SCP-1263-JP
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アイテム番号: SCP-1263-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: 現在SCP-1263-JP-Aはサイト-81BBの低危険度中型物品収容庫に収容されており、遠隔スキャン等の非破壊検査技術による内部構造解析の試みが継続されます。SCP-1263-JP-Bはサイト-81██の標準人型収容チャンバーにて収容し、1日に3度、定期的に通常の食事を与えて下さい。

説明: SCP-1263-JPは、基底世界の時間軸上における未来いずれかの時点に起源を持つと考えられる、2つの異なる実体の総称です。これら2つの実体はそれぞれSCP-1263-JP-A、Bとナンバリングされますが、両者の分離の不可能性から単一の収容環境下で研究が行われています。両実体は分離しました。

SCP-1263-JP-Aは、金属製の拘束椅子に類似した外観のオブジェクトです。背もたれ、肘掛け、台座部にそれぞれ枷状構造を有しており、これによって着席者の腰部と左右の手首、足首を拘束します。また分解調査の試みはその破壊耐性によって成功していませんが、非破壊検査によって、SCP-1263-JP-A内部は組み込まれた未知の電子基板や機械部品によって満たされている事が確認されています。

SCP-1263-JP-BはSCP-1263-JP-Aと同様の破壊耐性を有し、SCP-1263-JP-Aに着座した拘束状態にある女性の異常な人型実体です。当該実体はヒト(Homo sapiens)に類似した構造を有しながらも、胸椎部分で直角に前方へと湾曲した脊椎、それに伴って前方へ付き出した構造の頸部、極端に短縮された左右の上腕二頭筋、光からの眼球保護が主要機能と見られる瞬膜1等に代表される、全身79箇所の解剖学的異常を示しています。その他の外見的特徴としては極度の肥満体とまばらな頭髪が挙げられ、また一切の食事や代謝、排泄を行いません。オブジェクトの解剖学的構造と活動が変化しました。追補を参照して下さい。SCP-1263-JP-Bは時折英語と類似点を持つ2と見られる不明な言語で発話を行う事が確認されており、財団言語学チームによる解析が進められています。3

発見経緯: SCP-1263-JPは20██/11/15、サイト-81██近傍の山中経緯度██°██'██"N, ███°██'█"Eの地点にて突如発生した時空間異常4の調査が行われた際に発見されました。当該時空間異常は一方通行型のポータルとしての性質を有していたものと考えられ、発生確認から82分後にあたる同日14:37にSCP-1263-JPを排出した後、自発的に消失しました。この際同行していた時間異常部門の計器により記録された時間的変動の痕跡から、同部門はSCP-1263-JPの起源について「基底世界の属する時間軸におけるいずれかの未来より転送されたものである」との見解を示しています。

追補1: 20██/01/19、担当主任の原田博士により、SCP-1263-JP-Bの身体構造が収容当初と比較して僅かながら変化しているとの報告がなされました。報告時点での変化は脊椎の湾曲角度の微細な減少のみであったものの、その後時間経過に従って変形速度は指数関数的に増加し、20██/02/24時点で皮下脂肪の急速な減少並びに全身各部に於ける骨格の変形と頭髪の増加に代表される変化により、全体的にヒトに近い形状に近付いている事が示されています。またそれに伴ってSCP-1263-JP-Bの発話頻度が増加しており5、これにより言語解析の効率化が期待されます。

追補2: 20██/03/11 16:07、研究チームによる定期観察中であったSCP-1263-JP-Bが完全にヒト女性と同一の外観となり、SCP-1263-JP-Aの拘束状態から自動的に解放される事象が発生しました。本事象後SCP-1263-JP-Bは食物の消費を必要とする様になり、代謝や排泄といった一般的な生理現象を行うようになった事が確認された他、破壊耐性も消失しました。その為直ちに遺伝子検査を含む各種データの収集が実施され、その結果当該実体は遺伝子的、解剖学的に見て一般的なヒト女性と相違点が見られない事が確認されました。

SCP-1263-JP-Aに関しては尚も破壊耐性を有し続けましたが、協議の結果その性質を確かめる為、Dクラス職員や体格的に適した実験動物を着座させて経過を観察する実験の実施が決定されました。

実験記録1263-JP-01 - 日付20██/04/19

対象: D-126301(50代男性)

実施者: 原田博士

実施方法: D-126301をSCP-1263-JP-Aに着座させ、経過を観察する

結果: 着座完了と同時にSCP-1263-JP-Aの枷状構造部が5箇所いずれも自動的にロックされ、D-126301を拘束した。D-126301は拘束状態にある間は破壊耐性と代謝、排泄の停止を示し、47時間後に自動的に開放された。

