SCP-1200-KO
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アイテム番号: SCP-1200-KO

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: 睡眠異常部門に所属するSCP-1200-KO担当職員は、SCP-1200-KO-1の追跡業務に従事します。財団のWebクローラーは、オンラインコミュニティおよびSNSを介して、SCP-1200-KOの一般社会における発生を継続的に監視します。

説明: SCP-1200-KOは、2022年12月4日、一日限定でクリアランスレベル1から5のすべての職員における睡眠中に発生した異常現象です。個々の認識抵抗値(CRV)とは無関係に、5分以上の睡眠を取ったすべての職員にSCP-1200-KOが発生したと推測されています。

SCP-1200-KOの影響を受けた職員は、共通して夢の中でSCP-1200-KO-1と接触し、10分から7時間程度の対話を行いました。対話内容は個々で異なりますが、多くの職員は目覚めた後にSCP-1200-KOを忘却していました。しかし、簡易催眠技術を使用することで、大半の職員がSCP-1200-KOの詳細を再認識することができました。

SCP-1200-KO-1は、SCP-1200-KO内に出現する夢界実体です。SCP-1200-KO-1は、10代から80代の男女、ダックスフンド、逆さまの地球儀、紫色の泡が付着したシャワーボール、水色の傘など、多様な姿を取っていましたが、これらの形態はいずれもSCP-1200-KO-1の本来の姿ではないと推測されています。すべてのSCP-1200-KOにおいて、SCP-1200-KO-1は職員が自分を認識できたことに驚き、SCP-1200-KOの発生自体を「起こるべきではなかったミス」と弁明しました。しかし、SCP-1200-KO-1との対話中、多くの職員はSCP-1200-KO-1に対して「対話を主導し、助けようとしている」印象を受けたと証言しています。

SCP-1200-KO内の空間は職員ごとに異なり、浮遊する黒板がある水族館、天井のないペントハウス、ヴィーガンレストラン、映画『シャイニング』のオーバールックホテルのロビーなど、さまざまな場所が確認されています。

以下に、SCP-1200-KO発生中に記録されたSCP-1200-KO-1との対話記録を示します。

SCP-1200-KO発生記録00005
対象: サイト-04K 睡眠異常部門 ユ・イギョン研究員
備考: ユ・イギョン研究員は、28番睡眠記録装置を点検するために睡眠薬を服用し、睡眠を取っていた。点検時間は5分間だった。


ユ・イギョン研究員が目を覚ます。周囲の風景はサイト-04K,B3棟の3番講義室である。ユ・イギョン研究員は戸惑いながら周囲を見渡し、SCP-1200-KO-1と目が合う。SCP-1200-KO-1は20代半ばの女性の姿をしており、白いスーツを着て、靴を磨いていた。

ユ・イギョン研究員/SCP-1200-KO-1: うわ、びっくりした。

ユ・イギョン研究員: あの、あなたは誰ですか?

SCP-1200-KO-1: え、私が見えるの?

ユ・イギョン研究員: ええと…はい、そうみたいです。何をしているんですか?

SCP-1200-KO-1: まあ…見ての通りよ。白いスーツを着て靴を磨いているの。あなたは何をしていたの?

ユ・イギョン研究員: 私ですか?私は…えっと…

SCP-1200-KO-1: ゆっくり答えて。靴磨きって意外と時間のかかる作業なの。

ユ・イギョン研究員: …睡眠薬を飲んだんですけど。まだ眠っているのか?これは夢なのか…

SCP-1200-KO-1: 私に聞いているのなら、答えは「はい」よ。まだ眠っているみたいね。

ユ・イギョン研究員: ユ・イギョン研究員は親指の爪を噛み始める。 そ、そんなはずはない。こんなのおかしい。こんなに深く眠れるわけがない。

SCP-1200-KO-1: ああ…ごめんなさい。実は、あなたがこんな夢を見る必要はなかったのよ。私のミスなの。 SCP-1200-KO-1は靴とブラシを床に置く。

ユ・イギョン研究員: あの、今の話を聞いた限りでは、この夢を見させたのはあなたということになりますよね?そうなんですか?

SCP-1200-KO-1: あなたが聞きたいのは、私が異常な存在かどうかってことでしょう?多分、その通り。

ユ・イギョン研究員: 多分?今「多分」って言いましたよね? ユ・イギョン研究員は息を荒くしながら後退し始める。

SCP-1200-KO-1: ねえ、ちょっと待って。確かにミスしたのは私だけど、まずは落ち着いてくれる?

