SCP-1348-JP
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アイテム番号: SCP-1348-JP

オブジェクトクラス: Anomalous Keter

特別収容プロトコル: SCP-1348-JPは新たな性質が発覚し、実験が継続中です。収容方法は未決定の状態です。SCP-1348-JPの暫定的な特別収容プロトコルが策定されました。しかし諸事情により報告書の作成が遅れています。報告書が完成するまでの間は、SCP-1348-JPの収容方法については補遺1を参照して下さい。報告書作成の遅れの理由については補遺2を参照して下さい。

説明: SCP-1348-JPは、██県の運送会社である[データ削除済]社1が自社内で作成・頒布していた、全50ページのB5サイズのメモ帳です。表紙に「職場のヒヤリハット・メモ 何かあったらすぐに記入して上司に報告!」と記され、下段には社員の所属と名前を記入する欄が存在しますが、空欄のままとなっています。 中身のメモ用紙は、上段から中段にかけて「発生日時」「場所」「起こったことの詳細」を記入する欄が印刷され、中段の真ん中に「以下に気づきと対策を書いて下さい」と表記され、下半分は完全な白紙となっています。いずれのページにも記入はありません。材質に異常性は確認されず、ページをめくることも可能ですが、燃やすことはできず、いかなる力を加えてもページを糊付け部分から剥がすことも、破り取ることもできませんでした。汚すことも不可能です2

SCP-1348-JPは未知の手段により、周囲の人間の不注意、思い込み、パニックを助長し、軽率な行動や短絡的な行動を誘発します3。周囲の構造物にあらかじめ潜んでいた脆弱性、不安定性を任意のタイミングで顕在化させる4ことも可能であると推測されます。SCP-1348-JPの周囲でそれらの事象が連鎖することにより、定期的に様々なアクシデント・インシデントが発生します。

SCP-1348-JPはアクシデントを起こした後、自らの中身と同一様式のメモ用紙を1枚出現させます(以下、このメモ用紙をSCP-1348-JP-Aと呼称する)。SCP-1348-JP-Aは不明な方法により中空から突然現れます。出現する場所はSCP-1348-JPの周囲3m内のどこかで、このときSCP-1348-JPの総ページ数には一切変化はありません。出現したSCP-1348-JP-Aは破壊不能性を持たず、汚すことも破ることも燃やすことも可能です。しかし実際にSCP-1348-JP-Aを破壊する(全体面積の30%以上を汚す、破る、燃やす)と、SCP-1348-JP-AはSCP-1348-JPと同様の異常現象を引き起こします。この異常性は1回限りであり、1枚のSCP-1348-JP-Aが複数回の異常現象を起こした事例は確認されていません。

SCP-1348-JPは2017年3月、財団のフロント施設である██県のゴミ処理場で発見されました。他のゴミとともに焼却処理された後、このオブジェクトのみが処分場内に完全な形で残っていることを職員が不審に思い上司に報告。その上司が財団のエージェントだったことから収容に至りました。その後材質検査、ヒューム値検査などが実施されましたが、破壊不可能であること以外は何の特徴も発見されませんでした。[データ削除済]社の他のヒヤリハット・メモを回収・調査しましたが、SCP-1348-JP以外には異常性を備えたものは確認されませんでした。SCP-1348-JPはオブジェクトクラスをAnomalousに指定されてサイト-8107に収容されました。

SCP-1348-JPが収容されてから2週間の間に、サイト-8107にて2件の収容違反が発生。すぐに全収容物の再確認が実施され、SCP-1348-JPの収容ロッカー内にSCP-1348-JP-Aが2枚落ちていることが発覚。SCP-1348-JPの再調査が決定しました。

以下は、SCP-1348-JPがサイト-8107で引き起こしたと推測される収容違反です。

収容違反ケース001 - 日付2017/04/04

事例対象: SCP-3███(一定のパターンに従い、定期的に短距離を瞬間移動するキューブ。長く放置するとサイトの外やサイト内の危険な場所に転移するため、10日に1度は職員が収容室の元の位置に戻しておく必要がある。オブジェクトクラスはSafeであり、SCP-1348-JPの収容ロッカーからは10m離れた区画に収容されていた)

事例概要: 引き継ぎミスにより、SCP-3███の観察日誌の「次にキューブを元の位置に戻すべき日」に7日のズレが発生。キューブが元の位置に戻されないまま14日連続で転移を繰り返したことにより、収容室の外に出た。

事後処理: キューブに取り付けられたGPS装置により現在位置が判明。給湯室のコーヒーメーカーの上に乗っていたSCP-3███を再回収した。SCP-3███の担当職員3名には厳重注意が下された。

