SCP-1244-JP
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モンセギュールの山と山頂の砦。


アイテム番号: SCP-1244-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-1244-JP-Aの第1坑の出入り口を塞ぐように地下にサイト-███を建設し、SCP-1244-JP-1実体への対応機動部隊プサイ-4"審問官"、SCP-1244-JPの研究者を常駐させます。当該地域は著名な観光地であるため、サイト-███への出入りはバックパッカーを装い行って下さい。

20██/9/1からの追加プロトコル: サイト-███にはこれまでの人員に加え、SCP-████-JP活性化事象に対処するための特殊部隊を常駐させます。SCP-████-JP活性化事象が確認された場合、サイト-███及びSCP-1244-JP-Aは暫定的に臨時武装エリア-███となり、近隣住民の避難と地域の封鎖、並びに周辺サイトからの戦闘要員の臨時徴収が行われます。SCP-1244-JP-A内部には複数箇所に鋼鉄製の避難用シェルターを設置し、事象SCP-1244-JP-1-αの発生が予期される場合内部に残る人員はここに避難して下さい。境界線イニシアチブとの協定により、今後の調査活動でSCP-1244-JPに関連する資料が発見された場合情報の共有を行います。

説明: SCP-1244-JPはフランス共和国アリエージュ県モンセギュールに存在する洞窟(以下SCP-1244-JP-Aと呼称)と内部に存在する実体の総称です。SCP-1244-JP-Aは花崗岩質の洞窟であり、不明な総延長と多数の分岐を持ち、複数の人工的な手段により掘削されています。出入り口はモンセギュール山頂の砦を始め集落の井戸などに██箇所が存在していますが、現在調査拠点となっている山の麓に存在する第1坑以外は全て人為的に埋められています。坑内はその内装によって3つの層に分かれており、概ね深さに準じて変化しています。

第1層は紀元後11-13世紀の間にグノーシス主義1思想を取り入れたキリスト教の教派であるカタリ派2の信徒が使用していた部分で、山頂の砦に存在する第5坑を中心として広がっていた第2層と同様の洞窟を拡張・改装したと考えられています。石造りの頑丈な部屋が複数存在し、大規模な書庫や牢獄、集会所と思しき広間が複数存在しています。個人の書斎や実験施設と思しき部屋も多く存在しており、宗教的な祭祀施設ではなく研究施設としての側面が強かったと考えられています。内部にはカタリ派が残した文献が断片的に残存しており、これについての解析調査が進められています。また第2層との接続部の全てに厚さ10cmの金属扉が取り付けられており、この階層全体が厳重に隔離されています。

第2層は、紀元前8-1世紀の間に先住民族であるケルト(ガリア)人3によって掘削されたと考えられる部分であり、表面に掘削痕が残る粗削りの部分です。この層は概ね村全域の地下に張り巡らされており、内部は非常に複雑な迷路状の構造になっています。通路の一定間隔おきに他の場所より広くなっている空間が存在し、ケルト人が用いた特徴的な模様で装飾されています。また、坑道内壁は多くの箇所が煤により黒ずんでおり、内部で複数回の火災が起きていたことを示しています。

第3層は少なくとも紀元前10世紀以前に未知の手段で掘削された部分であり、第2層の最深部の4地点から奥に直径3m前後かつ不明な長さの広がりを持ちます。壁面は、一部では光沢が確認できるほど非常に滑らかかつ曲線的に削られています。洞窟内は所々地下水で冠水しており、急峻な斜面や落盤などが多数存在するため有人探索はこれまで実現していません。無人機による探査で4つの坑道は全てピレネー山脈方面へと伸びていることが確認されていますが、通信限界により洞窟の全容の解明には至っていません。

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SCP-1244-JP-A第1層内部の様子。

SCP-1244-JP-1は、SCP-1244-JP-Aの第2層内を徘徊する人型の実体です。現在152 151 121の個体が確認されており、全身の表皮が完全に炭化した人間が炎を纏った姿で、緩慢かつ無秩序に洞窟内を動き回っています。外見上炎として確認できるSCP-1244-JP-1周辺の気体は、燃焼反応を伴わない窒素と酸素を主成分とする低温プラズマです。このプラズマはSCP-1244-JP-1の表面から10cm前後の空気が1700K程度で維持されていることに起因して発生しており、それより外部の空間は距離に反比例した温度低下を示します。この異常温度空間は空気を介して連続したSCP-1244-JP-1から10m離れた位置まで続いており、この空間内部の温度は常に一定に保たれています。不明な原理によりSCP-1244-JP-A内の温度は徐々に低下しており、SCP-1244-JP-1効果範囲から流出する熱量と釣り合うことで内部の総熱量が変化することはありません。

