SCP-1106-JP
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SCP-1106-JP-α

アイテム番号: SCP-1106-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-1106-JPはサイト-81██の展望室に設置され、常時月面を観測し続けるように方向/角度の自動調整が行われます。接眼レンズ部には中継機が接続され、SCP-1106-JP-αの観測映像が外部記録装置へと送信されます。

月出から月没までの間にSCP-1106-JP-βが睡眠を行う場合、観察試行時でない限りは拘束下に置くことが推奨されています。また、昏睡段階へと移行した個体に関しては、担当者が必要と判断した場合を除き、一定期間の延命後に終了してください。

説明: SCP-1106-JPは███社製19██年モデルの赤道儀式架台のケプラー式天体望遠鏡です。同モデルと比較して各機能に差異が見られない一方、対物レンズの取換えを始めとした複数箇所に改造の痕跡が確認できます(各改造の詳細に関しては別紙1106-JP-3参照のこと)。

他の天体望遠鏡との明確な違いは、SCP-1106-JPを用いて月面の観測を行った場合、クモのシルエットに酷似した影像(以下、SCP-1106-JP-α)が月面上へと重なる形で投影される点です。観測されるSCP-1106-JP-αは常に同一個体であるように見え、多くの場合は参考画像の位置に静止して存在しています。それに加え、時折観測される動作は、特定のクモ類に見られる挙動と概ね共通しています。また、上記以外の特筆点として、観測される月色が通常と比べて赤味を帯びている点も挙げられますが、これは後述する異常作用に寄与しません。

SCP-1106-JP-αは自身を観測1した人物(以下、SCP-1106-JP-β)に対して影響を及ぼす認識災害特性を有します。曝露から5日以降に、SCP-1106-JP-βが月出から月没までの間2に睡眠を行った場合、睡眠開始から5分以内にレム睡眠段階へと移行します。それと同時に、SCP-1106-JP-βは夢遊病患者のように無意識状態で起き上がり、SCP-1106-JP-βに共通する以下の行動(以下、夢遊行動)を取ります。

夢遊行動 概要
周囲のクモ類に餌を与える 主に、適当な昆虫/小型動物を捕獲し、弱らせた上でクモ類へと与えようとします。また、造網性のクモ類に対しては、餌を巣や網に引っ掛けるといった方法を取ります。
食料を消費する 発見した食料を可能な限り消費しようと試みます。この際、高コレステロールの食料を優先する傾向にあります。なお、この行動は曝露からまだ日の浅い個体にのみ見られます。
高所へと移動を試みる 目に付く範囲で最も高度が高い地点へと移動します。到着後はその場で不定時間の待機を行った後、別の夢遊行動へと移行します。なお、この行動は後述する昏睡段階へと移行した個体に多く見られます。
足踏みを繰り返す 立ち止まったままの姿勢で歩行するように足を動作させます。これは拘留下にあるなどの理由で、上記のいずれの行動も実行できない場合にのみ観察されます。

これらの夢遊行動は睡眠開始から月没まで継続して行われます3。この間に実施される脳波解析の結果は、SCP-1106-JP-βが連続的にレム睡眠段階に留まり続けており、睡眠サイクル進行およびノンレム睡眠段階への移行が発生していないことを示します。そのため、正常な睡眠時と比べた場合、覚醒後もSCP-1106-JP-βは強い疲労感と眠気を覚えることになります。

それに加え、SCP-1106-JP-βの多くが覚醒後に「延々と階段を上り続ける夢」の経験を報告します。大抵の場合、SCP-1106-JP-βはこの夢に関して「意識が明瞭であるにも関わらず、身体は意思に反して階段を上り続けていた」という旨の状況説明と、その際に経験した強い不快感や疲労感を主張します。以上の要因もあり、SCP-1106-JP-βは月出-月没間以外の時間を正常な睡眠に費やすようになります。この正常な睡眠時間は、月出-月没間における異常な睡眠/夢遊行動を重ねるごとに増加し続け、最終的に永続的な昏睡段階へと以降します。この段階に移行した個体は、正常な睡眠と夢遊行動のサイクルを交互に繰り返し続けます。現在まで、この状態から回復したケースは存在しません。

SCP-1106-JPは198█/04/22、京都府██郡███町の地元病院に救急搬送された奇妙な夢遊病患者(以下、SCP-1106-JP-β-1)の報告を調査した際に、同患者の自宅倉庫より発見、回収されました。更に身元調査の結果、SCP-1106-JP-β-1は天体写真家である██ ██氏であることが判明しました。その一方で、調査担当者が派遣された時点で既に昏睡段階にあり、自宅周辺の調査結果を含め、SCP-1106-JPに関する証言/情報は得られませんでした。

現在、昏睡段階個体の脳波解析サンプル収集を目的として、SCP-1106-JP-β-1には暫定的な延命処置が取られています。また、月出-月没間に軽運動中と同程度の脳活動の様子を検出できる点を除けば、特筆すべき注目点はありません。なお、他のSCP-1106-JP-β個体は全てDクラス職員で構成されており、SCP-1106-JP-β-1を除けば、現在までSCP-1106-JP-αに曝露した民間人は確認されていません。

付記: 回収後に実施された構成要素解析の結果、SCP-1106-JP-α投影の主な要因に、取換えられた対物レンズが大きく寄与していたことが判明しました。対物レンズを含むパーツ数点を同モデルの天体望遠鏡パ-ツと交換した際には、通常時と比べて約50%の像鮮明度でSCP-1106-JP-αが投影されました。その一方、対物レンズは特殊形状である点を除けば一般的なものと同様の素材で構成されており、異常性に寄与する原因自体は明らかになっていません。

なお、±0.01μm精度で形状再現された対物レンズを用いた検証では、通常時と比べて約10%の像鮮明度でSCP-1106-JP-αが投影されています。この結果を受け、対物レンズ形状の再現性と像鮮明度の相関性について、更なる追加検証が予定されています。

追記1: 201█/06/09、SCP-1106-JP-β-1の脳活動に通常時との明確な差異が確認されました。脳波解析の結果、月出-月没間のSCP-1106-JP-β-1からは連続的なストレスレベルの上昇と、不規則な恐怖/嫌悪感の想起反応が示されました4。この状態は201█/06/23まで継続し、同日の月出から5時間続けて期間内におけるピーク値を示し続けた後で鎮静化しました。

鎮静化後、SCP-1106-JP-β-1は常時ノンレム睡眠段階に留まり続けていることが判明しました。その一方で、月出-月没間の夢遊行動は201█/06/09以前と同様に行われていますが、その間の脳波解析の結果からは情動的反応を一切検出できていません。また、確認される夢遊行動は上述した「周囲のクモ類に餌を与える」行動のみであり、それが実行できない場合はその場で脱力して姿勢を崩す様子が度々観察されています。現在、新たなSCP-1106-JP-β個体を用いた再現が検討されています。

追記2: 201█/06/28、月面上にSCP-1106-JP-αとは異なった影像の投影が確認されました。新たに投影された影像は人型の形状を取っており、SCP-1106-JP-αの約1/4ほどのサイズでした。また、四肢を大きく広げるような形状を維持し続けており、時折小刻みに揺れ動く様子が観測されました。この出現から1時間後、人型影像はSCP-1106-JP-αによって拘束され、およそ5時間に亘って消費され続けました。この観測から現在まで、新たな人型影像の投影は確認されていません。

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