アイテム番号: SCP-1321-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-1321-JPはエリア-81JHの小型物品保管ロッカーに収容されます。SCP-1321-JPを用いた実験を行う際には担当職員の許可が必要です。SCP-1321-JP-1はエリア-81JHの標準人型収容室に収容されます。1日に3度、職員と同等の食事が与えられます。
説明: SCP-1321-JPは酒瓶に保存された液体です。アルコールが60%含まれていることが判明していますが、それ以外は未知の成分によって構成されています。SCP-1321-JPを摂取した人物(以下、SCP-1321-JP-1)の脳を除く主要な内臓は、血液が凝固した膜によって2重に覆われます。それにより熱や衝撃に対し強い耐性を持ちます。また、SCP-1321-JPを摂取した24時間以内に大脳皮質の急激な委縮が確認され、正常な思考能力を喪失します。SCP-1321-JP-1の特徴として回収された個体のほとんどが6から15歳の年齢であることがあげられています。
SCP-1321-JP及びSCP-1321-JP-1は石榴倶楽部の会員とされている「橋詰」と呼称される人物の調査中、異常な料理を提供するレストランとして確認されていた「弟の食料品」との関連性が発覚し、「橋詰」のボディガード、また「橋詰」の娘の世話役として潜入していた、エージェント・シタミによって発見されました。また、その後の調査によって「弟の食料品」店舗にてSCP-1321-JP及びSCP-1321-JP-1が回収されました。
以下はエージェント・シタミが所持していた隠しカメラによる映像記録です。
映像記録
記録されている人物:
- ウェイター
- 橋詰
- エージェント・シタミ
- SCP-1321-JP-1
前記: 「橋詰」は「弟の食料品」に食事の予約をとり、来店している。
<記録開始>
ウェイター: いらっしゃいませ。橋詰様でいらっしゃいますね。
エージェント・シタミ: ええ、予約していた橋詰です。
ウェイター: お待ちしておりました。それでは席にご案内いたします。
[橋詰は席に着き。エージェント・シタミは背後に立っている]
ウェイター: メニューをどうぞ。
橋詰: 例のあれを、今日はお祝いだからな。
ウェイター: そういえば今日は特別な日でしたね。かしこまりました。ただいまお持ちいたします。
[ウェイターがSCP-1321-JP-1と巨大な中華鍋をワゴンに乗せやってくる]
ウェイター: まずは邪魔な手足を切断します。
[ウェイターは肉切り包丁でSCP-1321-JP-1の四肢を切断する。SCP-1321-JP-1は涙を流しているが、それ以外の生理学的反応は示さない]
橋詰: いやあ、お見事。[拍手]
ウェイター: 恐縮です。血生臭さをとるために止血はいたしません。このまま調理に移ります。
橋詰: 続けてくれたまえ。
ウェイター: かしこまりました。まずは不要な内臓を摘出していきます。このとき横隔膜を引っ張ってしまうと重要な臓器を傷つけてしまうため細心の注意を払います。摘出した内臓は日本生類創研様から提供いただいた特殊製法により仕上げているため、生でいただくことが可能です。内臓を摘出いたしましたら、米、玉ねぎ、ニンジン、セロリを刻んだものを詰めます。
橋詰: 七面鳥のようだな。
ウェイター: ええ、中に詰めるものはほとんど同じです。次に中身が漏れないように穴を縫って準備は完了です。低温の油で揚げていきます。
[SCP-1321-JP-1の下半身が火がかけられた中華鍋にゆっくりと投入される]
橋詰: ふむ、なかなかではないか。揚げられる部位が下半身だけなのは残念だが。
ウェイター: そんなことはございません。どうぞご覧ください。
[頭部を除いたSCP-1321-JP-1の上半身が油に沈む]
橋詰: なんだ殺す気か?約束が違うではないか。
ウェイター: いえいえ、大丈夫です。ご覧ください。
[SCP-1321-JP-1が油から引き上げられる]
橋詰: おお、生きている。臓器は無事なのか?
ウェイター: ええ、無事です。特殊な製法により臓器は血液の膜によって保護されております。どうぞ、娘の丸揚げ踊り食いでございます。外側はパリパリ、内臓は保護されていたためほぼ生の食感の違いをお楽しみください。
橋詰: ……ではいただこう。
[橋詰がSCP-1321-JP-1を摂食する]
橋詰: こんなに美味しく育っていたのか。[涙を流す]
SCP-1321-JP-1: ……パ、パ。
橋詰: 喋った……のか。意識が残っている?
ウェイター: いえ、思考能力はほぼないはずです。
橋詰: そうか……パパだぞ。誕生日おめでとう。
SCP-1321-JP-1: ……あり、がと。
橋詰: 失ってみて初めて気づくものだな。調理しているときにはそれに夢中で思いもしなかったが、いざこうなってみると家族を失うのは辛いものだ。これが、後悔の味か。ウェイター、2度と忘れられない味をありがとう。
ウェイター: お褒めの言葉、大変恐縮でございます。
橋詰: 喜納1、貴様も食べろ。
エージェント・シタミ: 私が、ですか?
橋詰: 貴様以外に誰がいるのだ。世話していたのは貴様なんだ、遠慮はするな。
エージェント・シタミ: ……承知しました。
[エージェント・シタミがSCP-1321-JP-1を摂食する]
橋詰: どうだ、素晴らしいだろう。
エージェント・シタミ: ええ、大変美味でございます。
橋詰: 貴様ならわかると思っていたよ。ウェイター、もういい。下げてくれ。
ウェイター: かしこまりました。最後に脳はいかがでしょう。この時期だとあぶりがよいでしょうか。ハツ刺しなどもお勧めですよ。
橋詰: 気が利くな。デザートが欲しかったところだ。
<記録終了>
後記: エージェント・シタミは帰還後、記憶処理を希望し許可されました。SCP-1321-JP-1を摂食したことによる身体への影響は現在調査中です。また、SCP-1321-JPは「弟の食料品」と日本生類創研が関連しているものと考えられます。
後日、「弟の食料品」の存在していた建築物を調査した際に複数のSCP-1321-JP及びSCP-1321-JP-1が発見されましたが、「弟の食料品」従業員は発見することができませんでした。発見されたほとんどのSCP-1321-JP-1の身元は判明しましたが、いずれも捜索届は提出されていませんでした。現在、石榴倶楽部への潜入捜査を通じて、「弟の食料品」の調査も並行して行われています。
追記: PoI-81-055「難波 謙司」身辺調査の際に「弟の食料品」と関連していると思われる情報を発見しました。以下は財団諜報部が獲得した情報資料です。
日本生類創研潜入捜査中のエージェントにより、SCP-1321-JPと類似した効果を持つ薬剤が発見されました。当該薬剤にはアルコールは含まれておらず、内臓を熱や衝撃から保護する効果は有していますが、大脳皮質を萎縮させる効果は有していませんでした。回収された文書によると、事故による内臓損傷を防ぐ目的で開発中であるとされており、「弟の食料品」のような使用方法は想定されていなかったものと考えられます。