クレジット
タイトル: SCP-1267-JP - 汝、神を滅するべからず(████はこの活動を応援しています)
著者: ashimine Mitan VideoGameMonkeyMONO
作成年: 2022
アイテム番号: SCP-1267-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-1267-JPは戦術神学部門により現在収容が困難であるとの結論が発表されています。後述する信仰解体プロトコルとの兼ね合いから戦術神学部門、解体部門により収容方法についての研究が実施されています。
財団内で収容されている神的存在について、機動部隊ん-1("牛飼い")から1名とDクラス職員から任意の人数が割り当てられ、SCP-1267-JP発生を防ぐため各神的存在に合致した儀式的手順が実施されます。儀式的手順については各神的存在について割り当てられたナンバリング報告書を確認してください。
説明: SCP-1267-JPはペイガニズム的信仰に立脚したピスティファージ的特性を有する神格存在が一定の信仰を喪失した際に不定期に発生する、対象神格存在の実体消失現象です。SCP-1267-JPは次のように進行します。
- ペイガニズム的信仰に立脚し一定の信仰を喪失した神格存在の上方空間に極めて限局的な時空間歪曲が生じる。観測上の歪曲範囲は最小0.7mm、最大は233.7 m。
- 時空間歪曲部が不明な非物質的領域と接続される。同時に、接続先領域を起源とする非電離放射線が時空間歪曲部と基底現実との接続面より現実化し、3.4×1027 cd程度に発光する。この際、時空間歪曲部の直下に存在する領域の現実性が59.84 Hmに固定される。
- 時空間歪曲部より特有のアスペクト放射を有する高レベルの奇跡論的非実体的存在(SCP-1267-JP-1)が出現する。SCP-1267-JP-1は激しく発光しながら基本的には対象神格存在に近い形態を保持する。出現数は一定でない。
- 対象神格存在をSCP-1267-JP-1が捕獲する。
- SCP-1267-JP-1は対象神格存在を保持したまま浮遊し、上部の時空間歪曲部へと引き摺り込む。
- SCP-1267-JP-1、対象神格存在が消失した後、時空間歪曲部は即座に閉鎖する。
- 周辺現実性の沈静化。
通常、これらの一連の過程は2~10秒程度で完了します。
SCP-1267-JP-1は非実体的なEVEの凝集体であると考えられており、形而下における一切の物理的干渉を無視します。一方でSCP-1267-JP-1は対象となった神格存在を物理的に捕獲する能力を有しているため、一方向的かつ選択的に形而下現実に対して力学的干渉をすることが可能であると考えられています。現在、SCP-1267-JPに対する具体的な対抗策は立案されていません。
当初、SCP-1267-JPは信仰を喪失した神格存在のピスティファージ的特性による「餓死」の過程であり、一連の現象は余剰奇跡論的エネルギーによるバックラッシュの結果生じた現象であると考えられていました。
戦術神学部門、解体部門による信仰解体プロトコル(補遺1参照)において複数の神格存在に同様の現象が多発していることが報告され、詳細な調査が行われました。消失時のアスペクト放射パターンの分析により対象神格存在とは明確に異なった高レベルEVEを保有する奇跡論的存在(SCP-1267-JP-1)が確認されたことからオブジェクトに指定されました。
補遺1: 以下は信仰解体プロトコルの概要です。
信仰解体プロトコル
概要: 信仰解体プロトコルは、特定のカルト的、ペイガニズム的信仰集団と互酬的関係にある神格存在の無力化を目的とした記憶処理プロトコルです。信仰解体プロトコルはHK-クラス:神的征服シナリオへと発展しうる激甚神性災害の発災防止を主目的としており、将来的にHK-クラスシナリオへと発展する可能性がある神格存在の形而上学的解体を行います。
信仰解体プロトコルは主に、形而下に観測可能な実体を伴って顕現した、もしくは形而下に何らかの神的脅威を及ぼしている非実体的神格存在のピスティファージ的特性を利用し信仰集団から特に対象神格存在が捕食対象としている崇拝、儀礼、文化、通念を記憶処理によって完全に取り除く、または捕食不能な観念へと変質させることで対象を「餓死」させます。
対象が具体的にどのような崇拝行為、信仰に立脚しているのかが同定され次第、信仰集団の構成員の形而下知的領域から当該の観念に関連する情報を記憶処理により網羅的に抹消し、補足的に擬似的な記憶を刷り込むことで対象内部の信仰観念を変質、削除、差し替えます。これらが信仰集団全体に施されることにより、対象神格存在はピスティファージ的特性によるヒト認知を由来とする信仰の捕食が不可能となり、最終的には形而下に顕現させた存在を保持不能となり実体的な死を迎えます。また、ノウアスフィアにおける信仰観念の抹消により形而上学的領域における神格存在の概念的実体の変質、非活発化、消滅を引き起こし対象の概念的無力化が期待されます。
