SCP-1132-JP
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アイテム番号: SCP-1132-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-1132-JPにアクセス可能な全ての道は封鎖してください。侵入者には記憶処理を用いたのち、カバーストーリーを付与してください。SCP-1132-JPには専用の研究所を設けることで拠点としてください。

説明: SCP-1132-JPは██県山間部に存在する、19██年に放棄された旧████トンネルです。限定的な条件下で侵入可能な異次元ポータルとして機能します。

非活性化時のSCP-1132-JPは異次元ポータルとして機能しません。SCP-1132-JPは毎年不規則な日に活性化し、本来のトンネルとしての通行が不可能になります。この時外部からは、SCP-1132-JPの内部は完全な暗闇のように観察されます。これはどのような観測機器を用いても同様です。活性化時のSCP-1132-JPはポータルとしての機能を持っていますが、後述するSCP-1132-JP-Aに乗車することでのみ侵入でき、それ以外の方法での侵入は元の場所に戻ってくるという結果をもたらします。

その活性化した当日の朝8:00時に██市営バスで20██年から使用されていたものと同型のバスが出現します(このバスをSCP-1132-JP-Aと表記)。SCP-1132-JP-Aの方向幕には「霜月学園行き」と表記がなされていますが、この周辺にそれに類する地名は存在しません。SCP-1132-JP-AはSCP-1132-JPを通過して不明な空間を移動します。詳しくは補遺1の探査記録を参照してください。

補遺1: SCP-1132-JPは定期的に行われている異常調査で発見されました。██市の「ウラガワの町」に関する噂があり、その調査の結果発見された場所です。かつて使用されていた道路があるものの、SCP-1132-JPは近隣の村落から離れた場所に位置しているため、被害はこれまでに数件しか確認されていません。以下に示すのはSCP-1132-JPに侵入した人物が残した代表的な記録の1つです。

探査者: D-1596

監督者: 古賀博士

付記: D-1596は標準的なハンディカメラを用いて記録していたが、この記録の後半からはD-1596の体に取り付けられたピンマイクの音声記録のみになっていることに注意。


<記録開始>

[D-1596がSCP-1132-JP-Aに乗る。あたりを見回して他の乗客がいないことを確認すると進行方向から見て右側の前から2番目の席に座る。]

D-1596: これでいいのか?博士。

古賀博士: ええ、問題ありません。映像記録は残っていますが目に映るものなどを報告していただけませんか?

D-1596: いや、普通にバスの中だよ。他に客はいないみたいだけど。

古賀博士: そうですか。何か不審なことがあったら報告してください。

D-1596: [沈黙]なあ博士。俺、本当に帰れるんだろうな。

古賀博士: 私語は慎んでください。D-1596。

運転手: 出発進行。

D-1596: お、動き出したぜ。暗闇に突っ込んでく。でも中からだと外から見たみたいに暗くない。

[D-1596はライトで外を照らしながら外にカメラを向ける。標準的なトンネルの風景がある。]

D-1596: トンネルを出たみたいだ。普通によくある街の風景じゃないのか?

[山がちな斜面に広葉樹林で構成された森林が広がっている。民家のようなものが散在して見受けられる。]

運転手: 次は花伊。花伊。花伊薬局でお降りの方は次です。

[乗客が複数人入ってくる。そのうちの1人であるスーツ服を着た若い男性人物は、他に空いている席があるのにも関わらずD-1596の隣の席に座ってくる。]

古賀博士: その人物と会話してください。

D-1596: おう。

男性: 隣に座ってもいいかね。名乗るとするならば私は赤石というものだ。失礼だが、その見たことがない服装。まさしく犯罪者然とした容貌。そして手に持っているハンディカメラ。まったくもって奇妙という他ないのだが、君は何しにここへ来たのかね?

D-1596: 俺は、俺よりさらに上の人に命じられてここに来ているんだ。本当はこんなとこ来たくなかった。

男性: なるほど。上の人は何を期待して君を派遣したのかな?

D-1596: 俺にはほとんど伝えられていないんだ。そういうこと知りたいんなら知りたいだけ俺に話すのは無意味だぞ。

男性: そうか。じゃあ少し質問を変えようか。君の目的地はどこかね?

D-1596: 目的地?俺の上の人が満足するまではここにいなきゃならねえ。だから従ってるだけだって言ってるだろ。

男性: ではなぜ君は従っている?正直あなたの上司はあなたを制御できる状態にないと思うのだが?

D-1596: それは…。俺が犯罪をして捕まったからで、こいつらのいうことを聞いたら早めに出してもらえるって契約したんだ。

男性: なるほど。ならその契約は無効だな。なぜなら君は死ぬかもしれない危険な場所に向かわされて契約が不履行になってしまいそうな目に会うかもしれなかったからだ。

D-1596: まあそうかもしれないけど、こんなところから逃げてもどうせ社会には居場所がないし、現実を受け止めてきた頃合いなんだ。惜しくなるようなことを言わないでくれ。

男性: 忘れられて仕舞えばいい。

D-1596: え?

