SCP-1298-JP
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救済イベント帰還時のSCP-1298-JPおよび着用者。
撮影: 実験1298-019

アイテム番号: SCP-1298-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-1298-JPはサイト-8118/A区画の標準収容ロッカー内に収容されています。SCP-1298-JPを着用する際は、クリアランスレベル2以上の研究員1名の許可を得て下さい。また、着用者の精神衛生上、長期間に渡ってSCP-1298-JPを着用する実験は制限されています。繰り返し同じ職員がSCP-1298-JPを着用することは避けてください。

説明: SCP-1298-JPは、後述する異常性を有した宇宙服です。SCP-1298-JPの外見と材質は、ともにスペースシャトル用機内スーツであるLaunch Entry Suit (LES)と同一のものです。発見当初のSCP-1298-JPは、全体がかなり劣化した状態で放置されていました。この際、付近に着用者と思われる人物は確認されませんでした。

SCP-1298-JPの異常性は、人間(以下、着用者)がSCP-1298-JPを着用した場合に、主に2つの効果として発現します。

1つ目の異常性は、着用中、不明な地点の音源からエアロスミスの楽曲「I Don't Want to miss a thing」に酷似した音声が発生することです。この音声は着用者の四方から均一に発生するようであり、周囲40m以内に存在するすべての媒体が認識できる音量を保ちます。SCP-1298-JPを脱ぐまでの間、音声は約1秒間を開けて、同一の楽曲を繰り返し再生し続けます。特筆すべきことに、この音声は後述の"救済イベント"の間、サビとなるパートのみが再生されるよう適宜調整されることが判明しています。

2つ目の異常性は、前述の音声が楽曲のサビを迎える直前に発揮されます。サビの直前、SCP-1298-JPは着用者ごと基底宇宙1から消失し、サビパートの開始と共に未知の並行宇宙へと転移します。全てのケースにおいて、この並行宇宙は進行中のK-クラスシナリオ相当の事象2の渦中にあります。当該宇宙において、着用者は必ず何らかの形で事象の原因を無力化し、K-クラスシナリオを未然に回避することで、宇宙を救うことを経験します。一連のプロセス(本報告書では"救済イベント"と呼称)の終了後、SCP-1298-JPは再び転移し、着用者と共に基底宇宙に帰還します。着用中再生されている楽曲のサビは、このタイミングで終了するようです。

"救済イベント"を経験した着用者は、ほとんどのケースで自身の経験に対して肯定的な感想を抱きます。この経験は着用者に一定の快楽を供与するようであり、実験の再実施の要求も複数報告されています。SCP-1298-JPの精神影響性が検証される予定です。検証の結果、SCP-1298-JPには異常な精神影響性は認められず、"救済イベント"に対する肯定的感情は通常の反応であると判断されました。

補遺1298-JP.1: 実験記録の抜粋

以下は、SCP-1298-JP着用実験の抜粋です。転移先が未知の宇宙であるため、被験者はDクラス職員に限定されています。実験記録は、着用者・転移先の概観・着用者の行動とその結果、および分析の形式で記載されます。

実験記録1298-001 - 日付2019/01/16

着用者: D-268553 (女性、18歳)

転移先外観: 工業地帯と思われる空間。断続的な地鳴りと爆発音が続いている。中央には膨大な量の金属と歯車で構成された、単一の巨大な機械的実体が存在。実体の全長はおよそ1kmと推測され、着用者方向に向かって"歩行"していた。

行動と結果: 当該宇宙への出現後、着用者は狼狽し、足元の石を投げつける。石は実体に届かないが、タイミング良く通過した自動車に跳ねられ跳躍する。その後、車や建材など様々な物体に連続して衝突。結果、石は実体脚部の歯車機構の間隙に収まり、歯車の空転と衝突が連鎖的に発生。最終的に実体は崩壊し、機能を停止した。

分析: 財団の実験における最初の観測例。着用者の如何なる行動も、救済イベントの完遂に繋がるようである。

実験記録1298-004 - 日付2019/03/10

着用者: D-496087 (男性、52歳)

注記: 着用者にはあらかじめ「何もしない」ように指示を与えていた。

転移先外観: 崩壊し炎上した都市。パニックに陥った群衆が多数存在。全天が黒い雲で覆われ、翼竜に似た未知の存在が数万〜数十万匹飛翔している。これらは人を捕食し上空に連れ去るようである。この群れは、全長300〜400mほどの大型の類似存在(親)に統率されているように見える。

行動と結果: 着用者は出現の瞬間、足元の遺体を踏み付け転倒する。この際遺体のポケットに入っていたと思われる端末が弾みで起動し、直後に上空に向けて複数の地対空ミサイルが発射される。ちょうど着用者に向かって飛来していた親存在にこれが直撃。地表に落下し、倒壊する高層ビル群の下敷きになる。同時に全ての実体が活動を停止し、墜落を開始。実体群は全滅したと思われる。

分析: 救済は、本人の行動の有無を問わず完遂されるようである。

実験記録1298-012 - 日付2019/05/31

着用者: D-905726 (男性、26歳)

