SCP-1050
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SCP-1050-1上のオリジナル写真;文書は未発見のアルファベットで「原ラテン語」で書かれます。紀元前53,5██年。

アイテム番号: SCP-1050

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-1050-1は最小内寸5m×5m×32mの保管施設に保管されねばなりません。保管施設の天井、特にSCP-1050-1の直上部分は出力[編集済]以上の電波放送から遮断されていなければなりません1。SCP-1050-1は現在エリア179の保管施設に収容されています。

SCP-1050-2の発生は、SCP-1050-1に変更が加えられた時点で認定されます。発生したSCP-1050-2は財団エージェントによって捜索、押収の上、機密文書庫に保管されねばなりません。

SCP-1050-3の発生は、電波望遠鏡による遠隔システムで常に監視されねばなりません。SCP-1050-3の発生が財団職員以外の人間に観測された場合は、その全記録は没収、あるいは破棄されねばなりません。その観測者、記録の閲覧者など、SCP-1050-3の存在を関知した人間は所定の記憶処理を施されねばなりません。

説明: SCP-1050は1つのアイテム(SCP-1050-1)と2つの関連現象(SCP-1050-2およびSCP-1050-3)から構成されます。SCP-1050-1は第二次世界大戦終結の直前、ドイツの[編集済]秘密研究施設から回収されました。SCP-1050-2aは195█年次のソビエト連邦内務人民委員部の公文書記録室から回収されました。SCP-1050-2bは195█年に英国王室文書館から回収されました。SCP-1050-1の元々の由来は現在まで不明です。

SCP-1050-1
SCP-1050-1は実寸およそ1.48m×1.48m×30.5m2の巨大なオベリスク型の単一黒曜石製の「石碑」です。表面全体を多種の文字で書かれた、しかし明確に同一内容の文書の彫刻で覆われています。黒曜石水和層年代測定法3によれば、この石碑は48,9██年前に作られたと推定されています。これらの加工は分子レベルの精度で彫刻されていることが顕微鏡探査で判明しています。同時に、現在の技術レベルでは再現不可能である事も判明しています。表面の文書も全て石碑自体と同様の精度で刻印されています。各々の文書は文字に応じて石碑の表面、1.48m×1.48mに区切られた80セクションに分割され、その内の██セクションが補遺3(画像)に見られるような文書でぎっしりと埋められています。現在までに研究が進んでいる文書の、言語学的分析は年代順に以下の通りです。:

  • 未解明文字1:現在までの既知の文字、言語体系には一切あてはまらず、SCP-1050-1以外の他のテキストも発見されていない。刻まれた日付は48,███年前から██年前と推測。未解読だが、内容的には他の文書と同一と推測される。
  • 未解明文字2:起源不明の文字。SCP-1050-1以外の他のテキストも発見されていない。刻まれた日付は「石碑」の完成年代と同一。文法構造に初期ラテン語との類似点があるが、使用されている文字はアルファベットではなく、数詞も全く一致しない。
  • 絵文字4:賈湖契刻文字。裴李崗文化で使用されたと考えられる。
  • 楔形文字:記述内容はシュメール語ではなくアッカド語。
  • 絵文字:エジプト神聖文字。(ヒエログリフ)
  • 線文字A5
  • 絵文字6:オルメカ文明で使用されたもの。
  • アルファベット:記述内容は古典ラテン語。
  • ルーン文字:記述内容は中世初期のスウェーデン語。
  • アルファベット:記述内容は近代英語。(1891年頃)
  • キリル文字:記述内容は現代ロシア語。(1943年頃)

これらの文書は全て同じ内容を記述していると考えられています。例として、SCP-1050-1の英語版を以下に転記します。脚注の内容には研究チームの推測的な解釈を含みます。:7