ユ・イギョン研究員: なぜ私にこんなことが?目を覚ませ、目を覚まさなくては! ユ・イギョン研究員は舌を噛む。

SCP-1200-KO-1: SCP-1200-KO-1がユ・イギョン研究員に近づく。 ねえ-

ユ・イギョン研究員: 近寄るな! ユ・イギョン研究員は振り向いて逃げようとするが、階段につまずいて転んでしまう。

SCP-1200-KO-1: SCP-1200-KO-1が駆け寄る。 大丈夫?たとえ夢の中でも怪我をしたら悲しいから。

ユ・イギョン研究員は過呼吸の症状を示す。すると、SCP-1200-KO-1はズボンの後ろポケットから紙袋を取り出し、ユ・イギョン研究員の手に握らせる。

SCP-1200-KO-1: 落ち着いて、私はあなたを傷つけるつもりはないから。あなたを傷つけようとしているわけじゃないの。 SCP-1200-KO-1はユ・イギョン研究員の名札を確認する。 ユ・イギョンさん?これを鼻と口に当てて呼吸して。落ち着いて。

ユ・イギョン研究員は紙袋で呼吸を始める。約2分後、過呼吸の症状が収まる。

SCP-1200-KO-1: さっき睡眠薬を飲んだって言ってたけど、どのくらい飲んだの?

ユ・イギョン研究員: えっと、1錠です。すごく弱いやつを…

SCP-1200-KO-1: 1錠ならすぐに目が覚めるでしょうね。落ち着いたなら質問してもいいかしら?さっきはどうしてそんなに怖がっていたの?

ユ・イギョン研究員: …あなたが異常な存在だと言ったから…私に何をするかわからないでしょう…

SCP-1200-KO-1: あなたを永遠に夢の中に閉じ込めて起きられなくすると思ったの?

ユ・イギョン研究員は頷く。

SCP-1200-KO-1: そんなことをする趣味はないわよ。まあ、そんな心配するってことはやっぱり財団職員なのね。

ユ・イギョン研究員: でも、私が財団職員だってどうして…

SCP-1200-KO-1: 名札を付けてるじゃない。SCP財団 サイト-04K 睡眠異常部門って。それはさておき、普段から眠りが浅いの?

ユ・イギョン研究員: え?ええ…眠れないというより、怖いのであまり寝ないようにしてます。

SCP-1200-KO-1: 怖い?

ユ・イギョン研究員: 睡眠異常部門では…10年以上起きられない人もいるし、夢に現れる悪夢のようなものを研究しなきゃいけないし、昨日まで話していた人が二度と目覚めなくなることもあるので…だからすごく怖いんです。眠らなきゃいけないのに、次は自分かもしれないって思うと…

SCP-1200-KO-1: じゃあ、普段は眠る時間に何をしてるの?どうやって時間を潰してるの?

ユ・イギョン研究員: 普段は研究とか残業を…一昨日は韓国とポルトガルのサッカーを見ました。韓国が勝ってワールドカップの16強に進んだんです。

SCP-1200-KO-1: すごいわね。それじゃあ、普段はずっとそんな感じで短い睡眠を取ってるの?

ユ・イギョン研究員: はい。でも、さすがに全く眠らないわけにはいかないですから。

SCP-1200-KO-1: それ、大変じゃないの?どのくらいそんな生活を続けてるの?

ユ・イギョン研究員: 大変じゃない…って言ったら嘘になりますね。もう4年くらいでしょうか?正直、もう限界かもしれません。4年もこの仕事をしてきたのに、いまだにこんなに怖くて震えてる自分を見ると、この仕事が自分に合ってないのかもって思うこともあります。

SCP-1200-KO-1: そんなこと思ってるの?

ユ・イギョン研究員: 私だけじゃなくて、同じ部門の人たちもそう思ってるみたいです。4年間、親しい人や頼れる人もいなくて…この仕事自体も怖いんですが、部門の人たちも怖いんです。なんだか、自分だけ仲間外れにされてる気がして…

SCP-1200-KO-1: いや、あなたが本当にそう思っているかって聞いてるの。本当に止める時が来たと思っているのか、辞めるべき時だと感じているのか、終わりにするべきだと思っているのか。それはあなたが決めることだよ。どう思うの?