SCP-1244-JP-1は破壊行為に対するある程度の耐性を持ち、小規模の組織の剥離や骨折、切断された部位を1分以内に再度接合した場合については1~2分の間に再生します。しかし体組織が粉々になるまで破壊された場合は再生せず、3154K以上の熱に晒した場合はプラズマ化しその部分は再生されません。SCP-1244-JP-1は全体の70%以上の体組織を喪失した場合1分以内に異常性を失い、骨格以外の体組織が完全に炭化した人間の死体4となります。このため、科学的分析による異常性の原因の特定には至っていません。SCP-1244-JP-1の元となった人間たちは、外見上の特徴から20~60代までの幅広い年齢層の男女であったと推測されています。

SCP-1244-JP-1の徘徊パターンは決まっていませんが、概ね各個体がSCP-1244-JP-A内に均一に分布するように動いています。SCP-1244-JP-1は障害物を迂回しますが、通れないほどの大きさであった場合引き返します。SCP-1244-JP-1はSCP-1244-JP-A外に出ようとせず、強引に出した場合内部に戻ろうとします。この性質により、現収容プロトコル下でのSCP-1244-JP-A外への収容違反の危険性はありません。

補遺1: SCP-1244-JPは19██年にアリエージュ県で発生した震源の深さ15km、Mw54.8の地震によって現在の第1坑に当たる洞窟が露出したことで発見されました。地元住民による通報の後、速やかに発見者を含む地元住民の記憶処理と洞窟の封鎖が行われ、サイト-███の前身である調査のための地下拠点が設営されました。調査が進むにつれSCP-1244-JP-Aが想定よりも広い範囲に広がっており、集落や観光地である砦の直下まで達していることが判明したため、一時はモンセギュール及びその周辺地域の完全な封鎖が検討されました。しかしSCP-1244-JP-1が容易に封じ込め可能であること、モンセギュールの歴史的な重要性から地域全体を記録から抹消するのが困難であることを鑑み、サイト-███の設置によるオブジェクトの管理・調査を継続的に行うことが決定されました。

SCP-1244-JPが財団の管理下に入って以降、数名の武装人員によるサイト-███の襲撃、スパイによる内部資料の持ち出し未遂などのインシデントが数年に一度の間隔で発生しています。これらの犯人は殆どが拘束直後に自決し、それを阻止してもあらゆる尋問に対して異常な耐性を発揮するため命令者についての決定的な証拠は未だに掴めていません。しかし断片的な情報やオブジェクトの歴史背景から、これらの犯行は境界線イニシアチブによるものであると考えられています。

SCP-1244-JP-A第1層の調査によるSCP-1244-JP-1の原理及び起源解明は、関連する資料が発見されないため難航しています。現在までに発見された最も有力な手がかりは、5-C執務室区画で発見された以下のメモ書きです。

十字軍6による投石は頻度を増す一方であり、日に日に戦死者は増え続けています。幸い事前に塞いでおいた坑道の出口は未だ見つかっていませんが、先日の戦闘で山の北側を抑えられたため砦への直接的な侵攻も時間の問題でしょう。我々にとってこの肉体を捨てることは喜ぶべき事ですが、我々の教えと古の知識、そしてこの砦の役割を後世に残す事が出来ないのは問題です。故に、帰依者7バルトロメの献策を実行する他ありません。たとえ永遠の業火に焼かれようとも、皆この遺跡の守り人となる覚悟は出来ています。

完徳者8ジョセフィーヌ

以上の内容より、1244年に起きたモンセギュール戦いで火刑に処されたという200人余りのカタリ派信徒がその起源であるという見解が主流となっています。

補遺2: 20██/8/11以降に発生したSCP-1244-JPについての一連の事象については、以下の記録を参照して下さい。


 
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20██/8/14のSCP-1244-JP-A第3層の様子。右側壁面を覆う粘菌状の生体が確認できる。


事象SCP-1244-JP-1-αの発生時確認された炎の波長及び金属の溶融の様子から、鋼鉄扉によって隔離されていた第1層を除くSCP-1244-JP-A全域は当時10分間に渡って1700K程度の高温に晒されていたと考えられます。また、SCP-1244-JP-1個体が121に減少していることが確認されました。

