回答者: ジュード・クライヨット。男性。23歳。
質問者: エージェントO.███████
序: 20██/██/██、SCP-1168はギリシャ、アテネのシンタグマ広場で公開されていた。現時点では、SCP-1168が本物の彫像と置き換えられた時期は不明である。目撃者の証言によると、インタビュー対象はSCP-1168に近付き、その後SCP-1168は活性化状態に入り、近隣の人物からSCP-1168-1とSCP-1168-2を選んだ。インタビュー対象は他の11人の目撃者とともに█████████警察に拘留された。
<記録開始、20██年██月██日 3時50分>
エージェントO.███████: それでは、あなたにいくつか質問があります。
ジュード・クライヨット: オーケイ。
エージェント███████: お名前はジュード・クライヨットでよろしいですか?
クライヨット: そうだ。
エージェント███████: あなたは[編集済]の学生ですね?
クライヨット: だった。最近は大して何もしてない。
エージェント███████: あなたは何故、何かをあの像にしたんですか?
クライヨット: 像? 俺は氷漬けになった野郎の事を聞かれるのかと―
エージェント███████: 質問に答えてください、クライヨットさん。
クライヨット: すまない。その、昔の教師から手紙をもらったんだ。そいつに… 弱みを握られてた。こう、な。俺が像にそうしないと、その、問題のナニをな。ほら。吹聴してやるぞと。それで何通か手紙をやり取りした。なんでそんな事を知ってるのかって俺が訊ねると、あいつは地域に友達がいるからだってはぐらかした。
エージェント███████: まだその手紙を持っていますか?
クライヨット: 残ってるのは少しだけだ。他は… 燃やした。少し後に。でも良ければ取って来-
エージェント███████: その必要はありません、お気遣いどうも。
インタビュー後に行われたクライヨット氏の家へのガサ入れで、問題の教師と対応する手紙が回収された。ゴミ箱の中からは灰が見つかった。
エージェント███████: その教師について説明してもらえますか?
クライヨット: オーケイ。年取った白人だ、歳は多分… 70代? 灰色の髪だ、かなり長い。普段はポニーテールに結ってる。
上記説明と回収された手紙の筆跡は、[編集済]の元・教員であるPoI ████と一致している。
エージェント███████: あなたが像に糸を配置するように、その人物が取り計らった理由は分かりますか?
クライヨット: うん、あいつは俺を知ってたし、俺のキンタマをがっちり抑えてる確信があったからだろうな。
エージェント███████: 言い方を変えましょう。彼がわざわざ像に糸を握らせたかった動機は分かりますか?
クライヨット: ああ。あの像はメタファーだとか何とかって言ってたよ。あいつは正真正銘のクソジジ- いや、すまない、つまり大袈裟な物言いの多い人だった。
エージェント███████: 構いませんよ。言わんとするところをもう少し詳しく説明してくれますか?
クライヨット: あー、ほら、テーセウスは糸球を頼りにしてミノタウロスを討伐しただろ。あの男は年寄りだった。健康状態は最高とは言えないって俺に伝えてきてたよ。多分、ああいう事をすれば古き神々が喜ぶとでも考えてたんじゃないかね。あいつは、その、俺の健康状態もベストじゃないってことを分かってた。だから、俺自身のためにもそうした方が良いって手紙に書いてた。
エージェント███████: あなたは像が動くことを予想していましたか?
クライヨット: 何?
エージェント███████: あなたは像が動くだろうと考えていましたか?
クライヨット: ああ。
エージェント███████: あの像が█████さんと███████さんを指差したところを目撃した人がいるんです。
インタビュー対象者は1分間無言のままである。
エージェント███████: 大丈夫ですか、クライヨットさん?
クライヨット: いや。大丈夫なんかじゃないさ。
エージェント███████: 少し休憩を入れましょうか?
クライヨット: [沈黙] いや。続けられる。
エージェント███████: なぜ沈黙していたのですか?
クライヨット: 悪かったな。ちょっとクソみたいな物事を思い出しちまった。
エージェント███████: クソみたいな物事?
クライヨット: 俺はな。あー、俺は、うん。なぁアンタ。俺は理由があって手紙を燃やしたんだ。 [沈黙] 先生はな、大学でアートグループの講師をやってた。一度見に来ないかと誘われた。
エージェント███████: アートグループですか?
クライヨット: そうだ。俺がそこに行くと、うん。場所は倉庫だった、はずだ。プライベートな展覧会さ。そこに… 彫像、彫刻か、何でもいいな、ダリの鉄クズがあった。中にカネを入れるとそれが動いた。そして… あの娘がそこにいた。俺がそこにいたから、俺が誘ったりしたから… きっとクールだってあの子に伝えたりしたから。
インタビュー対象者は1分間無言のままである。
クライヨット: すまなかった、俺が。俺が悪かったんだ。違うんだよ、俺は… 俺は知ってたんだ… あの娘… あんな… あんなこと、嫌だった。俺… あの娘を知ってて、あの娘は俺を信用してた。それで俺は若くて、アホだった、どうしようもないぐらいアホな奴だった、それで俺は実際に見るまで何が起きているか知らされなくて、でも最初っから分かっているべきで、あの娘はいなくなった、死んじまった、俺のせいであの子は死んだんだ。俺が耐えられなかったせいで。俺が… ただ茫然としていたからだ。蛇が汚らしい、馬鹿げた、腐れた皮を脱ぎ棄てるみたいに、あの時の俺は自分自身の中からただ滑り出していった。俺。俺は逃げ出した。臆病者だったから。あの娘は死んだ。俺は。それで、俺の知ってる奴が。俺の知り合いがあれを作った。そしてあれは称賛されやがった、奴らはあれを見て拍手しやがった。奴らはあれがちょっとしたパフォーマンスアートだったみたいに拍手して、俺は、クソの役にも立たないアホの俺はただ座ってそれが起こるのを見てたんだ。展覧会の後に… 奴らは、俺が若かったと言った。そして俺はただ… 芸術とか、奴らが表現しようとしたポイントを理解してないだけだと。俺が… 嗚呼。なんてザマだ。悪かった。本当にすまなかった。俺はあの像が動- 像が動くのを見なかった。すまない。畜生。畜生…
インタビュー対象者は2分間無言のままである。
エージェント███████: 申し訳ありません、クライヨットさん。
インタビュー対象者は返答を拒絶する。
エージェント███████: 申し訳ありませんでした。お時間を頂き、有難うございます。
<記録終了:20██年██月██日 4時19分>
結: ジュード・クライヨットと要注意団体“Are We Cool Yet?”の間に接点があり得ることから、クライヨット氏は更なる尋問の対象とされたが、有用な情報を得るに至らなかった。SCP-1168、SCP-1800、およびAWCYの知識を抑制するため、クライヨット氏には予防的なクラスB記憶処理が施された。当時のクライヨット氏が他の要注意団体に関する知識を持っていたか否かは判明していない。ジュード・クライヨットは現在、PoI-6870に指定されている — 現在の証拠はSCP-1168の実際の作成者がクライヨット氏であったことを示唆している。