地点に錆びた断ち切りばさみが落ちている。
D-912: …鋏だ。凄い年季の入った…。
岩場博士: それ以外に何か変わったものはないか。
D-912: いや…別に。…え?
[3秒間の沈黙]
岩場博士: どうした、D-912。
D-912: …先生。俺、ここが何処だかわかったかもしれない。
岩場博士: 何?
D-912: …ここはもう一杯だ。だからああなっちまったんだ。
[1:10:22] 突如、D-912が走り出す。
岩場博士: どうした、何があったD-912。
D-912: …あの女が来る…!
岩場博士: 女?
D-912: ここはもう限界だ…! だから漏れ出したんだ…! 全部あの女が集めて来たんだ…! ここは…ここはもう一杯だ!
岩場博士: D-912、どういう事だ。D-912。
D-912: ここは…! ここは…!
〈終了〉
終了報告書: 通信が途絶え直後、D-912に装着させていたGPSがSCP-1035-JP内部とは異なる地点で反応しました。その後、財団は調査隊を派遣し、4日後その地点で死亡しているD-912を発見しました。
追記1: 3回目の侵入調査を行った後、財団はD-912の捜索を目的とした調査隊を編成しました。調査開始からおよそ4日後、長野県 ██市の山奥にある███下水道にてD-912の死体を発見しました。
███下水道は1989年 6月17日に廃棄処分され既に下水道として機能していませんでした。出入口等も厳重に封鎖されており、外部からの侵入は極めて困難な状態であったと思われます。その為、どのようにしてD-912が下水道内部へ侵入したのかは明らかとなっていません。また、D-912の遺体も生殖器を切り取られた状態で発見されました。
以下は内部調査の際に発見された物のまとめです。
・528体の胎児や新生児の白骨体または腐乱死体(年代調査の結果、比較的最近の物から最高で40年以上前の遺体も確認された)
・台座部分が円形にくり抜かれかつ血液で濡れた木製の椅子
・天井からロープで吊るされた錆の激しい断ち切りばさみ
・プラスチック製の櫛
発見された死体には全てに酷い損傷が確認され、下水道内の壁の状況から複数回何者かによって壁に叩きつけられていたことが判明しました。これらの行為は損傷個所の状態などから死亡後に行われたと思われます。
遺体回収後、まだ体組織のある遺体のDNA検査を行いそれらの肉親を特定しました。しかし、特定した人間全員を調査した結果、出産前の胎児を遺棄もしくは新生児を殺害、遺棄した経緯があることが明らかとなりました。
さらに遺体の共通点として殆どがトイレや水辺に遺棄された経緯がある事や死因が溺死であることが判明し、これらの犯行は███下水道から最高で2000km以上離れた地点で行われた物もあり日本全国で遺棄された胎児、新生児の遺体が███下水道に転移していた事が発覚しました。なお、遺体の殆どは警察や葬儀業者が回収したと記録されていますがそれら全てが既に消失しており、どういった経緯で遺体が移動したのかは未だ明らかとなっていません。
調査隊の報告から内部では幾つもの生活跡が確認されており、残されていた長さ1m前後の毛髪や女性の物と思われる衣服の切れ端などからD-912以外の何者かが内部にいたことが判明しています。これらの痕跡は全てD-912発見の一日前までに残された物であり、最近まで内部に何者かがいたと思われます。
全ての死体の回収が行われましたが異常は継続しています。
以下はセキュリティクリアランスレベル3以上の職員のみが閲覧可能です。
調査の結果、███下水道は長野県近辺にある███川およびそれに付随する貯水池や水処理施設と繋がっていることが判明しました。これが発覚した後、調査隊は池田氏の住んでいた家屋の水道局を改めて調査し、これらの水道も███川を起点とする物であることが判明しました。
これにより、財団はSCP-1035-JP専属の調査部隊を編成し███川を起点としている水道局やそれに付随、またはそれらの水を利用していると思われる施設の特定と捜索を開始しました。2008年現在、全国各地にて既にSCP-1035-JPと似た異常性が確認されている水道関連施設が5つ特定され、異常性は「赤ん坊の泣き声が聞こえる」「気が付くと扉が勝手に開いている」という状態にとどまっていますが後にSCP-1035-JPと同様の異常性へと発展する危険性がある為それら全てが財団の管理下に置かれました。
今後財団は███川を起点とする水道や水を使用している施設の捜索、調査、管理を行うことが決定しています。
追記2: 2010年 3月29日、██県 ██市の一部地域にて「赤ん坊の泣き声が聞こえる」という複数の報告がありました。現在、調査隊により発生場所の特定と███川との関連性が調査されています。