アイテム番号: SCP-1143-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-1143-JPに侵入可能なポータルの周辺を封鎖し、一般人の侵入を不可能なものとしてください。
説明: SCP-1143-JPは異常な次元に存在する森です。面積は後述するSCP-1143-JP-1を中心にして約半径3km程であり、それより外側に移動することは不可視の壁によりできません。SCP-1143-JPは██県██市の████のポータルからのみアクセス可能です。単純な次元相互連続が発生しており、2つの次元は完全に同一であるか融合しています。SCP-1143-JP内の風景は████のものとおおよそ似ています。植生も████と極めて似ていますが、一般的な森林と比べて昆虫や一部の動物が少ないなどの点もあります。
SCP-1143-JPはSCP-1143-JP-1に指定される洋館を中心として成り立っています。SCP-1143-JP-1は二階建てのレンガ式の西洋建築です。SCP-1143-JP-1には6名の女性人型実体が暮らしており、SCP-1143-JP-Aに指定されています。SCP-1143-JP-Aは普段白と黒を基調としたいわゆるエプロンドレスを着用しており、SCP-1143-JP-1の管理・維持や「ご主人様」の世話を仕事としていると述べています。SCP-1143-JP-Aは外見的におよそ15歳から20歳ほどまでですが、収容から10年経ち一切の変化を見せていない他、自分が100年ほど前から生きているなどと主張します。全てのSCP-1143-JP-Aは盲目で完全に視覚がありません。これらは後天的に発生した外傷から引き起こされた障害であると考えられています。
SCP-1143-JP-Aが主張する「ご主人様」はこれまで物理的/霊子学的に存在が確認されていません。SCP-1143-JP-Aによれば「ご主人様」はSCP-1143-JP-1の2階中央部の部屋に存在しているとされていますが、その部屋にかけられた財団のあらゆる観測機器(サーモニターカメラ、ヤマモト霊視機器、カント計測器)は人の存在を計測していません。また、特筆すべき事項として「ご主人様」が居住するとされている室内を肉眼、あるいは遠隔のカメラで確認することはSCP-1143-JP-Aから強く禁止されています。
SCP-1143-JPは████での男児の行方不明事件により発見されました。████周辺の調査を行なった警察は近辺に不審な次元ポータルを発見し、財団に通報されることとなりました。男児はいなくなってから6時間後、SCP-1143-JPのある森林にて発見されました。男児は「お姉さんに送り届けてもらった」と述べており、異常な性質を示さなかったため、記憶処理の上で解放されました。
補遺1: SCP-1143-JPの調査の手法の1つとしてSCP-1143-JP-Aへのインタビューが行われました。インタビューでは、「ご主人様」がかつてSCP-1143-JPに存在していたことやSCP-1143-JP-Aらがどのような経緯で失明したのかについてが判明しました。全ての記録はアーカイブされています。以下は特筆すべきものの抜粋です。
記録1143-JP.1
対象: SCP-1143-JP-A-2
インタビュアー: エージェント弓削
[記録開始]
インタビュアー: それではインタビューを始めさせていただきます。弓削と申しますよろしくお願いします。
SCP-1143-JP-A-2: どうもご丁寧にありがとうございます。私はお屋敷の副メイド長のレシというものです。よろしくお願いします。お茶でも入れましょうか?
インタビュアー: いや、結構です。
SCP-1143-JP-A-2: いやいや、久しぶりのお客様ですから。私どもの満足としていれさせてください。インタビューをお止めにならないよう他のものにいれさせるので。[ベルを鳴らす]
インタビュアー: それでは質問を始めますね。あなたはどのような仕事をなされているのですか?
SCP-1143-JP-A-2: 私たちの主な業務は屋敷の維持や管理、そしてご主人様のご食事を用意することです。
インタビュアー: 屋敷には総勢何名のメイドがいるのでしょうか。
SCP-1143-JP-A-2: お掃除が2名、料理番が2名、そして私とメイド長の合計6名です。1番新しいのは今掃除をしているといったフマです。とっても元気な子です。手に余る感じではありますが、久しぶりの後輩でしたか私も嬉しいのかもですね。
インタビュアー: すいませんが全員の名前を挙げてもらえますか?
SCP-1143-JP-A-2: いいですよ。セサ、レシ、メキ、チフ、ノメ、フマ。これで全員です。
インタビュアー: 食糧はどこから用意していますか?見たところこの屋敷の裏にある畑が全て賄えているようには思えないのですが。
SCP-1143-JP-A-2: 月に一度、ここから遠く離れた町から懇意の商人が来ることになっています。
インタビュアー: あなたたちはいつからここに住んでいるのですか?
