クレジット
タイトル: SCP-1232-JP - ゆうやけこやけでかえりましょ
著者: ©︎
hakurikiko
作成年: 2019
アイテム番号: SCP-1232-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-1232-JPはサイト-81██の低脅威度物品用ロッカーに収容されます。SCP-1232-JPを使用した者の暴走を防ぐ為、クラスB処置を実施する事が許可されています。
説明: SCP-1232-JPは直径約20cmのサッカーボールです。見た目には数年使いこまれたような劣化が見られますが、いかなる外的衝撃を加えても、それ以上の劣化は見られませんでした。側面にはかすれた平仮名と漢字で「██ ████」と書かれています。
SCP-1232-JPを使用した一人でも成り立つ遊技を行った際、行った者(以下使用者と記述する)は使用者に最もなじみの深い小学校の校庭や公園、広場、あるいはそれに類似した場所へと移動させます。しかし、その周辺で使用者の目撃情報が無い事、また当時の時代と即わない点がある事から、移動させられた場所は類似した別世界という結論がなされています。また、記録機器による録音は可能ですが、録画は原因不明のノイズによって不可能とされています。
使用者が瞬間移動させられると、辺りからSCP-1232-JP-1が使用者の見えない位置から出現します。SCP-1232-JP-1は複数存在する人型実体です。その姿は使用者の幼少期の年齢の身内や、使用者が幼少期に親しかった者達に酷似しており、言動も当時の人物とほぼ同じだと報告されています。この時出現するSCP-1232-JP-1は幼少期時代の姿の友達などです。また、SCP-1232-JP-1は使用者をSCP-1232-JP-1の姿と同じ時代の年齢の姿に見えており、使用者に遊技を提案してきます。この際、使用者は異質な状況にもかかわらず、賛同する傾向にあります。
その後、使用者とSCP-1232-JP-1はしばらく共に遊技を楽しみますが、使用者がいる世界で5時になると、その地域で実際に流されていたかに関わらず、付近の防災無線や学校内のスピーカーなどから「夕焼け小焼け」が流れ始めます。この時SCP-1232-JP-1はそれまでしていた行動を一切止め、それぞれの家に帰ります。また、それと同時に使用者の当時の時代の母親に酷似したSCP-1232-JP-1が出現し、使用者の当時の自宅へと一緒に帰らせようとします。ここで拒否しSCP-1232-JPに接触した場合、瞬間移動する前の地点まで帰ってきますが、拒否せず家まで帰った場合に使用者が戻ってきた事例は現在報告されていません。
SCP-1232-JPは児童の失踪事件が数件報告されていた茨城県██市の███小学校の遊具入れで発見されました。███小学校には「一人ぼっちで寂しい子がボールで遊んでると、友達がいっぱいいる別の世界に連れてかれちゃう」という噂がありましたがSCP-1232-JPとの関連性は不明です。また側面に書かれていた名前を調査しましたが、該当する生徒は███小学校及びその周辺の小学校の記録には載っていませんでした。
実験記録█ - 日付20██/█/12
対象: D-11322。幼少期住んでいた地域は山口県██市。
実施方法: 行動に対しての指示は設けず、カメラとGPSを持たせ、SCP-1232-JPを用いてリフティングを行わせました。
結果: 3秒後消失。GPSは山口県██市の██公園を指していました。また、D-11322は以後戻ってくることはありませんでした。
<録音開始>
D-11322: …本当に移動しやがった。おい、博士、…ここは。
SCP-1232-JP-1-█-A: おーい。██ー(D-11322の名前)。て、一人じゃん、どうしたん?
D-11322: え、ご、後藤…?なんで、お前そんな
SCP-1232-JP-1-█-A: 後藤…?なんでいつものようにごっちゃんてよばねぇの?きもちわりぃー!
SCP-1232-JP-1-█-B: あ、二人とも何してんのー?