ユ・イギョン研究員: 私は…

SCP-1200-KO-1: ああ、ごめんなさい。今すぐ答えろって言うわけじゃないの。答えを求めるのはあなた自身だし、その答えを出すのもあなただからね。

ユ・イギョン研究員は沈黙する。

SCP-1200-KO-1: ここはあなたの夢なの。私の夢でも、他の誰かの夢でもない。あなたが望むなら、あなたは目を覚ますことができる。あなたの人生も同じ。振り払いたいなら、いつだって振り払うことができる。それが人生で手にできる特権。あなたが怖がるのは当然なの。あなたみたいな仕事をしてる人は多くないし、そこで3年以上も耐え抜いた人はもっと少ない。そうでしょう?

ユ・イギョン研究員は頷く。

SCP-1200-KO-1: 怖いのは、それだけ自分の人生を大切に思ってるからじゃない?大切だから、手放したくないの。もし大切じゃなかったら、手から離れても何も思わないでしょ?だから、大事に持ってる時に自分で決めなきゃいけないの。自分で止めるのと、無理に止められるのって全然違うから。ちょっと話を変えましょうか。がんって知ってる?

ユ・イギョン研究員は頷く。

SCP-1200-KO-1: ただ確認したかっただけ。韓国人が生きてる間にがんになる確率は35%以上だって知ってた?思ったより高いでしょ?3人に1人ががんになって、そのうち30%は早期発見できずに亡くなるの。だいたい9人に1人くらいね。じゃあ、あなたが眠りから覚めなくなる確率ってどのくらい?簡単に計算してみましょうか。1年は365日で、あと60年生きて、毎日平均6時間寝るとする。そうすると、13万1400時間くらいになる。あなたはこれから13万1400時間寝ることになるの。そのうち、たった一度でもミスをすれば終わり。13万1400分の1の確率ってこと。もちろん、これはざっくりした計算だけどね。でも、韓国人が変な出来事で命を落とす確率ってどれくらいでしょうね?

ユ・イギョン研究員は沈黙する。

SCP-1200-KO-1: SCP-1200-KO-1が微笑む。 結局、私が言いたいのは、あなたが怖がるのは当然だってこと。確率は味方じゃないし、私たちの人生は不条理でいっぱいだからね。道を歩いていて雷に打たれるかもしれないし、ツナ缶を開けるときに手を切って失血死することだってある世の中でしょ?だから、あなたが怖がるほど、あなたには自分の人生を決める権利があるってことなの。確率に賭けて進むか、それともすっぱり手を引いて進むか。どちらを選んでも、あなたは前に進める。それが人生だから。

ユ・イギョン研究員が何か言おうと口を開くが、点検時間の終了を知らせる睡眠記録装置のアラームが鳴り始める。

SCP-1200-KO-1: これ、何の音?

ユ・イギョン研究員: あ、睡眠記録装置のアラームです!5分後に鳴るように設定してたんです!

SCP-1200-KO-1: 睡眠記録装置?困ったわね、じゃあこの会話も記録されてるわけ?

ユ・イギョン研究員: ええ、多分そうです!というか、そうです!

SCP-1200-KO-1: なるほど、これで正式な番号がもらえるってわけね。次に会うことがあったら、私の番号を教えてね!


追記: ユ・イギョン研究員は何の問題もなく目を覚ました。


SCP-1200-KO発生記録000016
対象: 機動部隊オミクロン・ロー ("ドリームチーム")ジェームス・マクウェル中尉
備考: ジェイソン・マクウェル中尉は、一人で明晰夢訓練を行っていた。以下の記録は夢から覚めた後に自ら記録したものを、インタビュー形式で再構成したものである。


ジェームス・マクウェル中尉は、体育館でバスケットゴールに向けてシュートの練習をしていた。天井のスピーカーからは、Anthony Davisの『Variations In Dream-time』が流れていた。バスケットボールがバックボードに跳ね返り、マクウェル中尉はボールを拾うために振り返った。その瞬間、ジーンズを履き、フィラデルフィア・76ersのロゴが描かれたTシャツに白衣を羽織り、操縦士ゴーグルをかけた10代の少年の姿をしたSCP-1200-KO-1に気付いた。

ジェームス・マクウェル中尉: 誰だ?

SCP-1200-KO-1: ん?

マクウェル中尉がバスケットボールをSCP-1200-KO-1に投げる。SCP-1200-KO-1は問題なくボールをキャッチする。

ジェームス・マクウェル中尉: キャッチできないだろうと思って投げたんだが。もう一度聞く、君は誰だ?

