SCP-1229-JP

クレジット

タイトル: 壊れかけた賭場
著者: ShicolorkiNaN
作成年: 2017

アイテム番号: SCP-1229-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: 周辺地域にカバーストーリー「老朽化による崩壊の危険性」の流布、及びSCP-1229-JP外部をシートで覆う事によりオブジェクト内部への侵入を防いで下さい。SCP-1229-JPの定期内部調査を続行するかは審議中です。

説明: SCP-1229-JPは神奈川県██市に存在している賭博施設です。財団により発見された199█年11月24日時点で一部天井の崩落、壁の破損等外装には経年劣化が確認され、内装は多量の弾痕及び血痕が残存しており、椅子やテーブル含むほぼ全ての家具及びギャンブル用の器材には各所に汚損が見られます。

SCP-1229-JP-AはSCP-1229-JP内で働いていると自称している人型実体です。外見は一般的なディーラーと相違無い服装を纏ったアジア系の男性青年～老人までの姿でばらつきがあり、生理的欲求等は存在しないと予想されています。現在右目に眼帯を嵌めた青年の姿をしたSCP-1229-JP-A-1のみがインタビュー等の意思疎通に応じます。
SCP-1229-JP-BはSCP-1229-JP-A-1以外のSCP-1229-JP-Aとギャンブルゲームを行っている人間であり、共通して加齢の兆候・外部刺激に対する反応を示しません。以下の表は各SCP-1229-JP-Bがプレイ中と思わしきゲーム及び特記事項です。

識別番号	SCP-1229-JP-B-1
外見	推定20代男性、衣服から推定するに1950年代の人物であると予想される。服の各所に焦げ痕が見られ、右肩部の銃創から出血は確認されず
ゲーム	ブラックジャック
特記事項	ディーラーであるSCP-1229-JP-A-2の手札及び残りの山札であったと思われる灰がテーブル場に乗り、互いに完全に動作を静止している

識別番号	SCP-1229-JP-B-2
外見	推定40代男性、1971年に神奈川県内で捜索届が出されていた赤藤 ██氏と外見及び服装が一致
ゲーム	ルーレット
特記事項	ホイールが完全に破損しており、ディーラーであるSCP-1229-JP-A-3と共に完全に動作を停止している

識別番号	SCP-1229-JP-B-3～6
外見	20代アジア系男性、40代アメリカ系男性、30代アフリカ系男性。全員が世界オカルト連合の標準実地礼装を着用している
ゲーム	丁半
特記事項	SCP-1229-JP-A-4含め出目となる箇所が破損したサイコロの破片を見据えた状態で完全に動作を停止している

識別番号	SCP-1229-JP-B-7～9
外見	全員が世界オカルト連合の標準実地礼装を着用しており、頭部装備により顔及び人種の判別は不可能。定期的に[罵倒]、[罵倒]、[罵倒]等の言葉を吐いている
ゲーム	チンチロリン
特記事項	使用しているサイコロは1個のみであり、親番となりサイコロを振った全員がションベン1による目無しと見なされている。使用していたと思われる残り2個のサイコロは完全に破壊されたと思われる

識別番号	SCP-1229-JP-B-10
外見	財団の発見に至る通報を行った海原 █氏の友人である伊出 ██氏。自身の配牌を見た後の悪態を定期的に吐いている
ゲーム	麻雀
特記事項	平卓で行われており、二人用にルールが改定されていると予想されている。使用している麻雀牌は各所に損傷が見られ、合計25枚しか使われていない。手積みによる配牌後互いの少牌を確認し、山を崩す動作を繰り返している

オブジェクトの確認後海原氏には記憶処理が行われ、カバーストーリー「老朽化による破片の落下事故」が関係者に流布されました。

+ 第1～2次探索記録

<第1次探索記録:199█/11/28>

探索者: D-1229-JP-1

担当者: 雨浩博士

<録音開始>

雨浩博士: それではD-1229-JP-1。目の前の建物に入ってくれたまえ。

D-1229-JP-1: ああ、あんまり入りたくないんだけどな……

(D-1229-JP-1は恐る恐るSCP-1229-JPの扉を開き、中を見回す。店内を巡回していたと思わしきSCP-1229-JP-A-1がD-1229-JP-1に対して近付き、深く会釈する)