事案1244-JP-610の発生を受け、ミュオンジオトモグラフィ11によるピレネー山脈東部地域の地下構造調査が行われました。この結果、フランス共和国・スペイン王国・アンドラ公国に跨る半径███kmの地域の地下に大規模な地下空間が広がっていることが判明しました。SCP-1244-JP-2の存在から、これはバイカル湖周辺地域やバルカン半島で発見されているものに匹敵する規模のサーキック生物のコロニーであると断定され、SCP-1244-JPとは別途にSCP-████-JPとしてオブジェクト指定がなされ、SCP-1244-JP-2もまたSCP-████-JP-1として再定義されました。SCP-████-JP-1の活動が突発的かつ継続性のないものであることからその殆どは休眠状態にあり、今回の事象は小規模な集団が何らかの理由により目覚めたことで発生したと見られています。この発見を期に当該地域に存在する既知の洞窟の調査を行い、SCP-████-JPの地上との接続点となっている可能性のある洞窟は全て埋め立て、監視所を設置しました。これらの現状を踏まえ、シトラ=アキュラ12合同司令部はSCP-████-JPに対する過剰な干渉は事態を悪化させる可能性が高いとして、現状ではSCP-1244-JPへの専門部隊の派遣及びSCP-1244-JP-A深部の長期的な探査活動のみを行う決定を下しました。このためSCP-1244-JPに対して提案されていたKeterクラスへの引き上げは保留され、モンセギュール及びその周辺地域の封鎖も必要なしと判断されました。

恐らくSCP-1244-JP-AはSCP-████-JPの存在に気付いた古代ケルト人が、そこから稀に湧き出してくるSCP-████-JP-1を地上に出る前に食い止めるために作った防衛機構だったのでしょう。異様に複雑な構造も、かのラビュリントスが如く怪物を中に捉えておくための迷宮だったと考えれば辻褄が合います。そして、増幅された火で迷い込んだ者たちを焼き払うのです。しかし気になるのは、その要となるはずのSCP-1244-JP-1についての記録が、この場所を研究していたであろうカタリ派の資料から一切出てこないことです。恐らく、この場所を占拠した者たちが持ち出したのでしょう。 —█████・██博士

補遺3: シトラ=アキュラ合同合意条項474-サーキック・カルトの調査に関する国際的な超法規的調査権限に基づき、財団と世界オカルト連合は国際連合を介して、[編集済]に対してアルビジョア十字軍及び1244年のモンセギュール攻略戦についての未公開資料の提出を要求しました。交渉の窓口となった境界線イニシアチブは、本格的な交渉に先立ちこれまでのサイト-███に対する襲撃などへの関与を一部を除いて認めました。この理由について担当者のサルヴァトーレ・ボルジア司祭は、SCP-1244-JPが"モンセギュールの忠義者"という既に壊滅済みの対立組織と関連するものであると考えその制圧を狙っていたと述べました。この件により交渉は財団・世界オカルト連合側優位で進み、攻略戦自体に対する[編集済]の積極関与を証明する公的な記録の抹消を条件に、関連する多数の資料を開示しました。以下はその抜粋です。


 

以上の資料より、カタリ派内部に古代メカニト19の教義を継承する一派が存在していた可能性が浮上しました。現代の壊れた神の教会の成立は産業革命以降であるとされ、古代メカニトとの連続性は不明でしたが、カタリ派を始めとするグノーシス主義を信奉する集団を隠れ蓑に活動を続けていた可能性が指摘されています。一方で、当時の[編集済]がこの資料を元にSCP-1244-JP-Aの捜索を行ったという記録は存在しませんでした。このため、SCP-1244-JP-Aから持ち出されたと考えられるSCP-1244-JP-1についての詳細な研究資料の行方は依然不明です。

補遺4: 20██/██/██、セルビア共和国における白き虫の秘儀教団20の拠点の一つである施設の制圧の際、SCP-1244-JPに関係すると考えられる資料が複数発見されました。これらは中世のソロモナリ21から継承した歴史資料として保管されていたものと考えられ、モンセギュール陥落後生き延びた者がボゴミル派22の存在するバルカン半島に亡命した事で伝来したと考えられています。その多くはカタリ派がSCP-1244-JP-A内部で行っていたサーキック生物についての調査資料であり、彼らがSCP-1244-JPの機能をある程度把握し、SCP-████-JPの完全な復活に備えた研究を行っていた事実を裏付けるものが殆どでした。しかし、これらの資料の中に興味深いものが発見されました。


 
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