通常種のアカミミガメ。紅葉に混ざり美しい姿を見せる。
アイテム番号: SCP-1173-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-1173-JPはサイト-81██の生物収容ユニットで飼育を行います。担当する職員はSCP-1173-JPへの曝露者に限定してください。現在、未収容状態のSCP-1173-JPは世界中に生息していると考えられており、SCP-1173-JPの全ての個体、およびSCP-1173-JPへの曝露者、共に秘匿性を保ちながら完全な収容を行うことは不可能であると判断されています。通常種のアカミミガメを優先的に確保すると共に、SCP-1173-JPへ曝露させないように保護してください。財団外部の人間の99%以上が曝露者となったと判断された場合、プロトコル[落葉]を実施し、SCP-1173-JPのオブジェクトクラスをExplainedに変更することが予定されています。
説明: SCP-1173-JPは、爬虫綱カメ目ヌマガメ科アカミミガメ属に分類されるアカミミガメ(学名Trachemys scripta)の異常な性質を得た突然変異種と考えられています。DNA鑑定による結果は通常のアカミミガメとほぼ一致しており、下記の異常性を除けば平凡なアカミミガメの生態を保っています。
SCP-1173-JPの異常性は、通常アカミミガメが紅葉を開始する10月中旬以降に発揮されます。SCP-1173-JPは本来紅葉すべきシーズンとなっても甲羅をつけたままで紅葉の兆候を見せず、1年を通して同じくシーズン外の姿を維持し続けます。また、SCP-1173-JPに接触した通常種のアカミミガメはSCP-1173-JPへの急速な変化を行い、この変化は現時点において不可逆的なものとなっています。
SCP-1173-JPの更なる異常性として、人間がSCP-1173-JPを目撃した場合、対象となった人物(以下曝露者)は2秒から40秒をかけてSCP-1173-JPの影響を受け、アカミミガメという生物種はSCP-1173-JPの生態を持つのが正常であるという意識操作を受けます。結果として紅葉のシーズンにアカミミガメが紅葉していないことを不自然に感じることがなくなると共に、紅葉したアカミミガメを認識することが不可能になります。曝露者は過去に紅葉したアカミミガメを視認していたとしても、その記憶を喪失します。これらの異常性は現在の財団が可能とする、如何なるクラスの記憶処理を行った場合にも失われません。
勅使河原博士による報告書より抜粋
SCP-1173-JPは、確かに直接命を奪う訳ではない。だがアカミミガメ狩りという日本人の伝統を、家族で共に紅葉したアカミミガメを眺めた大切な記憶を容易に奪い取るのだ。更に性質の悪いことに、奴らの繁殖力は通常種のアカミミガメを容易に淘汰することが可能な程に強い。以上の特性を考慮し、SCP-1173-JPのオブジェクトクラスはKeterとすることを提言する。
現在、SCP-1173-JPは通常種のアカミミガメのおよそ200倍の繁殖力を持つことが判明しています。
SCP-1173-JPは198█/10/██、休暇中であったエージェント・大澤が財団外部の友人との雑談中、友人がもみじ狩りへ行った際の写真を見せられたことを切欠にアカミミガメ狩りの話題へ発展し、友人がアカミミガメを紅葉しない生物であると主張したことから財団の知ることとなりました。エージェント・大澤の友人の周辺環境を捜索したところ、付近に存在した██城跡地の掘に群れで生息するSCP-1173-JPを発見、収容にいたりました。この際、収容処理に参加したエージェント・大澤、エージェント・██、エージェント・██はSCP-1173-JPの影響を受け、通常種のアカミミガメの記憶を失いました。クラスDの記憶処理が行われましたが、SCP-1173-JPの影響を多少でも失わせることは不可能でした。
その後の財団の調査によって、SCP-1173-JPの生息域が██城に限定されないことが判明。Keter級のオブジェクトとして収容されることとなりました。調査によって判明した一般人への曝露率の高さが、SCP-1173-JPの影響の拡散を許した原因と思われます。
補遺: SCP-1173-JPの発見と共に確保・保護を推進されることとなった通常種のアカミミガメですが、既にサイト-81██の低脅威度生物収容ユニットにて雌雄各2頭が飼育されていることが明らかになりました。この点から、エージェント・大澤による発見以前にいずれかの財団職員がSCP-1173-JPを発見し、その異常性を認識していた可能性があります。
