SCP-1165-JP
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SCP-1165-JP-1(画像右から2番目)と異常性のないカワラバト(学名:Columba livia)

アイテム番号: SCP-1165-JP

オブジェクトクラス: Euclid Keter

特別収容プロトコル: SCP-1165-JP-1は、現在4個体が収容されており、サイト-81██の小型生体収容セルに1体ずつ隔離して収容されています。今後捕獲される個体も同様に収容してください。また、収容区画の清掃や健康状態の確認などの理由でSCP-1165-JP-1と接触する際は耐刃性防護服と革製の手袋を着用してください。

SCP-1165-JPに類する現象が確認された地域において、十分な安全性が確保されておらず、15m以上の落差を確保できる高所への立ち入りは厳重な規制・監視が行われます。また、当該地点は武装していない職員1名による定期的な立ち入り調査の対象となります。この時、職員に接近する鳥類の個体は即座に調査捕獲の対象となり遺伝情報の解析が行われます。解析の結果異常が無いと判断された場合は識別用の小型チップを埋め込んだ後解放されます。また、円滑な調査のため野生の鳥類に対する餌付け行為は各自治体と連携して制限、禁止されています。

説明: SCP-1165-JPは特定の条件下において人体が急激に変成する現象、あるいは異常な感染症で、影響を受けた人間(以下、対象者)が高所から自由落下する過程において観測されます。対象者が落下を開始してから1秒以内に皮膚やその他の組織の変成がはじまり、最短で1.5秒程でこれらの過程が完了します。この時点で体毛と手指は消失し、脚部は退化し皮膚の硬化が見られ、全身は羽毛に見える組織で覆われます。変成の過程でその質量の一部が消失しますが、エネルギーの放出等は確認されていません。

これまでSCP-1165-JPの発生以前の対象者の状況が確認できた全ての事例において、対象者はSCP-1165-JPが発生する以前にSCP-1165-JP-1と推測される鳥類と物理的な接触をしていました。この際、対象者は嘴や爪で傷を1つ以上付けられており、接触から最短で数秒後、最長で4日後にSCP-1165-JPが発現しています。

変成した人体(以下、SCP-1165-JP-1)は不特定の鳥類の形状をとり、概ね異常性のない鳥類のように振る舞います。遺伝子的には現在確認されているあらゆる鳥類と異なっている事が確認されていますが、遺伝情報等による対象者の特定は不可能とされています。SCP-1165-JP-1は落ちている物の摂食に抵抗を見せる、翼を手のように扱おうとする等の「人間的」な振る舞いをし、変成前の人格が残存していると考えられます。

現在までに国内で8体のSCP-1165-JP-1が回収されています。これらは全て対象者が投身自殺を計った際に居合わせた、または対象者の静止にあたった警察組織内のエージェントによって回収され、内2体は既に死亡しています。うち1体は変成過程で既に衰弱していたため、捕獲直後に死亡しており、SCP-1165-JPの健康面に体する有害性あるいは致死性については研究段階です。もう1体については補遺1を参照してください。

補遺1: 長崎県███市で2体目となるムクドリ(学名:Sturnus cineraceus)に見えるSCP-1165-JP-1が収容から63日後、他2体と共に収容されていたセル内で死亡しているのが発見されました。同日中に行われた解剖の結果、死亡した個体は収容以前から絶食状態であった事が判明しましたが、消化器や摂食器官に異常は認められませんでした。支給されていた餌を他2体が消費していた為に発覚が遅れたものと考えられ、これを受けた収容プロトコルの一部改定が行われています。

補遺2: 2018年5月、神奈川県██山中の岩場で投身自殺を試みた際、崖面に生えた樹木に掛かり身動きが取れなくなっていた成人女性が保護されました。搬送先の県内の病院で、女性の両足が萎縮し一部の筋組織と骨格が変形あるいは消失、皮膚組織が硬化している事が確認され、財団の関連医療施設へ移送、保護されました。女性を搬送した救急隊員と治療にあたった医師、看護師クラスB記憶処理を施した後解放、救急隊の出動記録とカルテは隠蔽されています。

以下の記録は関連施設へ移送後、女性の意識の回復から8日後に実施された女性へのインタビューの記録です。

対象: 神奈川県在住の成人女性

インタビュアー: ██博士

<録音開始>

██博士: おはようございます。体調はいかがですか?

