アイテム番号: SCP-1056
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-1056は実験に使用されていないとき、50×50×50cmのセーフティボックスに保管されており、使用は研究と実験に携わる人員にのみ認められています。全ての実験にはサイト管理者とレベル3以上のクリアランスを持つ研究者による事前の許可が必要です。生物を使用した実験は、変化した被験体の脱走を防ぐためにレベル2の収容ガイドラインを満たした安全な実験施設で行って下さい。SCP-1056によって変化した全てのオブジェクトは、変化後48時間以内にクラスE処分倉庫に運んで下さい。200kgを超えるオブジェクトを生成する場合はサイト管理者の許可を得て下さい。
説明: SCP-1056は新品のクロム製キッチンタイマーのように見え、0.25から4.00までのダイヤルと右側面に起動ボタンが付いています。1×1.25mのワイヤーメッシュ製のプラットフォームが、二硫化モリブデンと未発見の有機金属化合物の複合体で被覆された3mの絶縁された炭化モリブデンの電線で上記の装置と繋がっており、プラットフォームは27×35cmの長方形に折りたたむことが出来ます。ダイヤルで数値を設定して右側面のボタンを押したとき、プラットフォームと直接接触しているオブジェクトは設定された数値と一致した倍率でサイズが変化します。
SCP-1056は、ペンシルバニア州████にある████高等学校の生徒の間に妙な噂が流れていたことをSCP財団職員が報告した後に回収されました。学校関係者が教師から数人の生徒に異常が見られるとの報告を受けて調査を開始したところ、当該の生徒は重度の言語障害に加え、注意持続時間、長期記憶力、衝動制御が異常に劣っていると分かり、健康診断の結果から多数の脈管及び神経系の異常も明らかになりました。財団職員は恐らく娯楽目的で装置を使用したと考えられる、ある生徒の自宅から装置を回収しました。製造または流通の唯一の手がかりとなるのは装置の底面に刻印された"THE FACTORY"と読める4×1cmの文字だけで、全ての装置を構成する部品は一般的に製造されているものでした。
オブジェクトのサイズの変化には、オブジェクトの機能と複雑さが関係していると思われます。鉱物、金属、プラスチックのような単純な無生物は分子などの微細なものを除いて、正確に(有効数字4桁まで)倍率通りのサイズに変化します。例えば、5.00cmのステンレス鋼の立方体を3.00倍に設定したとき、オリジナルの立方体と分子構造上の違いはありませんでしたが、ミクロ構造的なレベルでは異なっており、15.01cmの立方体に拡大されました。2つの立方体の平均粒度は同一でしたが、小さな立方体の個々の粒子は大きな立方体と同じ倍率にはなりませんでした。
SCP-1056が複雑な機器や生物のサイズを変化させる際、SCP-1056はそのオブジェクトの機能と特性を可能な限り保持したままサイズを変化させることを試みていると思われます。例えば、電子機器のマイクロプロセッサが変化後のサイズにおいてトランジスタが機能しない、電力不足、過度の発熱といった理由で機能しない場合、その都度サイズは修正されます。縮小された電子機器はトランジスタの数が減少することがあり、浮動小数点エラーを起こす可能性があります。機械的なオブジェクトは非常に複雑な物以外は比較的倍率通りに変化しますが、電子機器は0.50未満と3.00を超える倍率ではほとんどの場合機能を損失します。
SCP-1056によってサイズを変更された生物は基本的な解剖学的構造を保持していますが、ほとんどの場合循環器、肺、神経系に著しい変化をもたらされます。細胞の大きさや構成はオリジナルの生物と同一ですが、倍率の変化に比例して細胞数が増減します。この解剖結果に対する唯一の例外は神経系で、平均的なニューロンは機能に差し支えない範囲で線形サイズに従って最大25%の増減があります(もしかするとオリジナルの容積の半分未満2倍以上が適切かもしれません)。興味深いことに、SCP-1056は単細胞生物には"中間をとる"ように見えます。細胞の平均サイズをわずかに変えて、全体の細胞数を変化させています。
