クレジット
タイトル: SCP-1185-JP - たんぽぽ仮面の救済
著者: ©︎Gokipo
作成年: 2019
アイテム番号: SCP-1185-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-1185-JPはサイト-81██の収容室に、電源を切った状態で収容されます。現在、SCP-1185-JPを使用した実験、及びその他の目的での使用は全面的に禁止されています。
SCP-1185-JPはサイト-8139の収容室に、全国銀行資金決済ネットワークに接続された状態で収容されます。SCP-1185-JPを使用した実験を行う際は、実験担当の木曾博士に許可を得た上で、財団のフロント企業である████銀行で被験者名義の口座を作成し、その口座のキャッシュカードを用いて実験を行ってください。SCP-1185-JPの実験後、担当職員は速やかに████銀行の預金システムにハッキングを行い、被験者名義の口座の取引明細から「タンポポカメン」名義の振込履歴を削除してください。万が一、SCP-1185-JPを使用した実験で財団外に被害が及んだ場合、直ちに適切な記憶処理とカバーストーリーの流布を行ってください。SCP-1185-JPの実験以外の目的での使用は禁止されています。
説明: SCP-1185-JPは、福岡県の地方銀行である筑前銀行の現金自動預け払い機(Automated Teller Machine, ATM)です。SCP-1185-JPを全国銀行資金決済ネットワークに接続した状態であれば、通常のATMのように預け入れ、引き出しなどができます。通常の筑前銀行のATMと違い、筑前銀行が提携していない金融機関の口座にもアクセスすることができます。
SCP-1185-JPの異常性は、SCP-1185-JPの使用者に何らかの依存症の傾向が見られる場合に発現します(以下、そのような使用者をSCP-1185-JP-1と呼称する)。SCP-1185-JP-1になりうる人物がSCP-1185-JPに通帳またはキャッシュカードを挿入し、何らかの機能を利用するために暗証番号を入力すると、SCP-1185-JP-1名義の口座残高が増加します。同時に、SCP-1185-JP-1の依存対象が消失し、SCP-1185-JP-1は依存対象に対して一切の興味を示さなくなります。依存対象の消失は、SCP-1185-JP-1が直接関与している範囲でしか起こりません。また、この異常性はSCP-1185-JPの使用者と口座の名義人が異なる場合には発現しません。
SCP-1185-JPによって増加する金額は、基本的にSCP-1185-JP-1が依存対象に費やした金額と一致しています。もしSCP-1185-JP-1の依存対象にSCP-1185-JP-1が直接購入していないものがある場合は、依存対象の一般的な値段と使用量により増加する金額が決定されます。
SCP-1185-JP-1名義の口座の取引明細には、SCP-1185-JPを使用した年月日付で、「タンポポカメン」という名義で増加金額分の振込履歴が記載されます。現在までに、振込履歴を利用した振込元の特定はすべて失敗しています。
SCP-1185-JPは、福岡県北九州市の筑前銀行████支店に設置されていました。201█年██月██日、北九州市在住の無職男性(43)がSCP-1185-JPを使用した際に、口座残高が1,3██,███円増加していたことから異常性が発覚し、カバーストーリー「ATMのシステムバグ」を適用してSCP-1185-JPを収容、さらに筑前銀行の預金システムにハッキングを行い、振込履歴を削除しました。同日、北九州市のパチンコ店「█████」でパチンコ台1台がなくなっていると警察に通報がありました。パチンコ店の従業員とその場にいた客にはクラスB記憶処理を行い、カバーストーリー「故障したパチンコ台の回収」を流布しました。その後男性にインタビューを行ったところ、男性は当該パチンコ店の消失した台を頻繁にプレイしていたことが判明しました。また男性は「なぜあんなにパチンコにハマっていたのかわからない」とも供述しています。インタビュー後、男性にはクラスB記憶処理を行いました。
実験記録1185-JP: SCP-1185-JPを用いた実験記録です。実験手順は旧特別収容プロトコルに従っています。
実験記録1185-JP-1 - 日付201█/██/██
被験者: D-89120
増加した金額: 49█,███円
消失した物: D-89120から押収した覚せい剤50g
メモ: その後の健康診断で、異常をきたしていたD-89120の脳機能が正常に戻っていることが確認されました。
実験記録1185-JP-4 - 日付201█/██/██
被験者: 金山研究員
増加した金額: 198,000円
消失した物: スマホゲーム「Fate/Grand Order」の金山研究員のアカウント
実験記録1185-JP-6 - 日付201█/██/██
被験者: D-108162
備考: D-108162には実験の1ヶ月前に漫画「██████」全72巻(中古品10,980円)を貸与しました。
増加した金額: 10,980円
消失した物: 貸与した漫画全巻
メモ: その後、何度かDクラス職員に娯楽用品を貸与した後1ヶ月ほど時間をおいてから実験を行いましたが、いずれも増加した金額と消失した物の間に良い一致が得られました。今後の実験では全てこの手法を利用することを推奨します。 実験記録1185-JP-11を参照してください。
実験記録1185-JP-11 - 日付201█/██/██
被験者: D-456072
備考: D-456072には実験の1ヶ月前にポータブルDVDプレイヤー1台(12,775円)とアダルトDVD10本(計26,135円)を貸与しました。
増加した金額: [削除済]
消失した物: D-456072の████
そっちかよ… — 木曾博士
実験記録1185-JP-13 - 日付201█/██/██
被験者: エージェント・████
備考: 実験の8ヶ月前、結婚詐欺の前科を持つD-77057に、財団外で一般女性と偽ってエージェント・████に接近するよう指示しました。
増加した金額: 39,███,███円
消失した物: D-77057
メモ: エージェント・████はD-77057と交際中、頻繁に高額なバッグ、アクセサリ、化粧品などをD-77057にプレゼントしていました。
俺がATMだったって事か。やかましいわ。 — エージェント・████
追記: 201█年██月██日深夜、営業終了後のパチンコ店「█████」に男██人が侵入し、店内を工具や金属バットで破壊する事件が発生しました。その後警察によって、犯行メンバーの1人である草野███という男が逮捕されました。警察の取り調べに対し、草野が「日本からギャンブル依存症を無くすために犯行に及んだ」という旨の供述をしていることが判明し、この事件とSCP-1185-JPの関連が疑われました。財団は草野の身柄を引き渡すよう警察に要請し、受理されました。
以下は草野のインタビュー記録です。
対象: 草野███(以下、草野)
インタビュアー: 木曾博士
<録音開始>
木曾博士: それでは、インタビューを始めます。
草野: …あの、警察の取り調べは終わったんですよね?まだやるんですか?
