SCP-1180-JP
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収縮後のSCP-1180-JP-1

アイテム番号: SCP-1180-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-1180-JPはサイト-81██の小型昆虫飼育セルに███匹が収容されています。昆虫飼育の講習を受けた担当職員は1週間に1度給餌機に砂糖水を補充し、生育状況の管理を行ってください。飼育セル内の気温や湿度は秋田県██地区の気候を模倣する形で維持されており、冬期には雌の個体50匹を同型の越冬用セルに移送します。越冬用セルには麻酔薬を投与した実験用モルモットが2匹配置され、通常の給餌を行う必要はありません。越冬終了が確認された後は残留物の除去を行い、成虫を通常飼育セルに移送して下さい。サンプルとして保存されたSCP-1180-JP-1は生体反応を常にモニタリングした上で標準中型生物用セルに収容されます。モルモット以外を用いてSCP-1180-JP-1を作成する実験にはセキュリティクリアランス3/1180以上の職員2名の許可が必要です。

説明: SCP-1180-JPはブユ(Simuliidae)に酷似した外見を持つ体長約4mmの昆虫です。基本的な食性及び習性は一般的な日本に生息するブユ種に準じていますが、視覚に退化の兆候が見られ、また越冬の際に特異な性質を示します。SCP-1180-JPは成虫越冬を行う際に付近の生物から集団で吸血を行います。この吸血行為は通常の昆虫によるものと同様に唾液の注入による発赤、炎症、発熱を引き起こすアレルゲン反応1を伴いますが、形成される腫脹の成長限界は一般的なブユによる物を大きく逸脱しています。

対象が全身を腫脹に覆われた流線型の塊(SCP-1180-JP-1と分類)へと変化すると、SCP-1180-JPは対象の表面に固着し越冬を開始します。この際SCP-1180-JP-1の体温は23℃~55℃を維持しており、これを熱源として用いることで通常の成虫越冬に比べ多くの個体が生存可能です。継続的な気温の上昇により冬の終了を感知したSCP-1180-JPはSCP-1180-JP-1から離れ一般的なブユと近似した行動サイクルへと復帰します。この異常性はSCP-1180-JP-1を用いて越冬を行った個体の子孫にのみ継承されており、卵で越冬を行った個体や通常の成虫越冬を行った個体の異常性は喪失します。またSCP-1180-JP-1を用いて越冬した個体は産卵数の大幅な向上が確認されています。SCP-1180-JPは可能な限りSCP-1180-JP-1を用いた越冬を行おうと試み、冬眠中のほ乳類などの対象を捜索しますが、自身の生存に影響が出るような状況ではその行動を放棄します。

SCP-1180-JP-1生成プロセス

  1. 吸血: SCP-1180-JPの吸血行動により対象の肌に一般的な大きさの発赤が発生。皮膚の露出部及びリンパ節の周辺が優先的に標的とされる。
  2. 発疹: 皮下組織の膨張と発熱を伴った発赤が皮膚全体まで拡大。吸血箇所を中心に直径2~40mmの腫瘤2が皮膚を覆うように多数発生する。 この際腫瘤の成長が該当部位に到達すると体毛や爪といった外部組織は脱落、あるいは腫脹に巻きこまれる形で一体化。この段階で対象の意識は急速に混濁し、自発的な行動は困難となる。
  3. 球化: 隣接する個々の腫瘤が癒着し、身体機構の凹凸は腫脹により均質化される。表皮と真皮は分離し、細胞壁に近似した半透明の二重構造組織が形成される。
  4. 安定: 対象は球、あるいは楕円球の形状をとり、外見的な変化は終了する(SCP-1180-JP-1の完成)。
  5. 収縮: 形状変化の停止から一定期間を経てSCP-1180-JP-1は縮小を開始する。SCP-1180-JP-1は収縮と共に徐々に赤褐色に変色し、収縮の停止後に生命活動を終了する。