信仰解体プロトコルは戦術神学部門 ジョン・ブレイク博士による互酬的崇拝に関連する仮説を基礎として立案されました。
以下は、信仰解体プロトコル実行報告書のうちSCP-1267-JPに関する例の抜粋です。
対象: EE-10072
状態: 解体済み
対象概要: EE-10072の実体はおおよそ人型の生物的神格存在です。EE-10072の身体構造は人間に類似したものと考えられるものの、体表の大部分は黒色の着物様の着衣に覆われており詳細は不明です。対象は岩手県██郡████████地域の住民によって信仰されていました。EE-10072は当該地域での祭儀として行われる神道儀式を捕食するピスティファージ実体であると推測されており、主に9月██日〜██日の間に行われる例大祭のいずれかの時間に実体化します。実体化後、対象は明確な活動を見せず、ほとんどの場合で神社の境内を徘徊し続けます。対象は例大祭の終了と共に消失しますが、その際に引き起こされる奇跡論的影響により岩手県██郡████████地域一帯の現実性が長期的に不安定化し、次年のEE-10072実体化までの間に様々な超常現象が引き起こされます。
結果: 当該地域への信仰解体プロトコル実行により対象は解体されました。プロトコル実行後の2014年9月██日に対象は当該地域に再出現しましたが、例大祭の終了前であるにも関わらず消失しました。以降、現在まで再出現は確認されておらず対象は問題なく無力化されたものと考えられます。なお、対象の消失に際して対象上方の空間に激しい光を伴う時空間歪曲の発生と、激しい奇跡論的活動を伴う限局的奇跡論的イベントが観測されました。現在までに実行された信仰解体プロトコル38件のうち、同様の現象は15件確認されており信仰を喪失した神格存在の辿る"餓死"の過程であると推測されています。
対象: EE-73618
状態: 解体済み
対象概要: EE-73618は外観上ラテン系人種の男性のように観測される人型生物的神格存在です。EE-73618のおおよその身体構造は一般的なヒトと同程度ですが、眼球内に球状の非実体的な発光体を、頭上20cm程度の位置に直径不定の光輪状の発光体を保有しています。対象は自身の筋肉組織の発達、退歩を操作する能力と高レベルな奇跡論操作能力を有することが確認されています。
EE-73618は元来は強靱性、勇敢性、好戦性等の原始的マッチョイズムを起源とする不定の神格存在であったと考えられています。EE-73618はプリミティブな生殖器崇拝文化、ローマ神話におけるメルクリウス及びギリシャ神話におけるヘルメス神の偶像的観念、芸術としての肉体美観念、筋肉に対する熱狂的執着との習合を経て現在の形態を獲得したものと考えられています。
EE-73618はアメリカ合衆国ニュージャージー州で活動していたヘレニズム系の信仰集団、「肉体美を追求するマッチョ・マンのための魔術的ボディビル研究会(Magical Bodybuilding Study Group for Macho Men in Pursuit of Physical Beauty)」によって崇拝されていました。EE-73618は同信仰集団による進行性抵抗運動(ボディビルディング)と古代ギリシアにおける陶酔的儀礼であるオルギアに類似した供犠を伴う儀式をきっかけに形而下に顕現、受肉したものであると推測されています。EE-73618は顕現後、肉体美を追求するマッチョ・マンのための魔術的ボディビル研究会の儀式参加者96名に対して奇跡論的影響を及ぼし、ミオスタチン関連筋肉肥大の発病、体育学的な筋組織の超回復を促進する因果論的異常、日常生活動作の大部分が筋組織への負荷へと収束する因果論的異常を付与しました。
EE-73618は顕現以降に講じられたあらゆる確保措置、物理的攻撃を筋力と奇跡論操作能力により無効化または回避しています。また、対象の内部EVEは経時的に増加し続けており、極めて深刻な神的災害を引き起こす可能性が予測されていました。
結果: 信仰解体プロトコル実行後、対象の諸能力は著しく低下しました。また信仰集団構成員に見られていた異常性群は経時的に正常化し、ミオスタチン関連筋肉肥大は残留したものの62日以内に他の影響は完全に無力化されました。
EE-73618はプロトコル実行後86時間後、従来の神格存在にも確認されていたものと同様の餓死の過程と推測される限局的奇跡論的イベントを引き起こしました。他の例と異なる点として、対象はこの過程に際して48時間37分にわたってその場に留まりました。結果として周辺環境に高現実性曝露と諸奇跡論的影響に伴う致死的な影響が及ぼされたものの、従来まで未解明だった餓死過程の詳細な観測に成功しました。
