SCP-1216-JP
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初期調査時のSCP-1216-JP内部概観

アイテム番号: SCP-1216-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-1216-JPを含有するアパートメントは財団フロント企業によって買収され、███地区で活動するエージェントのセーフハウスとして活用されます。SCP-1216-JPの入口は施錠され、メンテナンス作業及び実験検証の際を除き、あらゆる人物の立ち入りを制限します。

実験期間中、被験者には専用の計測機器が装着され、身体・脳波状態の遠隔モニタリングが常時実施されます。被験者が昏睡状態へと陥った場合、実験担当者が必要と判断した場合を除き、被験者の脳死が確認されるまでの間はSCP-1216-JP内へと繋がる全ての扉・窓の開放が禁止されます。

説明: SCP-1216-JPは京都府██郡███に位置するアパートメントの216号室です。常態的な居住者(以下、被験者と呼称)が1人のみで、その人物の居住開始から3ヶ月以上が経過している場合、SCP-1216-JPは解明されていない不明なタイミングで活性化状態に入ります。この活性化状態は10日間程度の期間をかけて段階的に進行し、被験者に対して以下のような影響を及ぼします。

1-5日目: 被験者はSCP-1216-JP内で睡眠を行う度に、漠然とした"悪夢"を経験するようになります。しかしながら、全ての被験者はその内容を詳細に記憶しておらず、夢の内容を再び想起し、説明することを不明瞭な理由から強く拒否します。

6-9日目: 被験者は覚醒状態の間も、SCP-1216-JP内で不定期に幻聴・幻覚等を経験するようになります。主要な事例としては、窓の外から何者かが室内を覗いているのを見たと報告されたケースや、(SCP-1216-JPが端部屋であるにも関わらず)存在しないはずの隣人の生活音を聞いたと報告されたケース等が確認されています。多くの場合、この段階の被験者は自身が何かに"呪われている/憑かれている"と考えるようになり、外出を控えるようになります。

10日目以降: この段階でSCP-1216-JP内にて睡眠を行った場合、被験者は永続的な昏睡状態に陥ります。この状態の被験者は一定時間が経過するか、SCP-1216-JPと屋外空間を繋ぐ玄関扉や窓が開放されてから数十秒程度経過した後、不明な要因によって脳死します。なお、昏睡状態が長期間継続された場合であっても、被験者から脱水症状や栄養失調の兆候は観察されません。

上記活性化による各影響は、被験者がSCP-1216-JPから完全に立ち退くことで無力化されます。また、10日目以降に発生する被験者の昏睡現象は、SCP-1216-JP内に居住者以外の人物が存在する場合には発生しないことが判明しています。一方で、SCP-1216-JPから屋外へと繋がる扉・窓が開放されている状態で昏睡状態に陥った場合、被験者は昏睡直後に脳死することになります。

SCP-1216-JPは20██/██/██、府内の心霊物件に関する広域調査中に発見されました。調査の結果、収容以前に3人の居住者が室内で不審な脳死を遂げていた事実も確認されています。しかしながら、当該アパートメントや周辺区域において異常現象の兆候は観測されておらず、3人の被害者に関する身辺調査でも異常な経歴は見受けられませんでした。

補遺: 昏睡状態の被験者に対して実施された脳波モニタリングの結果は、時間経過に伴うストレスレベルの断続的な上昇と、恐怖や苦痛の感情と紐付けれた反復的な想起反応の存在を明らかにしました。また、各測定値はいずれの場合でも、被験者が脳死する直前に最大値を記録していたことが確認されています。

この結果を受け、被験者が経験する夢の観察を目的に、新たな実験手法が考案されました。当手法は、REM睡眠状態の被験者から一方向的なイメージ画像の受信を可能とする、臨床試験段階の技術に由来するものです。以上の経緯から、脳波モニタリングより得られた電気信号データを基に、脳情報デコーディング技術による被験者からのイメージ画像抽出が実験項目に追加されました。

抜粋ログ1216-JP-01

被験者: D-1216008

付記: この記録は、被験者からの断続的なイメージ画像抽出に初めて成功した実験例よりの抜粋です。なお、この実験の主目的は、実践されたイメージ画像抽出手法の信頼性を検証することにありました。そのために、実験・検証は被験者が時間経過によって脳死するまで継続されました。


《00:00:05》 天井を見上げる一人称視点からイメージ画像は開始。被験者は、ベッドの上で仰向けに寝転がっていると思われる。抽出される画像群には、不定期にノイズや湾曲、劣化、色調変化等が混ざり込むものの、抽出精度自体は比較的良好。

《00:02:14》 視点が変わり、被験者はベッドの上に座り込んで本を読んでいる。この状態が1時間程度続いた後、被験者は立ち上がると玄関へ向かって歩き始める。

《01:05:33》 玄関扉は、異常な形に増設された複数のシリンダー錠や閂錠、ドアチェーン群によって内側から厳重に施錠されている。被験者は数分程度、玄関扉を叩き続けている。

