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警告: 本報告書はリピューパ・プロトコルに基づいてロックされています。
調査記録: 事案D-8200
発生日時: 2013/04/03
概要: SCP-████-JPの実験に参加していたD-8200が突如錯乱した様子を見せ、担当職員の指示を無視して実験室からの逃亡を試みました。実験前のD-8200に精神的な問題が確認されていなかったこと、及び実験中のSCP-████-JPには精神的影響力が一切確認されていなかったことから新たな特異性発現を危惧し緊急インタビューが行われました。
インタビュー記録
インタビュアー: エージェント・年子狐
対象: D-8200
A・年子狐: インタビューを開始します。実験室から逃亡しようとした理由を教えて下さい。
D-8200: (錯乱した様子で)カベが吹っ飛んでんだよ、なあ。そりゃ逃げるだろよ。
A・年子狐: 落ち着いて下さい、その様な事故は起こっていません。
D-8200: グチャグチャで、なぁ、博士とか手足が、どうなってんだ。
(D-8200が錯乱の傾向を強めたため鎮静剤を投与し休憩を挟む)
D-8200: 悪かった、吹っ飛んだのは今じゃない、ずっとこびり付いてたあの時のバケツだ。
A・年子狐: あの時のバケツとは。
D-8200: ずっと定期面談してたろ、4年ぐらいか。竹林博士の実験で、そうだよ、博士はどうした。
A・年子狐: 落ち着いて下さい。あなたの言う事はよく理解できませんが、1つ述べるなら私の知る限りこのサイトに竹林という職員は所属していません。
D-8200: わけがわからねぇ、なんだよ、俺は8167にいて、おい、ここはどこだよ。
A・年子狐: D-8200、落ち着いて下さい。ここがサイト-8167です。
D-8200: (15秒の沈黙の後、エージェント・年子狐の顔を見つめる)
A・年子狐: D-8200。
(1分ほどの沈黙)
D-8200: わからねぇ。だから話すのは、分かることだけだ。あんたらが俺に付けた名前はD-353だ、8200じゃない。
A・年子狐: しかしあなたは—
D-8200: それとあんたには見覚えがある、死んだよな、バケモノに食われて。
A・年子狐: 何を言っているんですか。
D-8200: なんなんだよ、ここは。
付記: D-8200の経歴を精査した結果、2009年に行われたSCP-1196-JPの実験にD-353として参加して居たことが判明しました。D-353は当時の爆発事故における実験チーム唯一の生存者であり、報告された事故は当該実験を指していると思われます。D-8200の精神鑑定の結果に虚言の兆候は発見できませんでしたが、2010年5月以降の記憶には大きな混乱が見られ、エージェント・年子狐が既に死亡しているなど、現実と大きな剥離が確認されています。また実験以前の定期健診と比して身体的要素にも若干の差異が見られました。エージェント・年子狐は本インタビュー後に精神的な不調を訴えた為、本人の希望によりAクラス記憶処理を実施した上で別プロジェクトへの転属となりました。 —早蕨技能検査官
本事案の調査のためにSCP-████-JP/SCP-1196-JP研究班による合同調査チームが組織されました。SCP-1196-JPに関しては第3回実験の塗布者であるD-4566の報告に依然変化はありません。SCP-████-JPに関しては新たな異常性の特定に向けての実験が継続中です。 —宮迫博士
追記: D-353の証言に基づき『文書-353』が作成されました。
追記2: 調査の結果、SCP-████-JPが事案D-8200に何らかの形で関与した可能性は極めて低いと判断され調査チームの再編が行われました。SCP-1196-JPとの関連性に関しては調査が継続中ですが、SCP-1196-JPの研究記録には不審な点が発見されました。指摘された点に関して一部注記した記録を以下に示します。
実験記録1196 -1 日付2009/04/29
対象: 60cm×40cm×35cmの段ボール箱。
実験場所: サイト-8167、第4東棟208実験室。
実施者: D-56。
監督者: 磯上博士。
実施方法: 床に置いた対象の上部にSCP-1196-JP-2を約3グラム塗布する。
検証結果: 208実験室を中心として衝撃波を伴う大規模な破壊が発生しました。事後に対象は発見できず、破壊過程で磨耗し消滅したと考えられています。実験による第4東棟の全壊と第3東棟の一部損壊に伴い、█件の収容違反が発生しました。本実験による死傷者数は計78名(死亡者: 28名/負傷者: 50名)です。担当研究員は竹林博士に引き継がれ、D-56は別オブジェクトへの再配置が行われました。