観測により、上方に生じた時空間歪曲部より特有のアスペクト放射を有する高レベルの奇跡論的非実体的存在が出現したこと、この存在がEE-73618を捕獲し、上部の時空間歪曲部へと引き摺り込むことを目的としていること等が明らかになりました。従来観測されていた餓死の過程と推測される限局的奇跡論的イベントにおいても、同様の存在が出現、神格存在を連れ去っていた可能性が考えられています。EE-73618はこの連れ去りに対して筋力によって対抗し、結果的に48時間37分後に筋肉疲労を原因とする脱力に至るまでその場に留まることに成功したものと考えられます。
これらの観測結果から当該の事象は神格存在とは独立した異常現象である可能性が浮上し、暫定的にSCP-1267-JPに指定されました。現在、研究が進行中です。
関連インシデント記録: 2018/8/18、宿舎内にて休憩を与えられていたDクラス職員8名が頭痛・軽度の目眩・耳鳴り及び幻聴等の症状を訴えました。調査の結果8人全員が、前日17日に実行されていた信仰解体プロトコルに起用されていたことが判明しました。17日に行われた信仰解体プロトコルは、アジア系カルト的信仰集団の偶像となっていた神格存在の無力化が目的であり、解体は問題なく成功していたことが確認されています。当該インシデント以降、過去に信仰解体プロトコルに参加した経験のある職員にも8名のDクラス職員同様の症状を報告する者が急増し、2022/10/15時点で82名の職員の異常を記録しています。これらの職員に対してAクラス記憶処理やジクロフェナク・トラマドールをはじめとする鎮痛剤の投与、耳朶摘出・置換措置等の内的異常を想定した対症療法は効果を示さず、また報告される幻聴の内容はいずれも「汝、神なるものを滅するべからず」「汝、神なるものの糧たる信仰を滅するべからず」といった、対象の母語に準じた言語による定型的文章であったと報告されています。本インシデントは信仰解体プロトコルの実行と関連があるものとして戦術神学部門と解体部門の間で調査が進行中です。
これらの対象はトランス的な変性意識状態にあったものと考えられており、全員が幻聴等に加えて主観的な神秘的体感に言及しました。これらの意識的状態は神学的な啓示や天啓、神示に準ずる宗教的法悦に類似したものであると考えられており、これらの対象の形而下意識に何らかの神格的存在が接触を図った可能性が神学部門によって提示されています。
関連文書1267-JP: 上記インシデント記録の調査に際して、全国都市神議会における当該事象に関連すると推測される以下の文書が発見されました。
2022年度3月号
全国都市神議会月報
日ごとに春の訪れを感じるようになりました。皆さまいかがお過ごしでしょうか。
前回2022年度2月号につきましては、この時期の体調管理について特集しました。免疫アップ体操や日頃の人々への祝福は健康に効果があることが立証されていますので、是非続けてみてくださいね。
さて、今回の月報では昨今巷で噂になっている土地神の連れ去り事件についての注意勧告が主な内容となっています。我々の周辺においても「隣町の古い土地神が突然消えた」「連れ去りの現場を目撃した」などとの情報が入ってきております。疫病の流行などもあり、信仰の獲得が難しくなっている状況の中、不安の声も多数上がっておりますが、我々としても一刻も早い犯人の特定と解決を望んでおります。会員の方々におきましても、別紙として添付しております「犯罪に巻き込まれないようにするには?」「誰にも負けない強靭な肉体を作る」などの資料を熟読していただき、防犯意識をより一層高めていただけたらと存じます。
当会報は土地神のための情報を逐次発信しております。
次回は異国の神の流入などによる信仰の奪い合いに対する対処法についてです。「キリストがブラックバスなら俺たちはスズメバチになれ!」「信仰と崇拝の違いっていったい何?」など発信する予定です。
皆様の今後のご発展を心よりお祈り申し上げます。
日本支部広報担当:東郷平八郎
上記によりSCP-1267-JPについて、神的存在は脅威であるとの認識を持っていることが確認されました。また少なくとも全国都市神議会に所属している神的存在はSCP-1267-JP現象の詳細について把握していないことが判明しています。
インタビュー記録1267-JP - 日付2022/10/28: 以下はサイト-81██内に収容されている1神格存在の1体であるEE-33875へ行ったSCP-1267-JPに関するインタビュー記録です。
対象: EE-33875
インタビュアー: 冴島博士
≪記録開始≫
インタビュアー: こんにちは、█████2。本日は幾つかお聞きしたいことがあってお呼びしたのですが。
EE-33875: ……不躾な。
インタビュアー: はい?
