SCP-1254-JP
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SCP-1254-JP-a

アイテム番号: SCP-1254-JP
 
オブジェクトクラス: Euclid
 
特別収容プロトコル: SCP-1254-JPは全て、密封されたアクリルケースに個別に保管された状態で、中型静物収容用ケージに収容してください。新たなSCP-1254-JPが発見された場合、速やかに対象を確保し、同様に収容を行ってください。その際、発見されたSCP-1254-JPの一般曝露者と思われる人物は確保、拘留し尋問と精神鑑定を行なった後、財団フロントのクラスA区分である精神医療施設のいずれかに於いて治療を行なってください。
一般曝露者と、一般曝露者の精神的な傾向を認知する一般人に対しては、クラスB記憶処理を行なってください。
 
SCP-1254-JPを用いた基本実験に於いては、一名の被験者を使用しての実験は80回を上限とし、それ以上の実験を行う場合、他の被験者を使用してください。基本実験はセキュリティクリアランスレベル2以上の職員二名以上の許可と、SCP-1254-JP担当研究員一名以上の許可が必要です。
SCP-1254-JPを用いた再発現実験に於いては、セキュリティクリアランスレベル3以上の職員三名以上の許可と、SCP-1254-JP担当研究主任の許可が必要です。
 
説明: SCP-1254-JPは現在27個まで存在が確認されている、同一の異常性を共通して有した置き時計型のアナログ式のベル目覚まし時計です。うち25個までがSCP-1254-JP-a〜yとして現在収容されています。
SCP-1254-JPは通常の目覚まし時計と比較して特異的な外観は有しませんが、背面部に三桁までのダイヤル式カウンターが内蔵されています。動作は通常の単三電池二本によって行われますが、後述の異常性に関係する動作は電力の供給無しに行われます。
 
躁鬱の傾向を自認する人間(以下"曝露者"と表記)がSCP-1254-JP背面部のアラーム設定用のツマミ部分に接触した時、SCP-1254-JPは即座に複製されます。複製によって新たに生成されたSCP-1254-JPは時針、分針、秒針全てが12時を指した状態で出現します。曝露者は直感的に、この新たに生成されたSCP-1254-JPを自身の所有物と認識します。
 
曝露者が、一日のうちの最初の起床時から一時間以内に、自身の所有物であるSCP-1254-JPのアラーム設定用のツマミ部分を操作したとき、曝露者の躁鬱症状が寛解します。この効果は曝露者が四時間以上の睡眠を一度にとるまで持続し、曝露者はこの効果をSCP-1254-JPによるものと知覚します。
以後、曝露者はSCP-1254-JPの効果を限定的に操作可能となり、最初の起床時から一時間以内にアラーム設定用のツマミ部分を操作するとき、この効果の使用を意識することで実際に効果を発現させることが可能となります。
曝露者によって意識的に効果の発現がなされた場合、その度にSCP-1254-JP背面部のダイヤル式カウンターが1つ進みます。
このカウンターの数字が7〜13ほど進む毎に、躁鬱症状寛解の効果は、更に精神衛生上に於いて有益な効果が追加され、現在まで積極性の獲得、自信の向上、想像力の増進、自制心の向上、情緒の安定化、発話能力の向上、ストレスへの耐性の強化が観察されています。
その性質から、曝露者は社会生活上でSCP-1254-JPの効果に依存し始めますが、それがSCP-1254-JPの異常によるものなのかは現在調査中です。
 
補遺1: SCP-1254-JPは長野県松本市の█████で発見されました。その時、同時に手書きの文書が回収されました。文書には多量の黒インクによる汚れが付着しており、判読のための復元作業が行われていました。
以下は、復元に成功した文書に記されていた文章の全文です。
 

お元気ですか? そちらは、前よりはあたたかくもなってきましたでしょうか?
 
