SCP-1148-JP
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SCP-1148-JP

アイテム番号: SCP-1148-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-1148-JPの出現が確認された場合、オブジェクトを内包する周囲海域の半径3kmを一時的イエローゾーンに設定し、財団関係者を除いた一切の進入を禁止してください。

SCP-1148-JP-1は自己収容的状態にあると判断されているため、特別な対処は実施されません。

説明: SCP-1148-JPは財団の保有するSCPS1「バーニッシュ」に類似した連絡船です。連絡船の製造図面は財団の製造部門によってのみ保管が実施され、漏洩の記録は存在していません。しかしながら外部デザインのみならず、主原料であるベリリウム銅を初めとした原材料、また、その配合割合も完全に一致しています。そのため、船舶そのものの起源に関しては不明となっています。

当オブジェクトは凡そインド洋から大西洋に向かう形で出現します。ただし、通常の天候内でSCP-1148-JPが出現した事例は現在までに存在せず、海霧の発生、著しい雨と雷を伴う悪天候が観測された場合のみ、オブジェクトの活性化が記録されています。それらの悪天候の継続に伴い、SCP-1148-JPは運航を続行し、平均1~2時間の滞在の後に一種の転移現象と推測される消失が確認されます。上記の法則に伴い、出現直後の観測、並びに消失後の追跡は困難です。

SCP-1148-JPは出現後、約14ノット2の速度で運行します。内部調査において、当オブジェクトの動力部にはSCPS「バーニッシュ」と比較して、旧式のディーゼル☓2サイクルエンジンが装備されている事が確認されています。このエンジンは1952年に建造されたユナイテッド・ステーツ号に搭載されていたものと同一のデザインでありながら、表面上に"Department of Abnormalities"という金属による文字装飾が施されています。結果として外部と内部に用いられている技術経歴の差に関わらず、オブジェクトが無人での運航を可能にしている事実が明らかになりました。

当オブジェクトの内部にはSCP-1148-JP-1とナンバリングされた、タイプ4NクラスC霊的実体3が複数体4、不規則に徘徊しています。それらは固定的な形体を取ることはなく、常に不定形です。また、SCP-1148-JP-1はそれぞれが異なる音声を不明な器官から発し続けています。それらの殆どは基底現実5に存在する物品にて説明が可能ですが、例外的に起源不明の音声を発するSCP-1148-JP-1の存在も確認されています。これらの異常性から、当オブジェクトの内部はSCP-1148-JP-1の観測数に比例して、65~180dBの喧騒状態が観測されます。

また、SCP-1148-JP-1は外部進出を実施した場合、気体濃度の上昇に伴い、形体の拡散を伴う形で消失します。そのため、当実体はSCP-1148-JPの甲板部等での存在が不可能であり、常に内部においてのみ観測されています。

発見経歴: SCP-1148-JPは2008年、海中サイト-2098の着工のため、現場に赴いた建設部門"フラグナル・コートニー"派遣員によって初期観測がなされました。当時、コートニー派遣員はSCP-1148-JPを非異常性であると認識していたため、その時点での報告は実施されませんでした。しかし、その2年後、SCPS「バーニッシュ」の図面をコートニー派遣員が認知し、SCPSの出動記録に関する問い合わせが実施されたことにより存在が露呈しました。以下はコートニー派遣員による、当時の状況に関する書き起こしです。

[前略]

幽霊船、みたいな感じはしなかった。そもそも財団保有の、製造部門が打ち立てたSCPSなんだから、アタシはその船に見覚えがあるべきだったんだけれども、ただ、パッと見てそれが財団の船だとは思えなかった。変な感じだ。でもそれは異常性云々ではなくて。

財団の船が14ノットで運行するなんてこと、考えてみれば殆どないから、それが原因かも。大体が緊急出動だったり、海洋オブジェクトの管理にかかるために、思いっきりトばして走ってるから、巡視船も確かにあるけど、そんな遅い速度で走ってることは滅多になくて……そう、ええと。静かだった?

霧で色んな方向からの音が聞こえにくくなってたっていうのもあるけど、あの船は凄く静かに動いてるような印象を受けた。でもそれが薄気味悪いっていう事じゃなくて、風情がある、って言いかえるべきかな。とにかく、あまり悪い印象は受けなかったよ。

何なら乗ってみたいとも思ったね。いつも、アタシ達にとっての船旅は工事の準備だったりで騒がしいからさ。たまにはああいう、隔絶された? その表現がしっくりくるかもしれない。そんな船で、一人で。

[後略]

補遺: 2012年、内部調査に関する情報収集のため、SCP-1148-JPの記録映像の確認をコートニー派遣員に実施した所、記録の閲覧終了後、本人によるインタビューの申し出がありました。以下はその音声記録となります。

音声記録 1148/3030


日付: 2012/11/17

回答者: フラグナル・コートニー派遣員

質問者: ハワード・ミマス研究員


<記録開始>

ハワード: コートニー、どうされましたか。

コートニー: あれは本当に、アタシが見た船と一緒の船?

ハワード: そうだと聞き及んでいます。観測座標はインド洋S21E50.43、貴方が最初にSCP-1148-JPを認識した場所と殆ど一致しています。

コートニー: そう、わかった。アタシが年を取って感性が変化しただけなのかもしれないけれど、どうか聞いて頂戴。

ハワード: 記録を取らせていただきます。

コートニー: 最初に見た時はそう、書き起こしをしたように、あの船は凄く静かだって印象を受けたの。その光景は今でも覚えているし、心に焼き付いている。でも、今回見たあれは、違う。ううん、違くない。それそのものはたぶん変わってない、変わったのはやっぱりアタシの方かもしれない。

ハワード: 具体的にお願いします。

コートニー: 率直に言うけど、凄く、雑多に見えたの。それまで静かに形を保っていた積み木が、一気にバラバラになって、地面に転がって音を立てるような……ごめんなさい。上手く表現できそうにない。

ハワード: それは、実際に音が聞こえた等ではなくて、でしょうか。資料によると、SCP-1148-JPの内部には様々な音声を発生させる霊的実体が徘徊していると聞きます。

コートニー: ううん。というかそれはあなたも分かっているでしょう? 映像から聞こえてきたのは、波と船が水を割いて進む音だけ。でも、それを、当時のアタシでは考えられないほど、それが煩わしく感じたのよ。

ハワード: 煩わしく?

コートニー: これからすごく変な事を言う。聞いて。アタシは製造部門であれから4年間働いて、色んな船を見てきて、それで [30秒間の沈黙。コートニー派遣員は目を左右に動かし、言葉を選んでいるように推測される。] うん。新鮮味が、なくなった? 飽きた、とは違うのよ。現に私はまだ製造部門で働いているし、新しい、常識破りの機材とかにはワクワクする。でも、それをまた2年後に、同じ物を出された時に、またワクワクするかって言えば、たぶんそうじゃない。ああ、これ? みたいな感じで終わってしまう。多分それは、ああえっと、だって、

[コートニー派遣員が20秒間沈黙する。首を下げ、項垂れている。その状態で再び発声を開始する。]

コートニー: アタシ、それに耐えられなくなったのね。

[以降、コートニー派遣員は発言しない。]

<記録終了>


追記: コートニー研究員に記憶処理の後、再びSCP-1148-JPの映像記録を閲覧させると、初期の書き起こしと殆ど同一の感想を抱いたという自己申告が得られました。よって、当オブジェクトそのものに認識災害が存在する可能性は否定されました。

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