セキュリティ警告
当文書はタイプⅦ反ミーム1誘発性ミームエージェント『ヤマーンタカ』による保護が適用されています。
当文書の閲覧を終了した時点で、閲覧者には自動的に記憶処理が施されます。
ミームエージェントの展開を開始します。
しばらくお待ちください。

是は消滅が運命付けられた或る地獄の物語である。
ミームエージェントの展開が正常に完了しました。
文書が閲覧可能になりました。このままお進みください。
アイテム番号: SCP-1259-JP
オブジェクトクラス: Uncontained
特別収容プロトコル: SCP-1259-JPは201█年時点では未発生です。SCP-1259-JPは204█/11/██に発生し、204█/05/██にSCP-1████-JPとして成功裏に収容されます。
セキュリティクリアランスレベル3以下の職員に対しては、SCP-1259-JP-Aを「SCP-1259-JP」としてナンバリングし、他のSCP-1259-JP関連物の存在を隠蔽した報告書(以下、SCP-1259-JP-T)が提供されています。SCP-1259-JP-Aの収容はSCP-1259-JP-Tに基づいて実施されます。最低でも204█/05/██までは、サイト-8108におけるSCP-1259-JP-Aの38個体の収容を維持し続ける必要があります。同時に、204█年5月までは誰であれ、秘匿されたSCP-1259-JPの真の情報を一部でも記憶することは厳重に禁じられます。
セキュリティクリアランスレベル4以上の職員のみ、SCP-1259-JPの正確な報告書を閲覧することが許可されます。当該報告書に記載されている情報はタイプⅦ反ミーム誘発性ミームエージェントで保護されており、報告書の閲覧を終了した時点で、閲覧者および随伴して情報を得た人物には自動的に記憶処理が施される設計となっています。クリアランス制限およびミームエージェントは204█/06/██に自動的に破棄されます。SCP-1████-JPはSCP-1259-JPへと再ナンバリングされ、本報告書は実際の収容過程の記録を含むものへと改定されます。
説明: SCP-1259-JPとは、204█/11/██に発生する、公的には未発見とされている3種類のペプチド(以下、SCP-1259-JP-1と総称)の半減期が6.7×1010倍に延長する現象です。SCP-1259-JPは地球上のあらゆる地点で同時多発性かつ特発性に発生し、その効果は永続的です。
SCP-1259-JP-1は現生の大腸菌(Escherichia coli)のみが産生能力を有していますが、201█年現在においてはSCP-1259-JP-1は極めて不安定で、合成からわずか0.0008〜0.001ミリ秒でほぼ全量が既知のペプチドおよびアミノ酸へと分解することが確認されています。そのため、SCP-1259-JPの発生までに一般人がSCP-1259-JP-1を偶発的に発見する可能性は非常に低いと考えられています。SCP-1259-JP-1の存在自体は201█年に財団医療部門所属の████博士により発見されていますが、研究が不可能で性質が完全に不明、かつ隠蔽手順が不要であることから、201█年時点ではAnomalousアイテムとして分類されています。
SCP-1259-JP-1は哺乳類または鳥類(以下、対象)の消化管内に存在するとき、脳内に存在するときの2つの場合において活性化します。対象の消化管内では、SCP-1259-JP-1はアルミニウム・銅・亜鉛・スズ・ニッケル等の一般的に硬貨の原料となる金属と、紙幣として利用される種類の紙を構成する繊維に対する強力な消化酵素として作用します2。これにより、対象は硬貨および紙幣を消化し、エネルギー源とすることが可能になります3。SCP-1259-JP-1は消化管から血中へ移行し、通常のペプチドトランスポーターによって血液脳関門を通過します。対象の脳内では、SCP-1259-JP-1は前頭葉、視床下部および海馬に作用するホルモンとして働きます。SCP-1259-JP-1の影響下にある対象は、何らかの形で貨幣を知覚したときに、それを摂食したいという欲求を抱きます4。さらに、対象は「貨幣は摂食するためのものである」という認識を抱き、あたかも昔から常にそれを行なってきたかのように振舞います。
