
浮上する影響個体、目撃者による撮影。
アイテム番号: SCP-1109-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-1109-JPの物理的な収容は現時点では不可能です。対応は隠蔽と発生の抑制に注力されます。
警察やマスコミに潜入中のフィールドエージェントは、人的諜報活動および専用Webクローラ"Bastet"を用いた通信諜報活動によってSCP-1109-JPの目撃証言を収集・隠蔽し、その後目撃者にA~Bクラス記憶処理を実施します。不特定多数の目撃者が想定される場合は、カバーストーリー「ロケット花火」が流布されます。
現在SCP-1109-JP発生を抑制する目的で、公共機関や動物保護団体と協力しての野良猫の増加防止計画が推進されています。計画詳細は別紙「セーブ・キャッツ・プロジェクト10ヵ年計画書」を参照して下さい。
説明: SCP-1109-JPは日本国内に棲息するイエネコ(Felis silvestris catus)の内人間の飼育下にない個体、いわゆる野良猫に発生する異常現象です。発生予測が困難なため実験下での観測は成功していませんが、目撃者の証言、監視カメラの映像、フィールドエージェントからの報告等を統合した結果、おおよそ以下のプロセスで進行すると考えられています。
1. 深夜帯、SCP-1109-JPの影響下に入ったイエネコ個体(以下、影響個体)が建造物の屋根、屋上、空き地等の上空を遮る物体がない場所に移動する。
2. 影響個体の身体が青緑色の炎状の光を発し始め、約30~60秒間、跳躍の準備動作に似た姿勢を取り続ける。
3. 影響個体が跳躍に似た動作と共に、上空に浮上する。浮上速度は高度に比例して急速に加速していく。観測された最高速度は約850km/h、最高高度は約2800mだが、共に上限は不明。
4. 約20~30分間に渡って、速度と高度のため影響個体を観測できず、詳細は不明。
5. 影響個体が徐々に減速しながら、浮上地点に向けて降下を開始する。この時、猫用ペットフード、魚類の干物、マタタビ(Actinidia polygama)の枝など1を口に咥えている。
6. 影響個体が浮上地点に着地し、身体の発光が消失する。影響個体に高速移動や高高度の低温から通常予想されるダメージはなく、精神的な動揺も見られない。
研究班はプロセス終了後の影響個体に各種検査を行いましたが、異常性や野良猫である点以外の共通点は見られませんでした。同じ個体にSCP-1109-JPが再発生したケースもありません。この点からSCP-1109-JPは異常なイエネコ群ではなく、通常のイエネコを介して発生する異常現象と考えられています。
SCP-1109-JPの発生件数は199█年の発見・ナンバリング以来、野良猫の個体数に比例して増加していました。200█年には年間発生件数が37件に達し、現状のペースで増加し続けた場合、隠蔽が困難になると予想されました。この事態を受け、諜報局市民生活部は公共機関や動物保護団体と共同で、野良猫の増加防止計画「セーブ・キャッツ・プロジェクト」を開始しました。結果、SCP-1109-JPの発生件数は201█年から減少傾向に転じ、昨年度は年間11件にまで抑制することに成功しました。来年度からは保護猫カフェへの支援などの新項目も追加される予定です。
追記1・サイト-81ALでの実験に関して: 201█/7/09、サイト-81ALの野外実験場2内で大規模・長期的な実験が開始されました。超小型カメラやGPSを装着したイエネコを実験場内で大量に放し飼いする3というもので、部外者の目撃を防ぎつつSCP-1109-JPのプロセスを観測することを目的としています。
追記2・回収された映像に関して: 2019/8/29、実験に投入されていたイエネコ(識別コード-TM24)にSCP-1109-JPが発生しました。以下はTM24が装着していたカメラの映像記録です。
#SCP-1109-JP実験映像ログ-2019/8/29/23:21:07~23:54:42

〈以下書き起こし〉
TM24が野外実験場の南灯台付近に移動する。(23:21:07)
TM24の身体が発光し始める。周囲には他のイエネコもおりTM24に視線は向けているが、特に警戒する素振りはない。(23:21:17)
TM24が浮上を開始する。(23:21:45)
TM24は加速しながら浮上を続けている。速度は2050km/hに達している。遠景に本州が見える。(23:23:08)
TM24が成層圏に到達。速度は40300km/hに達している。(23:25:20)
カメラの視界が虹色の光に覆われ、GPSからの信号が途絶する。(23:25:42)
虹色の光が消失、カメラの視界には宇宙空間およびイエネコ状の外見をした巨大な実体(以下、SCP-1109-JP-1)が映っている。映像分析の結果、体長は約12000kmと判明している。身体を丸め、眠っているような姿勢を取っており、明確な動作は見られない。TM24はSCP-1109-JP-1に向かっている。(23:27:15)
TM24が徐々に速度を落としつつ、SCP-1109-JP-1の体表に接近する。体表は動物の体毛状の物体で覆われている。(23:35:31)
TM24がSCP-1109-JP-1の体表に着地し、身体の発光が消失する。(23:41:09)
カメラの視界にノミ目昆虫状の外見をした実体(以下、SCP-1109-JP-2)が現れ、跳ねるような動作でTM24に接近する。映像分析の結果、体長は約1.5mと判明しており、靴や鞄状の物体を装備しているのが見える。(23:41:17)
TM24が後脚で身体を掻く。(23:41:25)
TM24から複数の体長数cmの実体(以下、SCP-1109-JP-3)が飛び散る。映像分析の結果、体長以外の外見はネコノミ(Ctenocephalides felis)に酷似4していることが判明。SCP-1109-JP-2は両前脚を広げ、SCP-1109-JP-3群を抱くような仕草を繰り返す5。(23:41:27)

SCP-1109-JP-3拡大図。
SCP-1109-JP-2がTM24に向かって頭部を下げるような仕草を繰り返す。(23:41:32)
SCP-1109-JP-2が鞄から鰹節を取り出し、TM24に与える。(23:41:39)
TM24の身体が再び発光し始める。(23:41:45)
TM24が浮上を開始する。SCP-1109-JP-2は右前脚を左右に振りながら、TM24に視線を向け続けている。(23:42:15)
TM24は急速に加速しながら、SCP-1109-JP-1の体表を離れていく。(23:43:07)
カメラの視界が虹色の光に覆われる。(23:45:14)
虹色の光が消失。TM24からのGPS信号が復活し、消失座標に再出現したことを確認。カメラの視界には成層圏から見下ろした日本列島が映っている。TM24は約40500km/hから徐々に減速しながら、野外実験場を目指して降下中。(23:47:37)
TM24が浮上地点に着地し、身体の発光が消失する。(23:49:01)
実験担当者によりTM24が回収される。(23:54:42)
研究班はSCP-1109-JP-3がイエネコに寄生することでSCP-1109-JPを発生させている可能性を考慮し、直ちに実験に投入されている全イエネコを検査しましたが、SCP-1109-JP-3は発見されませんでした。念のため、今後も定期的な検査を継続します。研究班はSCP-1109-JPが野良猫にのみ発生する原因を、人間の住居内で生活しているイエネコにはSCP-1109-JP-3が寄生する機会がないため、若しくはSCP-1109-JP-3が人目を避けているためでないかと考えています。
追記3・SCP-1109-JP-1に関して: 2019/9/3、宇宙科学部門によってSCP-1109-JP-1の位置特定が行われました。同時に撮影された天体などの情報から検証した結果、SCP-1109-JP-1はやまねこ座α星付近に位置する可能性が高いと判明しました。現在、研究班は外宇宙支部に該当宙域の調査を申請中です。