分析: [データ破損]
付記: 現場の破壊痕跡から、対象が音速を超え移動した事が破壊の発生要因だと推測されています。
実験記録1196 -2 日付2009/05/11
対象: バケツ内の水道水2リットル。
実験場所: サイト-8167、第2東棟301実験室。
実施者: D-353。
担当研究員: 竹林博士。
実施方法: バケツ内の対象にSCP-1196-JP-2を約5グラム滴下する。
検証結果: 201実験室を中心とした大規模な爆発が発生しました。この爆発により第2東棟が全壊、補修作業が行われていた第3東棟が倒壊しました。本実験による死傷者数は計82名(死亡者: 49名/負傷者: 33名)です。担当研究員は宮迫博士に引き継がれ、D-353は別オブジェクトへの再配置が行われました。
分析: [データ破損]
付記: 爆発の原因は実験1と同様に対象の高速移動、及びそれに伴う加熱だと判断されました。
上記2回の実験結果からはSCP-1196-JPの使用に伴う多大なリスクを推察することが出来ます。しかしながら第3回の実験計画はそれらのリスクへの如何なる対策も伴わずに承認、実行されています。またSCP-1196-JPの塗布による異常性が第3回実験とそれ以外で明確に異なっているにも関わらず、第3回実験記録に一切の言及がない点も不自然に感じられます。
SCP-1196-JP収容タイムライン
- 2006/04/03
- 「KONISHIKI」入居ビルが全壊、建築不備及び爆発事故として処理。SCP-1196-JP関係者の生存は絶望的と判断。
- 2009/04/03
- 東京都██区で沢木██宅を中心に大規模な破壊が発生、ガス爆発として処理。沢木氏を含む██名の死亡を確認。沢木氏の娘である███が保護。
- 2009/04/04
- [データ破損] 沢木氏へのインタビュー及び、オブジェクトの回収を実施。沢木氏及び家族にはAクラス記憶処理が行われた。
- 2009/04/10
- 沢木氏がSCP-1196-JPを購入した██文具店よりオブジェクト71個を回収。
- 2009/04/14
- 機動部隊ほ-2("忍者狸")第甲班による「KONISHIKI」への強制調査の実施。 [データ破損]
- 2009/04/29
- 実験1196 -1の実施。
- 2009/05/11
- 実験1196 -2の実施。
- 2010/05/31
- 実験1196 -3の実施。
- 2013/04/03
- 事案D-8200の発生。
初期収容インタビュー/沢木██氏
[ドキュメントは存在しません]
調査報告/KONISHIKI
[ドキュメントは存在しません]
上記の研究記録に改竄の痕跡は無く、実験申請/承認段階にも不正なプロセスは確認できませんでした。SCP-1196-JP及び研究チームは監察対象として再分類されました。宮迫博士は彼自身の申し出により一般業務から隔離され、監視状態に置かれています。—特命調査チーム・天封
追記3: 宮迫博士よりD-4566の雇用形態変更が申請され、承認されました。また過去の事案/実験の関連人物への追跡調査が行われました。
- KONISHIKI関連人物: 不明
- 沢木 ███: 2012/02/04に交通事故で死亡
- D-56(実験-1実施者): 再配置後にSCP-███-JPの収容違反で終了済み
追記4: SCP-1196-JPの性質解明に向けた追加実験の承認に伴い、サイト-8167は暫定的なSCP-1196-JP専用実験区画に指定されました。以下の実験は時間異常部門による監督の下で元SCP-1196-JP担当チームにより実施されたものです。
追加実験記録1_2013/07/01
実験目的: 非接触検査によるSCP-1196-JPの性質の解明。
実験手順: SCP-1196-JP-2が充填されたSCP-1196-JP-1を60℃で加熱、攪拌する。
実験結果: 4:6の割合で二種類の溶液への分離を確認。以降、比重の小さい4割の溶液をSCP-1196-JP-2-a、比重の大きい6割をSCP-1196-JP-2-bと分類する。
追加実験記録2_2013/07/04
実験目的: SCP-1196-JP-2-aの性質の解明。
実験担当: D-122、起爆装置付きの首輪を装着。
実験対象: 銅製の鈴(10g)。
実験手順: コンクリート製の隔離実験棟において対象にSCP-1196-JP-2-aを約2g塗布する。
実験結果: 対象は消失し、大きさの異なる多数の反響音が同時に発生した。
