アイテム番号: SCP-1283
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-1283は、放送されていない周波数に合わせ、音量を最低にした状態で防音の保管ロッカーの中に収容されます。損傷や非正規の動作がないかどうか、遮音ヘッドホンを装着したスタッフが毎日確認します。SCP-1283が動作しSCP-1283-1が話し始める事象が起こった場合は、最寄りのレベル3職員に直ちに報告され、SCP-1283-1のきっかけになった人物は誰であろうとも、全ての問いかけを無視し直ちにエリアから退避することが勧告されます。
説明: SCP-1283は1930年代の家庭用ラジオで、████████社製であることを示す製造ラベルが付いています。オブジェクトはその年代に反してほとんど傷や汚れがありません。旧式の部品が使われているのに関わらず、良好に電波を受信しノイズや混信もなく安定して高品質の音を鳴らすことができます。加えて、SCP-1283はスイッチをオフにし、電力の供給がない状態でも作動することができます。オブジェクトの内部機構の調査により、その部品は同一モデルのラジオと一致することが明らかになっています。
SCP-1283の異常な作用は、一人の人物(以下被験者とします)がどの周波数に合わせたかに関わらず15分以上ラジオを聞いたときに起こります。先述の時間が過ぎると、その時ラジオから流れていた音が止み、ある声(以下SCP-1283-1とします)が被験者に名前で呼びかけます。常に、SCP-1283-1が利用する声は被験者が知る誰かの声です。実験ではSCP-1283-1の声は親しい友人、両親、配偶者、権威のある人物、時には██████ネットワークのニュースキャスターのこともありました。時々、SCP-1283-1は死亡した人間の声を使うこともあります。尋問の結果、被験者が最も信頼できると思える人物の声が選ばれているようです。SCP-1283-1が話し始めたあとでラジオの周波数、音量、AM-FMの設定を変えようとしても何も起こりません。
SCP-1283-1が被験者の注意を引き付けると、それはよく聞くように被験者に忠告します。この段階で被験者はSCP-1283に異常なまでに集中しはじめ、注意をそらされようとすると抵抗します。SCP-1283-1はその後、被験者に対してこの後起こる出来事に関する情報を提供します。SCP-1283-1から被験者に与えられる全ての情報をSCP-1283-2とします。SCP-1283-2は3つの独立したフェーズとして現れ、それぞれのフェーズは全ての実験において決まったフレーズで始まっています。3つのフェーズはそれぞれ関連がないように思えますが、その時に影響されている被験者だけは意味を認識しているようです。
SCP-1283-2の説明: 第1のフェーズは「~を覚えている?」という問いかけで始まり、SCP-1283-1が被験者にある特定の人物、ものや出来事を思い出させるような内容を含みます。このフェーズではSCP-1283-1が直接的、間接的に被験者と個人的つながりがあることを示しているようです。 被験者は、どんな情報だったとしてもそのことをすぐに思い出します。
第2のフェーズは「悪いことが起こりそう」という発言で始まり、SCP-1283-1が被験者に警告を与える内容を含みます。外部の聞き手にとって、その警告は不可解かつ無意味で前のフェーズと何ら関係がないように思えます。しかし、この警告に関して困惑を示した被験者は誰もいません。被験者はそのかわり、まず驚きとショックを示し、その後不安感を向上させます。苦悩しつつも、被験者はSCP-1283を聞くことを止めようとする試みに抵抗を続けます。
SCP-1283-2の最後のフェーズは「あなたなら止められる」という発言で始まります。ここで、SCP-1283-1は被験者に一通りの指示を与え、被験者が迫りくる危険を阻止できることを保証します。その指示は単純でたやすいものから複雑で危険なものまで幅広く、特定のパターンは認められません。指示が出されると、SCP-1283-1は発言を止め通常の放送が再開されます。この時点で被験者の不安は激しいパニックまで増大し、彼らは受けた指示を実行し迫りくる危険を回避しようとする強い衝動を示します。被験者を止めようとした場合、懇願や脅迫、時には暴力的な抵抗を示します。
