アイテム番号: SCP-116-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-116-JPは、不透明の鍵付きプラスチック製書類ファイルに入れた上で特別貴重品保管庫に収容してください。SCP-116-JPに対するいかなる管理もカメラ付きの遠隔操作マニピュレータを使用すべきです。
SCP-116-JPを研究目的で使用する場合、レベル3研究員の承認が必要になります。SCPとの視覚による直接接触はDクラス職員が行わなければなりません。この際SCP-116-JPの損傷を防ぐために強化ガラス製の額にSCP-116-JPを入れ、更にサイズの合う箱に入れておくべきです。
研究員がSCP-116-JPの内容を知る必要がある場合、保存された画像ファイルをレベル2以上の研究員の承認の元閲覧することができます。
説明: SCP-116-JPは、未知の建築物の設計図が書かれた四ツ判大サイズの軍道紙です。SCP-116-JPに描かれた建造物は、実際に建築すると自重で崩壊することがシミュレーションの結果判明しています。記載された情報には、187█年(明治█年)に建造予定の公的機関であるとされているのですがその様な情報は発見されませんでした。また作者名も示しておらず発祥は依然不明のままです。
SCP-116-JPは████/██/██に起こった██県の大学にある建築学科に務める██教授の不審死に絡む事件から発見されました。██教授は自宅の床下収納内で両手の指が欠損した状態で発見され、コンクリート製の床はおそらく素手で無理に穴を掘ろうとしたのか多数の引っかき傷と血痕に覆われていました。司法解剖の結果、死因は餓死とされていましたが当初は殺人事件の可能性も含めて調査されていました。財団の定期的な不審死調査のなかこの事件が注目され、現場検証への介入によりSCP-116-JPを含む多くの遺品が一時回収されました。幸いに██教授は一人暮らしであり、またSCP-116-JPは事件とは無関係と判断されていたため検査もされず、他に被害者はありませんでした。
財団による内部操作により、この事件は「床下収納内で軽度の酸欠に陥った██教授が混乱した結果」のものとされ、いくらかマスメディアにも取り上げられましたが大きな影響もなく事件は今現在話題に上ることはありません。
SCP-116-JPの異常な効果は、SCP-116-JPに描かれた設計図を直接観察することで発動します。SCP-116-JPの影響に晒された被験者は軽いめまいや息切れ、ひどい場合は失神や嘔吐の症状を顕にします。これは一時的に血中の酸素濃度が低下する事の影響であると身体検査の結果分かりました。これがSCP-116-JPの直接的な影響なのか、心理的動揺に由来するものかは現在研究中です。
その後、被験者は高さに対する相対的な認識を持つことができなくなり、自分が不安定な高所にいるという妄想を抱きます。症状は段階的に進行し、初期においては脚立や階段などを登ることに強い拒否感を示し始めます。その後被験者は自分の立っている場所の高さについて知るたびにその拒否感は強まります。被験者は建物において決して上階に登らないようになります。仮に地下階があった場合、可能な限り階下に向かおうとするでしょう。最終段階において、被験者は誰の目から見ても異常な行動に出ます。自らの身長に由来する高さにすら恐れを抱き、地面にうつ伏せになることを選び、移動の際は目の前の床ないし地面を叩きながら四つん這いで這い回るようになります。
被験者の高さに対する認識と恐怖の度合いによっては、被験者が「信頼できる」と判断した柱などにロープなどを使って固定し始めたり、一心不乱に下方向に向かって穴を掘り続けるなどの行動を伴います。これらの症状にはAクラス記憶処理が適切であると、実験により確認されました。
SCP-116-JPのデジタルコピー、及びその印刷物からはこの異常な性質は発現しませんでした。SCP-116-JPの性質がオリジナルの持つ独自のものであるのか、デジタル上で特性が失われたのかは現在不明です。
補遺: ████/██/██
SCP-116-JPの特性の詳細な調査、特に効果の特性の鍵となるものを探るために多数の人間、及びその他の視覚能力のある動物を使用し実験を行い、いくつかは現在進行中です。