SCP-1143-JP-A-2: 私たちの主人…マクアドル氏が家を継いだのは西暦1910年ごろのことです。元々マクアドル家は大したことのない下級貴族でしたが、薬の事業が実を結び1代で財をなされました。屋敷で1番の古株のメイド長がこの時に雇われています。財を成すのに一番活躍したのが今の主人です。
インタビュアー: あなた方は雇われの身なのですね。
SCP-1143-JP-A-2: かつてはそうでしたが、今はそのようなわけでは…ありません。
インタビュアー: なるほど。ご主人に会わせていただくことはできませんか?
SCP-1143-JP-A-2: いくら客人のお願いでもそれはできません。ご主人様は昔、究極の薬を研究するとおっしゃられてから部屋の中から出てくることはありませんもの。
インタビュアー: あなた方は何故目が見えなくなってしまったのでしょうか?
SCP-1143-JP-A-2: ご主人様が薬の研究をするとおっしゃった時、薬のレシピが万一に見えてしまっては大変だから目を潰す、という話になったのです。いやはや物騒かもしれませんが、あの時の私たちはそのような判断を致したのです。
インタビュアー: それは主人の命令によってですか?
SCP-1143-JP-A-2: ご主人様がそのようなことを言われるわけがありません。私たちの判断です。私たちは少なくとも朝と夜、ご主人様の部屋に食事を運びに行くのです。今はすっかり食べなくなってしまいましたが、その時に薬の秘伝を見てはいけないと思い…。それを提案したのは私です。皆も納得しました。
インタビュアー: わかりました。そろそろインタビューを終わらせることにします。ありがとうございました。
SCP-1143-JP-A-2: いえいえ。
[記録終了]
記録1143-JP.2
対象: SCP-1143-JP-A-3
インタビュアー: エージェント弓削
[記録開始]
インタビュアー: この屋敷のご主人について伺いたいと思うのですがよろしいでしょうか?
SCP-1143-JP-A-3: いいよ。でも、俺はこの屋敷でも新参だから副メイド長とかに聞いた方がいいと思うぞ。
インタビュアー: 先程は副メイド長に話を聞いていたのですが、あれから口をつぐんでしまいまして。
SCP-1143-JP-A-3: 副メイド長、ああ見えて繊細だから意地悪しないでくれ。
インタビュアー: あなたは他の方と少し口調が違いますね。
SCP-1143-JP-A-3: 私は田舎の出でね。敬語で話してほしい?
インタビュアー: いえ、構いません。それではまず簡単な質問から。あなたのお仕事と名前を教えてください。
SCP-1143-JP-A-3: 私はメキ。屋敷の掃除を任されている。屋敷は広いから正直いって全然人は足りていない。あと畑仕事かなあ。
インタビュアー: それではご主人について話を移させてもらいます。ご主人が「薬の研究」に没頭するようになったのはいつくらいからですか?
SCP-1143-JP-A-3: ちょうど私がここに来た時かと思う。前の主人って奴を見たことがないんだけど。今と違って前の主人は、商売人なのに正直者、お客様のことを1番に考える、って感じで有名な人だったんだ。そして流行病の薬で儲けたのも良かったんだけど、肝心なことを失敗したんだよな。
インタビュアー: なんですか?
SCP-1143-JP-A-3: ご主人の妻、奥さんが救えなかったんだよ。そもそも流行病の薬を遠くから買ってきたのは奥さんのためだった。もちろん皆のことも考えていただろうけれど、それは絶対に二の次だったと思うよ。
インタビュアー: そこから部屋に閉じこもり「究極の薬」を研究するようになったと。
SCP-1143-JP-A-3: そう。それ以来ご主人の部屋に入れるのはメイド長のセサって奴だけなんだ。噂じゃ「死者を蘇らせる薬」なんてものを作ってるとか何とか言われてるようだ。薬の材料は裏の畑で育ててるんだ。ほら、さっき俺が管理してるって言った。
[SCP-1143-JP-A-3は手持ちの巾着袋からオレガノ(学名:Origanum vulgare)やマンドレイク(学名:Mandragora officinarum)などを出す]
SCP-1143-JP-A-3: そこで色んな薬草育ててるけど、正直これが死者を蘇らせるなんて信じられないと思っている。ハーブはお茶にできるし、マンドラコラは食べちゃいけないけど。他は普通に美味いもんなのにな。
インタビュアー: なるほど。
SCP-1143-JP-A-3: これは俺の想像だけどさ。ご主人は単に「見られたくない病」なんじゃないかな。あの時、副メイド長が真剣に「目を潰しましょう」なんていうから驚いたけど、あれは単純にご主人が見られたくないと思ったからなんだよ。
インタビュアー: そうですか。ご主人と会うことはできませんか?