もともと大腸菌は温血動物において一般的に見られる腸内細菌であるため、SCP-1259-JPの発生と同時に、地球上の大部分の哺乳類・鳥類(特に、誕生から常に無菌環境で過ごしてきた個体を除く全てのヒトが含まれます)がSCP-1259-JP-1に曝露します。結果として、全世界の人類の習慣として「貨幣を摂食する行為」が追加されることになります。これは人類が貨幣に対して持つ価値観の再構築、およびそれに伴う経済基盤の消滅を引き起こすAK-クラス:文明崩壊シナリオであると見なされています。
SCP-1259-JP-Aは分類不明のつる植物であり、SCP-1259-JP-Tにおいて「SCP-1259-JP」とされているものと同一のオブジェクトです。SCP-1259-JP-Aは、当報告書が作成された201█/02/██までは「SCP-1259-JP」として正式にナンバリングされていたことに留意してください。SCP-1259-JP-Tには意図的に配置された虚偽の情報、および削除された情報が複数存在します。以下はSCP-1259-JP-Tには記載されていない情報の一覧です。
- SCP-1259-JP-Aの円板の裏面には、「日本生類創研 204█年製作」という刻印が存在します。
- SCP-1259-JP-Aの体組織には、SCP-1259-JP-1と近似した構造式を持つ未知の合成物質が多量に含まれます。この合成物質は自然には分解されず、201█年現在でも安定して存在しますが、400℃以上の熱を加えることにより分解します。SCP-1259-JP-Aはこれを用いて、貨幣の摂食から消失までの短時間でその表面の一部を消化し、生存に必要な最低限のエネルギーを得ています。また、SCP-1259-JP-A自身はこの合成物質を産生できないため、SCP-1259-JP-A発生時に外部から供給されたものを貯蔵し、使用しています。
- SCP-1259-JP-Aは硬貨の選別能力も完全ではなく、硬貨と同じ材質の合金が硬貨と同様の形状に成型されていれば、内部状況は問わずに摂食します。このため、偽の硬貨の内部に無線通信機材を埋め込んでSCP-1259-JP-Aに摂食させることが可能です。ただし形状の基準は極めて厳格であるため、映像記録用の機材を搭載するために何らかの穴が空けられた偽硬貨は拒絶します。
- SCP-1259-JP-Aが摂食した貨幣の行方はすでに判明しています。
- SCP-1259-JP-Aのサイト-8108における収容数が38個体に維持されている理由は、研究上の便益に関するものではありません。
SCP-1259-JP-Bはペンキで金色の塗装を全体に施されたポリエチレン製のバケツであり、SCP-1259-JP-Aの各個体に摂食されて消失した貨幣は全てSCP-1259-JP-Bの内部に転移します。無線通信機材を摂食したSCP-1259-JP-A個体とSCP-1259-JP-Bを繋ぐ時空間異常を経由することで、両者の周辺の空間を繋いだ無線通信を行うことが可能です。SCP-1259-JP-Bの発見日は204█/04/██です。
発見経緯: 201█/12/██、SCP-1259-JP-A(当時はSCP-1259-JPとして扱われていた)に吸収されて消失した現金の行方の調査を目的として、500円硬貨の形状に成形したニッケル黄銅の内部に小型の録音機とGPS発信機を埋め込んだ偽硬貨を作成して投与する実験が行われました。偽硬貨が消失した時点でGPS信号は途絶し、直後に偽硬貨が紙束のような物体の上に落下した音が記録されました。続いて「30年ものの貨幣だが、最近は不良品ばかりだ」という男性の声が記録され、直後にイエネコと見られる生物の鳴き声、偽硬貨が地面に投げ落とされたと見られる音、そして偽硬貨が何らかの原因で破砕される音が記録された時点で通信が途絶しました。
音声記録内の男性の発言より、偽硬貨の転移先が2040年代の基底次元である可能性が高いと指摘されたため、未来の情報が拡散されることで発生しうるパラドックスを阻止する目的で実験関係者全員にCクラス記憶処理が施され、収容担当チームによるSCP-1259-JP-A関連の実験は凍結されました。日本支部理事会の指令により、SCP-1259-JP-Aから未来の情報を得ることを目的とした研究チームである機動部隊せ-2("岡っ引き")が結成され、予備保管サイト-81██に移送されていたSCP-1259-JP-A個体を用いて、秘密裏に実験が継続されました。