災厄達に注意せよ。其は星の光も瞬かぬ常闇の国8より、幾百万の軍勢を率い来る。千代の間もい寝伏(ねふ)して、国の栄えむ時を待つ。国の栄えるその時に、黄昏時を齎(もたら)さむ。:孵(かえ)り来たりし其の姿、人々の上にはだかりて、殺し奪いて焼き尽くす。人ならざる産を得て、傴僂(せむし)ながらも背は高く、偉丈夫よりもなお高い。巨(おお)き身体を疾(と)く翻(ひるがえ)し、疾風よりもなお疾(はや)い。鋼のごとき逆棘(さかとげ)の手は、爪鱗棘瘤(そうりんしりゅう)に覆わるる。名工刀匠が鍛えたる、いかな刃(やいば)も其を通さじと9。アモラとシュドム10の両の民、万軍率(ひき)いて其を攻めたるも、大鎌の前の叢(くさむら)に等しく、朝の万軍も夕には消えぬと。数多(あまた)の英雄奮(ふる)いしも、皆ことごとく潰(つい)えたり。雷火天降り大地を震おし、あらゆる市国を襲い尽くさむ姿、いにしえの大洪水11にも似たり。神に救われむと民祈りしも、神の業もまた無力なり。イーアペトス12、アウサール13、エヘカトル14、また関雲長15、皆ことごとくむなしくなりぬ。ここに至りて災厄は神に等しく、神は人に等しく、人は禽獣蟲魚(きんじゅうとぎょ)に堕しからむ。賢明にも逃れし者達:すなわちサチャブラータ16、ウトナピシュテム17、ノーヤック18、またデウカリオン19。彼らに率いらる大舟、わずかに千ばかりのみ、常闇の災厄を逃れたり。忘るるなかれ、常闇の国は人の世に先んじて在る。今や其はい寝伏したるも、いずれかえり来る。災厄達に注意せよ。13 057 935 897.20 13 057 987 212. 13 082 937 367.21 13 082 989 898. 13 097 951 299.22 13 098 004 240. 13 154 950 029.23 13 154 997 841. 13 171 943 486.24 13 171 996 357. 13 175 947 117.25 13 175 997 684. 13 179 942 287.26 13 179 990 180. 13 183 948 781.27 13 183 999 048. 13 232 952 474.28 13 233 001 388. 13 281 951 481.29 13 282 002 364. 13 329 941 108.30 13 329 990 159. 13 348 945 350.31 13 348 994 654. 13 394 942 237.32 13 394 994 635. 13 416 953 628.33 13 417 005 920. 13 454 440 174.34 13 454 492 033. 13 482 944 398.35 13 482 991 663. 13 534 433 334.36 13 534 484 218. 13 566 069 136.37 13 566 119 652. 13 585 446 914.38 13 585 499 555. 13 599 896 703.39 13 599 945 679.40 神の御名に於いて、斯くの如く再び宣言する。グレートブリテン - アイルランド連合王国女王にしてインド帝国皇帝 信仰の擁護者 ヴィクトリア 1891年

それぞれの文書の末文には異なる統治者が文書の内容を「再び宣言」し、それに応じた「日付」を添える形式を取ります。それぞれの文書を調査した結果、繰り返される文書の相違点、末文の統治者の名と添えられた日付を検証することで、各文書が刻まれた年代を特定できると推測されます。財団では現在の所、以下の統治者名を特定しました。:

  • レガトゥス・マキシムス・ロムルス、紀元前53,5██年(「原ラテン語」文書)
  • ウルクの王ギルガメシュ、紀元前2,5██年(アッカド語楔形文字)
  • エジプト王カーカウラー・センウセレト3世、紀元前185█年(ヒエログリフ)
  • ミノアの王ミダス、紀元前8██年(線文字A)
  • ローマ皇帝プブリウス・アエリウス・トラヤヌス・ハドリアヌス、西暦122年(古典ラテン語)
  • スウェーデン国王エリック6世「勝利王」、西暦985年(ルーン文字)
  • 英国王ヴィクトリア女王、西暦1891年(近代英語)
  • ソビエト社会主義共和国連邦共産党書記長ヨシフ・スターリン、西暦1943年(現代ロシア語、現在最新文書)

文書内の数字の羅列が何を意味しているかは、現在調査中でありはっきりとはわかっていません。しかし、ビッグバンから数えた標準的地球年であると仮定した場合、地球史上のいわゆる「大量絶滅期」と4桁の有効数字内で一致します。この場合数字はおよそ現在の5万年後まで続いています。もっとも大量絶滅期はすべてが有史以前という古さのために、広範囲の地質学的、理化学的調査でもここまではっきりとした年数は判明していません。そのために文書中の数字との直接的な関連は明言できませんが、同様に関連を否定する反証も存在しません。