木曾博士: お手数をおかけしますが、我々の研究の参考にさせていただきたいので、少しの間だけお付き合いください。
草野: はぁ。
木曾博士: 草野さん、あなたは「依存症を治すATM」があると言う話を聞いたことがありますか?
草野: …聞いたことないですね。
木曾博士: では質問を変えましょう。「たんぽぽ仮面」というのはあなた達のボスの名前ですか?
草野: [5秒間沈黙] 知りません。
木曾博士: 今、目を伏せましたね?私は心理学を専攻しているので、あなたが何かを隠していることぐらいすぐわかります。もう一度お聞きします。あなた達のボスの名前は「たんぽぽ仮面」ですか?
草野: [10秒間沈黙]…はい。
木曾博士: あのATMはたんぽぽ仮面が作ったものですか?
草野: いや、ATMのことについては本当に何も知りませんでした。そんなものがあったんですね。ただ、あのお方なら作りかねないと思います。あのお方のやることは、いつも僕たちの想像をはるかに超えてくるので。
木曾博士: 分かりました。次の質問に移ります。パチンコ店の襲撃はたんぽぽ仮面に指示されて行ったことですか?
草野: はい。
木曾博士: なぜ、パチンコ店の襲撃という形でギャンブル依存症を無くすことに同意したのですか?もっとほかに方法があるはずです。
草野: それは、僕らだって穏便に済ませられるんだったらこんなことはしてませんよ。でも、いくら患者を治したって、パチンコ屋がある限り永遠に患者は生まれ続けるわけじゃないですか。だからあのお方は、根本から潰しに行くことを考えたんです。僕らもそれしかないと思いました。
木曾博士: はぁ。
草野: あの、テレビでパチンコ屋のCMが毎日流れてるのって何でだか知ってます?日本の民放では大体パチンコ屋がスポンサーをやってるんですよ。つまり、奴らは日本のテレビを牛耳ってるんです。弱い奴から金をむしり取って日本の報道を裏から動かしている、それがパチンコ会社の真の姿なんです。これもあのお方が教えてくれました。そんな悪い奴ら、天罰が下って当然だと思いません?
木曾博士: …その話は、にわかには信じ難いですね。なんだか陰謀論的すぎるというか。
草野: [溜め息]わかってもらえませんでしたか。
木曾博士: 草野さん、あなたはどうやってたんぽぽ仮面と知り合ったのですか?
草野: あのお方は、僕の救世主なんです。僕の父はパチンコにハマって、家庭が多額の借金を負いました。そんな時偶然見つけたのが、あのお方が運営しているNPO法人だったんです。僕は父をそこに連れて行きました。あのお方が父に何をしたのかはわかりません。でも、あのお方に会った後、父はまるで別人のようにパチンコから足を洗ってくれたんです!本当にあのお方には心から感謝しています。
木曾博士: その経験から、たんぽぽ仮面についていこうと決めたのですね。
草野: はい。ただ、今は警察に捕まるなんていうヘマを犯してしまったので、あのお方が僕を許してくれるのかどうか…それだけが本当に不安で不安で眠れません。ああ……。
木曾博士: …なるほど。質問は以上です。ありがとうございました。
<録音終了>
終了報告書: インタビューを元にした調査により、福岡県を拠点として活動しているNPO法人「だんでらいおん」がSCP-1185-JPと「たんぽぽ仮面」に関連している可能性が浮上しました。インタビュー終了後、草野にはクラスA記憶処理を行い、警察に身柄を送還しました。
SCP-1185-JPの使用が「たんぽぽ仮面」に何らかの情報を渡している可能性を考慮し、SCP-1185-JPを使用した実験は凍結されました。また、Dクラス職員によってNPO法人「だんでらいおん」への潜入調査が試みられましたが、調査中に不明な原因によって通信が遮断されたため、有効な情報は得られていません。現在、調査に起用したDクラス職員の行方を捜索中です。