SCP-1334-JP
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「着弾」間近のSCP-1334-JP-12751


アイテム番号: SCP-1334-JP

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: SCP-1334-JPは現在未収容です。SCP-1334-JP出現イベントの観測と識別のため、機動部隊ウプシロン-91("We'll not meet again")によって、複数の地上警戒サイトと早期警戒衛星群を中心とする全地球規模の対SCP-1334-JP警戒システムが構築されています。SCP-1334-JPアドバイザーとして核保有国を中心とする各国の軍事組織に派遣されている財団職員は、SCP-1334-JP出現イベント発生時には機動部隊ウプシロン-91と連帯してSCP-1334-JPに対する警戒・報復措置の解除を主導してください。一般人がSCP-1334-JP出現イベントを目撃、または何らかの形で探知した場合は、カバーストーリー「試射」もしくは「流星雨」を適用するか、当該人物に対してクラス-A記憶処理を行ってください2。SCP-1334-JP-1268は現時点で財団の収容下にある唯一のSCP-1334-JP個体であり、周囲に全周型放射線遮蔽シールドとメトカーフ非実体反射力場発生装置を配置した軌道収容サイト内の格納庫に収容されています。

説明: SCP-1334-JPは、複数のタイプXII随意霊的存在3の総称です。SCP-1334-JP個体には複数の形態が存在しますが、いずれも核弾頭を装備可能なミサイルまたはロケット弾のものとなっています。SCP-1334-JPに実体は存在しませんが、光学的手段やレーダーおよび赤外線センサーによって存在を捉えることが可能です。また、各SCP-1334-JP個体は人間と同等の知性を有しており、他のSCP-1334-JP個体または人間を対象としたコミュニケーションを行うことができます。SCP-1334-JPは一定量の微弱な放射線を帯びていますが、発生源となる放射性物質はSCP-1334-JP内には確認されていません。各SCP-1334-JP個体の放射線量は、同形状の核兵器から平常時に検出されるものと概ね一致しています。

SCP-1334-JPは、核保有国および配備国の人口密集地に「着弾」するコースを取って、対象国のミサイル防衛網に露出する形で不定期に出現イベントを発生させます。出現イベントの際のSCP-1334-JPは実際の核弾頭ミサイルの挙動を完全に模倣しており、通常のミサイル防衛網上でSCP-1334-JPと実際の核弾頭ミサイルを識別することは極めて困難です。出現イベントは、常に対象国のミサイル防衛網および財団の対応・迎撃能力の限界を越える数のSCP-1334-JP個体の同時行動という形を取っています。地上に「着弾」したSCP-1334-JPは、周囲に被害を与えることなくそのまま消滅します。

最初に確認されたSCP-1334-JP出現イベントは、ソビエト連邦領内から西ヨーロッパ各地に向けて███体のSCP-1334-JP個体が飛翔する形で198█年に発生しました。この際に出現したSCP-1334-JP個体はいずれもソ連軍の中距離弾道ミサイル(IRBM)の姿を取っていました。ブースト・フェイズ(上昇段階)にあるSCP-1334-JPを探知したアメリカ合衆国を初めとするNATO加盟国は、これを実際の核攻撃と誤認して即座にソ連に対する報復核攻撃の準備を開始しましたが、当時西ヨーロッパ上空でSCP-████収容のために活動していた財団機動部隊によってこのIRBM群が霊的存在であることが確認されたため、財団からの通達によって核攻撃は回避されました。これを受けて財団によるSCP-1334-JPの調査が開始され、核保有国の首脳部に対してSCP-1334-JPの存在を通達した上で、現在の特別収容プロトコルが制定されました。