SCP-1232-JP-1-█-A: お、かねじゅん。聞けよー、こいつ一人でぽつんとしてやんの![笑いながら]
D-11322: か、金田…。
SCP-1232-JP-1-█-B: へー。ねえ、今日はサッカーして遊ばん?██くんボールもっちょるし。
D-11322: いや、俺は…
SCP-1232-JP-1-█-A: いいな!じゃあ、あっこゴールでー、かねじゅんキーパーな。…おい、██。どしたボーッとして。やらねぇのか?
D-11322: …いや、何でもない。ごっちゃん!パスパスー!!
[その後3時間37分の間、ボールをける音、D-11322およびSCP-1232-JP-1の楽しげな声が続く。]
[遠くから、「夕焼け小焼け」が流れ始める。]
SCP-1232-JP-1-█-A: うわ、もう5時かー。はよかえらんとー!
D-11322: も、もう帰るのか?試合の途中だろ?
SCP-1232-JP-1-█-A: 当たり前だろー。母ちゃんに怒られるし、それにポケモンに間に合わないじゃんか!じゃあな!また明日なー!
SCP-1232-JP-1-█-B: ぼくも帰るね。██くん、また明日ー。
D-11322: あぁまた…また….か…。
SCP-1232-JP-1-█-C: ██!!アンタまだこんなとこおったの?
D-11322: か…母さん…?
SCP-1232-JP-1-█-C: なぁに?アンタが母さんっていうなんて?まあいいわ。ほら、帰るわよ。今日はアンタの好きなミートスパゲティなんだから。
D-11322: あ、うん…。
[しばらく、二人分の足音が聞こえる。]
D-11322: なぁ…なぁ母さん。
SCP-1232-JP-1-█-C: どうしたの?そんな急にあらたまって。
D-11322: 俺、俺どんでもねえことしてしまって。母さんにも、謝らなくちゃならなくて。
SCP-1232-JP-1-█-C: え?ヤダアンタもしかしてまた体操服のズボン破いたの?
D-11322: いや、そうじゃなくて、もっと大きな…
SCP-1232-JP-1-█-C: まあ、後で聞くわ。それに、母さんはね、あんたが元気でやってればそれでいいのよ。いつもわんぱくで先生に叱られてばっかなアンタだけどね、たとえ何しようが、うちの大事な息子だもの。
D-11322: 母さん…。
SCP-1232-JP-1-█-C: その代わり、後でみっちり叱るからね。ほら、着いたわよ。帰ったら先にちゃんと手を洗いなさい。
D-11322: うん。母さん、ただいま。
SCP-1232-JP-1-█-C: おかえり。
[扉の閉まる音。以下全て原因不明のノイズ。]
<録音終了>
実験記録██ - 日付20██/█/7
対象: D-14453。幼少期住んでいた地域は神奈川県█市。
実施方法: SCP-1232-JP-1からの誘いをすべて断るよう指示し、承諾した場合帰ってきた事例がない事、通信が途切れている事を伝えました。そしてカメラとGPSを持たせ、SCP-1232-JPを用い壁打ちを行わせました。
結果: 3秒後消失。GPSは神奈川県█市のとある広場を指していました。また、2時間12分後帰還。D-11322は軽度の錯乱状態に陥っていました。
<録音開始>
D-14453: ここが…。えっと。博士、私は
SCP-1232-JP-1-██-A: ███ちゃーん。こんなとこにいたー。あーそーぼー。
D-14453: ゆ、ゆうちゃん…。あの、私、
SCP-1232-JP-1-██-A: どうしたのー?遊ばないのー?
D-14453: え、ええ。私は、遊ばない。
SCP-1232-JP-1-██-A: …?遊びたいんでしょ?いやなこと忘れて思いっきり遊ぼうよ?
D-14453: え、いや、でも…確かに…そうね。何であんな奴らの言うことなんて…。ええ、遊びましょ。
SCP-1232-JP-1-██-A: やったあ!!ねえねえ、何して遊ぶ?