人間がSCP-1056によって変化させられる場合、0.50から1.75までの倍率で機能の保持が可能です。人間を縮小する試みはほとんどの場合、大脳皮質のしわの増加(脳が折り重なることによるもの)、平均ニューロン容積の減少と灰白質の減少だけに終わっており、0.50倍まではこの状態が保たれることが分かっています。0.50未満の倍率で人間を変化させる実験をしたところ、認識機能、言語機能、短期及び長期記憶力に相当の減少が見られ、これが哺乳類の脳で人間のような知性を持つために必要とされる最小のサイズであることが判明しました。1.25を超える倍率では反応速度の低下、創造力の増加、長期記憶力の大幅な改善が見られました。1.50を超える倍率では心血管疾患、脳卒中、動脈瘤及び腎不全の危険性が大幅に増加します。3.00を超える倍率を生物で試すことは強く反対され、推奨されていません。
SCP-1056が倍率に比例してサイズを変更するメカニズムは現在判明していません。20,000fpsのハイスピードビデオカメラの映像でも変化の様子は捉えきれず、ほとんど一瞬であることが分かっています。
興味深いことに、非常に大きな容積のオブジェクトが作られる、または失われるときでも大気中の成分の置換は確認されていません。少数のケース(およそ8%)において、装置で変化させられたオブジェクトは構成要素が不安定になり、変化後36時間以内に原子核崩壊が始まります。生物とそれ以外の比較的金属をあまり含んでいないものはかなリの低確率(およそ3%)で腐敗する可能性があります。この崩壊及び腐敗はかなリの温度とエネルギーを発生させます――1kgにつきおよそ150ギガジュールと典型的な物質反物質の崩壊よりおよそ6桁小さいものの、十分に大きな熱量のため頻繁または大規模な変換は勧められません。
実験ログSCP-1056
実験SCP-1056-1
オブジェクト: TI-30Xa 関数電卓
設定: 0.75, 1.33
結果: 0.75倍において電卓は正常に機能した。その後1.33倍で使用し、1.00倍に戻すことに成功した。2つの設定の間で変化を繰り返すも基本機能や外観、内部構造に変化は見られない。
実験SCP-1056-2
オブジェクト: TI-30Xa 関数電卓
設定: 0.25, 4.00
結果: 0.25倍において電卓は正常に機能せず。電源は入るものの正確な計算が出来ず、ほとんどの計算結果は間違えているかエラーを表示している。その後4.00倍で使用して通常のサイズに戻したが、電卓の機能は元に戻らなかった。内部の分析結果からトランジスタ数や液晶解像度など、細部の損失が明らかになった。
実験SCP-1056-3
オブジェクト: 22カラットの金の延べ棒1kg
設定: 4.00
結果: 21カラットの金の延べ棒(モリブデン不純物含む)64kg。
実験SCP-1056-4
オブジェクト: 35枚の1オンス(28.35g)の"シルバーイーグル"硬貨
設定: 2.00
結果: 個々の重量が80.18gの硬貨99枚。総質量の増加は硬貨の平均サイズと枚数、これら双方の増加という形で均等に分かれて生じているようだ。変換から40.25時間後に硬貨は電磁放射を発し始め、最終的に高レベルの熱量と電離放射性を発するようになった。大量の銀が朽ちるまでの20時間もの間サイト40の高性能爆薬試験室に保管しておいたものの、結果として試験室及び4人の研究者の放射線中毒の治療に深刻な被害をもたらした。
研究者注: もし我々がオブジェクトの崩壊の予測か確実に崩壊を誘発するオブジェクトの種類を確認できたなら、このSCPによって変化させられたアイテムを有効に使ったりそうでなければ武器に転用出来ただろうに。どんなオブジェクトが影響を受けやすいのか、SCP-1056のどのプロセスが崩壊を招いているのか、共通点が全く見つからん。 – ビムストン博士
実験SCP-1056-5