注記: 着用者にはあらかじめ「転移後すぐにSCP-1298-JPを脱ぐ」ように指示を与えていた。

転移先外観: 荒廃した平原地帯。着用者の出現地点に、激しく発光する人型の実体が存在している。実体の全長はおよそ300m。実体の肩、背中、こめかみ、足首、手首には無数の翼状の付属物が現れており、極めて高熱の巨大なナイフに見える物体を手にしていた。

行動と結果: 着用者の出現から約1秒後、実体は突如として苦しむ素振りを見せ卒倒、そのまま活動を停止した。着用者は目に見えて動揺するが、指示通りSCP-1298-JPを脱衣。着用者はSCP-1298-JPと共に、即座に基底宇宙へと帰還した。

分析: 転移先でSCP-1298-JPが脱げた場合、SCP-1298-JPごと基底宇宙に帰還するようである。また、強引にイベントの進行を妨害しようとすると、不自然な形でイベントが完遂されるようである。類似の試験が他に█回繰り返されたものの、その全てで同様の結果となった。

上記例を含め、現在までに累計██回の実験が行われ、その全てで"救済イベント"が完遂されています。

補遺1298-JP.2: Tyler博士の仮説について

2019/06/12、SCP-1298-JP研究主任のTyler博士により、救済プロセス進行の仮説モデルが提唱されました。この仮説は本報告書作成時点で最も有力視されており、現在も検証が進められています。

救済プロセスの仕組みについて

背景: SCP-1298-JPの救済プロセスは、現在までの試験において100%の割合で完遂されている。また、意図的にプロセスの完遂を妨害した場合でも、完遂に至る初期条件が必ず揃うという結果が出ている。これらの条件を備えた並行宇宙が多数存在するとは考えにくく、従来の見方では十分な説明ができないと考えられている。

仮説概要: SCP-1298-JPは従来予測される"並行宇宙間移動"ではなく、"並行宇宙の創造"を実施していると考えられる。

仮説詳細: SCP-1298-JPは、着用者に救済プロセスを完遂させるため、救済に都合の良い並行宇宙を都度"創造"している。この宇宙創造は楽曲がサビパートを迎えるまでの間に実施されている。その際、着用者の思考している転移後の行動を読み取り、必ず救済が完遂できるよう調整を加えていると考えられる。

上記仮説は現在検証が進んでおり、時空間湾曲の痕跡や超高エネルギー収斂の遡及効果など、複数の有力な証拠が収集されつつあります。さらなる検証が今後進められる予定です。

補遺1298-JP.3: インシデント記録

29 Mar 2024 04:06、サイト-81██にてSCP-1298-JPの類似存在(以下、SCP-1298-JP-aと呼称)が確認されました。

当時サイト-81██では、収容下にあったSCP-████-JP(人型現実改変オブジェクト)の未知の異常性の発現により、クラスⅤ-現実改変事象が発生していました。この際実施されたSCP-████-JPの再確保・終了の試みは、偶発的事象によりすべて失敗に終わっています。これによりサイト-81██は全機能を喪失し、CK-クラス"再構築"シナリオ事象が進行中でした。

SCP-1298-JP-aは、活性化状態にあるSCP-████-JPの後方1mの距離に突如出現しました。出現と同時に、SCP-1298-JP-aは既に構えていた自動拳銃を1発射撃し、SCP-████-JPの頭部を正確に撃ち抜くことで無力化させました。これにより、基底宇宙のCK-クラス"再構築"シナリオが回避されています。

居合わせた機動部隊はSCP-1298-JP-aの確保を試みましたが、この試みは失敗に終わっています。SCP-1298-JP-aは抵抗する素振りを見せずに拘束されましたが、出現から1分53秒後に基底宇宙から消失しました。

消失の直前、SCP-1298-JP-aは1枚の紙片を機動部隊員に手渡しています。紙片の表面は財団標準の報告書のコピーであり、記載内容は本報告書とほぼ同一です。また、紙片の裏面には手書きの文章が残されていました。以下は、この文章の転写です。

誰か助けてくれ。

こんな報告書、デタラメだ。

宇宙の救済なんてできやしない。全部ただのお遊びだった。

救うべき世界すら、コイツは救ってはくれなかった。

救済ごっこから帰ったら、俺の世界は滅亡していた。

俺もコイツも知る由もないが、世界は勝手に滅んでいたんだ。

俺はもう俺はコイツを着続けるだろう。

着続けるかぎり、次の世界は無限に生成される。生まれた世界はサイコーに都合が良くて、何度でも救世主の気分にさせてくれる。ここでなら俺は生きられる。ここでしか俺は生きられない。

次の転移がくる。イントロさえ耐えしのげば、また転移できる。元の世界から逃げられる。あそこではもう生きられないから。死んだみんなが俺を見つめているから。

ちくしょう、もう次のサビがくる。

おれはもう何も救えないのに、コイツはおれを救うんだ。

SCP-1298-JP-aの転移先は不明です。現在、SCP-1298-JPによって基底宇宙が創造された可能性について検証が進められています。

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