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抽出画像: ドアスコープ越しの人影

《01:08:07》 被験者はドアスコープを覗き込む。向こう側に人影が見えるものの、画像の劣化により不鮮明で、人物特定には至らない。人物は静止し続けており、数分後、瞬時的に消失。

《01:25:49》 被験者は、ベランダの窓を開けようと試みるが成功しない。続けてフライパンを用いて破壊を試みるが、窓ガラスには一切の損傷が見受けられない。なお、現実のSCP-1216-JP内には、調理器具が一切持ち込まれていなかったことに留意。

《02:17:44》 被験者は、室内に備え付けれた固定電話やテレビ等の電化製品が動作するか確認している。しかし、いずれの電化製品も正常に機能しない。また、電化製品の操作と同期する形で、画像には部分的なノイズが混じり込んでいる。

《03:31:28》 被験者は再びベッドに座り込む。その後、特筆すべき現象がないまま20時間以上経過。その間、被験者は不定期に室内を目的もなく歩き回っては、数ヶ所の壁を叩く様子を時折見せる。また、これ以降の観察中を含め、睡眠を取ろうとする素振りを一切見せない。

《24:09:53》 被験者は突然立ち上がり、浴室へと向かう。浴槽には水が溜まっているが、画像の著しい劣化の影響もあり、水は鉄が錆びた赤褐色のような色合いとして描画されている。被験者は浴槽から水を抜き、シャワーで槽内を洗っている。

《31:27:01》 被験者の視点が近くの壁へと向く。壁には罅割れができている。この罅割れは、3時間前の抽出画像では確認されなかった。被験者が罅割れに触れると、壁面が少し崩れ落ちる。被験者はそれ以上、壁面に触れようとはせず、視線もなるべく向けないようにしている。

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抽出画像: テレビに映るスノーノイズ

《38:11:20》 被験者の視点がテレビへと向く。作動しなかったはずのテレビ画面は点灯しているが、抽出画像では反復的なスノーノイズが表示されているだけに見える。それにも関わらず、被験者はテレビ画面をその場で30分近く視聴し続けた後、突然テレビを持ち上げると床に投げつけて破壊した。

《52:53:39》 これ以降、被験者の視線は頻繁にベランダの外へと向くようになる。しかし、いずれの場合でも、外に異常な存在や投影像等が確認されたことはない。

《55:09:56》 被験者はベッドに寝転がって本を読み始める。直前までと異なり、被験者の状態が非常に落ち着いているように見える。

《57:57:00》 被験者の視点が、天井の室内照明を注視した状態で固定される。この状態は10時間以上継続し、その間、被験者はまばたきも含めた一切の挙動を示していない。

《69:35:32》 天井を見上げていた視点が突然切り替わり、被験者がキッチンの冷蔵庫の前に立っていると分かる。被験者は冷蔵庫を開ける。抽出された画像からは、冷蔵庫の中が赤色の未知の植物で満たされているように見える。それにも関わらず、明らかに被験者は、この異常な状況に気が付いていない。また、被験者は冷蔵庫の中から何かを取り出しているが、上記植物に遮られて識別できない。

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抽出画像: 調理された"豚の生姜焼き"

《69:41:22》 被験者はキッチンで料理を作り始め、30分程度かけて"豚の生姜焼き"を完成させる。それにも関わらず、被験者は完成した料理を皿に盛り付けた状態で放置し、一切口を付けることなく別の行動を開始する。なお、各食材及び調理器具は、現実のSCP-1216-JP内に持ち込まれていないことに留意。

《70:13:13》 被験者は破壊したテレビの部品と、料理作成時に用いた調理器具を組み合わせて、簡易的な掘削工具を作成している。しかし、破壊されていたはずのテレビは、なぜか壊される前の姿で元々置かれていた場所に存在していることが分かる。

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抽出画像: 壁に発生した罅割れと植物

《71:52:55》 被験者の視線は再び、罅割れた壁へと向く。不鮮明ではあるが、罅割れは明らかに増加しており、その隙間からは赤い植物が根を張っているようにも見える。被験者は作成した工具を用いて、壁の掘削を試みている。

《78:04:52》 壁の掘削は進んでおり、壁には直径0.3m程度の穴が形成されている。また、赤い植物の巨大な根が露出しており、被験者はその根を掴んでいる。直後、視点がその状態で数分間静止したように見えたが、被験者は非常に緩慢な動作で根を引き抜こうとしていることが分かる。根は現実時間での5時間をかけて引き抜かれる。その後、被験者の動作は通常の速度に戻る。

《93:43:37》 ついに穴が反対側の壁面へと貫通する。穴の向こう側には光源がなく、先を見通すことができない。被験者は手に持っていた工具を床に捨てるが、工具はメーカー正規品のスコップに変わっている。数十秒後、被験者は空けた穴へと潜り込む。