SCP-1229-JP-A-1: いらっしゃいませ。賭場「菊花と小刀」へようこそ。

D-1229-JP-1: うおっ……お、おお……

SCP-1229-JP-A-1: お客様はこの店に来るのは初めてですね。まずは簡単に説明を行いますが、宜しいでしょうか？

雨浩博士: そのまま話を合わせるのが良いと思うな。流れに応じて頼む。

D-1229-JP-1: ああ、ココは何なんだ？随分と酷い有様に見えるが……

SCP-1229-JP-A-1: はい、この店では種銭といった物は一切必要有りません。お客様は無一文であっても、運が良ければ一日で成金になる事も可能です。

D-1229-JP-1: そりゃ魅力的だが……どういう事なんだ？

SCP-1229-JP-A-1: はい、お客様の魂を賭けて頂きます。

D-1229-JP-1: 魂？

SCP-1229-JP-A-1: はい、魂です。種類に応じては寿命を小分けにして賭ける事も有ります。例えばあちらは寿命をチップに替えて行っている訳です。

(SCP-1229-JP-A-1はルーレット台のSCP-1229-JP-B-2を指し示す)

D-1229-JP-1: じゃあ、魂を賭けて負けたら？

SCP-1229-JP-A-1: 然るべき処置を執らせて頂きます。

D-1229-JP-1: 死ぬのか？

SCP-1229-JP-A-1: ……ですが、本日は空いている席が無く、私目がお相手として不満であるならば待つ他有りません。何かお飲み物はいかがでしょうか？

雨浩博士: 誘いには乗らないでくれ。全体の探索を忘れるなよ。

D-1229-JP-1: あー、今はいらないな。それよりどんなギャンブルをやってるのか見ておきたい。

SCP-1229-JP-A-1: 畏まりました、ごゆっくりどうぞ。

(SCP-1229-JP-A-1は深く頭を下げ、店内の見回りを再開する。約70分間の探索によりSCP-1229-JP-B全員の状態の把握に成功。雨浩博士により脱出を指示)

SCP-1229-JP-A-1: 本日はお帰りになられるのでしょうか？

D-1229-JP-1: そうだな、今日はやりたいギャンブルが空いてないみたいだ。

SCP-1229-JP-A-1: それは誠に申し訳有りません。万が一御興味が出て来たならば、若輩者ながら私がお相手を努めさせて貰いますので……本日は御来訪ありがとうございました。

(SCP-1229-JP-A-1が深く頭を下げ、退出するD-SCP-1229-JPを見送る)

<録音終了>

補遺: 一部SCP-1229-JP-Bが世界オカルト連合の旧標準装備を着用している事を確認。過去に接触があった可能性が高い。

第2次探索記録:199█/11/30

探索者: D-1229-JP-1

担当者: 雨浩博士

目的: SCP-1229-JP内で1度ギャンブルゲームを行った場合の調査。D-1229-JP-1は実験を了承済み

<録音開始>

(D-1229-JP-1はSCP-1229-JPの扉を入り、中へ侵入する。SCP-1229-JP-A-1がD-1229-JP-1に対して近付き、深く会釈する)

SCP-1229-JP-A-1: いらっしゃいませ。賭場「菊花と小刀」へようこそ…お客様、二日ぶりでしょうか。

D-1229-JP-1: ああ、早速だがアンタと簡単なゲームを、１戦だけ頼みたいが良いんだよな？

SCP-1229-JP-A-1: 畏まりました。簡単なゲームとなりますが、後、当店でのシステムになりますが…

D-1229-JP-1: 分かってる、勝てば良いんだろ？そうだよ、勝てば良いんだ……

SCP-1229-JP-A-1: 畏まりました。それでは此方のテーブルにお着き下さい。

(SCP-1229-JP-A-1は店内に置かれた血痕の付着した各所に損傷が見られる丸テーブルへD-1229-JP-1を案内する)