SCP-1143-JP-A-3: あれれ、話聞いてなかったのか?ご主人は「見られたくない病」なんだぜ?会ってどうするんだ?
インタビュアー: 薬の話をしたいですし、是非。
SCP-1143-JP-A-3: 薬の話なら私がしてやるからさ。でも、ご主人は俺たちにも顔を見せないんだ。それはダメな話だ。
インタビュアー: どうしてもダメでしょうか。
SCP-1143-JP-A-3: もう。しつこいな。
[記録終了]
記録1143-JP.3
対象: SCP-1143-JP-A-1
インタビュアー: エージェント弓削
[記録開始]
インタビュアー: 少々質問をしてもいいでしょうか?
SCP-1143-JP-A-1: 屋敷を嗅ぎ回っているという不調法ものはあなたですか。
インタビュアー: 大した質問ではありません。ご主人についてです。
SCP-1143-JP-A-1: 断っても引かなさそうね。答えてあげるから答えたら出て行ってくださいね。
インタビュアー: ご主人はいつから「薬の研究」をするようになりましたか?
SCP-1143-JP-A-1: 50年くらい前。
インタビュアー: その時からあなた方は目を潰しましたね?
SCP-1143-JP-A-1: そうよ。ご主人の薬のレシピが私たちに見られてはいけないわ。
インタビュアー: そういえばあなたは、屋敷で唯一ご主人の部屋に入れるんですよね。
SCP-1143-JP-A-1: そう。朝と夜。お食事を運ぶために。最近はあまりお食べにならないのですが。
インタビュアー: どのくらいご主人が食べられたか確認はしましたか?
SCP-1143-JP-A-1: 重さで少しわかるわ。本当に最近は食べられてないの。
インタビュアー: そうですか。
SCP-1143-JP-A-1: もういいわね。
[記録終了]
補遺2: 以下に示すのはSCP-1143-JPの成立過程について明らかにする目的で行われた調査の記録です。SCP-1143-JP-1のある一室には大量の手紙が保存されており、マクアドル氏の友人と見られるクロック氏から来た手紙が保管されていました。
1911/8/6
敬愛なる私の友人へ
君と私が初めて会ってから何年経っただろうか?君が今のように引きこもってから、私は退屈している。あの日々は楽しかった!ジャングルの奥地で巨大な爬虫類を観察したり、村の土地病を治療したり、ここに書ききれないほどだ。かつてのパイプドリームをパイプを吹かしながら語っている。あの時は金を何よりも求めてて私たちは実用的な仲間だった。しかし贅沢な暮らしを手に入れると途端にあの日が恋しくなる。もう一度冒険とは言わないが、その君の学識をもう一度披露してくれないか?君の好きなワインが入った。明倫の奴も開けようと言っている。昔の仲間を集めよう。
1912/6/19
薬の研究は進んでいるだろうか。昔から君は1つのことにのめり込むとそれ以外考えられないタチだった。覚えているか?アフリカ遠征の時もどんな時も、そんな君の集中力があるが他者への配慮に欠ける君をフォローしていたのが私だと言うのを。多分、今は女に執着しているだけなんだろうな。それがいい。君がそれでいいのなら。ただ、その薬が出来たら私の会社で売ることを約束させてくれ。
1912/9/26
今日は残念な知らせがある。エッジワース博士が死去された。あの偏屈で横暴で我儘な人間が死んだ。私たちの旅を主に金銭面や知識面から助けてくれた彼だ。つい先日、家の近くの通りにあるコーヒーサロンで偶然会ったばかりなだけにかなりショックだった。一線を離れてから人が死ぬのを忘れていた。一番信用に足る医者によれば死因は"タバコの吸いすぎ"であるらしい。あの人らしい死に方ではあった。不健康の極みで有名だったからな。それでも"死なない"が博士の強みでもあったが、それでも死んだ。
1913/12/24
クリスマスに息子が帰ってきて結婚をすることを伝えた。"何よりも冒険をした人物が英雄で、君の妻は英雄を求めていた。"息子は冒険をしたわけではないらしい。息子は精神科医で、毎日イカれてしまった患者に薬を投与しながら小説を書いていた。パンチマガジンに"遠い田舎の伯爵家に誘われた小説家が事件に遭遇する"あくまでこれは単なる想像に過ぎないといいながら、君の家をモデルにして書いた小説を投稿した。まあつまり、文章の中で冒険をしたわけか。それなら俺たちの動機とも案外関係のないことではないかもしれんぞ。