分析: 拘束状態にある間の状態はSCP-1263-JP-Bのそれに類似するが、身体の構造的な変形は発生しなかった。また、SCP-1263-JP-Bと比較して拘束時間も明らかに短いものである。

補遺: 実験終了後10日が経過した20██/05/01、D-126301の立ち上がる、屈む等の日常的な動作が以前と比較して迅速に行われる様になっているとの報告があり、事実確認のためD-126301へのインタビューが行われた。これに対しD-126301からは、「40代頃より重度の腰痛に悩まされていたが、本実験以降その腰痛が無くなった」との回答が得られた。

実験記録1263-JP-02 - 日付20██/05/27

対象: D-126302(脊椎後弯症6に罹患している30代女性)

実施者: 原田博士

実施方法: 各種身体診断を行った上でD-126302をSCP-1263-JP-Aに着座させて経過を観察し、解放後に再度診断を行い比較する

結果: D-126302は実験記録1263-JP-01と同様のプロセスを経て、85時間後に自動的に開放された。解放後の診断では脊椎後弯症の完治に加え、血圧、血糖値、肝機能の状態等の値がいずれも実験前と比較して健康な状態へと変化している事が示された。

分析: 脊椎後弯症の治癒までは想定内だったが、SCP-1263-JP-Aはそれ以外の健康状態にも有用な変化を齎すようである。

実験記録1263-JP-03 - 日付20██/07/30

対象: D-126303(第3期糖尿病に罹患している40代男性)

実施者: 原田博士

実施方法: 各種身体診断を行った上でD-126303をSCP-1263-JP-Aに着座させて経過を観察し、解放後に再度診断を行い比較する

結果: D-126303は実験記録1263-JP-01、02と同様のプロセスを経て、217時間後に自動的に開放された。解放後の診断では糖尿病の完治が確認され、診断の結果は全ての値で健康値を示した。また元来D-126303は頭髪の5割程度が禿髪の状態であったが、本実験に於けるSCP-1263-JP-Aへの拘束中に頭髪の急激な発育が発生し、非禿髪の状態となった7

分析: SCP-1263-JP-Aに人間を着座させた場合の異常効果は健康状態の改善であるように観察され、またそれには頭髪の発育促進も含まれると見られる。

尚、この後に複数回実施された実験からSCP-1263-JP-Aによる身体矯正効果は先天的、後天的の如何を問わず発揮される事が確認された他、チンパンジーを着座させる実験ではSCP-1263-JP-Aは対象の実験動物に反応せず、拘束状態への移行自体が発生しませんでした。

この結果を受けて20██/09/11、SCP-1263-JP-Aからの有用な技術の入手を目的にサイト-81BBでの非破壊検査技術を用いたオブジェクト解析の開始が決定されました。

追補3: 20██/12/21、財団言語学チームによる言語解析が、未解読の語彙を残しつつもSCP-1263-JP-Bへの質問自体は可能な段階まで完了したため当該実体へのインタビューが実施されました。

インタビュー記録1263-JP-01 - 日付20██/12/21

対象: SCP-1263-JP-B

インタビュアー: 原田博士

特記事項: 円滑な意思疎通実施の為、財団言語学チーム開発の自動翻訳機械を用いてインタビューが行われた。

<録音開始>

原田博士: SCP-1263-JP-B、インタビューを開始します。

SCP-1263-JP-B: (11秒沈黙)[翻訳エラー28]、猿には分からない苦しみだ。

原田博士: 猿?……まず、貴女の身に起きたのは

SCP-1263-JP-B: (原田博士の言葉を遮って)[翻訳エラー2]、[翻訳エラー19]の報復で流刑に。あの忌々しい[翻訳エラー1]椅子で。

原田博士: 椅子。それは貴女が座っていた拘束椅子の事ですね?流刑と言うと、自分が何処から来たかは分かりますか?

SCP-1263-JP-B: (声を荒らげて)時間跳躍。[翻訳エラー1]によって、時間[翻訳エラー2]の猿の世に。

(SCP-1263-JP-Bは激しく啜り泣き始める)

原田博士:インタビューの継続は可能ですか?

(SCP-1263-JP-Bからの回答は無い)

原田博士:インタビューを終了します。

<録音終了>

尚SCP-1263-JP-Bは現在うつ病に近い症状を示しており、主立った言動として「自分は猿にされてしまった」との内容の発言を繰り返している他、「せめて人間らしい暮らしをさせてくれ」として以下の内容を求めています。

  • 極度に高カロリーの食事
  • 1日につき18時間以上の電子端末の使用
  • 頭髪の除去

また収容室内では何もない壁に向かってPCを操作する際のような前屈みの姿勢をとり続けており、結果的に脊椎に病的な湾曲の兆しが見え始めています。

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