男性: 丁度いいことに君はバスに乗っている。もちろん財団の思惑通り死んでみてもいいが、我々と同じ住民になってここに住めばいいんだ。えっと、このバスは霜月学園行きじゃあないか。丁度いい。ああ、うん。じゃあ私はここで失礼するよ。目的地も定まったようだしね。

運転手: 次は冬木病院前。冬木病院前。地域の総合病院にお越しの方はお降りください。

[D-1596が沈黙していると男性は"冬木病院前"でバスを降りた。]

D-1596: 主がいつでも見ておられる…。

[沈黙]

D-1596: いや、俺は何を言っている。

[D-1596はカメラを外に向けて撮影する。いくつかの高木が道なりに植えられており、その全ての花が満開に咲いている。]

D-1596: やっぱりここはおかしいよ。今は真冬のはずだ。なのに8月ごろのサルスベリが咲いているんだ?それにこのサルスベリ葉がないぞ。桜じゃないんだしそんな筈が…。

[外見上、既知の種のどれとも一致しない鳥のような生物の群れが規則的な形でバスの右上空を飛行している。次第に鳥は先頭の個体に集合しさらに大きな鳥を構成した。]

運転手: 次は甲子。甲子。甲子植物園にはこちらでお降りください。

D-1596: あと2駅か。

[窓から前に顔を向けたD-1596の隣には12才から15才程度の年齢と推測される少年が座っている。少年は花束を持っている。]

D-1596: 急になんだ。びっくりした。お嬢ちゃん、こんな怖いお兄さんのとなりに座るもんじゃないよ。

少年: お嬢ちゃんじゃないよ。僕は男なんだ。それに全然怖くないよ。とっても可愛いもん。

D-1596: いや、そんな筈がない。

少年: 僕はお姉さんは目的地がまだわからないようだから座っているんだよ。お姉さんの目的地は霜月学園だよ。自分の行く道くらい覚えておかないといけないよ。でも、このバスの終点まで乗ってればいいから大丈夫だね。

D-1596: ありがとう。俺、まだ行き先についてわかってなかった。

少年: 違うよ?まだわかっていないみたいだね?

D-1596: 何をわかってないんだ?

少年: 一度は気づいたと思うんだけどね。とりあえず花束のことについて紹介しようか?花束に向かうようなものだから。お姉さんはつまり花束の一員になるってことなんだね?

D-1596: 頼むから俺にもわかる言葉で話してくれ。さっきから身の上話させられたりしてなんだかイライラしてきてるんだ。あんなことを口走ってしまった。何も自己紹介する必要ないのによ。

少年: そうなんだ。お姉さんはそんな罪と過去を抱えているんだね。あまりにも衝撃的なので目が覚めてしまったよ。でもどうでもいいことだ。それよりいつまでも"お姉さん"では不便だね。名前をつけてあげようか。何がいいかな?花の名前にしよう。花束の一員だから。花の名前でそれでいて主張しすぎないやつがいい。薔薇とかだと豪華すぎるし百合とかだとあからさますぎるもんね。

少年: ちなみにこの花束はバラとかの他にもトルコキキョウやマム1、アルストロメリアとデルフィニウム…。統一性がない気もするけどこんな感じだよ?

D-1596: 俺の名前は██████・██なんだ。

少年: ██?そうかじゃあその名前を少し残してあげよう。遠回りすぎるくらいがちょうどいい。考えてやっとわかるくらいが…。

[この時からハンディカメラの映像が途切れる。以降は音声のみの記録となっている。]

老婆: 私は青河というものだけど。ついその姿が懐かしくてここに座ってしまったわ。それは霜月学園の制服ね。私も昔は霜月学園の生徒だったの。

D-1596: ええ、はい。そうなんですか?

老婆: そうよ。霜月学園は創立100年にもなる由緒正しい学園よ。私はその63期生。

D-1596: あっ、いや俺は…いや、私は。あれ。私は…俺は、罪を償わなければいけなくて、だから財団で命がけの実験を繰り返していて。ジョンではなく、お母さんが、私のことを…褒めて。

老婆: それであなたが100期生になるわけれども…あなたは霜月生といった雰囲気ではないわね。

D-1596: そうですか。私は鈍臭いのが悩みで、霜月に来たからってなんとかなる訳じゃないけど、もっと違う環境で変わりたいなと思って。

老婆: [笑い]それでいいのよ。そうだこれをもって行きなさい。

D-1596: とてもいい香りがします。本当にもらっていいんですか?

老婆: ちょっと鈍臭いあなたにね。

[ここから6分ほど音声記録にも途切れがある。記録が復帰すると老婆とは異なった若い女性の声がする。]

女性: あなたのような人を待っていました。私たちは皆あなたのことを歓迎しています。それでは中に案内しますね。寮では相部屋となりますがルームメイトは今授業でいませんので後で対面してください。

<記録終了>

D-1596は帰還が不可能だと判断されました。これ以降の音声記録も残っておらず詳細は不明です。記録中で示唆された"霜月学園"に関する調査は進行中です。

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