アイテム番号: SCP-1348
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: 輸送が不可能な為、SCP-1348はエッドゥルーズ山地のシリア・アラブ共和国エル・タバク南東部81kmにある考古学収容設備のサイト87にて収容されています。区分けされた収容任務はC-1348-A("A班")とC-1348-B("B班")として振り分けます。サイト管理官ビンヤミン・カーンとチームB管理官█████ ██████との隔週の収容評価会議を除き、AとB班の意思疎通は会議室2a号室のみで行います。相互汚染の危険性を最小にする為に、儀式のしきたりと実行に関係する全内部班の意思疎通はY染色体ハプロタイプCMH-6に属している職員を通じて行わなければなりません。
収容班Aはクラス4サイト管理職員による推薦の下、財団従業員から構成し、以下の点を欠格要件とします:
- 宗教の現役信者である。
- 記録されているミーム媒介に対し、以前に曝露したことがある。
- アムハラ語、ゲエズ語、アラム語、南方セム語に堪能である。
- SCP-████からの発信に対し、以前に曝露したことがある。
A班の任務はSCP-1348-02の実行に必要な必需品の提供、B班及び民間執行者の迎合性の監視、儀式的収容に参加する執行者の選択、日々のSCP-1348-02実行のために更新されたプロトコルの提供、収容地域から休暇を願い出たB班の班員の監視、プロトコル228-MELECHAHの開発・遂行です。228-MELECHAHに関係する職員はSCP-1348-02の記録または複写、SCP-1348-03への侵入、SCP-1348-01-Eの死体を見ることは決して許可されません。
収容班Bの候補者はドルーズ派、マンダヤ教、ミズラヒ・ユダヤ集団の女系子孫から選出します。Y染色体ハプロタイプCMH-6の人間は厳重に失格とします。財団従業員の中から適格な候補者を探し出すことは実質的に困難である為、サイト管理官の承認の下、適切な家系を持つクラスオメガ民間執行者を財団職員の代用とすることが可能です。夜明け、正午、夕暮れ時において、選出された執行者は現在の儀式プロトコルに従いSCP-1348-02を執り行います。
常に儀式の執行者は、文書742-KITABと983-RASA'IL、更にA班によって設けられた追加プロトコルで指定されている所定の儀式純正規則に従い行動することになっています。宗教的禁忌の実行指示や宗教的義務の禁止といった純正規則との衝突がある限りでは、執行者は個々の倫理的選好をサイト管理官に表明することが認められます。儀式的に不純な物質を意図せず摂取することを避けるため、B班に属する執行者は非経口の栄養のみを摂取し、サイト管理官█████ ██████の監督の下に儀式を遂行します。ミーム転移の継続的な危険性により、SCP-1348-02の実行はSCP-1348-03の収容が必要になった時のみ許可されます。
B班の班員と民間執行者は内部収容域からの退出、家族との接触、そしてサイト管理官の書面による了承を得た際にのみ財団機密文書にアクセスすることが許可されています。中央部収容規約の違反は、プロトコル228-MELECHAHの即時実行と228-MELECHAH班に対する主要な収容責務の移転の根拠と成ります。
説明: SCP-1348はエッドゥルーズ山地のシリア・アラブ共和国エル・タバクから81kmに所在する洞穴を改造した施設です。2006/03/06にIAEA監視団が最初に発見した時は、この施設はシリアの原子炉を収納するための物だと考えられていました。以降に行われたイスラエルの現場への空襲により、3つの未知の部屋が発見されました。イスラエル・シリア政府間の協約により財団エージェントが応答し、SCP-1348-01、02、03の収容とサイト87収容設備が建設されました。
SCP-1348-01-Eは異常な人型存在であり、当初SCP-1348の儀式施設内部で現在SCP-1348-02と指定されている儀式行為を行っている所を発見されました。初期収容の3週間後、████/██/██に対象はてんかん重積状態に陥って死亡しました。収容の間、対象は未知の南方セム語を発しましたが、財団職員と意思疎通を試みようとはしませんでした。食物、水、寝具は拒否されました。静脈注射による栄養補給は不可能であることが判明しました。それ以外に対象は異常な行動を示しませんでした。検死結果は文書SCP-1348-SMR-9を参照してください。