D-14453: そうねぇ。私花冠作りたいわ。でも久しぶりすぎて作れるか…
SCP-1232-JP-1-██-A: 昨日作ったばっかじゃんー!でもいいよ! 行こう!
[その後2時間2分の間、D-14453とSCP-1232-JP-1-Aの楽しそうな声が続く。]
[遠くから、童謡「夕焼け小焼け」が流れ始める。]
SCP-1232-JP-1-██-A: あ、もうこんな時間だー。帰らないと。
D-14453: もう帰る時間なのね…。こんなに無邪気に遊んだの何時ぶりかしら。
SCP-1232-JP-1-██-A: え?何言ってんの?明日も遊ぶでしょ?
D-14453: そ、そうね。
SCP-1232-JP-1-██-A: はら、███ちゃんのお母さん来てるよ。じゃあまた明日ね███ちゃん。
D-14453: え…。お、お母さん…。
SCP-1232-JP-1-██-B: ずいぶん楽しそうだったわね。あら、それ自分で作ったの?上手ねぇ。
D-14453: え、うん…。あの
SCP-1232-JP-1-██-B: お母さん███が最初あまり遊ぶ子いなかったから心配してたけど、いい友達ができてよかったわ。さあ、帰りましょう。
D-14453: あ、お母さん、私、私
SCP-1232-JP-1-██-B: どうしたの。早く帰らないとたけるが寂しがるわ。
D-14453: っ、お母さん、お母さん、っごめん。私、こんなわたしだけど、ばかみたいなことしてゆるされない、はずのわたしだけど、まだ
[D-14453の走る音。直後何かが持ち上がる音。]
D-14453: まだっ、死にたくない、っ。
SCP-1232-JP-1-██-B: …そう…いいのよ。でも、またここに来たくなったら、いつでもいらっしゃい。
<録音終了>
<追記> 実験後、D-14453はSCP-1232-JPの再使用と自らへのSCP-1232-JPの使用の拒否を強く請いました。その後精神的苦痛から収容所で暴れ始めたため、クラスB処置を実施しました。
補遺1: SCP-1232-JP-1との対話を試みるため、 █博士が自ら実験参加を希望しました。
実験記録██- 日付20██/█/29
対象: █博士。幼少期育った地域は富山県██市。
実施方法: 最初のSCP-1232-JP-1の誘いを拒絶することを前提に、カメラとGPSを持ち、SCP-1232-JPを用いて壁打ちを行いました。
結果: 3秒後消失。GPSは富山県██市の██小学校を指していました。また、2分後帰還。
<録音開始>
█博士: こちら█。ここは恐らく私が通っていた小学校だ。時計は15時10分、周りは
SCP-1232-JP-1-██-A: ██くん(█博士の本名)。おまたせー。何してあそぼっか?
█博士: 遊びよりも私は君と話がしたい。
SCP-1232-JP-1-██-A: お話?いいよ!あ、そういえば聞いてよー。今日きみちゃんが
█博士: そういう話ではない。君、いや、君達についてだ。君達は何者だ。ここはどういった空間なんだ?
SCP-1232-JP-1-██-A: 何のこと?ねえ、それより遊ぼう。ボールあるからサッカーでもいいしー。あ、お道具箱からなわとび持ってくる?
█博士: そうやって繕わなくていい。ここが私達が本来居る世界でないことも分かっている。とにかく君達の正体について聞かせてくれないか。
SCP-1232-JP-1-██-A: …遊ばないの?昔みたいに?時間も忘れて楽しくさ?
█博士: ああ、今の私にそんな暇はない。
SCP-1232-JP-1-██-A: そっか…██くん。
█博士: 何だ?
SCP-1232-JP-1-██-A: つまんないひとになったね。
<録音終了>
補遺2: 20██年█月██日突如SCP-1232-JPの側面に文字が出現しました。筆跡はもともと書かれていた名前のものに酷似していました。これによるSCP-1232-JPの異常性の変化は報告されていません。