オブジェクト: 被験者D-3202 52歳男性 身長175cm 体重90.3kg
設定: 2.00
結果: 被験者はおよそ2倍に拡大され、身長341cm、体重719.6kgに変化した。心身ともに正常だが反応速度が通常よりわずかに遅く、必要なカロリー摂取量は質量が約8倍に増加したと考えられるときに予想される数値の50%だった。被験者は長期記憶テストにおいて能力の飛躍的な向上を見せた。おそらく脳の質量が増加したためだと思われる。安静時の心拍数は45/分、血管収縮時の血圧は165mmHg(変化前は132)だった。変化から6日後、被験者は手足の末端の中くらいの腫脹に繋がる血管に異常を感じ、それに伴い断続的な意識障害、穴の開いた視界、目のかすみ、耳鳴りを感じている。変化から22日後、被験者は重度の脳幹動脈瘤による呼吸不全で死亡。
研究者注: 被験者の症状は極端な末端肥大症のケースと一致しており、合併症の早期の発症を示している。我々はほとんどの人間が1.33あるいはそれよりわずかに上の倍率までは問題なく変化出来るだろうと予測している。 – カーンズ博士
実験SCP-1056-6
オブジェクト: 被験者D-3315 36歳女性 身長163cm 体重55kg
設定: 0.50
結果: 被験者はおよそ2分の1に縮小され、身長81cm、体重7kgに変化した。心身ともに正常で一般的な知能、短期及び長期記憶力、空間認識能力のテストにおいて変化前との違いは見られず。MRIスキャンでは大脳皮質のしわの増加と灰白質の全体的な減少が見られる。安静時の心拍数は98/分、血管収縮時の血圧は88mmHg(変化前は115)だった。被験者の心血管系はより小さな霊長類に見られるそれに類似した方法でわずかに単純化されていた。変化から28日経過したが、被験者の健康状態や行動に異常が確認できないため、元のサイズに戻した。
実験SCP-1056-7
オブジェクト: 被験者D-3315 36歳女性 身長81cm 体重7kg
設定: 2.00
結果: 被験者は元のサイズに戻り、身長163cm、体重55.7kgに変化した。心身ともに正常で、認識テストでは短期及び長期記憶力がわずかに改善し、反応速度はわずかな減少が見られた。この認識テストの結果の不規則性は装置の度重なる使用からなるものであると仮定される。心血管系が大きくなった身体を補助するために縮小状態から修正されたものの、元の血管パターンと同一ではなかったことから装置による変化は完璧な相互変化ではなく、元の形に戻した際に身体的な問題が起こらないようにするだけの"即興"のものであることが判明した。
実験SCP-1056-8
オブジェクト: 13cmのペトリ皿に入れた大腸菌と乳酸菌
設定: 4.00
結果: ペトリ皿は52cmに拡大され、細菌コロニーはオリジナルの構造を保持している間はおよそ64倍まで拡大された。コロニーを顕微鏡分析したところ、細菌の平均サイズは細菌の細胞数の増加によって長さ2.2ミクロンから7ミクロンに拡大されていた。このコロニーから採取して培養したサンプルは20回の自己複製サイクルを経て長さ6ミクロンで安定し、大型化を維持している。PCR分析では細菌の遺伝子はいくつかの点で変異を起こしており、例えばrodZ遺伝子は一般的な細菌のそれと比べ拡大されていた。
研究者注: 遺伝子検査の結果からSCP-1056が生物学と遺伝子学レベルで生物を再構成していることが分かっている。装置内部の単純なデジタルと機械的な構造を見る限りこの仕事ぶりはとてもじゃないが考えられないな。 – カーンズ博士
実験SCP-1056-9
オブジェクト: SCP-1056
設定: 2.00
結果: [データ削除済]
サイト管理者注: 今後この装置を使った全ての実験は上級研究者の承認を得た後、私に提出するように。実験責任者は懲戒処分の上、プロジェクトから除外された。我々は幸運にも最悪の……そう最悪の結果は免れた。もしあのとき宇宙全体が倍の大きさになっていたとしたら、一体何が起きていただろうか。 - ████ █████