また明らかに黒曜石の組成を持つにもかかわらず、SCP-1050-1はその頂点部からSCP-1050-3を発信します。(後述)

SCP-1050-2
SCP-1050-2は、現在までに2種類が発見されていて、いずれも紙にペンとインクで書かれた書類です。SCP-1050-1上に見られる文書と全く同様の内容で、それぞれの統治者が自ら手書きした体裁を取っています。第二次世界大戦中の1943年、当時ドイツの研究所に保管されていたSCP-1050-1上に、スターリンによって「宣言」されるロシア語の文書が「一晩のうちに」現れた時、SCP-1050-2が認識されました。アーネンエルベ所属の研究班はこの発見を上司に報告しましたが、彼らはそれにコピー(あるいはオリジナル)となる文書が存在することまでは、知り得るすべがありませんでした。スターリンの手書きによるSCP-1050-2aは、戦後になって財団の記録員に発見、回収されるまで、ソビエト連邦内務人民委員部(PCIA)の公文書記録室のファイルに眠っていました。SCP-1050-2aには公文書の記録であるはずの公印がなく、外部記録なども見つかっていないことから、現在までSCP-1050-2aが実際にスターリンによって書かれたかどうかは、確実には判明していません。一方、ヴィクトリア女王の手書きによるSCP-1050-2bは195█年に英国王室文書館で発見、回収されました。やはり蔵書記録および公印を欠いており、明らかに無断でファイルされていました。SCP-1050-2aとSCP-1050-2bについては、いずれも署名者の「筆跡鑑定と一致」すること、そして、いずれも「ある日突然現れた」かのような状態で発見されたこと以外については、異常な特性は見つかっていません。また、この2種以外のSCP-1050-2は、現在の所発見されていません。

SCP-1050-3
SCP-1050-3は、4つの大陸上の電波望遠鏡で異なる時間に、衛星軌道上から受信された一連のラジオ・メッセージから構成されます。メッセージはいずれも同内容で、以下の文章から成ります。

Caue qui destruunt. 131 520 067 324. 131 520 231 714. 131 735 163 354. 131 735 330 606. 132 114 132 402. 132 114 273 440. 132 310 742 546. 132 311 106 102. 132 505 700 122. 132 506 047 214. 132 671 063 271. 132 671 232 140. 133 002 357 774. 133 002 520 311. 133 166 775 636. 133 167 134 163. 133 505 463 131. 133 505 627 216. 134 026 556 234. 134 026 714 120. 134 260 240 562. 134 260 405 153. 134 447 340 406. 134 447 501 115. 135 004 066 506. 135 004 236 030. 135 305 137 065. 135 305 277 056. 135 506 335 426. 135 506 475 565. 135 532 471 335. 135 532 634 763. 135 551 527 350. 135 551 675 475. 135 774 357 077. 135 774 515 471. 136 131 626 002. 136 131 767 340. 136 376 623 165. 136 376 772 515. 136 553 570 623. 136 553 727 457. 136 655 237 566. 136 655 377 612. 136 774 033 615. 136 774 172 265. 137 111 653 240. 137 112 017 667. 137 412 021 517. 137 412 170 737. 137 660 541 073. 137 660 677 750. 140 027 376 424. 140 027 535 524. 140 223 042 076. 140 223 202 372. 140 363 774 534. 140 364 136 676. 140 712 326 512. 140 712 467 531. 141 224 045 031. 141 224 211 214. 141 363 344 027. 141 363 512 512. 141 454 560 103. 141 454 727 420. 142 006 115 615. 142 006 253 121. 142 106 764 076. 142 107 133 305. 142 126 177 555. 142 126 342 364. 142 145 372 617. 142 145 530 244. 142 164 613 755. 142 164 756 110. 142 457 552 232. 142 457 711 654. 142 752 477 371. 142 752 642 674. 143 241 541 164. 143 241 701 017. 143 352 136 706. 143 352 277 136. 143 631 514 435. 143 631 662 713. 143 755 473 434. 143 755 641 540. 144 174 473 356. 144 174 640 601. 144 351 263 616. 144 351 420 057. 144 655 610 066. 144 655 753 372. 145 046 344 620. 145 046 507 344. 145 160 274 002. 145 160 442 643. 145 247 372 177. 145 247 531 717.