《93:45:29》 被験者の視界が突然ブラックアウトする。抽出されるイメージも完全に不鮮明で内容を識別できない。この数秒後、現実の被験者が脳死したために、これ以上の画像抽出には成功しなかった。

抜粋ログ1216-JP-02

被験者: D-1216011

付記: この実験の目的は、現実で発生した出来事や干渉によって、被験者の夢へと生じる影響を観察することにありました。この観察のため、SCP-1216-JP内には複数の実験器具が持ち込まれている点に留意してください。


検証1: 室内にメモを隠しておく。メモには"原点"、"梟"、"鯨"の単語と、10時20分を指す時計の絵を記載。

《02:28:37》 室内を物色していた被験者は、引き出しの中に隠されたメモを発見する。メモには"原点"、"ミミズク"、"イルカ"、"赤"の4つの単語が記載されており、字体は筆記した実験担当者のものと概ね一致している。

また、時計の絵は楕円形に歪められており、長針・短針が小刻みに動いているように見える。しかし、被験者はこの現象に気が付いていないか、あるいは一切気に留めていないように見受けられる。次に視線が時計の絵へと向いた時、絵の描画は現実同様の10時20分を指すものへと戻っていた。


検証2: 室内に設置された固定電話へとコールをかける。

《03:00:05》 被験者の視線が、室内に備え付けられた固定電話の受話器へと向く。固定電話の液晶画面は点滅しており、通常通りに呼び出し通知を行っているが、受信相手は非通知として表示されている。

被験者は受話器を取り、呼び出し通知が止まる。この間、現実のSCP-1216-JP内では、電話の呼び出しが未だに続いていることに留意。被験者は数分間、受話器を耳に当て続けているが、何らかの対話が行われているのかは音声出力が不可であるために不明である。

その後、被験者は受話器を元に戻すが、直後に電話線を切断した。これ以降、現実での固定電話へのコールによって引き起こされる、夢の中での反応・影響は観察されなかった。


検証3: 遠隔装置を用いて、被験者の身体に複数の外部刺激を与える。

《05:00:28》 現実にて被験者を軽く揺さ振る。これに伴い、抽出画像には横方向のブレが発生するようになっており、夢の中の室内では、軽度の横揺れが発生していると考えられる。それ以外に異常は見受けられない。

続けて、現実にて被験者に疼痛刺激を与える。これに伴い、夢の中の室内では、天井や壁に軽微な罅割れや剥離が発生し始める。その一方、被験者自体は身体的な要因に紐付けられた情動的反応を一切示していない。

最後に、現実にて被験者に微弱な電気ショックを与える。これに伴い、夢の中の室内では、照明の反復的な明滅が発生する。それに加え、窓から見える室外の天候にも影響が見受けられ、電気ショックを与える度に外は一時的にだが光源が失われて暗くなる。


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抽出画像: 不明な人型の像

検証4: SCP-1216-JPの玄関扉を開放する。

《12:00:28》 現実で玄関扉を開放すると同時に、夢の中の被験者は焦るようにして玄関の方へと向かう。玄関扉は他の実験・検証時と同様、複数種類の錠前によって固く施錠されている。しかし、それら施錠の存在を無視するようにして、玄関扉は激しく歪んで、徐々に抉じ開けられていっている。

玄関扉の隙間から、不明な人型の像が観測される。この存在が観測されて以降、抽出される画像には大きく劣化が進行し始め、不鮮明な形でしか内容を確認することができなくなる。

抽出される画像は一層曖昧化されているが、玄関扉が半分以上開けられていることが分かる。そのあたりで被験者の視点が反転し、元いた部屋へと逃げ戻っていると思われる。しかし、この数秒後、被験者の視界は激しい極彩色のフラッシュの連続によって塗り潰される。

《12:00:51》 大きな人型の像のイメージが抽出される。その後、被験者の視点は、激しく揺さ振られながらも天井を見上げる形に維持されており、脚部を持たれて地面を引き摺られている状態にあると考えられる。

被験者は室外へと連れ出される。イメージとして抽出される部分的な構造・外観は、SCP-1216-JPを含有するアパートメントのものとは大半箇所が一致しない。廊下らしき構造の壁面には、SCP-1216-JPの玄関扉と同形状の扉が等間隔に設置されており、それらには殴打や切傷のような激しい損傷の痕跡と、何らかの植物が繁茂しているように見える。次第に、被験者の視界が暗転していく。

視点の場面が切り替わり、被験者は丸テーブルに向かい座っている。対面に人型の影が見えるものの、抽出画像の劣化のために詳細な識別はできない。赤い植物群が、視界の端に繰り返し映り込んでいる。また、テーブル上にはバスケットやティーカップが置かれているが、いずれも内容物は存在しないか、もしくは識別できない。被験者はティーカップを手に持ち、口元へと運んでいる。

《12:01:24》 現実で被験者の脳死が確認される。これ以降、更なる画像の抽出には成功しなかった。

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