補遺1283-1: もし被験者が受けた指示を首尾よく完了した場合、彼らのパニックはおさまり、決まって深い安心を感じたことを報告しています。被験者は通常よりも深い落ち着きを見せ将来のパニック状況において推論能力を見せることが観測されています。 インタビューを受けた被験者はラジオとの会話を覚えていますが、SCP-1283-2の第2フェーズで受けた警告に関する質問には不可解な答えしか得られませんでした。引き起こされた記憶と警告の間につながりが認められた被験者はいませんでした。
被験者が受けた指示を実行することが長い時間回避された場合には、彼らのパニックは慰めようがなくなるまで増大し続け、指示に従いたいというただ一つの衝動を見せます。しかし、この作用は可逆的です。強力な鎮静剤とクラスA記憶処理の併用はSCP-1283を聞くことによる作用を打ち消すのに効果的であることが示されています。この処理を受けた被験者は、受けた指示に従いたいという欲求を全く示しませんが、不安やパニックにより敏感になります。
注: SCP-1283-1が使った声の持主の同定は、後の被験者へのインタビューかSCP-1283-1との会話からの推定で行われています。被験者がSCP-1283-1に話しかけることがよくありますが、SCP-1283-1が被験者の問いかけや質問に応じたことはありません。この理由により、実験記録は被験者の発言記録を省いています。
実験-1283-01
被験者: D-20283
SCP-1283-1の声: 「ジュリア」、D-20283の妻
SCP-1283-2の記録:
フェーズ1:「あなたが最初に買った車を覚えてる?」
フェーズ2:「悪いことが起こりそう。井戸が枯れそうなの」
フェーズ3:「あなたなら止められる。プレートを破壊しなきゃいけない」
結果: 被験者は予測通りパニックを起こした。被験者は指示に従うためのガラス製プレートを渡された。プレートを床に叩きつけると、被験者のパニックはすぐに収まった。
実験-1283-02
被験者: D-21593
SCP-1283-1の声: D-20455、D-21593が財団での生活の間に強い絆を結んでいる
SCP-1283-2の記録:
フェーズ1:「お前の5歳の誕生日のことを覚えてるか?」
フェーズ2:「悪いことが起こりそうだ。支援者が家に帰ってしまう」
フェーズ3:「お前なら止められる。5人に食事を用意するんだ」
結果: 被験者は予測通りパニックを起こし、指示に従うため食料と基本的な調理器具を利用することを許可された。被験者は5人分の簡単な食事を用意することに成功し、パニックは予想通り収まった。しかし、被験者のパニック状態と不注意なやり方のせいで複数のやけどと傷を負った。
実験-1283-03
被験者: D-21092
SCP-1283-1の声: 「グレッグ」、D-21092の友達だと後に確認された。D-21092が投獄されたすぐ後に死亡している。
SCP-1283-2の記録:
フェーズ1:「祖父母に会いに行ったことを覚えてるか?」
フェーズ2:「悪いことが起こりそうだ。鍵が偽造されている」
フェーズ3:「お前なら止められる。1週間眠ってはいけない」
結果: 被験者は予測通りパニックを起こした。被験者は指示に従おうとすることを許可された。被験者が興奮状態にあったため、疲労で倒れるまで4日間眠らずにいることができた。覚醒後、被験者はすぐに「もう一度だ」と欲求を示した。申し出は却下され、鎮静剤とクラスA記憶処理が与えられた。
実験-1283-04
被験者: D-21635
SCP-1283-1の声: 「マーカス」、D-21635の父
SCP-1283-2の記録:
フェーズ1:「火事を起こしたことを覚えているか?」
フェーズ2:「悪いことが起こりそうだ。音楽は止まるだろう」
フェーズ3:「お前なら止められる。お前の左腕を破壊するんだ」
結果: 被験者は予測通りパニックを起こし、指示に従おうとしたが、実行前に拘束し沈静することに成功した。被験者は広範囲の打撲と靭帯の軽い損傷に対する治療を受けた。
実験-1283-05
被験者: D-20917
SCP-1283-1の声: [データ削除済]、D-20917を普段担当しているサイトの心理学者
