
左がSCP-1057-JP、右が一般的なパーティメガネ
アイテム番号: SCP-1057-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-1057-JPは、縦80cm、幅80cm、高さ60cmの施錠されたガラスケースの中に、異常性のない一般的なメガネと一緒に、10cm以上離さずに収容してください。収容の際に使用するメガネに特に指定はありませんが、SCP-1057-JPと一目で見分けることできるよう、パーティメガネの類が望ましいです。
SCP-1057-JPを用いた実験を行う場合は、実験で使用する以外のメガネを周囲から排除してください。また、SCP-1057-JPの収容違反を防止するために、2人以上のパーティメガネを着用した人員をSCP-1057-JPの半径5m以内に配置し、両手に何も持っていない事が確認できる状態を保ってください。SCP-1057-JPを再び収容する際、SCP-1057-JPを確実にガラスケースに入れた事を、複数名の職員で目視確認を行ってください。
説明: SCP-1057-JPは、近視矯正用に処方された眼鏡です。SCP-1057-JPは、着用した被験者に対し、右手に持っている物と左手に持っている物の目的を入れ替える、認識障害を引き起こします。片手にだけ物を持っている状態、または、両手で1つの物を持っている状態では、異常性が発現しません。また、SCP-1057-JPは人に着用されていない期間が30日を超えると、最も近いメガネと入れ替わります。一度入れ替わりが発生すると、SCP-1057-JPは収容から逃れるように連続で入れ替わる事が確認されています。SCP-1057-JPが意思をもって逃走を図ったのか、なんらかの防衛反応なのか、今のところ不明です。
SCP-1057-JPのつるの部分には、Y█████ K████とロゴが彫られており、山本██というデザイナーが使用するロゴと一致しました。財団が調査を行いましたが、山本██の作品の中に、SCP-1057-JPと一致するデザインのメガネは確認できませんでした。
SCP-1057-JPは、██研究助手が福井県のメガネ店で購入しました。20██年10月1日、██研究助手が城嶋博士に頼まれた研究資料をごみ箱に捨て、コーヒーの空き缶を提出しました。城嶋博士が状況を理解しようと数秒思案していると、██研究助手は悲鳴を上げて走り去り、ごみ箱から研究資料を回収してきました。██研究助手はその場で厳重注意を受けました。その後、落ち込んだ様子で左手でライターを口元へ運び、右手の親指で何本も煙草を折っている██研究助手を城嶋博士が発見し、何らかの認識障害に暴露した可能性に気付き、調査した結果、SCP-1057-JPの収容へ繋がりました。
実験記録1057-JP: 特に記載がない場合、被験者はSCP-1057-JPを着用した状態で実験を行なったものとする。以下はSCP-1057-JPに対して行われた実験の一部の記録を抜粋したものです。
実験記録002 - 日付20██年10月11日
被験者: D-1057-01
方法: コップと雑誌を適切な場所に置くように指示する。どちらか一方を置いた時点で持っている物を確認させる。
結果: 被験者は右手で持った雑誌を流し台に置き、左手にコップを保持した。指示を受けた時点で間違いに気付き、流し台にコップを置き、回収した雑誌を本棚に入れた。
実験記録003 - 日付20██年10月11日
被験者: D-1057-01
方法: コップと雑誌を1つずつ右手に持ち、適切な場所に置くように指示する。
結果: 問題なくコップを流し台に、雑誌を本棚に入れることができた。
考察: 片手では認識障害が発生しないようだ。
実験記録006 - 日付20██年10月15日
被験者: D-1057-01
方法: フォークとナイフを使って調理した肉を食べるように指示する。
結果: 右手のナイフで肉を刺し、左手のフォークで無理やり切って食べた。(補足: 被験者は右利きである)
考察: 『勘違い』と言うよりも、『思い込み』に近い認識障害なのだろうか。
実験記録010 - 日付20██年10月18日
被験者: D-1057-01
方法: バットを持ってティーバッティングをさせる。
結果: 問題なくティーバッティングをすることができた。
考察: 両手で同じ物を持った場合も認識障害は発生しないようだ。
実験記録011 - 日付20██年10月18日
被験者: D-1057-01
方法: グローブと野球ボールを渡し、投球させる。
結果: 右投げのフォームで振りかぶり、野球ボールを保持した状態で、左腕で振り払うように勢いをつけてグローブを投げた。
考察: 運動記憶に従って無意識に投球をしようとしたが、途中で投げるのはグローブのはずと気付き、無理な体勢で投げてしまったようだ。数をこなせば、あの無理な体勢でのグローブ投げが上達するのだろうか?