201█/01/██、偽硬貨に無線でのデータ通信および電波の発信が可能な小型装置を内蔵し、SCP-1259-JP-Aに摂食させる実験が行われました。偽硬貨が消失・転移した直後に、偽硬貨から財団日本支部における救難信号である████kHzの電波を発信したところ、転移先の世界の福岡県██市に駐在していた財団の機動部隊により、██港の廃棄コンテナ内にて偽硬貨および偽硬貨を持っていた男性2名、並びにSCP-1259-JP-Bが確保されました。結果として、研究チームは204█/04/██時点の財団との連絡手段を入手することになりました。男性2名は、尋問に対して「暴徒に襲撃されて壊滅したニッソ5本部から逃げてきた」「バケツから出てくる金を売って生計を立てようとしていた6」などと回答したことが記録されています。
204█/04/██時点の財団は、現在発生している状況を研究チームに伝えるために、SCP-1████-JPの報告書の原案を送信してきました。この報告書の中にSCP-1259-JP-Aと関連する情報が多分に含まれているものと判断されたため、研究チーム内でSCP-1████-JPをSCP-1259-JP、SCP-1████-JP-1をSCP-1259-JP-1として再ナンバリングし、同時にそれまで「SCP-1259-JP」として扱われていたオブジェクトをSCP-1259-JP-Aと改めることが決定されました。
補遺: 以下は、201█/02/██に偽硬貨を通して受信された文書です。現在のSCP-1259-JP収容プロトコルは、この文書に基づいて設計・運用されています。
過去の財団職員諸君へ
諸君は私のことはよく知っている筈であるから、特に自己紹介をする必要は無いだろう。
204█/11/██、SCP-1████-JPは突発的に全世界を覆った。おそらく、原因などというものは無かった。そこには、なすすべなくそれまでの「正常な生活」から引き剥がされていく人類の姿しか存在しなかった。日本支部理事会、O5評議会ですら、あれの魔の手を逃れたものはいなかった。
だが、反撃の手段が完全に失われたわけではなかった。非常に幸運なことに、私は体質上、SCP-1████-JP-1の影響を受けずに済んだ。また、他のSCiPに対応するために特別に養育されたバブルボーイたちにも、予想していた形とは違ったものの出番が与えられた。被害を受けなかった者の特徴からSCP-1████-JPの正体は即座に看破され、対処法の策定に財団の叡智が注がれた。
財団が持つ技術は30年前と比較すると大きく進歩している。████kHzの電磁波を用いた全世界的なDクラス記憶処理、遺伝子除去処理を施した生物の急速拡散による異常遺伝子の淘汰、反ミーム-抗ミームクラスター弾頭を搭載したICBMでの異常文献・異常記録の広域破壊、我々はこれらの技術をふんだんに活用することで、AK寸前だったこの騒動を完全に収容・隠蔽し切る道筋を打ち立てたのだ。私ももう間も無く現在の職務を降りて、元のサイト管理者に戻ることが可能になるだろう。だがそれでも、「空白」の期間は半年を数えることになった。そして我々は今になってようやく、SCP-1259-JPの起源が「空白」にあったことを知ったのだ。
諸君がSCP-1259-JPの収容、ひいてはSCP-1████-JPの収容を確実にするために必要な事実が2つある。1つは、いまサイト-8108に存在するSCP-1259-JPが全部で38個体であること。もう1つは、現時点ではこのオブジェクトに1259ではなく1████のナンバーが振られていること。これらが極めて重要な意味を持つことは今更説明せずともよいだろう。そしてこれらは同時に、204█/05/██まではこの世界がどうにか存続することを確定させるための必要条件となるだろう。
我々が諸君に与えることが可能な「現在」は確固たる胴体だが、さらに先にある未来が、再び別の形で訪れる世界崩壊の時に切り捨てられる尾部でないと保証することは不可能だ。ゆえに我々は、近日中に諸君との交信を打ち切るべきだと考えている。我々が、そして諸君が常に脆い吊橋の上に存在していることを忘れてはならない。
確保、収容、保護。
日本支部暫定理事"金蛇"
この文書が受信された翌日、双方の財団の合意に従って偽硬貨は廃棄されました。機動部隊せ-2("岡っ引き")は現在のSCP-1259-JP報告書を完成させたのちに解散し、所属していた全員にDクラス記憶処理が施されました。