
活性化状態にあるSCP-1140-JP
アイテム番号: SCP-1140-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: 現在SCP-1140-JPへ通じる山道の出入り口はすべて封鎖され、監視カメラによる監視を行います。民間人の立ち入りを防ぐ為、カバーストーリー「落石事故/熊出没」の流布を実施してください。併設されたサイト-81██に担当職員4名を常駐させ、SCP-1140-JP周辺および山道出入り口に設置した監視カメラ映像の確認を徹底してください。万が一敷地内への侵入を発見した場合は速やかに保護し、クラスB記憶処理を施してください。
説明: SCP-1140-JPは北海道勇払郡██村の山林に存在する高さ11m、樹齢およそ300年のヤマグワ(Morus bombycis Koidz)です。枝の先端付近に赤い糸が複数蝶々結びにされており、非活性時は枯木の状態ですが、後述する発生トリガーによって活性状態に入ると数十秒で青木に変化し、赤黒く熟した果実(以降SCP-1140-JP-1と表記)が無数に出現することが確認されています。
SCP-1140-JPは以前より、現地住民からアイヌ民族の伝承"トゥレㇷ゚ニの悲話"がまつわる大樹として広く知られていましたが、現在は高齢化により伝承を知る住民は数名程度を残すのみとなっています。
トゥレㇷ゚ニの悲話
昔々、█████山を挟んだ北と南に、互いに猟場争いをしていたアイヌの集落がありました。
北の酋長には美しい娘が、南には勇敢な青年がおりました。
やがて2人は互いに惹かれあい、決して結ばれることのない、許されない恋をしたのです。
周りの目を盗んでは山奥のトゥレㇷ゚ニ1の下で幾度となく逢瀬を交わし、ささやかな幸せを過ごしていました。
けれども幸せな時間は長くは続かず、遂に村人に見つかってしまうのでした。
怒った北の酋長は明くる日、トゥレㇷ゚ニの下で娘を待っていた青年に毒矢を放ったのです。
矢じりの毒はじわじわと青年の身体を蝕み、青年は苦しみの中息を引き取りました。
その事を知らない娘は早く青年に会いたいと胸を踊らせながらやってきますが、娘を待っていたのは、既に冷たくなった青年の亡骸でした。
娘は泣き崩れ、青年の亡骸を抱き締めました。
すると、青年の懐から何かがことりと滑り落ちます。
娘が震える手で拾い上げてみると、見事に美しい彫刻が施されたメノコマキリ2でした。
それは青年が手渡すことの出来なかった、愛する娘の為に拵えた贈り物だったのです。
嘆き悲しんだ娘は、そのメノコマキリを使って自らの命を絶ちました。
決して結ばれることのなかった2人は、こうして共にトゥレㇷ゚ニの下で静かに眠りについたのです。
SCP-1140-JPは後述する"縁結びのおまじない"と呼ばれる一連のプロセスを実行することで前述の特異な性質が現れ、SCP-1140-JP-1を出現させます。これによりSCP-1140-JP-1を摂取した人物は72時間以内に心中、または無理心中を強制的に引き起こします。死因は様々ですが、どの遺体も互いの小指に赤い糸が巻き付いた状態であることが共通して確認されています。用いられた赤い糸はすべてSCP-1140-JPに結びつけられたものと一致しており、これらは遺体の損傷具合に関わらず、すべてのケースにおいて確認されている事項です。
縁結びのおまじない
- 1.恋愛関係にあるパートナーを強く想像する。
- 2.手を合わせ、次の文言を唱える。"ちぎりたき 愛の実紅し 神のみぞ 知ろしめしたる 比翼の証し"
- 3.赤い糸を用い、枝に蝶々結びをする。
- 4.出現したSCP-1140-JP-1を1つ取り、互いに半分ずつ摂取する。 (対象がその場に居ない場合、SCP-1140-JP-1を持ち帰った後に摂取させる。)
また、すべての被害者は不倫関係にある、ジェンダー問題を抱えているなど何らかの理由で崩壊の危機にあったことが確認されており、この点からSCP-1140-JPは被害者の恋愛成就の願いを利用し不安感を増長させ、行為に至らしめていると推測されています。(SCP-1140-JP曝露者へのインタビュー記録参照)
Enter
補遺1: SCP-1140-JPは、201█年██月から日本各地で通常では考えられない頻度で断続的に発生していた心中事件、無理心中事件の不可解な共通点からアノマリーが関わるものと推測され、警察機関内部の財団エージェントへ対応を委任。捜査の末、収容に至りました。
補遺2: SCP-1140-JPの根元から2体の白骨化した遺体と日記が発見されました。遺体は20代後半の男性及び、10代後半の女性とみられており、他の連続無理心中事件と同様の共通点が確認されています。検死の結果、10年前に失踪した琴宮 眞人(北海道千歳市 当時26歳)、琴宮 朱莉(同 当時20歳)とされ、インタビュー時に長都氏が述べていた人物であると判明しました。また、発見された日記の著者は、後述する内容から現在も行方不明となっている次女・莉緒(同 失踪当時14歳)であると推測されています。(以下日記より一部抜粋)
200█/██/██
今日、パパとママにお別れをした。
みんな私のこと可哀想だっていうけど、なんでだろう?
パパは本当に優しい人。あんなに酷いことをした馬鹿なママなのに、一緒に連れていってあげちゃうなんて!
誰かを愛するって、永遠の愛を誓うってこういうことなんだ。
ならはやくみんなに教えてあげなくっちゃ!
私は、悩める人達を助ける存在なんだから。
200█/10/20
ちぎりたき 愛の実紅し 神のみぞ 知ろしめしたる 比翼の証し
良かった!これでふたりはずーっとずっと、永遠に一緒。
お兄ちゃん、あんなに泣き叫んじゃうなんてよっぽど嬉しかったのね。
やっぱりこの木を縁結びの御神木に選んでよかった。だって伝承も花言葉も、とっても素敵なんだもの!
これからたくさんの人達を助けてあげなくっちゃ。
ここは、私のはじまりの場所。
だから今までの私の証と、大好きなふたりの欠片を残していこう。
まるで本で読んだタイムカプセルみたい、わくわくするわ!
上記内容から"白い少女"が琴宮 莉緒本人であると断定し、PoI-1140-JPに指定されました。現在の所在や動向、人間の夢に干渉する方法は依然として判明には至っていない為、PoI-1140-JPに対する継続的な調査が行われます。