EE-33875: 我は神であるぞ?貴様ら人如きが我を檻に閉じ込めているというだけでも業腹であるに、突然呼び出したかと思えば図々しくも物を尋ねるだと?神に叶えて貰いたい要望があるのならそれなりの供物を差し出すのが筋であろうが。
インタビュアー: あー、なるほど。その、供物というのは具体的には?
EE-33875: うむ、我は寛大な神ゆえ人身は取らん。そうだな、貴様がよく顎で使っている橙色の衣を纏った下働き共がおるであろう。あれにこれから毎日欠かさず3回、我の檻へ懇ろに参拝を行わせよ。短くとも5年は続けさせるのだぞ。300人程度で佳い。
インタビュアー: ……分かりました。約束しましょう。
EE-33875: よかろう。それで我に聞きたいこととは何か?
インタビュアー: 先日このサイト内で███と自称する神格存在3が消失する事案が発生した件についてです。彼は兼ねてよりあなたと少なからず面識があったと███へ行っていたインタビューで聴取していたのですが。貴方からも彼についてのお話をお聞かせ願えませんか。
EE-33875: ███神か。そうさな、奴の人間に謙ったような態度は少し癇に障ったが、生まれの時が近しかったこともあってそれなりに縁を繋いでやっていた。
インタビュアー: 生まれの時というのは、つまり崇拝が始まったタイミングが近似していたということですね。
EE-33875: その通り。我ら神を産み落とすのは厚顔な人間共の祈りである。我も███神も、名も知らぬ人間の不届きな願いを聞き入れるべく臨界したのだ。
インタビュアー: あなた方を信仰していた人々は今何を?
EE-33875: 知るものか。とうの昔に我らの元から離れて、その後の行方は杳として知れぬ。我を頼んでおいて見放した不埒者のことだ、何処ぞで野垂れ死んでいるといいが。
インタビュアー: どうして彼等は貴方を信仰することをやめてしまったのでしょう?
EE-33875: 決まっておる、乗り換えだ。外国とつくにからより著名な信仰が流れて来ると、途端に我への畏敬を棄てた信者共はこぞって其方へ宗旨替えしてしまった。勝手に求められた末路がこれとは、呆れて怒りすら湧いて来ん。……しかしそうか、███神は消えたのか。ふふふ。
インタビュアー: ……?何か?
EE-33875: 奴の人間に諂うところが気に食わないというのは先に述べた通りであるが、やはり世もそれを善しとはしなかったのだろうな。当然だ、神とは気高く、人間に対して傲岸に振る舞ってこそその資質が認められるというもの。奴のように信者を増やす為に信者へ媚びるようでは、所詮神としての器に相応しくはなかったのだ。大方消えたというのも、███が神ではないことの証左であったのだろうよ。ふん、いい気味であるな。
インタビュアー: は、はあ。
EE-33875: おい、尋ねることとやらはもう終わりか。であればとっとと我の為に信者を用意せんか。███と違い我は本物の神なのであるからな。
≪記録終了≫
補遺2: 2022/11/12、上記インタビューを行ったEE-33875が収容房から消失しました。室内の監視映像では、天井付近に発生した範囲2.6mの時空間歪曲部より出現した4体のSCP-1267-JP-1によりEE-33875が強制的に捕縛される様子が確認されており、本件はSCP-1267-JP事例であると結論付けられています。4映像を認知したエージェントが収容房へ入室した時点でEE-33875は既に下半身が歪曲部へと呑み込まれており、EE-33875はエージェントに自身の救助を約2時間に亘り要請し続けました。結果として消失の遅延5に成功、それに伴いSCP-1267-JP-1のうち1体が呼びかけに対し反応を示しました。以下はSCP-1267-JP-1に行ったインタビューの記録です。
対象: SCP-1267-JP-1
インタビュアー: エージェント・葛城
≪記録開始≫
インタビュアー: すみません、私の言葉が聞こえますか?
SCP-1267-JP-1: ちょっと何人の仕事邪魔してくれてんの?