1914/8/19
君の心はどこへ行ったのか?かつては体にあった。脳みそに、あるいはハートに。今はここではないどこかにあるかのようだ。天国か、地獄か。理想郷か?伝説の地か?私はそこには行けないだろう。君が戻ってくるしかないのだ。これを持って君へ送る手紙を最後とする。もし返事をくれるなら新しい住所に送ってくれ、もうロンドンにはいないだろうから。
補遺3: SCP-1143-JPの境界線が厳密にどこまでなのかを確認する調査において、SCP-1143-JPの南東部に存在する池(SCP-1143-JP-Aからは"ヘビの住処"と呼ばれた)場所の付近で墓石と見られる物体を確認しました。名前と墓碑銘の部分が著しく破損しており、これらが元々何を示していたのかは不明でした。破損を除去した上で推測で埋め合わせられる部分を挿入した墓碑銘は以下に再現されました。
彼はしっかりとした商人だった
代金を取るべき時に取り
使うときに使った
これは主の良き友人
記録1143-JP.4
対象: SCP-1143-JP-A-2
インタビュアー: エージェント弓削
[記録開始]
インタビュアー: 我々がこの森を調査している間にこのような墓が見たかったのですが。少々お聞きしてもいいですか?
SCP-1143-JP-A-2: はい…。いいですよ。何かお聞きしたいことが?
インタビュアー: 誰の墓か、ということがわからなくてですね。あなた方の中に死んでしまったメイドがいるのかと思いまして。現在6名でしたっけ?
SCP-1143-JP-A-2: はい。一度も減らずに100年も続けられませんからね。多分それはメゾのでしょうか?池のある方に墓があったのですか?そちらはヘビの住処ですから行ってはいけませんよ。死に至る可能性があります。
インタビュアー: その…メゾさんについてお聞きしてもいいですか?
SCP-1143-JP-A-2: ええっと、それは…。計算が早い子でした。あと[沈黙]
インタビュアー: 今までメイドは減ったり増えたりしてきたということでしょうか?メゾさん以外に亡くなられたメイドはいない?
SCP-1143-JP-A-2: はい。メゾは大分特殊で、多分事故でいなくなったと思います。
インタビュアー: メゾさんは何の仕事をなされていたのですか?
SCP-1143-JP-A-2: 主に屋敷の掃除をしていたと思います。
インタビュアー: メゾさんはいつから雇われていたのですか?
SCP-1143-JP-A-2: すいません。忘れました。
補遺4: 2019/8/19、エージェント弓削の行った3度目の調査の時、SCP-1143-JP-1の地下にあるワインセラーで叫び声が聞かれました。SCP-1143-JP-A-3が確認すると、ワインセラーの床に倒れているSCP-1143-JP-A-2が発見されました。SCP-1143-JP-A-2は後頭部を鈍器のようなもので強く叩かれた形跡があり、完全に気を失っていました。
SCP-1143-JP-A-1(セサ) |
犯行当時、東棟2階の最奥の部屋にいた。掃除をしていたと証言。アリバイの証明者は掃除に同行していたSCP-1143-JP-A-4。 |
SCP-1143-JP-A-2(レシ) |
被害者。エージェント弓削に振る舞うワインを選びにきたと思われる。午後2:30頃に襲われた。 |
SCP-1143-JP-A-3(メキ) |
屋敷の裏にある畑で仕事をしていた。SCP-1143-JP-A-6が互いにアリバイを証明。 |
SCP-1143-JP-A-4(チフ) |
SCP-1443-JP-A-1と共に掃除をしていた。 |
SCP-1143-JP-A-5(ノメ) |
単独で厨房の皿洗いをしていた。アリバイを証明するものはいない。 |
SCP-1143-JP-A-6(フマ) |
トイレに行くために、畑仕事をしている2人の中で唯一離れた時間があった。犯行時刻とも重なる。 しかしながらトイレとワインセラーの距離は大きく離れている。 |
エージェント弓削 |
1階広間の長机に着席していたと証言。犯行場所からもっとも近くにいた。アリバイを証明するものもいないが、音声記録用の装置は常時財団のチームに接続されていた。不審な音声は今のところない。 |