実験記録012 - 日付20██年10月18日
被験者: D-1057-01
方法: 繰り返し投球させる。
結果: 無理な体勢でのグローブ投げを32回行ったが、上達する兆しは見られなかった。
補足: 32回目のグローブ投げが終わった時点で、D-1057-01は怒った様子でグローブを拾い、悪態をついて野球ボールを地面に叩きつけた。跳ね返った野球ボールはD-1057-01の顔面に直撃し、全治1ヶ月の重傷を負った。
考察: まぁ、グローブを叩きつけたくもなりますよね。
実験記録016 - 日付20██年10月19日
被験者: エージェント・國分
方法: エレキギターで演奏をする。
結果: 右手でネックを握り、左手でピックを持って構えようとしたが、ストラップの向きが逆になることに気付き、正しい構えに戻した。
考察: 被験者が自力で間違いに気付いた初の事例。人からの指摘以外にも、被験者自身で気付ける要因があれば気付けるようだ。
実験記録017 - 日付20██年10月19日
被験者: エージェント・國分
方法: キーボードで合唱曲の伴奏を演奏する。
結果: 右手のメロディーラインを1オクターブ下げて左手で演奏し、左手の和音の伴奏ラインを1オクターブ上げて右手で演奏した。メガネをはずしてもう一度やってみたけど、無理です。 - エージェント・國分
実験記録018 - 日付20██年10月19日
被験者: エージェント・國分
方法: キーボードで『バッハのインベンション1番』を演奏する。
結果: 問題なく演奏することができた。
考察: バッハって、右手も左手もメロディーラインなんすよ。どっちの手も『メロディーラインを弾く』っていう同じ目的だったから、普通に演奏できたのかな? - エージェント・國分
右手と左手の『目的』は、被験者の認識をベースにしているようだ。 - 城嶋博士
事件記録1057-JP-A
日時: 日付20██年11月1日
サイト内のゴミ箱やロッカー等に、低脅威度のオブジェクトや、実験記録等が放置される事案が発生。さらに、低脅威度物品保管ロッカーに保管されていたはずのSCP-1057-JPを、██博士が着用していたことが判明しました。低脅威度物品保管ロッカー周辺の監視カメラを解析した結果、保管室に入った██博士のメガネが、退室する時にはSCP-1057-JPになっていることが確認できました。██博士が意図したものではないと供述したため、城嶋博士は、SCP-1057-JPは別のメガネと入れ替わる性質をもつと仮説をたて、サイト内のメガネを着用している職員と、メガネをサイト外に一時的に出すように指示しました。また、SCP-1057-JPの異常特性と入れ替わる能力を考慮し、サイト内で保管するのは危険と判断し、別のオブジェクトを収容する予定の、建設中のサイト外の収容施設に移送することを提案。提案は即座に承認されました。それに伴い、SCP-1057-JPを移送する目的で、機動部隊-ラガンがその日のうちに結成されました。
機動部隊隊員が██博士からSCP-1057-JPの回収を試みたところ、再びSCP-1057-JPの異常性が発現し、サイト外で待機していた研究員のメガネと入れ替わり、収容違反が発生しました。周囲の職員が、研究員のメガネがSCP-1057-JPになっていることを指摘し、研究員がSCP-1057-JPを外そうと試みました。しかし、再び別の職員のメガネと入れ替わり、次々と別のメガネと入れ替わり続け、現場は一時混乱しました。
この様子を観察していた城嶋博士は、SCP-1057-JPが最も近いメガネと入れ替わっていることに気付きました。城嶋博士はメガネを着用し、入れ替わったSCP-1057-JPを着用している研究員を確保、2人から離れるように周囲の職員に指示を出しました。SCP-1057-JPはその後、機動部隊-ラガンによってサイト外の収容施設に移送されるまでの間、城島博士と研究員のメガネを5秒から10秒の間隔で入れ替わり続けました。
この事件を受け、特別収容プロトコルが現在のものに改訂されました。また、SCP-1057-JPのEuclidクラスへの格上げが検討されましたが、現在まで収容違反の兆候はないため、クラス変更は保留となりました。現在、SCP-1057-JPは一緒に収容されている非異常性のメガネと、5秒から1時間の間隔で入れ替わりが発生しています。定期的に観察を行い、新たな異常性が判明した場合は、城嶋博士へ報告してください。
SCP-1057-JPの収容違反が大きな被害を出す前に収束できたことは、幸運だったと言わざるを得ない。もしもゴミ箱に捨てれたオブジェクトが深刻な収容違反を引き起こす物だったら、もしも危険なオブジェクトの実験を予定した研究員のメガネと入れ替わっていたとしたら、被害はさらに甚大なものになっていただろう。 - 城嶋博士
補遺:1 事件1057-JP-AでSCP-1057-JPを着用した職員にインタビューを行ったところ、SCP-1057-JPを着用時は、視界が非常にクリアであったと回答しました。実験の結果、SCP-1057-JPは着用者の視力に合わせてレンズの度数が変化していることが確認されました。これは老眼、近眼、斜視にも適用されます。盲人の被験者に対して、視覚への影響はありませんでした。
補遺:2 20██年9月23日、SCP-1057-JPの入れ替わりが発生する条件が、実験の結果確定しました。また、入れ替わりが発生した後、SCP-1057-JPを同一人物が約8時間着用し続けることで、再び30日間、入れ替わりが発生しないことが判明しました。
SCP-1057-JPに意思があるかは分からないが、メガネとしての本分を果たしたいのかもしれないな。 - 城嶋博士