インタビュアー: いえ、我々は貴方がたのその仕事についてお話を伺いたいのです。
SCP-1267-JP-1: あーなに、苦情?それだったら悪いけど保護局の相談窓口の方に直接問い合わせてもらえないかな?うちら上からの指示通りやってるだけなんで……。
インタビュアー: 保護局、ということは貴方がたは、この神格実体を収容なさっているという認識で合っていますか?
SCP-1267-JP-1: 収容、とか言うと大袈裟だけどまあそうだよ。最近は無責任に信仰始めて後は放棄する不躾な人間が多くてねー、こういう野良も増えてるわけ。うちら保健所の迷惑も考えて欲しいよほんと。
インタビュアー: ですが彼らは我々にとっての保護対象でもあります。近頃我々の収容している神格実体を多く連れて行かれているようですが、勝手にそうした自治行為をなされても困るのですが。
SCP-1267-JP-1: え?(数秒沈黙)ああ、あんたら!?最近保護局騒がせてる財団とかいう[罵倒語]連中は!
インタビュアー: えっ。
SCP-1267-JP-1: え、じゃないよ。あんたらが手当たり次第に野良達に信者を与えたり、外来神をこの国中に根付かせたりしてるせいでこっちの仕事がどれだけ増えてると思ってるんだよ。勘弁してくれないかなあ、ああいうのさ。
インタビュアー: いや、それは此方としても正常性維持の為には仕方ない措置で……その外来神というのは?
SCP-1267-JP-1: 何しらばっくれてんだよ。君ら人間がよく呼んでるじゃない、キリストとかアラーとか七福神とか。そもそも外国じゃなくってもこの国で幅聞かせてる連中を優遇したり、野良が増えるのもそのせいなんだよ。困ってるんだからね、ただでさえ「えるま」?だの「ゆぐどらしる」?だのあんたらみたいな人間達が拵えた[罵倒語]連中が外野から野次飛ばしてきてうざいのにさあ。うちらがダンマリ決め込んでるから良いと思ってる?少しは愛護団体からの文句にも耳傾けてやってよ。
インタビュアー: はあ……。えっとその、神格対象の愛護団体なんてものも存在しているのですか?
SCP-1267-JP-1: ……?アイツらどうせしょっちゅうクレーム入れて来てるでしょ?テレパシック送信で「神々の信仰を止めよ」とか「汝、神なるものを滅するべからず」とか。
[後略]
≪記録終了≫
補遺3: 2022年11月22日以降、信仰解体プロトコル従事者に多発していた幻聴等の内容に明確な変質が確認されています。これらの対象は依然としてトランス的な変性意識状態、幻聴を経験しているものの、加えて鮮やかな幻視等を伴う例が多数報告されています。これらの幻視内容について、対象は「啓発を目的としたポスターのようなもの」との主観的感想を述べています。これらの対象の経験した幻視はBIV6によってデジタルイメージが抽出されています。
また幻視に伴い対象の経験する幻聴の内容も大きく変化したことが確認されており、「神格の殺害を強く抗議する要旨の発言」「涙ながらに語られる神格存在の死についての物語」「キリスト教、イスラム教、████、エルマ外教、サーキック・カルト、壊れたる神の教会等を関連づけた"侵略性外来宗教"についての説明」「神格の保護の重要性と人々の宗教的平和についての執拗な説明」等が報告されています。なお、対象全員が一貫して「神格存在愛護運動デモ実行中」というフレーズを幻聴において強く体験しています。
これらの対象の長期的な観察により、対象の症状は信仰解体プロトコルの実行直前後に激しくなる傾向があり、時間経過と共に鎮静化することが確認されました。SCP-1267-JP-1へのインタビューの内容を踏まえ、これらの症状はインタビュー中で言及されていた「神格存在の愛護団体」による神学的啓示を介した抗議であると考えられています。現在、全ての神格解体プロトコルは停止され事実上の凍結状態にありますが、神格解体プロトコルの停止以降、これらの対象に幻視、幻聴等は確認されていません。
「神格存在の愛護団体」または「神格を愛護する存在連合」は超自然的、超宇宙的、超現実的、形而上学的、概念的な知的コミュニティ、または社会的振る舞いを見せる観念的な神的知性体群であると推測されていますが、形而下現実における痕跡はSCP-1267-JP-1による言及、及び幻視、幻聴中に限定されており詳細は不明です。当該存在の実在性等の不透明性により、「神格を愛護する存在連合」の要注意団体指定は見送られています。現在、神学的超常コミュニティにおける調査が進行中です。また、当該団体へのナンバリングについては保留されています。