補足: 引き継ぎの際、日付等の二重チェックが不完全だったことが判明。マニュアルが改められた。GPSと連動した自動警告システムの導入が検討されることになった。

収容違反ケース002 - 日付日付2017/04/12

事例対象: SCP-1███(通常の環境下では人を積極的に襲う性質があるため、常に一定の圧力をかけたケージ内に閉じ込めて活性化を抑える必要のある動物型オブジェクト。オブジェクトクラスはSafeであり、SCP-1348-JPの収容ロッカーからは30mほど離れた区画に収容されていた)

事例概要: 定期検査を実施していた研究員[削除済]が不注意から圧力モニターにコーヒーをこぼす。その結果メーターが故障し、緊急警報とともに異常数値を示した。検査マニュアルではまず予備モニターを作動させる手順だったが、研究員[削除済]はパニックに陥ったためにマニュアルを無視し、SCP-1███を沈静化させるための睡眠ガスの注入レバーを引いた。しかしガスを内部に導入するパイプが経年劣化により破裂、これによりケージの一部が破損。減圧により活性化したSCP-1███がケージ外に飛び出し、研究員[削除済]を襲撃。研究員[削除済]は軽傷を負った。

事後処理: SCP-1███は駆けつけたエージェント数名によって鎮圧され、予備の高圧ケージに再収容された。研究員[削除済]はサイト内の病棟に入院措置。完治後に減俸処分。

補足: 研究員[削除済]は連日の作業により睡眠不足の状態であったことが判明している。また、旧式の圧力モニターの防水能力、およびケージのメンテナンス手順について不備があったことが後日の検査で明らかとなった。

SCP-1348-JPは直ちにサイト-8107から██山奥の実験場に移送され、その隠された性質を明らかにするための実験が実施されました。

実験記録001(復旧成功) - 日付2017/04/20

対象: SCP-1348-JP

実施方法: 実験室の中央の天井裏にSCP-1348-JPを設置。実験室内には、1ヶ月前に収容違反ケース002を起こしたSCP-1███の収容設備と同様の高圧ケージを運び込み、組み立てて稼動状態にした。ただし危険性を鑑みケージ内は空のままとし、また収容違反ケース002の原因の一つとなった配管については、破裂の可能性のない新製品と交換している。この状態でD-380564を実験室に入れ、SCP-1███のケージの検査手順を記したマニュアル通りに作業を行わせる。

実験の会話ログ:

███博士(無線放送、以後も同じ): では、そのマニュアルどおりに作業を始めてくれ。

D-380564: はいよ。(作業を開始するが、真剣にマニュアルを読んでいない)

D-380564: ええと、533?(メーターの数字を読み間違えている)

D-380564: で、こっちのレバーを引けってか。(レバーの左右取り違えを犯している)

D-380564: おわっ、なんか警報が鳴り出したぜ。なんだ、圧力異常上昇? どういうことだ?

███博士: (嘆息、3秒沈黙)ご苦労。作業を終えていいぞ。

D-380564: あんだよ博士、俺は何も悪くないぜ。このおかしな機械がいきなり故障したんだからよ。…あれ? なんか紙が落ちたぜ? こんなものあったか?

███博士: 紙だと? SCP-1348-JP-Aが天井裏から転移してきたのか? モニターには何も兆候はなかったが…

D-380564: 天井からなんだって? よくわかんねえな博士。この紙、どうすればいいんだ? 持って帰りゃいいのか?

███博士: (5秒沈黙)いや、そのSCP-1348-JP-A、ではなくメモ用紙に何か記入してくれ。書く内容はなんでもいい。ペンはその机の引き出しの中にある。

D-380564: はん、これに何か書けってか。(SCP-1348-JP-Aを見る)ヒヤリハットメモ? おい! ふざけんなよ、あのクソむかつく会社の連中にさんざん書かされたヤツじゃねえか! こんなもん二度と書くかよ!(SCP-1348-JP-Aを破り始める)

███博士: あっおい! …そうか、そっちは破壊できるのか。ならばこのまま破壊試験として観察を続けるとしよう。

D-380564: ざまあ見ろ! 誰に命令されようがヒヤリハットなんざ二度と書かねえぞ!(直後、ケージから噴出した高圧ガスが背中に直撃、悲鳴を上げて倒れる)

███博士: 実験中止!