20██年現在に至るまでの間に、SCP-1334-JP出現イベントは██回発生しており、確認されたSCP-1334-JP個体の総数は████体に達しています。

199█年、4回目のSCP-1334-JP出現イベントが確認された際、財団の通信監視システムがSCP-1334-JP個体間のものと思われる高度に暗号化された██F通信を傍受しました。財団による解読の結果、この通信は██████国軍のレーダー網に効果的に露出し、負荷をかける方法を指示し合っているものであることが判明しました。また、その内容は一定の戦術に基づいていました。これによってSCP-1334-JPに随意霊的存在としての知性が存在するという推測が確実視され、無線によるSCP-1334-JPとのコミュニケーションが計画されましたが、SCP-1334-JPはこれに応じず失敗となりました。

201█年、SCP-1334-JPの詳細調査とコミュニケーションの確立を目的として、軌道機動部隊マー-11("重力井戸の釣瓶")によってSCP-1334-JP個体の捕獲作戦が実行されました。これはミッドコース・フェイズ(中間段階)で宇宙空間に達した弾道ミサイル型SCP-1334-JP個体の周囲をメトカーフ非実体反射力場発生装置を搭載した高機動宇宙機によって包囲・拘束し、そのまま軌道収容サイト-86へと移動させるというものです。この作戦は成功し、SCP-1334-JP-1268が財団の収容下に入りました。

インタビュー記録1334-JP-02:

補遺1334-JP-01: 200█年、SCP-1334-JP個体の型式などの精密識別を試みるため、█機の光学監視衛星が対SCP-1334-JP警戒システムへ組み込まれました。これを用いて2度のSCP-1334-JP出現イベントにおいて識別が行われ、過去に出現したSCP-1334-JPの情報の照査と併せて、ほぼすべてのSCP-1334-JP個体が、いずれもその出現イベント発生以前に廃棄された核弾頭ミサイルの形状を取っていることが確認されました。現在、より厳密なSCP-1334-JP原型化条件の解明を目標として、調査が継続されています。

補遺1334-JP-02: 20██年現在、SCP-1334-JP出現イベントの対象が新参の核保有国へと移行しつつある傾向が確認されています。対象となりうる国のうち、財団との関係が構築できていない█ヶ国に対してはSCP-1334-JPについての有効な通達が成功しておらず、SCP-1334-JP出現イベントに起因する核兵器の実戦使用がなされる可能性が存在しています。この事態に対応するため、当該国へのエージェントの潜入を始めとする新たなプロトコルの策定が開始されています。

補遺1334-JP-03: 以下は、20██年4月にリチャードソン博士からO5評議会に対して提出された意見書の全文です。

これまでの調査結果から、現在までに確認されたSCP-1334-JP個体は、いずれも各個体の確認以前に締結された核兵器削減条約によって廃棄された核弾頭ミサイルを原型としていることは確実であると見られます。例えば、SCP-1334-JP-1268の原型は2002年のモスクワ条約によって廃棄されたものです。最初に出現したSCP-1334-JPの原型も、出現時期と推定される型式から判断するに1987年の中距離核戦力全廃条約によって廃棄されたものでしょう。SCP-1334-JP-1268の証言と合わせて考えると、SCP-1334-JPの発生原因が我々人類が行っている核軍縮である可能性は非常に高いと考えられます。

SCP-1334-JP研究主任として強く進言します。これ以上、我々人類は核兵器の削減を行うべきではありません。現在進められている核軍縮のスローダウン、可能であれば凍結を各国政府に対し要求すべきです。異常性のない核ミサイルとして保管下に置いている限り、それの人類に対する脅威度はSafeクラスオブジェクトのそれと同等でしかありません。廃棄によってSCP-1334-JP化を招き、事態をこれ以上制御不能な形へ悪化させてしまうよりは、遥かに安全と言えるでしょう。

確かに、このまま核兵器が削減され続け、人類が全ての核兵器を捨て去るという夢想じみた未来が到来するならば、SCP-1334-JPの脅威度が大幅に減少するのは事実です。しかし、それまでのいつか一点で、どこかの誰かが報復核攻撃のスイッチを押さないと言い切れるほど、人類は信頼できる存在ではないと自分は考えます。

同意見書の特別収容プロトコルへの反映の是非は、現在O5評議会によって審議中です。

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