SCP-1200-KO-1: あちゃー、僕の姿が見えちゃってるんだ。

ジェームス・マクウェル中尉: ああ、もちろん見えているよ。ボールを返してもらえるか?

SCP-1200-KO-1: うん、いいよ。 SCP-1200-KO-1がバスケットボールを地面にバウンドさせて中尉に返す。

ジェームス・マクウェル中尉: 俺の言葉をしっかり理解できるんだな?

SCP-1200-KO-1: ん?

ジェームス・マクウェル中尉: ボールをキャッチして、俺の言葉を理解して、そしてボールを返してくれた。会話もできるし、相互作用も可能みたいだ。だが、確実に言えるのは、君は私の夢の一部じゃないってことだ。だからもう一度聞く、君は何者だ?

SCP-1200-KO-1: うーん…それはどうかな?僕も君の夢の一部かもしれないよ。10歳の頃のこと覚えてない?隣の家に歯列矯正してた友達が…

ジェームス・マクウェル中尉: まず第一に、10歳の頃、俺には友達なんていなかった。そして第二に、君は矯正器具をしてない。

SCP-1200-KO-1: ああ、やっちゃった。そうさ、僕は招かざる客だよ。

ジェームス・マクウェル中尉: それが答えか。ずいぶん正直だな。

SCP-1200-KO-1: 全部僕のミスなんだよ。最初から最後までね。

ジェームス・マクウェル中尉: 君がどんなミスをしたのかを具体的に教えてくれるとありがたいんだが?

SCP-1200-KO-1: 君は僕を見るべきじゃなかった。そもそも出会うべきでもなかったんだ。今起きていることすべてが、本来なら起こるべきじゃないことなんだよ。

ジェームス・マクウェル中尉: 君のミスだってことは、元々別の目的があったんだな?

SCP-1200-KO-1: 遠回しに尋問してるんだ?機動部隊員らしいね。でも、その質問には答えられない。

ジェームス・マクウェル中尉: なぜ俺が財団の部隊に所属してることを知ってるんだ?

SCP-1200-KO-1: それは…ただ知ってるってだけだよ。僕が異常な存在ってことはもう理解してるでしょ?だから、受け入れてよ。

ジェームス・マクウェル中尉: まあ、それはそうとして…Anthony Davisの『Variations In Dream-time』が終わり、Patrick O'Hearnの『Ancient Dreams』が流れ始める。

SCP-1200-KO-1: ジャズが好きなんだ?それともちょっと狙って選んだの?『ドリーム・タイム』の次は『エンシェント・ドリームス』って。

ジェームス・マクウェル中尉: 半分は意図的かな。

SCP-1200-KO-1: もう半分は?

ジェームス・マクウェル中尉: 俺にもよくわからない。今日はジャズの気分だっただけだ。

SCP-1200-KO-1: SCP-1200-KO-1が周囲を見回す。 明晰夢にしては普通すぎない?現実とそんなに変わらないじゃん。普通は現実と夢を区別するために、もっと変な感じにするもんじゃない?

ジェームス・マクウェル中尉: その心配はいらない。変なのは目の前にいるからな。

SCP-1200-KO-1: 変だって?どこが変なわけ?SCP-1200-KO-1が両腕を広げて抗議する仕草を見せる。

ジェームス・マクウェル中尉: 白衣にパイロットのゴーグル、それにフィラデルフィア76ersのTシャツだぞ?自覚がないのか?

SCP-1200-KO-1: うわ、人のファッションをバカにするわけ?

ジェームス・マクウェル中尉: どうやら図星だったみたいだな。痛かったか?

SCP-1200-KO-1: そういうことしてくるんだ?やられた分、僕もやり返そうかな。

ジェームス・マクウェル中尉: お好きにどうぞ。

SCP-1200-KO-1: うーん…何を聞こうかな…そういえば、10歳の時に友達がいなかったって言ってたよね。どういうこと?