これから順番に各人の犯罪可能性について推察していきたいと思います。まず、SCP-1143-JP-A-1、メイド長ですが彼女は難しい立場にいます。アリバイを証明するもの同士で一緒にいたが、必ずしも常に観察されていたわけではないからです。だから例えば、一瞬目を話した隙にロープか何かで窓から降りて殺害現場に出向き、ワインの瓶で副メイド長を殺す、といったことも可能です。でも、長くても目が離れていたのは5分程度とSCP-1143-JP-A-4は述べていますし、さすがに5分で殺して垂直移動というのは難しいかもしれません。同じ理由でSCP-1143-JP-A-4も犯罪は不可能です。
続いてはSCP-1143-JP-A-3、メキです。彼女は屋敷の正面入口から反対側にある畑で仕事をしていました。トイレで離れていた時間もありますが、それはとても短く畑とワインセラーも離れているため犯行はとても難しいでしょう。
続いてはSCP-1143-JP-A-5、ノメです。彼女のいた厨房から犯行現場へ赴こうとするなら、一回私がいた大広間の目の前を通らなければいけません。私の目の前を通ったのは第一発言者以外いませんのでこれも、犯人かどうかは疑わしいということになります。最後に私ですが、私は記録用にいつでも録音の装置をつけたままにしていますので、被害者を瓶で叩くようなことができないと証明できるでしょう。
SCP-1143-JP-A-2は外傷から明らかに死亡したと認められ、SCP-1143-JPの北東部に埋葬されました。SCP-1143-JP-A-4の手により、以下のような碑銘文が彫られました。
彼女は嘘を抱えて死んだ
1つは保身のために
1つは主人のために
これは主の良き下僕
エージェント弓削が1日の任務を終え、SCP-1143-JPと通常空間のアクセスポイントにたどり着いた時、異常次元の移動が完全に不可能となっていました。サイト本部とエージェント弓削は互いに連絡を取り合っていましたが、その理由がわかるまでエージェント弓削はSCP-1143-JPに滞在することを強いられました。
エージェント弓削はSCP-1143-JP-Aに滞在しました。内部において夜が明けるとSCP-1143-JP-A-3の死体が発見されました。SCP-1143-JP-A-3の死体は腹部を杖のようなものが貫通していました。SCP-1143-JP-A-3は埋葬され、以下のような碑銘文が彫られました。
彼女は1番人の心を知る人
人より働き者で
忠節に優れた
これは主の良き友人
さらにその日のうちに連続して死体が発見されました。SCP-1143-JP-A-4、SCP-1143-JP-A-5の死体が浴室の水に沈められた状態で発見されました。詳しい当時の状況はわかっていません。SCP-1143-JP-A-4のために彫られた碑銘文です。
主人のために掃除する
唯一優しくした彼に
はみ出していた彼女が
これは主の良き手足
SCP-1143-JP-A-5のために彫られた碑銘文です。
彼女は1度も怯まなかった
強き姿勢を持ち
何も疑問にすら思わず
これは主の良き仲間
SCP-1143-JP-A-1の死体は自室のベッドの上で寝転んだ状態で発見されました。これも胸に杖のようなものが刺さっており、出血により死亡したと考えられます。これに対して、SCP-1143-JP-A-6は碑銘文を彫りました。
何年もの間主人の無言に耐えられず
ついには自身を疑った
盲目的とは考えていない
これは主の良き愛人
最後にエージェント弓削は、自室で自殺したと考えられるSCP-1143-JP-A-6の首吊り死体を発見しました。エージェント弓削は独断で埋葬し、以下の碑銘文を彫りました。
最後に死んだ者は誰に弔われるか
それなら私が部外者でも
最後に思おうその姿
これは主の良き
この一連の出来事の後、SCP-1143-JPと通常空間の行き来が可能になったことが通知されました。エージェント弓削は無事に帰還しましたが、最後の碑銘文については何も話しませんでした。一連の殺人について、エージェント弓削が行った可能性は否定されています。しかし、これが何かの異常現象であるのか、SCP-1143-JP-A同士で殺し合ったのかは不明です。