実験においてSCP-116-JPへの視覚的接触はサイト██の密閉型実験室及び監視用個室を使用する。
被験者の凶暴性を引き上げる効果を持たないことは知られているが、被験者の精神状況によりいくらかの混乱が生じる可能性があるため、監視カメラと室内放送でコミュニケーションをとり、催眠ガスを室内に噴出させる準備を怠らないこと。
人間以外の動物を実験に使用する際は、特に注意するべきである。
Dクラス使用の際は実験中に限り月ごとの解雇を延長する。
尚、日付は被験者がSCP-116-JPを視認した日を示す。
以下、実験記録を記す。
実験記録116-JP-1 - 日付████/██/██
対象: D-116-JP-1 42歳男性 一般的な大学を卒業した。
実施方法: 直接SCP-116-JPを視認させる。
結果: D-116-JP-1はSCP-116-JPを視認すると即座に蒼白になり嘔吐した。
体調の復帰を待ち、D-116-JP-1を退出させ、身体の異常を検査したが被験者の既往歴及びSCPの報告書に反する異常は見られなかったため良しとし、彼の経過を観察することにした。
数時間後、被験者は明らかに歩行が困難であるかのように振舞った。体調不良が続いているのか尋ねたところ、大きな建物の中にいるからか少し不安になっていると返答した。観察のため3階にある個人室に案内しようとすると、被験者はひどく動揺し、3階の床はここから4mは高所であり地上までの距離はおおよそ10mはあるはずで、そしてそれはひどく危険であること、そしてエレベーターのような下が中空になっている構造のものに乗って移動するなど考えられないことだと主張した。これは想定の範囲内であり、予定通り被験者を一階の個室に収容することになった。その際もエレベーターでの移動を頑なに拒否したが、警備員3名の努力によって大きな怪我もなく護送された。
監視カメラの映像ではベッドを使用しての睡眠を行わず、和室のように地面に布団を敷き直したこと以外特に異常は見られずほぼ安定した様子を示した。3日の間、被験者は徐々に精神の均衡を崩していたように見えた。食事を差し入れる職員に対しこの施設に地下室があるのかを尋ねてきたので、予定通り「耐震強化のため地下室は採用されていない」と虚偽の報告をさせた。その時は安心したようだがすぐに考え事を始め一日のほとんどを座って過ごすようになった。被験者は排泄行為も便器に座ることを拒否しトイレに行かず、返還を拒否した食事の器を使い始めた。室内の音声記録によると施設でなく地形的な地下に考えを向け始めたようだ。4日が経つと被験者は食事に使用していた食器を使い地面を激しく摩擦、もしくは刺突し始めた。床の表面に貼られたフローリングマットを破壊し、コンクリート部分に差し掛かったところで全ての食器が壊れたため被験者は自らの指や歯及び頭部を使用しコンクリートの破壊を試みたため催眠ガスを室内に噴出させ、被験者に拘束衣を着用させた。
分析: この実験の後、数名の日本人Dクラスを使用したがこれが一般的な知能を持ち日本語を理解する被験者の一般的な対応であったため、これのみを記す。より個人個人の詳細を知りたい研究員は実験記録116-JP-████を参照して欲しい。今後の研究における試金石となるだろう。
尚、以降の実験に置いてはこの結果に即さない部分のみを記すこと。詳細な記録は別文書にて保管する。閲覧希望者は私に一声かけて欲しい。- ████博士
実験記録116-JP-15 - 日付████/██/██
対象: D-116-JP-15 中米系男性32歳 被験者は日本語の読み書きができない。
実施方法: 通常通り行う。
結果: 特に異常なくSCP-116-JPの効果が顕れた。
分析: ふーむ、設計図に書かれてる内容を理解する必要がないのか。それとも未知の周波数の光線が出て視覚から影響するのか。実験を続けよう。- ████博士
実験記録116-JP-16 - 日付████/██/██
対象: D-116-JP-16 57歳成人女性 過度の近視であり、矯正なしでは1m先の5cmの文字を認識できない。
実施方法: SCP-116-JPを2mの距離から裸眼で視認させる。