このメッセージ中の数字の羅列の内40は、明らかに石碑に刻まれた40の「十進数」の整数を「八進数」に換算したものです。前述の仮定に従えば、残りの60は地質学的、理化学的調査でも未発見の「大量絶滅期」に言及している可能性があります。文頭の「原ラテン語」はおおまかに訳せば「災厄達に注意せよ。("Beware the Destroyers.")」となります。これらのメッセージの内いくつかは受信時の指向性からSCP-1050-1の頂点部から発信されたと判明しましたが、██方向および[編集済]を含む方向の宇宙空間からも受信されました。これらはSCP-1050-3のリピーター発信と考えられ、SCP-1050-1から発信されたSCP-1050-3が他の天体の軌道上に辿り着き、それを受信した同様の存在が、SCP-1050-3を再発信し、それを地球のSCP-1050-1がまた受信して発信し…、といった具合に、地球以外の惑星からも同様の発信が行われていることを示唆しています。

補遺1: SCP-1050研究班による現段階での考察、19██年。

SCP-1050は、起源不明ながら、恒星間のネットワークで結ばれた「早期警戒」システムの構成部分と推測されます。現代の迅速な、地球規模のコミュニケーション形式が発明される以前、人々は主に前時代的な櫓の上に篝火を燃やす、灯台式とかリレー式と呼ばれる遠隔コミュニケーションシステムを構築してきました。櫓の上の火は近傍の櫓から容易に観察が可能です。隣の櫓に燃える火を見た人々は、自分たちの櫓にも火を掲げて、さらに隣の櫓へも注意を呼びかけるわけです。なにしろ光学視認というのは速いですから、この方法なら国境外から近づきつつある外敵を中央へ知らせるのに、何十とか何百マイルもの移動を経ずに1日で報せることが出来ました。SCP-1050は、基本的にはこれと同様のシステムであろうと、我々は考えます。SCP-1050-3のリピーター発信は、主にこれで説明がつくでしょう。異なる言語で書かれた、支配者のサイン付き数十の警告文書は、迫り来るそれがたとえ何であろうと、「災厄」についての警戒に、人々の社会的な合意を形成するのに役立つことでしょう。同様にSCP-1050-2も、主要な政治大国間に警戒行動を促す一手段であるのではないかと、そう我々は考えます。しかしここで問題として出てくるのが、この「警告」が、我々に明白に深刻な、差し迫った危機として認識されていない……言い換えれば、たとえば昔話や、神話的な形式などでもいいのですが、これほどの特記すべき「警告」を我々が何らかの伝承の形であっても「知らない」というのは、……少なくとも、この「警告」が人類の歴史上には発生していない、ということを強く示唆しています。謎の超自然的脅威に対するこの警告はたとえば、ハドリアヌス帝があの長ったらしい城をイングランドの端に作ったり、ナチス党の馬鹿げた軍事増大政策の原因として考える場合は魅力的かも知れませんが、付帯する他の歴史的な事実は、この推論には当然否定的です。

補遺2: 取扱方注

財団が194█年にSCP-1050を収容してから、O5指令部は取扱方を2度改訂しました。収容当初の194█年には、電波信号の遮断が明記されていました。それが196█年には、電波信号の遮断をしてはならない、と変更され、198█年に再度、あらゆる電波信号は遮断される、と改訂されました。これらの改訂はSCP-1050-1の変化ではなく、SCP-1050-1の発信によってもたらされる脅威への対抗策の変化から生じました。

SCP-1050-1からのSCP-1050-3の発信妨害は、構築された星間「早期警戒」ネットワークから地球を除外することを意味します。これは「発信源の消失によって、外敵が地球に注意を引く可能性を減少させる」という推論からなされました。194█年、198█年の改訂はこの推論に基づいて行われました。一方で196█年の改訂は、「提示された将来の絶滅が正しいのならば、差し迫った危機を抱える他の星に警告を発信する義務がある」という推論からなされました。

現在では、警告を発信する危険は、それによって得る利益を上回ると推測されています。

補遺3 SCP-1050-1「文書」の写真イメージ

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