こちらにも、そちらの陽気が入ってきてはくれないかとあさましくも願うばかりです。
 
しかし、つめたい雪や、かゆいばかりの霜やけに悩まされても、心だけは人らしくあたたかいものです。
 
せめて、あなたの心だけでも、つめたい吹雪の中でだってあたたかくあって欲しいと思います。
 
素晴らしい青空は、かならず黒雲の上で、時間をしらせるおてんと様の恵みを浴びているのです。

              酩酊街より あいのみを込めて

 
文書の黒インク汚れの形状と筆跡の形状から、インクの汚れは誤って零されたものとみなされており、本文書が人間の手になるものであるという推測の論拠の一つとされています。現在、その推測に基づいた筆跡の調査から、著者を特定する試みが継続されています。
 
また、SCP-1254-JPの実用的効果から、研究の完了後にはDクラス職員の情緒安定のために本オブジェクトの積極的な活用を想定した、Dクラス職員取扱規程改訂の企画が検討されています。
 
補遺2: 20██年10月16日、Dクラス職員を用いた、SCP-1254-JPの長期使用実験中、SCP-1254-JPが予期せず未知の異常性を発現させました。以下は、その際の事故調査記録の抜粋です。
 

SCP-1254-JP関連事故調査記録-1

発生日時: 20██年10月16日7:10

発生現場: サイト-8141第4長期実験用監視居住室

状況: D-1254-3資源活用のSCP-1254-JP長期使用実験中に発生。D-1254-3(以下"被害者")は男性、28歳、中度の躁鬱と診断されたため、本実験への適性を認められ従事中であった。
[中略]
7:09、被害者は実験担当責任者千佐久 宗二博士の指示により、SCP-1254-JP背面部のアラーム操作ツマミを操作。従来通り、背面部のダイヤル式カウンターが進行し、カウンターの数列が108であることを確認、同実験担当者桧山 深鈴博士により記録される。
7:10、被害者の躁鬱症状の寛解と、精神状態の改善の兆候が確認された直後、SCP-1254-JPのアラームが鳴り始める。この時、SCP-1254-JPのアラームのスイッチはOFFであったことが確認されている。
7:11、アラーム停止せず。被害者に変調が確認され始める。断続的な奇声を連呼し、全身より多量の汗、唾液、涙、鼻水等の体液を分泌させながら痙攣し、転倒。8秒後には失禁。実験中止が千佐久博士によって宣言され、保安要員によって被害者が救助、サイト-8141第2救急治療室に搬送される。
[中略]
8:37、SCP-1254-JPのアラーム停止。同時に、被害者の死亡を確認。

医師所見: 患者の肉体的な反射と、リアルタイムでの脳波測定と、電気信号の分布検査から、患者は平均約1.28秒毎に極端な双極性障害的な躁と鬱を繰り返していたと推定される。直接の死因は、脳を構成するタンパク質が急速に凝固したことによる致命的な伝達の不全によるものと思われるが、ごく短時間のうちに連続して推移する双極性障害との関連性は不明である。

 
その後の実験により、SCP-1254-JPはダイヤル式カウンターが108になった時、つまりは曝露者がSCP-1254-JPの効果を任意で108回使用した時に、上記の事故記録と同様の異常を以て曝露者を死亡させることが判明しました。
曝露者はSCP-1254-JPのアラームが停止する、およそ1時間30分〜2時間10分、2秒以下毎に極端な躁と鬱を交互に発症します。脳タンパク質の凝固はその間進行し続けますが、アラームが停止するまでは死亡しません。
 
これらの結果を受け、SCP-1254-JPに関係する全記録の再調査と、上記の異常現象を踏まえた上での、一般に於ける曝露例の再調査が20██年10月28日に実行されました。その結果、20██年10月18日に、上記の異常現象によるものと思われる一般人の死亡案件が発生していたことが判明し、回収部隊を派遣したところ、SCP-1254-JPが確認され、SCP-1254-JP-kとして収容されました。
 
補遺3: SCP-1254-JP-aの回収時に回収された文書の文面が変更されていることが判明しました。文書の管理体制に異常が見られなかった点、閲覧記録に於ける閲覧数が0であり、記録改ざんの痕跡も認められなかった点から、この変更はあらかじめ当文書に仕込まれてあった機能と思われます。
以下が、変更後の文章の全文です。
 

お            前  は      な            
 
   にも                 ない  あ ま           
 
         や     か        され    だ   ら く          
 
         だけ      い     だ      く            
 
素晴らしい                                       

              楽しもうね

 
未回収のSCP-1254-JP実体は現在も確認されており、回収の努力が継続されています。

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