SCP-1348-02は起源不明の儀式行為です。SCP-1348-02の口頭部分は未知の南方セム語で行われます。はっきりしない儀式基準を満たした個人がSCP-1348-02を適切に実行すると、XK-734、XK-918、XK-337シナリオの不可避的前駆事象である「SCP-1348-03周囲の隔壁が完全に下がりきってしまうこと」を防止します。現時点でSCP-1348-02の基礎を成している宗教的教義の詳細、SCP-1348-02に適切に参加するための必要な儀式の基準、SCP-1348-02と隔壁の下降を結ぶ因果メカニズムは推論的、または不明です。
適切な執行者によって実行される時、SCP-1348-02の十分な実行はミーム的毒性を持ち、曝露の38%において、被暗示性の誘発、宗教的熱狂、儀式実行への欲求が見られました。曝露の繰り返しは儀式に関する強迫的衝動をもたらします。SCP-1348-02のミーム伝染率は、継続的な儀式の実行が完成形へ近づくにつれて増加すると思われます。理由は不明ですが、ハプロタイプCMH-6の人間はこのミーム転移の副作用に対して耐性があるようです。SCP-1348-02の複写と記録には毒性が無いと考えられていますが、既存の収容指針では財団言語学者による完全な儀式記録への曝露を最小限に抑えるよう要求しています。
SCP-1348-03はSCP-1348施設の中央の部屋です。高い中性子束の為、部屋は高純度放射性廃棄物または保護されていない炉心の貯蔵場所であると当初考えられていました。遠隔無人機を介した最初の調査により、原セム族の様式で装飾された精巧な長方形の部屋であることが判明しました。繰り返し表現されるモチーフには、雄羊や蛇、屠殺された雄牛、傷ついたライオン、鷹、SCP-1348-02と同様の儀式行為の描写があります。部屋の中央には半径9mの祭壇があり、ベリリウム青銅から成る円筒形の隔壁に囲まれています。夜明け、正午、夕暮れ時になると隔壁は下降し、SCP-1348-03内部の中性子束は致死レベルにまで上昇します。SCP-1348-02の実行は、執行者へ放射能汚染に対する十分な保護を提供し、またせり上がった外部隔壁による完全な密封をもたらします。
隔壁の内部を見る試みはSCP-1348-02を実行中の執行者を除き、失敗します。財団職員を含む執行者は内部について説明できないか、説明することを拒みます。SCP-1348-03の隠された領域に関する確証情報については、クラス4職員のみ文書SCP-1348-SMR-11で閲覧できます。
補遺:
文書SCP-1348-SMR-9: 検死報告概略、SCP-1348-01-D
検体: SCP-1348-01-E
外部検査: 身体は分類学上の異常性を持った人型存在で、生前についた重度の傷があります。10本の付属肢がもともと備わっており、3本 - 両脚、1枚の翼 - には、第二関節の下から引き千切られたことによる切断の痕跡が見られます。前頭隆起上1.2cmに位置する左右対称な第三の眼窩を除き、頭部は損傷以前において一般的な人型存在と同様であったと推測されます。眼球は失われており、損傷によるものと推測されます:ごく正常な2つの眼窩には視神経管があります。異常な前額部の眼窩も類似した構造です。前頭洞の壊滅的な損傷は元々の顔面骨の輪郭を復元できなくしています。外生殖器は見当たりません。損傷は異常なケロイド形成の痕跡を示しており、全癒の経過を示唆しています。外部損傷に致死性は見られません。
内部検査: 肝臓、肺、心臓、脳に等しい構造が存在します。腎臓はありません。全体の解剖学調査により、痕跡的な盲端で終わる簡素な盲腸の存在が明らかになりました。泌尿器系と肛門はありません。胃や盲腸の内容物は検死の際には見られなかったため、腸は退化していると推測されます。下部腹腔の大部分には機能的、組織学的にはっきりしない区切られた臓器、または腫瘍が存在します。組織学検査において、筋肉と臓器組織は重度の栄養失調と一致する異化とマクロファージ浸潤の痕跡を示しました。
死因: 栄養失調
付記ATP-9: 完全な組織学、全体的な解剖データは文書SCP-1348-ATP-9、完全検死報告書、SCP-1348-01-Dを参照してください。
<記録開始、████/██/██、AM9:13>
カーン博士: これは第8次改訂版儀式、3周期目の隔週収容会議。現在AM9:13。出席者はA班主任のビンヤミン・カーン博士とB班主任の█████ ██████博士。では始めてもいいかな?
██████博士: [声が聞き取れない].