ジェームス・マクウェル中尉: ああ、それか?母が過保護だったんだ。

SCP-1200-KO-1: なるほどね。僕はてっきりお泊り会でおねしょしたとか、ハロウィンで一緒に仮装する友達がいなかったとか、そんなことだと思ってたよ。

ジェームス・マクウェル中尉: おねしょのほうがもっと悲惨だろうな。そこまで深刻なことじゃない。4歳の時、両親が性格の不一致で離婚して、母が俺に執着し始めた。まあ、ホームスクーリングのせいで『スター・トレック』や『ワンダー・イヤーズ』みたいなテレビ番組を見れなかっただけのことさ。あの頃の唯一の楽しみと言ったら、火曜日に体育館に行って一人でバスケットボールの練習をすることかな。

SCP-1200-KO-1: なるほど、じゃあここが…

ジェームス・マクウェル中尉: ジェームス・マクウェル中尉が肩をすくめてゴールにシュートを放つ。 おかげでバスケの腕前はかなり上達したよ。

SCP-1200-KO-1: なんか、余計なこと聞いちゃったかな。

ジェームス・マクウェル中尉: そんなことはない。俺が大学生になってからはもう束縛しなくなったからな。大学でバスケのMVPを獲った時には、母もお祝いしてくれたよ。

SCP-1200-KO-1が黙り込む。

ジェームス・マクウェル中尉: 今思えば、母に対して悪い思い出はあまりないんだ。ちょっとした…少しの後悔はあるが。

SCP-1200-KO-1: 後悔って?

ジェームス・マクウェル中尉: ただの反抗心だよ。社会に出て初めて感じたショックや反発を母に向けてしまったんだ。母が寂しがってるのを知っていながら、ほとんど会いに行かなかった。卒業して財団に務めてからも機密保護のせいで仕事について話せなかったから、母は自分のせいで俺が社会に適応できていないと思い込んだ。それを訂正することすらできずに、会いに行く回数がどんどん減って、結局最期の時にも立ち会えなかったんだ。

SCP-1200-KO-1: それは気の毒だったね。

ジェームス・マクウェル中尉: ありがとう。でも思い返してみると、後悔だけじゃなくて恐れもあった気がするんだ。

SCP-1200-KO-1: お母さんが怖かったの?

ジェームス・マクウェル中尉: 母が怖かったわけじゃない。自分の両親みたいになることが怖かったんだ。財団に入ってみたら、両親みたいな人がたくさんいた。傷ついてすべてを投げ出して去ってしまった人や、残ったものに執着して過去に囚われた人たち。そんな人たちがやたらと目についたんだ。

SCP-1200-KO-1: 今の話に合ってるかは分からないけど、「子どもが親と同じ悩みを抱えた時、それが親と共に立ち向かう瞬間だ」って言うよね。

ジェームス・マクウェル中尉: 半分デタラメみたいな言葉だな?

SCP-1200-KO-1: 半分しかデタラメじゃないってこと?

ジェームス・マクウェル中尉: そういえば、君にこんな話をしていていいのだろうか。

SCP-1200-KO-1: 話したくないなら無理にすることはないよ。

ジェームス・マクウェル中尉: この辺で切り上げるべきなんだろうが…いっそ全部話してしまおうか。君の推測はきっと当たっているだろうし。君の推測に対する俺の推測が正しければだが。

Patrick O'Hearnの『Ancient Dreams』の音量が下がり、ゆっくりと曲が終わる。

SCP-1200-KO-1: 続けて。

ジェームス・マクウェル中尉: お互いに好意を寄せている相手がいるんだ。結婚を真剣に考えるほどの。

SCP-1200-KO-1: それは素敵だね。でも、何が問題なの?

ジェームス・マクウェル中尉: 自分はこのままでいいのかと不安になるんだ。俺は軍人で、彼女は研究員なんだ。俺は命令があればどこへでも行かなければいけないし、任務によっては命の危険も伴う。でも彼女は特別なことがない限り、担当するSCPオブジェクトに合わせてサイトに滞在しなければならない。要するに、彼女を無責任に傷つけたくないんだ。

SCP-1200-KO-1: そんな心配をしていたんだね。

ジェームス・マクウェル中尉: 実際のところ、結婚なんて大したことじゃないとも思うんだ。財団職員同士が事実婚で済ませるケースは多いし。でも、彼女は家族関係でたくさん傷ついた人なんだ。彼女は本当に頼れる関係を望んでいる。例えば新しい家族のような、ね。

SCP-1200-KO-1: つまり、端的に言うと、君は彼女が望む「家族」としての役割を果たせないかもしれないという不安があるんだね。

ジェームス・マクウェル中尉: ああ。自分自身の問題もあるが、避けられない理由もある。

SCP-1200-KO-1: ちょっと待って、君自身の問題って何のこと?

