質問者: L██████博士
対象: SCP-1200-2.
L██████博士: さて、何があってその姿になったか話して頂けますか?
SCP-1200-2: ああ、喜んで話すよ先生。もう随分長い事ずっと、誰かに話したくてたまんなかったんだ。すべての始まりは俺のダチ、██████から始まった。俺たちはふたりともあらゆるオカルトに熱中してた。それである時██████が、すげー変わった団体のメンバーと知り合いになったって連絡してきたんだ。あれはなんつーか、カルトって言っても良い。
L██████博士: カルト?何という団体ですか?
SCP-1200-2 (考え込みながら): もうはっきりとは思い出せねえ。いつもはGGG(ゲーゲーゲー)って呼んでたよ、アメリカのKKKみたいに似せて…いや、ただ単に時間を短縮するためだな。腐ち乱れる神の…山?洞窟?だめだ、思い出せねえ。
L██████博士はメモを取る
SCP-1200-2: とにかくだ、俺らはGGGにめちゃくちゃ興味を持つようになった。こんな妙な教義は今まで見たことがねえ。この変人たちはエントロピーと、あらゆる現象の腐敗や崩壊を崇拝してた。普通の人間にゃ思いつかないような事々をな。あいつらの信仰には入り組んだ世界観と、妙ちくりんな神々がいた。ただとにかくその中心に立ってたのが、腐ち乱れる神ってやつだ。奴にはなにか別の名前もあったんだが、変なのが…ダメだ、思い出せねえな。
L██████博士: 腐ち乱れる神については次の機会に聞かせてもらいましょうか。今はあなたの状態についてお話したいんですが。
SCP-1200-2: ああ、すまねえ。手短に話そう。要するにだ、俺らは上手いことそのカルトに入団して集会へ出てきたんだ。それで、最終的には彼らの儀式へ参加できることになった。
(オブジェクトはビクリと飛び上がる)
それは地下だった。人数は多分12人くらいか?顔を知ってるやつはいなかったが…みんなおんなじローブを羽織ってて、頭巾の下は何も見えなかった。ほとんど喋ってもいなかったな。そんで、ど真ん中には薄気味悪い像が立ってた。[削除済み]で作られててさ。そんで、その彫像のそばに誰かが立ってた。『復活の歌』って本を持ってな。やつの言葉からこれが何かの召喚儀式ってことがわかった。この野郎のせいでめちゃくちゃになったんだけどな。
L██████博士: と言うと?
SCP-1200-2: 奴が聖歌のどっかを間違えたのさ。いや、最初のうちは必要な通りに進んでったんだ。俺と████████は魔法にかかったみたいに目ぇ見開いて見てたよ。それまでGGGのことはただの馬鹿げたカルトだと思ってたんだ、変人たちが集まってるだけの。超常現象なんて期待してなかった。それが今は…。空間がぐしゃぐしゃに潰れて彫像はそん中に吸い込まれてった。あとには穴だけ残ってて…そっから生き物が這い出してきた。
L██████博士: どんな生き物か説明できますか?
SCP-1200-2: (オブジェクトは360°くるりと回る)今あんたの目の前にいるぜ、センセイ。
L██████博士: なるほど。続けてください。
SCP-1200-2: もちろんこんな状況に出くわして腰抜かしそうになったさ。ただそれは俺達だけじゃなかった。詠唱してた奴は召喚経験が少ないみたいで、その生き物がやつに向かってまっすぐ飛びかかっていったら雄鶏みたいな声あげやがった。その瞬間聖歌は全く違う響きになったんだ。何つーか、そんな感じがしたんだ。直後空間がネジ曲がって、その後そこから…あー、ぶっかけられた。
L██████博士: 何をかけられたんです?
SCP-1200-2: 俺だって知りてえよ!とにかく何か気色の悪いものさ。気味の悪いどろどろした液体、理解不能な色合いで。穴から全方向に向かって凄い勢いで吹き出してた。最初に水流がぶち当たったのがその生き物だ。奴は水流に押し流されて真っ直ぐ俺に突っ込んできた。俺に触手が突っ込んできて、体中が焼けるようで….気を失ったんだ。
目が覚めると…ああ、地下はとんでもない光景だった。今となっては落ち着いてられるけどな、そんときゃ正気を失いそうだったよ。穴からは相変わらず気味の悪いものが流れ出してて、その周りの信者たちは、あー…くっついてたんだ、何もかも。奴らはみんなくっついて、ぐちゃぐちゃにかき混ぜられてた。その多くはまだ生きてて、残りは腐ってるみたいだ。穴の周りには儀式をしてたやつの一部…形の無い団子だな。表面は文字で覆われてた。彼は多分本と混じっちまったんだろう。一部は壁や床にくっついてて、配管がそれらを吸い込んでいった。
その後俺はまた気を失っちまったわけ。目が醒めたら俺の身体を横から見てた。俺は四つん這いで地下から這い出してった。何故かわからないけど床を濡らしてるあの液体に触っても痛みとかは無かったな。その上気づいたら腐った肉を床の上から見つけて…頬張ってた。
つまりだ、そん時にはもう俺と“混ぜ合わされたヤツ”が俺のホンモノの身体を使ってたわけだ。とにかくショックだったんでこれはただの夢だと思い込もうとしたよ。ところでだ、今になってはわかるんだが、こんなに強くショックを受けたのは自分がしていること、感じていることとかを間接的な観察者としてしか受け取れなかったからなんだろうな。それにその時は腐った肉が…くそっ、美味く感じたんだ。
それからその建物から何とか抜け出して、俺の身体は通行人を追い散らしながら駆け回った。しばらくしてからこの何があったか考えてみたよ。たぶん地下ではガスが爆発したとか、何かそんな事が起きたんだろうと。もう随分前のことだし正確なところはわからん。
L██████博士: 確かに、あの地区には地下でのガス爆発から全壊した家がありました。ただ、あなたの仰るような形跡は全く発見されませんでしたが。
SCP-1200-2: 教えてくれてありがとな、センセ。それでだ…詳細は省いて続けるぜ。早速最初の夜には俺の身に何が起きてるかいくらか理解できた。俺は汚らしい奴と一つに混ぜ合わされたらしい。それで身体を…交換する羽目になったと。そのおかげで俺らはお互いにくっついて離れなくなったわけだ、アステカ神話のナグワルみたいにな。(クスクス笑いに似た不明瞭な発声) この場合ナGGGウワルか。
ただ、これは始まりに過ぎなかった。しばらくのあいだ俺らは地元の奴らを死ぬほどビビらせながら街中をうろついてたよ。その後美味い食い物がたっぷりある巨大なゴミ捨て場に落ち着いたわけさ。この時から俺は自分の感覚が段々変わってくのを感じてた。今では頻繁に、この状況が気に入ってるように思えるんだ。この腐った身体にもなんつーか、美しさってやつが感じられてきたのさ。「存在が意識を規定するのだ」って聞いたことあるか?その通りでな、この身体の中にいるって事が俺の意識に影響してきて、その、この身体に合うように世界を知覚し始めたってことだ。
物は考えようだ。(クスクス笑いに似た不明瞭な発声)時折、人間の基準からしたらこの身体が食べてるものが気持ち悪く思えるときもあるさ。少なくともこの身体にいる間は、そんな事考えることもできないんだけどな。
(インタビュー記録終わり)