カーン博士: もっと大きな声で話してくれないか、█████。今のではマイクで拾えない。
カーン博士: 最初の議題は収容プロトコルの改定についてだ。周知のことだとは思うが、隔壁の通過と内部における仮想上の儀式箇所を指揮することについて、我々は先週O5からの承認を受けた。我々は明らかに完全な収容手順を構築できていない — B班の一部には放射線障害に苦しんでいる者がいる、██████博士、君もその一人だ — しかし、我々は死亡者を出すことを望んでいないんだ。
██████博士: 2名のオメガ要員が儀式に失敗しました。3週間のキレーション治療の為、任務から外れる必要があるでしょう。代わりとなるエージェントはいるのですか?ご存知の通り、ベン、私はそれをオメガ要員で行うというアイデアには不快感を覚えます。彼らに訓練を施すのが難しいからではありませんよ。
カーン博士: Herevには打診してある — ええと、適格者は確か2人だったか - 我々には2つの前途があるようだ。███次第、新たなエージェントたちを移送させられるはずだ。つまり、今はまだいない。サービア教徒のオメガ候補者を4人待機させている。儀式の訓練を受けた彼らを連れて来なければならないな。
██████博士: 状況は悪化しています。できるだけ早く取り計らってください。
カーン博士: ああ、手は尽くしてみる。だが、確約はできないよ。その次にやらねばならないこととして、隔壁の内部に関する報告が必要だ。知っての通り、あそこに機材を入れることはできない、そこで -
██████博士: 何も起きていない。KITABにはそう書いたでしょう:B班は隔壁の向こう側について話すことができないと。
カーン博士: 言ったはずだよ、█████:それでは通らないんだ。O5直々の指示なのだから。まさしくあそこに収容されている何かについて、何がしかを読み取らなければならない。この儀式プロトコルを除いて、私達には…[発言が重なる]
██████博士: 違う。それは儀式なんかじゃない。そう、断じて。ベン、このことについては私を信じてほしい。KITABにはそう書けばいい。
カーン博士: モーシェ、少し記録外で話すことにしよう。落ち着いて、それからテープを止めてくれ。
要請は却下されました。O5-07により、SCP-1348収容検討会の監視は続行されました。
カーン博士: 我々は知らなければならない。O5-07からの指示だ:彼らは君の停職をチラつかせている。中身も知らずに、どうやって一般人をあそこから守れと言うんだい?
██████博士: [か]れは危険じゃない。
カーン博士: 自分を省みるんだ、█████。痛むだろう?それに君の歯だって、まったく抜け落ちてしまっているじゃないか。それでも、あれは危険じゃないと言い張るのかい?どう危険じゃないのかを教えてくれないか?
██████博士: あれは儀式なんです、ベン;儀式。故意に行われている訳ではありません。
██████博士: 我々は世界を[か]れから護るのではないのです。我々は[か]れを世界から護るのです。
カーン博士: 君はミーム作用の影響を受けていないと常々言っていたな。しかし、今自分が喋った内容を分かっているのか、█████。考えてくれ。君はここに配属された - 私と一緒に。共に働いて、私が見たことは君も見た。私たちの見知った全てを差し置いて、どうして今なお信仰を保てるんだ?
██████博士: 信仰を保つのは難しいことでした、以前においては。いくつか思い違いをしていたんです。あの時、隔壁の向こう側を目にして、今はそうすることが最善なのだと理解しています。
カーン博士: 君の言い分を聞こうじゃないか。とにかく聞かせてくれ。「そうすることが最善」とは?
██████博士: 貴方に話すことが私にとってどんな意味を持つのか分かっているのですか?そうすることが最善であるということについて?これが出来うる限りの最善策だということについて?それともこのことについてですか?
██████博士: アイン・ダラで見たものを覚えていますね。そして、私が貴方に話すこの一切、全ては、我々が今後望みを懸けることのできる最善の方策なのですよ。
カーン博士: 頼む。頼むから、██████。興奮しないでくれ。それを話すことが君にとって困難であることは承知している。君が見たものを教えてくれ。もしO5がB班の任を解けば、プロトコルがどうなってしまうか君にも分かるだろう。
カーン博士: 君には話す必要があるんだ。教えてくれ、さもなければ私手ずから君に処分を下すことになる。
██████博士: 理解していませんね。貴方が最初にここに来た時、私にこう尋ねましたね:この人々はなぜ信仰を捨てたのだと思う?と。ベン、私は知っています。それは、真実を知らないことこそが我々にとって最善であると[か]れが考えたからです。そしてそれは正しい。ヤー・アラー、ベン、それが正しいんですよ。誰も知り得ないんです、我々が[か]れに計り知れない恩義があることを。
カーン博士: ああ、分かったから。取り敢えず、それについて考慮しよう。O5には君が放射線障害に冒されていると伝えられる。彼らに君がこの件の報告に従事していると伝えておくよ。
カーン博士: いつまでも"彼ら"の目を遠ざけることはできません。
<記録終了、████/██/██、AM9:20>
背景: 2011年12月5日、C-1348-B監督官である████ ██████は宿舎にて重度の放射線障害に苛まれながら無反応状態になっている所を発見されました。O5の承認を得て、C-1348-Aはオメガ-クラス執行者へ儀式プロトコルから逸脱してSCP-1348-03の中央域に入るよう命じました。中央域から出ると、対象者は無反応状態になっていました。以下に添付されたインタビューは初期曝露の3日後、正気を取り戻した僅かな間に行われました。
カーン博士: おはよう、O-9142。君の状態が良くなったことを博士たちに教えてもらったよ。私が誰だか分かるかい?