ジェームス・マクウェル中尉: さっき言わなかったか?俺は自分の感情のせいで、母の最期に立ち会えなかったんだ。父みたいに。もちろん、父にも父なりの事情はあったんだろうが、俺にもそれなりの事情があったんだ。でも重要なのは、俺は傷つけてしまったということだ。絶対に傷つけてはいけない人を。さっき俺が言った「恐れ」とは、そのことなんだ。

SCP-1200-KO-1: うーん、僕がひと言付け加えるならその傷は君自身が与えているようなものだよ。

ジェームス・マクウェル中尉: 何だって?

SCP-1200-KO-1: すべてのものには、手に入れる時期と手放す時期があるんだよ。君の母親が最終的に君を手放したようにね。もちろん、君の罪悪感が消えるわけじゃない。でも、だからといって君が親や自分の過去を引きずって罪の象徴を自分に重ねる必要はないんだ。

ジェームス・マクウェル中尉は沈黙する。

SCP-1200-KO-1: そんな過去の象徴を背負って自分を責める必要も、未来を不安に感じて遠ざける必要もないんだ。君は君の目の前に広がる「今」を生きればいいんだよ。無限に続く目の前の現在を。

ジェームス・マクウェル中尉: そうか、でも…

SCP-1200-KO-1: そうだよね、分かってる。ごめんね、こんな話は綺麗事だと思うかもしれない。出来過ぎた話だと思うかもしれない。罪悪感を抱いているのは君自身だし、不安を感じているのも君なんだから。そして何より、これから生きていくのも君なんだ。でもここで重要なのは、主役は君だってことなんだよ。君が自らに負わせているその過去の象徴じゃないんだ。君の父も、君の母も、罪悪感も、何者でも君の代わりに進み、生きていくことはできない。過ちを繰り返さないのも、恋人と共に生きるかどうかを選ぶのも、それはすべて君自身が決めることだ。「象」を自分に押し付けないで。それは君じゃないんだから。

ジェームス・マクウェル中尉は再び沈黙する。

SCP-1200-KO-1: もちろん、これから君が過ちを犯さないというわけじゃない。人生には過ちがあり、人には傷があるもの。でも大事なのは、その過ちを乗り越えて、立ち直って、前に進むのは君だってことなんだ。君の過去の象徴は止まっているけど、君は前に進める。そして君が言っていた「避けられない理由」というのは、君が軍人だってこと?

ジェームス・マクウェル中尉: ああ、そうだ。

SCP-1200-KO-1: 君の恋人はその避けられない理由があったとしても、君を望んでいるんじゃない?彼女が君を見る目に、君の過去や避けられない理由が映ってると思う?

ジェームス・マクウェル中尉: 俺は…

SCP-1200-KO-1: 自信を持って。君が傷つけたかもしれない、あるいは傷つけるかもしれない人を考えるのではなく、君を愛し、誇りに思っている人を考えるんだ。君は去って傷を与えた父親じゃなくて、バスケのMVPを獲って母親を喜ばせた息子であり、困難な状況の中でも頼られ、共に歩んでいきたいと思われる恋人なんだよ。

ジェームス・マクウェル中尉の机にある時計が鳴り始める。中尉はすぐに目を覚まし、SCP-1200-KO-1は消失した。


追記: ジェームズ・マクウェル中尉は問題なく目を覚ました。


SCP-1200-KO発生記録[編集済み]
対象: [編集済み]
備考: 特異なことに、[編集済み]は夢の初めからSCP-1200-KO-1と会話をしていた。


SCP-1200-KO-1は、頭がカエンタケに置き換わったサラリーマンの姿をしている。[編集済み]とSCP-1200-KO-1は、トースト専門店の屋外テーブルに座り、バター、チーズ、ピーナッツバター、目玉焼きなどが盛り付けられたトーストを手に持ち、食べようとしていたところだった。

[編集済み]: それで私は…ちょっと待て。

SCP-1200-KO-1: SCP-1200-KO-1がトーストをキノコの頭に持っていこうとして止まる。 ん?何だ?

[編集済み]: 私はなぜここにいるんだ?

SCP-1200-KO-1: ああ、参ったな。

[編集済み]: 見たところ、仕事がうまくいってないようだな?

SCP-1200-KO-1: 私のミスだ。もう少し自然にやり過ごせると思ってたんだが…

[編集済み]: そうだな、確かにミスのようだ。それで、その頭でどうやってトーストを食べるつもりだったんだ?