補遺-2: 内部調査の結果、発見時には既にサイト-81██に勤務する職員のうち90%がSCP-1173-JPの曝露者となっていたことが分かっています。直接的な飼育を担当する職員を除き、SCP-1173-JPの研究は曝露していない職員が直接・間接を問わず目視することのない環境にて行います。
アイテム番号: SCP-1173-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-1173-JPはサイト-81██の生物収容ユニットで飼育を行います。担当する職員は定期的に通常種のアカミミガメとの接触を行い、1週間以上連続でSCP-1173-JPへの接触を行わないでください。SCP-1173-JPの探索・捕獲は、SCP-1173-JPへの曝露者を利用して行います。SCP-1173-JPの生物収容ユニットには、通常種のアカミミガメを近づけないでください。
説明: SCP-1173-JPは、爬虫綱カメ目ヌマガメ科アカミミガメ属に分類されるアカミミガメ(学名Trachemys scripta)の異常な性質を得た突然変異種と考えられています。DNA鑑定による結果は通常のアカミミガメとほぼ一致しており、下記の異常性を除けば平凡なアカミミガメの生態を保っています。
SCP-1173-JPの異常性は、毎年10月中旬以降に活性化します。活性化したSCP-1173-JPは甲殻を喪失し、全身を紅色を主とした色彩に変化させます。この状態のSCP-1173-JPは擬態状態と呼称され、およそ3ヶ月間は食事、排泄といった活動を停止します。擬態状態でないSCP-1173-JPが通常種のアカミミガメと接触を行った場合、その時点でSCP-1173-JPの異常性は永続的に消失します。擬態状態となったSCP-1173-JPは、曝露者以外によっては認識されません。
SCP-1173-JPの更なる異常性として、人間がSCP-1173-JPに長時間接触を続けた場合、対象の人物(以下曝露者)はSCP-1173-JPの影響により、軽度の認識障害を発症します。曝露者はSCP-1173-JPを通常のアカミミガメと判断するようになり、同時に擬態状態となったSCP-1173-JPを『紅葉したアカミミガメ』として認識し、違和感を受けることが無くなります。この認識障害は如何なるクラスの記憶処理によっても取り除けませんが、通常種のアカミミガメを目視することで喪失することが判明しています。
SCP-1173-JPは19██/12/██、サイト-81██の低脅威度生物収容ユニットにてSCP-1173-JPが雌雄各2頭ずつ飼育されていたことで発見されました。この点から、発見以前にいずれかの財団職員がSCP-1173-JPを何らかの形で発見し、その異常性を認識していた可能性があります。SCP-1173-JPの繁殖能力は通常のアカミミガメよりも遥かに小さいものでありますが、財団外部に生息していることが判明しています。Dクラス職員を恒常的な曝露者として確保し、SCP-1173-JPの捕獲を進めてください。
補遺: 内部調査の結果、サイト-81██に勤務する職員のうち10%がSCP-1173-JPの曝露者となっていることが分かっています。収容違反を防ぐため、直接的な飼育を担当する職員を除いてSCP-1173-JPの研究は曝露していない職員が直接・間接を問わず目視することのない環境にて行います。
大多数の人類と比較すれば、財団は多くの異常な存在のことを知り、理解していると言っても構わないだろう。だが先人たちの失敗が示している通り、我々が絶対に、確実に彼らの影響から逃れられるという保証は存在しない。
我々が認識している正常なる世界とは、他の者にとってのそれとは既に異なっているのかもしれない。或いは、この世界はとっくに破壊されて、歪み、呪われてしまっているのかもしれない。我々は失敗し──或いは、我々が彼らのことを知るよりも遥か前から──何もかもが終わりを迎えてしまっているのかもしれない。我々のしていることは全て無意味であり、世界は彼らに破壊されることが確定してしまっているのかもしれない。
それでも、我々の寄る辺は己の信じる『真実』以外には存在しないのだ。
財団職員よ、君の世界を守れ。
確保、収容、保護──
君が信じる世界の為に。君が守るべきものの為に。-勅使河原 ██