SCP-1180-JP-1の形状及び内部構造

形状 球体・楕円球(対象の本来の輪郭に依存)
表皮 半透明の赤色であり、内部の組織や血流・緩慢な拍動を確認可能です。一定の弾力と擦過への高い耐性を持つ一方で、鋭利な刃物などによって容易に貫通することが可能です。寒暖差の激しい環境では表皮は剥離し硬質組織へ変質します。また少量の切除であればSCP-1180-JP-1は問題無く生存し、空気に接した内組織が表皮へと変化します。
生成期間 体重・表面積に大きく左右されます。平均的なモルモットの場合は生成に4日を要します。
骨組織 頭蓋・脊椎等の高い強度を持つ組織は概ね形状を維持されますが、大部分はアレルゲン反応の発熱と膨張による緩慢な圧搾の影響を受け、半流動体へと変化します。
筋肉・内臓組織 生存3に最低限必要とされる脳・肺を除く内臓はSCP-1180-JP-1内部の半流動体へと変化・同化します。何らかの外的要因により変化のプロセスが不完全に実行された場合は、残存する組織の量が多くなる傾向が確認されています。
生存期間 個体に大きく依存します(SCP-1180-JP-1作成実験を参照)。

初期段階の腫脹は毒性の抽出やステロイド剤の塗布といった手段で治療可能であり、影響が内組織に及んだ場合でも吸血箇所の切断によってSCP-1180-JP-1への変化を阻止することが可能です。以上の特性からSCP-1180-JP-1を製作する対象となる生物は大部分が冬眠や冬ごもりのために活動が緩慢になったほ乳類や鳥類ですが、は虫類・魚類・昆虫等を用いた場合でもSCP-1180-JP-1を製作することは可能です。対象が越冬に不適当な場所でSCP-1180-JP-1へと変化した場合、SCP-1180-JPはSCP-1180-JP-1を放棄します。

SCP-1180-JP-1作成実験1

対象: モルモット

実施方法: 越冬用セルに鎮静状態の対象を配置し、50匹のSCP-1180-JPと接触させる

結果: 4日後に対象は直径約15cmのSCP-1180-JP-1へと変化しました。沈静剤が抜けた後も対象に自発的な行動は見られず、変化前に口だった孔を用いたかすかな呼吸と拍動のみが確認されました。実験開始から4ヶ月後に対象は生命活動を停止、直径は2cmまで収縮していました。

補遺: SCP-1180-JPは20██/04/0█に発生した秋田県██地区、██山おけるブユ類の大量発生現象の調査中に、地元自治体と大学の研究チームによって発見され新種の昆虫と同定されました。近辺の捜索において複数のSCP-1180-JP-1が発見されたこと、SCP-1180-JP-1作成のメカニズムが既存の昆虫学の範囲を逸脱していることからSCP-1180-JPは財団により収容されました。██地区の住人に対するインタビューにより、SCP-1180-JP-1は住人にとって既知の存在であったことが判明しています。詳細は以下の録音記録を参照してください。

██地区においてSCP-1180-JP-1生成過程で発生した腫瘤は「ユキノホ(オ)ズキ」、特にSCP-1180-JPが固着した物は「クロホ(オ)ズキ」と呼称され、雪上に散乱した物、あるいは特定の場所から採取された物が滋養食品の一種として習慣的に食されていました。またSCP-1180-JP-1は「アカミ」5と呼ばれさまざまな形態で食されていた事が確認されています6。SCP-1180-JPの収容に伴い██地区出身者には記憶処理が行われ、SCP-1180-JP-1は果実や魚卵発酵食品の俗称であったというカバーストーリーが流布されました。地元青年団が行っていたSCP-1180-JP-1を██地区の特産品として地域外に普及しようとする試みに関しては、記憶処理と共に食用ホオズキの栽培基盤を整備することで対応しています。現在も未収容のSCP-1180-JPの捜索は継続中です。



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