SCP-1200-KO-1: SCP-1200-KO-1がトーストを見つめ、皿に戻す。 そこは気にしないでくれ。

[編集済み]: じゃあ、他に気にするべきことがあるだろうな。君が一体何者かは分からないが、私と話すべきじゃないんじゃないか?そうだろう?

SCP-1200-KO-1: 流石だな。まさにその通り。

[編集済み]: 呆れるな。君は一体何者なんだ?

SCP-1200-KO-1: まあ、サラリーマンみたいなもんだよ。社員の福利厚生に一役買ってると思ってくれればいい。それ以上のことは知ろうとしない方が身のためだ。

[編集済み]: 詳しく話す気はないってわけか?じゃあ、何を話せばいいんだ?

SCP-1200-KO-1: そうだな…財団の話でもしようか?

[編集済み]: サラリーマン風情と財団の話をする気はないんだが。

SCP-1200-KO-1: ひどいなぁ。じゃあ、私の話でも聞いてくれよ。

[編集済み]が片手でトーストを持って食べながら、もう一方の手で続けろという合図を送る。

SCP-1200-KO-1: 君は…いや、君自身だな。肩書きや役職は省略するけど、何年もこの大きな組織を率いてきた。きっと疲れ果てたことだってあるだろう。世界の理や秩序を無視するこの不条理な現実に、無力感を抱いたこともあっただろう。数えきれない苦渋の決断を下し、無数の命がただの数字として消えていくのを見て、吐きそうになったこともあっただろう。

[編集済み]: 一体何が言いたいんだ?

SCP-1200-KO-1: きっと、すべてを投げ出したくなった瞬間もあっただろう。理不尽なほどに重い仕事や、押し寄せる無数の敵にうんざりしたこともあっただろう。財団だとか人類だとか、そんな大義名分よりもずっと重くのしかかる疲労感、そういうものがあったんじゃないか?

[編集済み]は沈黙する。

SCP-1200-KO-1: 何を言いたいかって?私が言いたいのは、君は本当に頑張っているってことだ。だから、ちょっと突拍子もない話を聞いてくれよ。

[編集済み]は沈黙する。

SCP-1200-KO-1: 今、この瞬間を考えてみてくれ。私たちが生きているこの瞬間だ。この一瞬一瞬が「今」だ。そして、この「今」は永遠に続いていく。もちろん、この永遠も終わりが来るかもしれない。最後の星が消え、ブラックホールがすべてを飲み込み、宇宙全体が凍りつく時が来るかもしれない。でも、その終わりは本当にあると思うか?この不条理な宇宙が、そんなに簡単に終わるとは思えないな。きっとまた始まるんだ。無限の瞬間が続いていくんだよ。

[編集済み]は沈黙する。

SCP-1200-KO-1: そして、もしまた終わりが来るなら、また新しい始まりが来るだろう。もしこの瞬間が繰り返されるなら、今私たちがしていることも繰り返されるかもしれない。私が話して、君が聞く。確保して、収容して、保護する。私たちが行っているこのすべての行為が、また繰り返される可能性があるんだよ。

[編集済み]は沈黙する。

SCP-1200-KO-1: 生き、繁栄し、進み、喜び、悲しみ、愛し、憎む。今この瞬間が永遠を決定づけ、私たちがどう生きるかが、私たち自身を形作るんだ。

[編集済み]は沈黙する。

SCP-1200-KO-1: 無限の喜びもあれば、無限の悲しみもあるだろう。だが、何を選ぶかは私たち次第だ。面白いだろう?小さな存在である私たちが、有限の中で無限を選べるなんて。戦いを選べば永遠に戦い続け、従順を選べば永遠に従い続ける。だが、私たちは進むことを選んだからこそ、今も進み続けることができるんだ。

[編集済み]は沈黙する。

SCP-1200-KO-1: ここまで本当によくやってくれた。ありがとう。そして、どうか諦めないでくれ。この瞬間はまだ終わっていないし、すべての瞬間が新しい始まりであり、チャンスなのだから。

[編集済み]は沈黙する。

SCP-1200-KO-1: そういうわけで…話は終わりだ。少し休ませてくれ。


追記: [編集済み]は問題なく目を覚ました。


2022年12月4日以降、SCP-1200-KOおよびSCP-1200-KO-1は出現していません。現在、SCP-1200-KO-1との会話が各職員に与えた影響を調査中です。

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