結果: 効果は顕れなかった。
分析: これはおそらく鮮明に116-JPを認識する必要があるということだな。デジタルデータの件も合わせると随分と保管が簡便になるかもしれないな。- ████博士
実験記録116-JP-17 - 日付████/██/██
対象: D-116-JP-17 3歳オス 健康なニホンザルである。
実施方法: 通常の実験を行う。指示に従わせるのが困難であるため拘束して視認させる。
結果: SCP-116-JPの前で数秒呆然とした後拘束を解かれた。明らかに動揺しており、ウロウロと歩いていたところを職員が驚かすと飛び上がることなく転がるように職員と距離をとった。その後、多数の同種と岩山のある飼育室に搬送したが彼は岩山や木に上ることがなかった。その後ストレス性の消化不全から徐々に衰弱し、死亡した。
分析: これは対象の知性に無関係に効果を発揮することを意味すると思われる。ただし地面を掘るなどの異常行動がなかったことから知識面は重要な要素なんだろうな。- ████博士
実験記録116-JP-19 - 日付████/██/██
対象: D-116-JP-19 年齢不明のハシブトガラスである。
実施方法: D-116-JP-17と同様に拘束して視認させる。
結果: すぐさま飛翔し、床や同伴した研究員になんとか着陸するもすぐに飛翔した。数時間この行動を繰り返した後一切着陸することなく飛行を続けようと試みた。実験室内であったため天井に体をぶつけるように飛び続け、体力を消耗したのか最終的には地面に墜落した。低高度であったため絶命には至らず再び体勢を立て直すが羽を傷つけたためうまく飛行できず次第に床を跳躍し始め、それも不可能な体力になると床をもがき続け最終的に死亡した。直接の死因は過度の疲労と判定。
分析: ふーむ、設計図に書かれてる内容を理解する必要がないのか。それとも未知の周波数の光線が出て視覚から影響するのか。実験を続けよう。- ████博士
実験記録116-JP-21 - 日付████/██/██
対象: D-116-JP-21 31歳男性 彼は建築学を学んでいた。
実施方法: 通常通り行う。
結果: D-116-JP-21 は一目見てこの設計図の欠陥に気がついた。その後通常通り意識の混濁が現れ数時間後復調した。D-116-JP-21 はしきりに研究室の構造を気にし始めこの建物の構造について多数の質問をした(多くの質問は機密に当たるため要求は却下された)。D-116-JP-21 は椅子や自らの体を使って建物の強度を調べようとしたが、非常に暴力的な方法であったため警備員に取り押さえられ、拘束された。この行動は一般的な実験よりあまりにも早く行われたことを注意したい。D-116-JP-21 は拘束されたままでいることにいくらかの安堵をしたようだが、不安が払拭されたわけではなく何らかの妄想にとらわれているようにも見えた。D-116-JP-21 は数時間の間独り言をつぶやき、不意に奇声をあげ死亡した。以下はその記録である。
「ここは地上2階に相当する、天井の高さから考えると私はおおよそ5mの位置に浮遊している計算になる。」
「いや正確にはこの規模の研究施設だ、相当な地下階があるだろう。」
「私は今推定で20mは下らない…正確には4.53m×α+1.75m(これはD-116-JP-21の身長に拘束台の足場を足した数値である)の高さにいるんだ…」
「いや日本には水脈や温泉が多いしたんじゅんにどうくつもあるだろう そこまでの深さはわからないが2000mあってもおかしくない」
「私は今飛騨山脈の上から地上を見下ろしている たかい たかい たかいたかいたかいたかい」
「ちがうちがうちがうちがうちきゅうはまるいからしたなんてないもしもしたがあるならそれはうえにものびるしどこまでものびる」
「くろいあなのなかにわたしはいまおちているいちにちによんまんきろをおちているおちつづけるどこにもたどりつかないなのにみんなはうごかないわたしだけがおちつづけている」
「わたしはおちてないずっとどこにもいかないならうごいていないだからおちてないなにもできずういているいきることもしぬこともなくおちている」
「はやいはやいはやいはやいはやい」
「おちれる」