分析: D-122は対象が床面に落下し、3度跳ねた後に静止した様子を知覚しました。SCP-1196-JP-2-aは時間に対する固着性を発揮する物質であると推測します。
追記_2014/08/12:この記録はD-122の証言を元に現在の形に修正されたものです。修正前の実験結果では対象は消失することなく床面に落下し、塗布したSCP-1196-JP-2-aのみ消失した事が報告されていました。
調査報告
- SCP-1196-JP-2は二種の溶液の混合物である
- SCP-1196-JP-2-aは対象物を時間に接着する
- SCP-1196-JP-2-aの効果は永続的なものではなく、無効化と同時に対象物は塗布時点から剥離する
- 塗布者は塗布時点から一定時間経過後に剥離を認識し、剥離以前と以降の差異を認知する
- 剥離後、その他の観察者にとって通常時間軸における塗布時点と剥離時点は同一のものとして認識される
以上が追加実験結果及び『文書-323』から推測されるSCP-1196-JP-2の特性です。SCP-1196-JP-2-aの無効化要因については、時間張力の過負荷を軸とした理論が構築中です。SCP-1196-JP-2-a単体であれば剥離がもたらす影響は極めて少なく、塗布者にとっての僅かな再構築として認識されるものです。—時間異常部門 ██
SCP-1196-JP-2-bの塗布実験は単体での塗布難度、破壊的影響を考慮して無期限に延期されています。現在はオブジェクトの形状的意義、及び実験結果から暫定的に空間的な固着性を付与するものとみなされています。SCP-1196-JP-2-bが対象物を固定する座標に関しては不明な点が多く、地球の自転・公転影響を受けない可能性も指摘されています。—特命調査チーム・天封
追記5: [RPPライブラリに移動済み]
追記6: 2013/07/15 リピューパ・プロトコルの実施が決定されました。
人事通達
SCP-1196-JP研究主任: 白瀬 文彦
Site-8167管理官: 宮迫 竜也
付随措置
- Lock::ScipNET-1196-jp
- Lock::8167 gate
備考
[実施内容] RPPライブラリを参照
[終了条件] イベント:8167の発生
[プロジェクト増員] 5日前までに通達
[外部通信] 研究主任が生体認証デバイスを介して行う
[実験許可] 1196-JP/4クリアランス所持者3名以上の承認
…login rpp library…
…check device…
T: Internal 8167
ようこそ。
あるいはお帰りと言うべきだろうか。
今日からここが君の職場だ。この記録を読み終わり次第、幾つかのローカルな情報の共有が行われる事になるだろう。
既に察しているかもしれないが、君はやがて2010年5月31日にここで死亡した事になる内の1人だ。数ヶ月後かあるいは数年後か、CKクラスの再構築は私たちのいない今を作り上げるだろう。そして回避不能な再構築の緩和手段として、我々はリピューパ・プロトコルを選択した。君はサイト-8167という籠の住人となり、その籠は小さな窓を除いて世界から隔絶されている。
リピューパ・プロトコルは一見すると、私たちを本来の棺桶に引き戻し歴史の修正力にすり潰させる無慈悲な石臼だ。君は考えているかもしれない、自身があの日以降に行った財団への貢献は全て失われるのだろうかと。私は、そうは思わない。私が近年提案した初期収容手順の幾つかは、思い返せば第2回実験で殉職した竹林の専門分野を活用したものだった。当時の業務割り当てや提案のプロセスに不審な点は一切無かったが、オブジェクトの異常性に比して策定はスムーズに進んでいた。『文書-353』を読まずともこれらが再構築前に誰によって成し遂げられたのか、私には確信できる。先人から託された確保・収容・保護の理念に則る限り、私たちのいない歴史でも財団はやり遂げるだろう。
そして籠の中でさえ我々には出来る事がある。
SCP-1196-JPが収容され3度も実験が繰り返された事実は、オブジェクトによる再構築が全てを書き換える事が出来ないという証明でもある。我々の仕事は、調べ残すことだ。白瀬はお世辞にも筋がいいとは言えないが、ロクデナシなりに私の後進として育てる時間は十分にあった。再構築の後、アイツが白瀬研究助手なのかD-4566なのか、それとも別の何者かなのかは定かでないが、サイト-8167の成果は必ずや届けられる。
ここは断じてホスピスなどではない。確実に到来する再構築に挑む人類の魁だ。
我々はその日まで、財団職員であり続けよう。
改めて、ようこそサイト-8167へ。
我々は君を歓迎する。