女性: 大丈夫です。

██博士: それは良かった。では、これから幾つかお伺いしますが、具合が悪くなったらすぐに言ってくださいね。

女性: はい。

██博士: では、早速ですがあなたがあの場所で保護されるに至った経緯をお話いただけますか。

女性: あまり、覚えていません。ただ、気分転換に山に行きました。

██博士: あなたは保護された時、スーツを着ていましたし、崖の下に踵の高い靴も落ちていました。財布はポケットから見つかりましたが、それ以外は何も持っていませんでしよね?

女性: そう、かもしれません。

██博士: 初めから命を絶つつもりだったのではありませんか?

女性: [沈黙]

██博士: 質問を変えましょう。お怪我の具合はいかがですか? 全身の擦過傷はほぼ治ったように見えますが、腕と鎖骨はまだ痛みますか?

女性: 脚が、痛みます。

██博士: 脚ですか、鎮痛剤を処方させましょうか?

女性: いえ、そこまででは。

██博士: 元々脚が不完全だった訳ではありませんよね? お一人で山に入られたようですし、何かこうなる原因に心当たりは?

女性: 病院で、切られたんじゃないんですか?

██博士: あなたが保護された時点で既にその状態で、断裂した形跡もありませんでした。

女性: じゃあ、感染症の類いですか?もしかして、鳥ですか?

██博士: 鳥、とはなんのことでしょう?

女性: [沈黙]

██博士: ゆっくりでいいので、お話いただけますか?

女性: 腰掛けていたんです、足を崖の方へ下ろして。空を見ていて、鳥になりたい、なんて思ったんです。純粋に、空を飛びたいって、子供の夢くらいの感覚で、心を病んでるつもりなんてなくて。本当に、気を病んでるなんて思いませんでした。あの子の時は気付けたのに、気づいていたはずなのに、あの子は、あの子が、どうして、どうして私は……。

██博士: 落ち着いてください。インタビューは中止しますか?

女性: ごめんなさい。[5秒沈黙]1羽、群れから離れて、とまったんです。私の脚に。追い払ったらすぐに飛んでいきました。でも、去り際に爪が引っかかって、傷になりました。でも、そんなこと気にならなくて、ただ、ついていけるような気がして、飛べる気がして、それで……。

██博士: その鳥に何かおかしな点はありましたか?

女性: 分かりません。ただ、あの子を見た時、不思議な感じが、久しぶりに、会ったような感じがして。

██博士: 見覚えのある鳥だったのですか?

女性: そうじゃ、ないんですけど。飛んでいく背中が、やっぱり、誘っているように見えて。

██博士: なるほど、わかりました。最後に、良い記憶ではないと思いますが落下中のことを思い出せる範囲で教えてください。出来ればその脚と傷のことも。

女性: 一瞬だったし、足元は見ていなくて、分かりません。ただ体から、余計なものが抜けていくような、軽くなるような感じがしていました。落ちている間、ずっと。

██博士: ありがとうございました。医師を呼びますので、大体で構いませんから傷の位置を伝えてください。また後日お話を伺うかも知れません。

<録音終了>

インタビュー終了後、女性が申告した傷の周辺を再検査した結果、脛骨及び足首の靭帯組織が大腿前部に断片的に存在していることが確認されました。再検査の結果、傷口から何らかの病原体に感染した形跡は認められず、SCP-1165-JPと傷との関係を示すには至っていません。

また、女性が保護される1ヶ月前に同県内在住の友人女性が失踪、██署に捜索願が提出、受理されていました。女性は未だ発見されておらず、インタビュー内で言及された鳥と何らかの関係のある可能性が指摘されています。

補遺3: 北海道██市において害鳥駆除の一環としてワタリガラス(学名:Corvus corax)3羽が、住民から依頼を受けた同市の職員によって20██年8月に捕獲されました。当該地域においてワタリガラスは本来渡り鳥として冬季から春季にかけて観測されることから、捕獲された3羽の詳細な検査が行われました。その結果、3羽全てについて遺伝情報に異常が見られました。さらに、当該地域で同年6月頃から立て続けに行方不明者の捜索願が提出されていた事から、全ての個体がSCP-1165-JP-1として回収されました。

近隣住民への聞き取り調査の結果、捕獲された3羽に襲われ32名が負傷、その内同市内で捜索願が出された6名の全てを含む26名が爪や嘴などで直接傷を付けられられていた事が判明しました。その後、直接傷を負った20名の監視が行われ、SCP-1165-JPが発現した1名がSCP-1165-JP-1として回収されました。これらの個体は現在も収容下にあります。

他の19名への監視は現在も継続されており、感染症の危険性があるとして定期的に血液を採取し研究に利用されています。また、SCP-1165-JPを媒介していると思われる物質、微生物などは発見されていません。

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