SCP-1229-JP-A-1: 何分他の席が埋まっている為、簡単なゲームとなります。ハイ&ロー、説明は必要でしょうか？

D-1229-JP-1: そのぐらいなら知ってるが、俺は幾ら貰えるんだ？

SCP-1229-JP-A-1: 貴方の魂ならば最初は300円から、1度成功する度に賞金は倍額、1セット5回、同じ数字やジョーカーの場合は倍額は無しとなります。1度でも選択を誤ったなら…

D-1229-JP-1: あー、それ以上は聞きたくない、さっさと始めようぜ…300円？

SCP-1229-JP-A-1: 畏まりました。それではカードをご確認下さい。

(SCP-1229-JP-A-1は著しく損傷し千切れかけたトランプ箱の封を切り、箱の中から各所異なる位置に穴の空いたトランプ全8枚をテーブル上に広げる)

D-1229-JP-1: マジかよ……うん、分かった。確かに全部入ってるって事で良いんだな？

SCP-1229-JP-A-1: はい。先程封を切ったばかりですので、このトランプは紛れも無い新品という事になります。

D-1229-JP-1: じゃあ早速始めてくれ。

SCP-1229-JP-A-1: 畏まりました。

(SCP-1229-JP-A-1はカードを一纏めにしてシャッフルを行い、途中D-1229-JP-1にカットを指示後山札を1枚捲る。)

SCP-1229-JP-A-1: スペードの5でございますね……ハイ＆ロー？

D-1229-JP-1: ロー。

(その後D-1229-JP-1は5回連続でのハイ＆ローに成功する。D-1229-JP-1は後のインタビューによりカード毎に空いた穴を覚えたと回答。重要度が低いと見なされた為割愛)

SCP-1229-JP-A-1: おめでとうございます。こちら9600円になります。

(SCP-1229-JP-A-1は懐から100円札で構成された札束をD-1229-JP-1へ差し出す)

D-1229-JP-1: あー……ああ、勝ちって事だよな？

SCP-1229-JP-A-1: 引き続きプレイを続けますか？こちらの9600円から更に倍額した金額が手に入ります。

雨浩博士: 何か影響が無いか調べたい、そこで切り上げろ。

D-1229-JP-1: いや、今日はもうこれで良い。

SCP-1229-JP-A-1: 畏まりました。本日はご来店頂き有難う御座いました。

(SCP-1229-JP-A-1が深く頭を下げ、退出するD-SCP-1229-JPを見送る)

<録音終了>

補遺: D-1229-JP-1に手渡された100円札は全て日本銀行より正式に発行された物であり、状態も良好であった。

+ 第3～4次探索記録

第3次探索記録:199█/12/02

探索者: D-1229-JP-1

担当者: 雨浩博士

目的: SCP-1229-JP-A-1からの情報の取得。

<録音開始>

(D-1229-JP-1はSCP-1229-JPの扉を入り、中へ侵入する。SCP-1229-JP-A-1がD-1229-JP-1に対して近付き、深く会釈する)

SCP-1229-JP-A-1: いらっしゃいませ……ああ、お客様。申し訳無いですが、今後当店で遊びになる際には、其方の機械を外すか、私に預けて頂けないでしょうか。

(SCP-1229-JP-A-1はD-1229-JP-1に装着した記録装置を指差す。)

D-1229-JP-1: あー……ちょっと待ってくれ。おい、これはどうするんだ？

(協議の結果、録音装置以外を除いてSCP-1229-JP外部のエージェントに預ける事を決定。以下の文章は第4次探索記録によって回収された装置の書き起こしとなる)

SCP-1229-JP-A-1: お手数をお掛けします。他のお客様方のご迷惑になると判断致しましたので……

D-1229-JP-1: ああ、そりゃ悪い……で、今回はアンタと話がしたいんだが……

SCP-1229-JP-A-1: 畏まりました。まずはテーブルにお着き下さい。

D-1229-JP-1: 今日もやるのか？

SCP-1229-JP-A-1: お望みであるならば…話をしながら、行う事も出来ます。

D-1229-JP-1: それじゃ仕方ないな……ああ、だったら

SCP-1229-JP-A-1: 畏まりました。それでは此方のテーブルに

(約15秒間のノイズ音)

