SCP-1337-EX


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「2019年アマゾン熱帯雨林火災」のVKTM NFTに紐づけられた画像。実際には2013年カリフォルニア森林火災のもの

特別収容プロトコル

(2018年8月現在)

SCP-1337実例の作成が中止されるか、イーサリアム・ブロックチェーンを秘密裏に掌握することを倫理委員会が承認するまで、財団は、VKTMの活動が公に認識されることを防止し、あらゆる可能な形態で埋め込まれたミームトリガーに民間人が曝露することを減少させるため、VKTMによって作成された全SCP-1337実例を購入しなければなりません。

説明:

SCP-1337は、「歴史的瞬間! ヴィキャンデル=ニード・テクニカル・メディアのNFTs」です。また、当該オブジェクトは「VKTM NFTs」という商標でも販売されています。NFTは、主流派には受け入れられていない「非代替性トークン(non-fungible token)」という概念の略であるとされています。

SCP-1337は「歴史的瞬間」の所有権を利用者に供与すると称しています。おそらく、VKTM NFTの概念は以下を含む事象の所有を認めています。「アマゾン熱帯雨林で切り倒された10万本の木」、「オゾン層に存在する穴の100分の1」、「次の10年でアクティビジョン・ブリザードに対して提起される全てのセクシャル・ハラスメント訴訟」、「主要なテック企業に存在する差別的な雇用慣行の暴露」、「[民間人身分編集済]の涙、█歳、彼の家族がアメリカの中流階級から貧困に転落した沢山のものの一つだと初めて分かった直後に1」、および「民主的理念の緩やかな失敗のもう一つの象徴」。

ヴィキャンデル=ニードのマーケティング資料の記述によると、この非代替性トークンは、購入された概念を示すブロックチェーンに基づく独特なデータ単位です。NFTの所有は、表示された概念をその持ち主が「所有している」ことを示します。概念の所有者がどう使用することを許されているかは示されません。ブロックチェーンは作成後に容易に改訂できないエントリーの目録です。ブロックチェーンの無許可の改訂を防止するため、大量の計算能力と電力が使用されています。SCP-1337は、同様にデジタル台帳上で購入者に固有のエントリーを与えていると称している「Cryptokitties」のようなものと、イーサリアム・ブロックチェーン上に存在している製品であるという点で共通しています。

SCP-1337は、イーサリアム・ブロックチェーン上で取引されています。現在、イーサリアム・ブロックチェーンによる全取引結果の0.5%未満がこれに起因しています。環境への影響と実行に関連した秘密の漏洩が予測されているため、イーサリアム・ブロックチェーンを強制的に掌握することは倫理的に許容できないと考えられています。

SCP-1337実例を購入した直後、購入者は、概念を所有していると示すエントリーをデジタルポートフォリオに受け取ります。通例では、エントリーには関連した概念に対して適切な画像へのリンクがありますが、これらの画像は総じて象徴的なものであり、事象本来のものではありません。これらの画像は著作権で保護されている場合があります。その場合、これらの画像の著作権者は基本的にVKTMとは無関係です。仮にこれらの画像へのリンクが変化しても、画像は更新されません。

(同様の抽象概念の所有権を提供する他の実体として、SCP-2557はEnvelope Logistics®の私有概念ですを参照。しかしながらEnvelope Logistics®の申し出とは異なり、SCP-1337は、所有権のいかなる実効的な主張をも購入者に認めていないと考えられています。)

現在のところ、既知の全SCP-1337実例が実際の出来事に対応しています。

財団による収容以前、通例では、SCP-1337実例は目につくように販売され続け、一時間未満で購入されていました。販売の初値には1アメリカドルから1万アメリカドルまで幅があります。購入された後、たいていの実例は再販されていません。再販価格は平均して元値の99%引きになっています。

補遺1: 初期収容に際しての議論

SCP-1337は、ヴィキャンデル=ニード・テクニカル・メディアによって作成されたという理由に加え、主張されていた概念の所有権の存在を考慮して、暫定的にSCP分類を受けていました。VKTM NFT製品の異常な側面を議論するため、リリアン・リリハンメル博士(専門: ミーム学)、エゼキエル・ヤン博士(専門: 財政秘術)、およびALEXANDRA.AIC(専門: サイバーセキュリティ、コンピューティング、デジタルアーキテクチャ、[他に10個超])による専門委員会が組織されました。

SCP-1337初期収容計画会議

2018年7月22日


[不要な説明を編集済]

リリハンメル: このクソッタレについてはそれで全部、アレクサンドラ?

ALEXANDRA.AIC: 以上です。所有権確認プロセスへのハイパーリンクがあります。

リリハンメル: 本当に? 他にないの? 異常な法的要素も?

ALEXANDRA.AIC: 極端に少ない証拠書類にもかかわらず、企業実体としてのVKTMが存在していることを除けば、法的および金融的観点からは問題ありません。SCP-1337の計算実装についても異常ありません。

ヤン: 微妙な違いがあるのは確実—

リリハンメル: どうでもいいわ。

ヤン: …どっちにしろそれらは好きじゃないな。

リリハンメル: 何が好きなわけ? 住宅危機? 時々あるビーレフェルトの全滅

ヤン: あれは私の就任前のことだったんです、信じてくださいよ。それが財政秘術部門が組織された理由の一つなんです。

リリハンメル: 何の博士号を持ってるかもう一度教えて?

ヤン: 数学です。

リリハンメル: じゃあ何で時間を無駄にしてるの、財政—

ヤン: お金が好きなので。

リリハンメル: …じゃあ何でベイ・ストリートの代わりに財団で働いてるの?