SCP-1283-2の記録:
フェーズ1:「アレクサンダーを覚えていますか?」
フェーズ2:「悪いことが起きそうです。作家が痺れを切らせています」
フェーズ3:「あなたなら止められます。███████へ飛んでください。到着したら子供を一人見つけて、その子の家から連れ出してください。その子を██日間隠してください。その子にあなたの名前を知られてはいけません。子供を傷つけてもいけません。██日間経ったら、解放して下さい」
結果: 被験者は予測通りパニックを起こし、指示に従うことは許可されなかった。██時間の観察の後、鎮静剤の投与とクラスA記憶処理が行われた。
以下は、2005/12/19に行われた定期実験中に起きた事案1283-Aの音声を書き起こしたものです。
担当研究員: イヴァン・██████博士
被験者: D-24019
注: 音声は実験開始12分後から始まっています。
<記録開始、T+12:19>
D-24019: 先生、これは研究するようなもんなのか? 音楽を聞くのは別にいいんだが、これに意味があるとは全く思えねえぞ。
イヴァン・██████博士: 聞き続けてくれ、D-24019。もう大体終わりだ。
D-24019: まあ、あんたがどんだけ無駄にしようと、俺の税金じゃないし別にいいが。
注: SCP-1283からの音楽だけが2分間流れる。
SCP-1283-1: ダレン・█████。(D-24019の本名)
D-24019: ケリー? お前なのか? 何なんだ? おい先生、ラジオが何かおかしいぞ。
SCP-1283-1: ダレン、よく聞いて。
イヴァン・██████博士: D-24019、今感じていることを話してくれるか?
D-24019: シーッ、後だ先生。ケリーの声を聴かなくちゃ。
SCP-1283-1: テストに落ちた時のことを覚えてる?
D-24019: もちろんだとも、ケリー。忘れるわけないだろ。
イヴァン・██████博士: D-24019、少しいいだろうか……
D-24019: 後だ! 先生!
SCP-1283-1: 悪いことが起こりそうなの。違反が起こるわ。
D-24019: マジかよ……嘘だ、そんなことが起こるわけねえ。神よ……どうなっちまうんだ? 最悪だ、マジで最悪だ。
イヴァン・██████博士: D-240……
D-24019: うるせえ! 今聞いてんだから黙ってろ!!
SCP-1283-1: あなたなら止められる。
D-24019: どうすりゃいいんだ、ケリー! 違反を止める方法を教えてくれ!
SCP-1283-1: イヴァン・██████を殺して。彼をこの部屋から出してはいけない。
<SCP-1283-1は静かになり、ラジオから████ ████████が流れ始める>
イヴァン・██████博士: D-24019、そこを動くな。警備員、被験者を沈静……
<衝突音が聞こえる。D-24019がイヴァン・██████博士をつかむためにテーブルを横へ殴ったものと思われる>
D-24019: 違反は起こっちゃいけねえ!
<格闘音が聞こえる>
イヴァン・██████博士: 警備員! 彼を拘束しろ!
D-24019: 違う! お前らは分かってねえ! あいつを殺さなきゃ、全てが失敗するとケリーが言ったんだ! 信じてくれ!
イヴァン・██████博士: 彼を沈静して連れていけ。
D-24019: やめろ! 触るな! 頼むからあいつを殺させてくれ!
<記録終了 T+22:49>
結果: D-24019は拘束と沈静に成功しましたが、SCP-1283-2から受けた指示を考慮し、被験者は保安上の理由により終了されました。イヴァン・██████博士は折られた鼻の治療を受けました。SCP-1283の実験は中止されました。SCP-1283のEuclidへのクラス変更申請は保留されています。
事案220953 2012/6/4
事案内容: セキュリティガイドラインが適切に運用されなかったために小規模な収容違反が起こりました。SCP-███、SCP-███、SCP-███が収容を抜け出しましたが、██時間後に再び収容されました。数名のDクラスと2人の財団職員が負傷しました。責任者はその怠慢を公式に懲戒されましたが、それ以上の追求はありませんでした。
責任者: イヴァン・██████博士
措置: 懲戒
事案状態: 解決済