D-1229-JP-1: ちょっと待て、これでやれってのか？

SCP-1229-JP-A-1: はい。先程封を切ったばかりですので、このトランプは紛れも無い新品です。その方が公平である筈です。

D-1229-JP-1: おい待てよ、コレは新品じゃない、もうカードじゃなくて

(金属同士が触れ合う音)

SCP-1229-JP-A-1: 貴方からどうぞ。

D-1229-JP-1: ああ、[罵倒]

(金属が擦れる様な音)

SCP-1229-JP-A-1: 1度に複数枚取るのは反則となります。

D-1229-JP-1: 仕方ないだろ……やだよ、待てって

SCP-1229-JP-A-1: 貴方の負けです。

D-1229-JP-1: やめろ、待て、こんな負け方

(鈍い音、D-1229-JP-1のものと思わしき約5秒間の絶叫、殴打する音、肉が焼ける音、粉砕音、液体が落ちる音、以下無音)

<録音終了>

第4次探査記録:199█/12/10

探索者: エージェント・銀鐘

<録音開始>

(エージェント・銀鐘がSCP-1229-JPの扉を開く。SCP-1229-JP-A-1が接近する)

SCP-1229-JP-A-1: ようこそいらっしゃいました。

エージェント・銀鐘: 悪いが、今回は遊びに来た訳じゃないんだ。以前に此処に来た男を覚えているか？

SCP-1229-JP-A-1: はい、██²様の事でしょうか？

エージェント・銀鐘: どうして知っている？

SCP-1229-JP-A-1: 魂を頂きましたので、一通りは…もしも死体の返却を望むのであれば、お力にはなれそうにありません。

エージェント・銀鐘: その██が着けていた装置を返してくれないだろうか。

SCP-1229-JP-A-1: 畏まりました。

(SCP-1229-JP-A-1がSCP-1229-JP内部へと向かう。約3分後に扉前まで戻り、表面が焼けた音声装置がエージェント・銀鐘へ差し出される)

エージェント・銀鐘: ああ、悪いな…このまま、この店が何時頃から出来たのかを教えて貰えるか？

SCP-1229-JP-A-1: 何分私は若輩者でありますのでそこまでは話せません。より詳しく語れる先輩方は全員尚もお客様と勝負中で…

エージェント・銀鐘: 話せる限りで良い、お願いしたい。

SCP-1229-JP-A-1: はい、私が生まれた時からこの店は存在していたとされます。魂を持つのが精一杯とされる素寒貧に対して繁盛していたとも。

エージェント・銀鐘: ふむ、年数にしてどのくらいだ？

SCP-1229-JP-A-1: 少なく見積もって、ざっと500年程ではないでしょうか。

エージェント・銀鐘: ……成る程。

SCP-1229-JP-A-1: 話せる事と言えばこの程度でしょうか…あまり力になれなさそうで、申し訳有りません。

エージェント・銀鐘: じゃあ最後に一つ。どうして今までの話を██の時にはしなかった？

SCP-1229-JP-A-1: 私共はお客様方が金を求めて此処に訪れるのと同じく、魂を求めていますから。乗せたい時に乗せておきたいのですよ。貴方は中で遊ぶ気も、酒を今から嗜む気も無いでしょう。

エージェント・銀鐘: まあそうだな、うん……何だか、悪いな。

SCP-1229-JP-A-1: お気になさらず……少なくとも、私も先輩方も居ます。この店は今後も続けて行く所存です。何が有ったとしても……本日はお帰りになるでしょうか？

エージェント・銀鐘: そのつもりだ。装置も回収出来たしな…

SCP-1229-JP-A-1: 先程思い出しましたが、少し、気掛かりな点として…私も、先輩方達も皆二月生まれの様なのです…ああいえ、大した事では無かったですね。気が向いたならばまたいずれ…または、██様の同業者を、私共全従業員はお待ちしています。

<録音終了>

補遺: 回収した録音装置表面から、炭化したD-1229-JP-1の細胞片を確認。

Footnotes

1. 振ったサイコロが器の外に飛び出した状態

2. D-1229-JP-1の本名