O-9142: あなたはカーン博士。ベン・カーン。ドアの外の洞窟に住んでいる。
カーン博士: その通り。幾つか質問があるんだが。答えてもらえるかな?
O-9142: 彼らにあなたを信じろと言われました。
カーン博士: それでは儀式のことから始めようか。何をしたか覚えているかな?
O-9142: はい。彼らはわたしに隔壁を背にして立つよう言いました。あの言葉を発しなければならなくて。そして言葉、それら全てを言い終えた時、わたしは見るべきではなかったんです、たとえ何が聞こえようとも。
カーン博士: それでどうしたんだ?
O-9142: 見ました。あなたに言われた通りに。
カーン博士: 何を見た?
O-9142: かれはとても老いています。かれはひどく傷付いています。かれは水中に、宇宙に、その他の至る所にいます。かれはかれの椅子から離れることができません。かれは永遠にそこから動けないのです、何故ならとてもひどく傷付いているから。
カーン博士: 申し訳ないが、O-9142。よく理解できないな。そこで何を見たんだ?
O-9142: あの事故のせいで、あまりよく思い出せません。だけど前にテレビでこの年老いたライオンを見たことを覚えています。自然の特番で。かれはひどく傷ついていました。他のライオンが彼を食べました。テレビで見たライオンがあそこにいたのだと思います。そのライオンはあなたの叔父であると思います。
カーン博士: 思い出してきたね、O-9142。どのように傷ついていたか教えてくれるかな?
O-9142: 分かりません。わたしたちは何か悪いことをしたのだと思います。あの歌はわたしたちがどれだけ悪いか歌っています。だけどそれは間違っています。わたしたちは何も悪いことをしていません。わたしたちは生じる筈ではありませんでした。わたしたちは生じました。わたしたちが生じたことはわたしたちの過ちではありません。
カーン博士: 理解するのに手こずってしまうな。
O-9142: そう。そうです。あの歌はこんな感じでした:"iné esal peseh, ma Yehom ahallam"。これはかれが何か過ちを犯したという意味です。かれの成したことがわたしたちを救いました。今、[か]れは罰せられなければなりません。今、[か]れは隔壁の後ろに留まっていなければなりません。
カーン博士: 君が彼を見た時、彼は何をしていたのかな?
O-9142: かれは外を見ていました。わたしたちを見るかれの姿を見ました。わたしたちはかれを見ました。他の者たちもかれを見ました。彼らはわたしたちと一緒の円の中には居ませんでした。彼らは円の外側に立っていました。そして、わたしたちはわたしたちのせいでかれがどれだけ苦しんでいるかを歌わなければなりませんでした。隔壁を閉じるために。だから他の者たちはかれが戻るのを見逃しません。彼らはとても怒っています。彼らは長く物事を覚えていられません。たぶん、わたしよりも。
カーン博士: [か]れは危険なのかい?
O-9142: ベン博士、わたしはとても疲れました。もう眠ってもいいですか?
カーン博士: もうすぐで終わりだよ。あとちょっとの情報が必要なんだ。
O-9142: かれは言いました、あなたが帰ってきてほしいと。かれはあなたがいなくて寂しがっています。だけど、かれはあなたの父について話しているのだと思います、あなたではなく。だから会いたくなければ、そうする必要はありません。
カーン博士: よしこれでおしまいだ。もう眠っても構わないよ。
カーン博士: アンナ?彼のモルヒネ点滴量を増やしてくれないか。彼が望むだけね。
背景: ████/██/██、O-9142とのインタビューの3日後であり██████監督官が死亡した5日後、サイト管理官カーンは新しいSCP-1348-02実例を編纂し、内部収容域へと進入しました。外部におけるSCP-1348-02箇所を実行した後、カーン博士はSCP-1348-03中央域に入りました。彼の姿はそれ以降見られず、隔壁が下降することはありませんでした。O5-07の命により、C-1348-B収容プロトコルは停止されました;隔壁の下降時には、C-1348-Aは即座にプロトコル228-MELECHAHを実行することになっています。