対象: 大和 ██
インタビュアー: エージェント・白瀬
備考: インタビューは2002/08/04、大和氏の確保直後に実施された。大和氏が精神的に不安定な状況であった事に留意。インタビューの終了後、大和氏はサイト-81██に移送された。検査の結果、大和氏には一切の異常性がない事が確認されている。現在、処遇を検討中。
<記録開始>
エージェント・白瀬: 大和さん、落ち着きましたか?
大和 ██: 多分。大丈夫だと思います。
エージェント・白瀬: 気分が優れないようでしたら──。
大和 ██: 大丈夫です始めてください。なんかもう安心したっていうか、もう逃げなくていいんだなって感じですから。もう知ってるんですよね、あの部屋で何があったかって。
エージェント・白瀬: 概ねは。しかし我々も事件の全貌を把握している訳ではありませんので。それではインタビューを開始します。
[重要性の低い内容につき省略]
エージェント・白瀬: では、SCP-1195-JPを最初に発見したのはあなただという事ですね?
大和 ██: そうなんじゃないんですか多分。あの部屋借りたのが確か半年前だったと思うんですけど。それからちょっと経ってからですね。普通に仕事から帰って来て、死ぬほど疲れてたんでそのままベッドに行って寝転んだら、まあいたんですよね、あれ。
エージェント・白瀬: それで、その時は。
大和 ██: いや凄いビックリしましたけど、寝ました。
エージェント・白瀬: それだけですか?
大和 ██: それだけですよ。いやまあ、例えば都市伝説みたいにベッドの下にいたりしたら怖いし、逃げたと思いますけど。天井だし。くっついてるから。もうそれ人間じゃないでしょう。泥棒とか変質者じゃないから。だからまあ幻覚かと。流石に目合わせるのは嫌だからソファで寝たんですけどね。
エージェント・白瀬: しかし翌朝になってもSCP-1195-JPはいた筈ですが。
大和 ██: そうですね。でも休む訳にもいかないですから仕事行きました。天井に女がくっついてるんで休みますとか言えないでしょう。言えないですよね。大体部屋にいてもどうにもならないし。
エージェント・白瀬: その時点でSCP-1195-JPの存在は幻覚ではないと言うことには気付いていましたか?
大和 ██: その頃はまだ幻覚だと思ってました。自分では本当か嘘か見分けつかないから幻覚って言うんですよね。これは現実じゃないなって自分で気付くならそれは錯覚だから。まあ明らかにありえない奴が見えちゃうんだから自分の方がおかしいんだなって。病院には行かなかったですけど。忙しかったから。ここで引っ越しとかしてればあんな事にはならなかったのかもしれないけど。
エージェント・白瀬: その後はそのままSCP-1195-JPと、えー、同居を?
大和 ██: はい。慣れるって事は全然無かったんですけど。まあ何か恨まれるような心当たりがある人なら怖いんでしょうけどもそういうのは私無かったし。あれも変な事してくる訳じゃなくて天井にくっついてるだけなんで、今の生活を崩す程の存在じゃないなって言うか。まあ疲れてたって言うか、面倒なのは嫌だなって思ってただけって言うか、今もそうなんですけどね。ほんとに疲れました。もう。
エージェント・白瀬: SCP-1195-JPの存在は無視していた、と。それでは先月、無断欠勤を続けていたのはどのような理由があったのですか?
大和 ██: なんとなくです。
エージェント・白瀬: なんとなく?
大和 ██: あるんですよそういうの。最初は寝坊しただけですよ。ちょっとね。疲れてたから。でも寝てる間に電話に履歴たくさんあって、分からな、分からないかもしれないですけどねあなたには。出にくかったんですよ。それで明日になってもまた連絡来て、無視した理由とか言わなきゃいけないじゃないですか。でも理由なんてないしそう言ったら軽蔑されるでしょう。だから出れなくって、それを繰り返しただけです。それだけです。だから外行かなかったんです。天井の女より同僚の顔の方がよっぽど見たくなかったんです。
エージェント・白瀬: 分かりました。別の質問を──。
大和 ██: すいませんね。
エージェント・白瀬: 構いませんよ。それでは、高田さんについてですが。
大和 ██: 元彼です。
エージェント・白瀬: いえ、今回は高田さんとSCP-1195-JPの関連性についてお願いします。あなたと高田さんの関係についてはこちらでも調べがついていますので。事件のあった夜、あなたが部屋にいた事も。
大和 ██: ああ。でもまあ別に関係はないですけどね。あの時が最初で最後ですよ。いきなり部屋に入ってきてあれを見つけて、凄いビビってましたね。それだけ。
エージェント・白瀬: もう少し詳しくお願いできますか?
大和 ██: 夜中に来たんですよあいつ。寝てたのに。何しに来たのって聞いたら別にいいだろって。答えになってねえよって話でしょう。ぼーっとしててドア開けちゃってたんであいつ無理矢理入ってきて、やめてよって言ったら殴られました。その後ちょっと色々あって、結局ベッドのとこまで行って。で、あいつが見つけたんですよね、あれ。凄い悲鳴上げてて、あんな時じゃなかったら笑ってたと思います。そんな大袈裟に騒ぐ程のものでもないでしょうに。それであいつ、お前あれなんだよって。あんなのと一緒にいるとかお前頭おかしいよって言われて、元カノの部屋に連絡も無しに来て嫌がられたら頬打ってきて万札出してこれでいいんだろ、とか言ってる男よりはおかしくないよって思ったんですけど。でもそれで気付いたんですよね。あれって私の幻覚じゃなくてマジでいるんだなって事。
エージェント・白瀬: 大和さん、今はSCP-1195-JPに関する事だけを話して頂ければ──。
大和 ██: いや話してる最中ですから。で、なんかあいつ警察に電話してたんですよ。頭悪い癖に変なとこで常識的っていうかまあ馬鹿なんですよね。早口で何言ってるのかよく分かんなかったけど、ヤバい女がいる、助けてくれとか言ってるのは聞こえて、だからその時思いついたんです。今だったら、あの天井の女がやった事にできるんじゃないかって。
<記録終了>