ヤン: カナダ人じゃないので。

リリハンメル: アメリカ人ならウォール・ストリート。

ヤン: こっちの方がワーク・ライフ・バランスがとれてるので。

リリハンメル: 本気?

ヤン: いえ全く。

リリハンメル: もうアンタが嫌いになったわ。

ヤン: よく言われます。

ALEXANDRA.AIC: お二人の間に激しい人格衝突が発生するだろうと我々が予測したため、調停者としてふるまうことを最優先するよう要請されました。なにとぞ—

リリハンメル: 人格衝突? これはモラルの問題よ。

ヤン: ええ、ええ、金融業界は血をすする寄生虫でいっぱいですよ。ええ、我々は皆、芸術も美も理解しない心無い化け物ですとも。ええ、今の職で私が世界にもたらしている価値といったらゼロです。でも蛇の道は蛇なんです。

リリハンメル: ご立派ね。だからって好きにならなきゃいけないわけじゃないわ。

ヤン: アレクサンドラ、記録からこれ全部カットできる?

ALEXANDRA.AIC: 必要と分かれば考慮します。2

ヤン: まあいい。それでは、金融的観点からこれらの「VKTM NFTs」が何なのか分析したいと思います。それらはどうふるまうのか。たいていの資産を購入するときは、そこからいくらかの将来価値を手に入れられるだろうという期待があってするものです。株を購入するときには、その企業のキャッシュ・フローを無期限に分かちとる権利が法的に与えられます。債券を購入したときには、それが存在する限り固定リース料を受け取ることでしょう。これらのNFTは…ファインアートを購入するのにより似ていると言えるでしょう。

リリハンメル: 芸術や美を理解する心無い化け物ってわけね、本当に。

ヤン: アナートについて言及しておらず、また仮にマネー・ロンダリングに利用される事例を無視するなら、人々は、その美的あるいは感情的価値のため、または価値が上がると期待しているからといういずれかの理由で、ファインアートを購入します。データは後者の理由を示していません。VKTMの台帳から離れた瞬間、これらのものは事実上無価値になります。効果のこの部分には異常がありません。これがあなたが呼ばれた理由です。

リリハンメル: 何で私? 単に天性の才能のおかげで呼ばれたんだと思ってたわ。

ALEXANDRA.AIC: ミーム学の専門的知識とあなたのヴィキャンデル=ニードに関する以前の研究によって選出されました—。

ヤン: あなたに従っている理由は、人々が文字通りアマゾンの森林破壊に投資するだろう理由を私がとても想像できないからです。これはミーム的衝動に違いありません。

リリハンメル: アンタは名前通り金融業界を収容しようとしてるんでしょ! 皆がどれほど残酷になりうるか分かってるはずよ!3

ヤン: 違います! 彼らは合理的アクターです!

リリハンメル: 合理的っていったい何—

ヤン: それで金持ちになれるんならクソ野郎になることだよ!

リリハンメル: アンタがクソ—

ALEXANDRA.AIC: 落ち着いてください。

ヤンは水を一杯飲み、ネクタイをほどく。リリハンメルも水を一杯飲む。

ヤン: 私が言いたいのは—脳が半分あるなら誰もこれらのものを購入しないだろうってことです。個人的にはこれらは唾棄すべきで無意味だと思います。

リリハンメル: つまりアンタは倫理を守ってるってわけね

ヤン: ええ、財団で働いてる誰もがしてるように。何らかのミーム的効果はありますか?

リリハンメル: より徹底的に分析しないといけないだろうけど、ちょっと教えて—アレクサンドラ、スクリーンにもう一つ実例を持ってこられる?

ALEXANDRAはスクリーンにもう一つSCP-1337実例を持ってくる。「[民間人身分編集済]の過激化とその後の2021年1月の行動」である。写真はワシントン記念塔のもの。

ヤン: いったいこれらを活用できるんでしょうか? VKTMの未来予知って頼りになるんですかね?

リリハンメル: これ見て! 漠然としすぎてる。こいつは何をやらかすつもりなのよ…ワシントンD.C.の正面でヌード・プロテストでもするっての?

ヤン: ワシントン記念塔でですね、でもだいたい同じです。VKTMの「お助けヒント」ってこれが普通なんですか?

リリハンメル: おあいにくさま。でもちょっと教えて—これを見てどう感じる?

ヤン: 私は…何となく愛国的なものですかね? ワシントン記念塔の写真ですよ。素晴らしい像、400歳の、たぶん奴隷労働で建てられた。ハイパーリンクのために500ドル要求する…値打ちはないでしょう? ジーザス・クライスト。

リリハンメル: 完全な化け物じゃないみたいで嬉しいわ。でも一目見た限りでは – 確定させるにはもっと時間が必要だろうけど – これにはミーム的衝動効果はないわね。少なくとも異常はないわ。

ヤン: つまり皆は、この全く馬鹿げたものをただ所有したい…そのためにこれらを購入している…

リリハンメル: うん。

ヤン: 畜生。

ALEXANDRA.AIC: 結論に達したようですね。それらの作成者にもかかわらず、SCP-1337実例は全く非異常です。金融的・技術的・ミーム的に。

リリハンメル: そう思うわ。仮にミーム的要素があるとしたら、本当に名状しがたい、それは…VKTMのスタイルね。より詳しく調査するけど、何も見つからないと思うわ。

ヤン: そうですね。クオンツ4により詳しく調査してもらいますけど、これ以上は何も出ないと思います。

予備的結論: SCP-1337に異常性は存在しないと認定されました。しかしながらその作成者の異常性のため、SCP-1337は観察下にとどめられていました。現行の収容プロトコルは、ヤン博士とリリハンメル博士およびAlexandra.AICの勧告によって実行されていました。





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