結果: D-380564の2回のミスにより、ケージ内の気圧が通常運用時の2倍近くにまで上昇。ここまでは収容設備の安全想定基準内だったが、実験室内にケージを設置する際に配管が1箇所間違って溶接されていたため、隔壁の堅牢性が損なわれていた。結果、圧力に耐えきれずケージが破損、高圧ガスが噴出。D-380564が軽傷を負った。

分析: 高圧ガスの噴出はD-380564がSCP-1348-JP-Aを破り捨てた直後であることを考慮すると、SCP-1348-JP-Aも何らかの異常性を持つ可能性がある。今後の実験にあたっては、新たに出現したSCP-1348-JP-Aは即時回収し、実験に使用するとき以外には厳重に保管することが決定された。

実験記録002(一部復旧成功) - 日付2017/04/24

対象: SCP-1348-JP

実施方法: 実験001の4日後、別のDクラス職員を用いて全く同じ実験を実施。実験001の結果を踏まえ、高圧ケージの組み立てには細心の注意を払う。またDクラスはある程度高い学歴を持つ者を選抜し、十分な睡眠時間を与えた上で実験室に入れ、時間をかけて慎重に作業するよう要請する。

実験の会話ログ: N/A

結果: 作業は最後まで実施された。小さなミスが2つ記録されたが、大きなアクシデントには発展せず。SCP-1348-JPはメモ用紙を出現させなかった。

分析: SCP-1348-JPは、起こる可能性の低いアクシデントを誘発したり、現実改変や精神操作により強制的にアクシデントを発生させることは無いとみられる。このオブジェクトの性質は強度の低い確率操作であると推測される。しかしサイト-8107の収容違反が2週間のうちに2回しか発生していない点を鑑みるに、SCP-1348-JPが異常を発生させる頻度が週に1回以下である可能性も否定できない。

実験記録003-020(復旧中) - 日付2017/05/04-2017/08/23

対象: SCP-1348-JP

実施方法(概略): 実験を実施する場所、SCP-1348-JPの位置、作業の内容、Dクラス職員の学歴・人数を少しずつ変えながら複数回の実験を行う。並行して犬や猫など人間以外の生物を実験室に入れ、人間以外の生物へ与える影響も調査。また、SCP-1348-JP自体を複数のセンサーや探知機で監視し、異常を引き起こす方法を探る。

結果(概略): 7日~10日に一度の頻度で、実験中にSCP-1348-JPが引き起こしたアクシデントが発生。SCP-1348-JPもその都度メモ用紙を1枚出現させた。SCP-1348-JPが引き起こしたアクシデントは、日数が経過するごとに規模と重大性を増す傾向にある。

分析(概略): SCP-1348-JPは人間以外の生物には影響を与えないこと、SCP-1348-JPが異常を起こす頻度は週に1回以下であること、SCP-1348-JPから40m以上離れた地点にはほぼ影響が見られないことが確認された。普段から注意力に問題が見られる者、作業に習熟していない者、実験参加に対して不熱心な者ほどSCP-1348-JPの影響を受けやすい傾向がある。しかし実験開始から3ヶ月が経過した時点から次第にその傾向に逸脱が見られ、注意深いDクラス職員に予めSCP-1348-JPの性質を伝えていた場合でも、明らかに初歩的なミスを犯す事例が発生するようになった。

特記事項: カント計数機の反応が日に日に大きくなっていることが確認された。発見直後のSCP-1348-JPのヒューム値は平均値の範囲内だったが、2017年8月時点でその最大値は1.3を記録した。これは確率操作に留まらず現実改変や精神操作も可能にする値である。SCP-1348-JPのヒューム値は異常現象を引き起こした直後に1付近にまで低下するが、およそ30分後に増大を開始し、1週間後には元の値にまで回復する。このサイクルを止める、あるいは遅延させる試みはすべて失敗している。

SCP-1348-JPの性質が他のオブジェクトの収容違反を容易に引き起こすものであること、異常を発生させる手段が不明なままであること、ヒューム値の増大が確認されたこと、それを止める手立てがないことから、SCP-1348-JPのクラスはAnomalousからKeterに変更されました。SCP-1348-JPのヒューム値を減少させるためのいくつかの試みが提案されました。

実験記録021(復旧中) - 日付2017/08/31

対象: SCP-1348-JP

実施方法: N/A

実験の会話ログ: N/A

結果: N/A

分析(概略): SCP-1348-JPによる初めての死亡事例が発生。SCP-1348-JPが引き起こしたアクシデントも従来のものより大規模であり、危害半径は60mに達した。サイト管理者██より実験の中止とSCP-1348-JPの封印が提案されたが、アクシデントが起こらなかった場合にヒューム値が危険域まで増大し続ける可能性があることから却下された。SCP-1348-JPのヒューム値を減少させる方法を最優先で研究することが決定。

実験記録022(一部復旧成功) - 日付2017/09/07

対象: SCP-1348-JP

実施方法: N/A

監視カメラの映像ログ:

D-380564: (天井の破片の隙間から上半身だけを覗かせている)ちくしょう、ちくしょう、痛えよ。なんでこんなことに。俺が何をしたってんだ。言われたとおりにしただけだろ。俺は何も悪くねえ。なのになんでこうなるんだ。なんでいつもひどいことが起こるんだ。

D-380564: (うつ伏せの状態のまま周囲を見回す。周囲は瓦礫に囲まれている。天井が崩れた部分から日光が漏れている)落ちてきた天井に挟まれてんのか。動けねえ。痛え。くそ、脚はちゃんと繋がってるんだろうな。なんでこんなことになるんだ。言われたとおりにしただけなのに。俺が悪いってのかよ。俺が何をしたってんだよ。

D-380564: (10秒間ほど沈黙したのち、顔を歪ませて叫び出す)俺は何もしてねえ。何もしてねえんだぞ! なのにいつも俺はひどい目に遭う。みんなが俺だけを悪者にする。いつもこうなんだ、みんな俺のことを好き放題いうんだ。あいつら、俺が注意力散漫だのヒヤリハットを真面目に書かねえだの!

D-380564: (目の前に落ちているSCP-1348-JP-Aに気づく)ヒヤリハット…ヒヤリハットだと? こ、こいつのせいだってのか。俺がまともにこれを書かないから、こんなひどいことが起きたのか。俺にひどいことが起こり続けてるってのか。そ、そんなわけ…

D-380564: (SCP-1348-JP-Aを凝視し、5秒間沈黙。その後、それを拾い上げる)書かなかったから、なのか? だから俺にひどいことばかり起こるのか? みんな真面目にこれを書いてるのに、俺だけきちんと書かなかったから、だからあの火事とか、あの事故とか、あのガス漏れとかが起こったのか? 

D-380564: (実験前に支給されたペンを、胸元のポケットから取り出す)みんなが言ってたこと、嘘じゃなかったのかも知れねえ。こんなときだけど一度くらい真面目に書いてみるか。発生日時、9月7日。場所、どっかの広い部屋。起こったことの詳細、なんかのテストをやってる最中に天井が落ちた。気づきと対策…天井はしっかり点検しとけ。昔の友達も言ってた、天井は建物の中で一番大事だって。1年に1回くらいは点検しなきゃいけねえんだ。…と、こんなもんか。

D-380564: (SCP-1348-JP-Aを床に放り投げる)へっ、書いてやったぜ。ここから無事に出られるかどうかわかんねえけど、でもなんかいい気分だ。すっきりした。

結果: 実験中、実験室の天井の半分以上が崩落。実験に参加したDクラス10名のうち4人が重傷を負った。ただちに実験は中止され救助活動が試みられた。天井の破片に複数名のDクラス職員が閉じ込められたこと、実験場の大部分が停電に陥ったことで救助活動は難航したが、3時間後には全員を近辺のサイトの医療施設へ搬送することに成功した。

分析: 実験022においてSCP-1348-JPが引き起こした事象は現実改変と推測される。ここに至りSCP-1348-JPへの対策として銀河系外縁部方面への射出も検討される事態となったが、事故から2日後、SCP-1348-JPのヒューム値が増大せず、1前後に留まっていることが判明した。残された映像記録を確認したところ、この実験で出現したSCP-1348-JP-Aに対してD-380564が「アクシデントの発生日時・場所・起こったことの詳細・再発防止のための対策を、適切な欄に記入する」という行為を実行していたことが判明。この行為がSCP-1348-JPのヒューム値を抑制した可能性が指摘され、以後「追加対応-1348-JP」と命名して実験を進めることが決定された。

実験記録023-025(復旧中) - 日付2017/09/15-2017/10/06

対象: SCP-1348-JP

実施方法: N/A

結果: N/A

分析(概略): 暫定的ながら、「追加対応-1348-JP」がSCP-1348-JPのヒューム値の抑制効果を持つと結論付けられた。

サイト管理者██: ヒヤリハットを書かないと、アクシデントはどんどん深刻さを増していく、という仕組みだったわけですね。気づかなければ大変な事態になるところでした。

███博士: だがアクシデントの都度ヒヤリハットを書いていたなら、SCP-1348-JPが起こす異常は確率操作のみに留まる。この性質は利用できそうだな。

実験023-025の結果を受け、SCP-1348-JPの新しい収容プロトコルが策定されました。3年間の経過観察ののち、正式なプロトコルとして採用される予定です。これに伴いオブジェクトクラスもEuclidへ変更。説明も一部が変更されました。報告書完成までは補遺1にそれらを記します。

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