SCP-1351-JP
評価: +59+x
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2/1351-JP LEVEL 2/1351-JP
CLASSIFIED
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Item #: SCP-1351-JP
Euclid

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箸墓古墳全景(奈良県桜井市)


特別収容プロトコル: 箸墓古墳の陵墓敷地内は特別収容サイト/1351-JPに指定され、周囲への隠匿操作の上でSCP-1351-JP-1の収容に必要な各種設備が設けられています。精神活動および収容状態の安定性を維持する目的で、3日に1度SCP-1351-JP-1に対する担当職員による面談が設けられます。会話内容は全て定期報告として記録されます。適切なセキュリティクリアランスを有する職員は当該内容を自由に閲覧可能です。

宮内庁との協力の下、箸墓古墳を含めたSCP-1351-JP領域内は一般人及び研究者の立ち入りが禁止されています。箸墓古墳周辺を対象とした発掘調査の実施及び調査結果は財団による審査を受け、非異常性の情報及び物品のみが民間に対して公開されます。

財団の各種研究に対する貢献が期待されるため、新たなSCP-1351-JP-Aの出現に対する防止措置は保留とされています。SCP-1351-JP領域内は常時監視対象とされ、新たなSCP-1351-JP-Aが現われた際はフィールドエージェント2名が派遣され、SRAによる現実性固定を併用した確保が行われます。確保されたSCP-1351-JP-Aはサイト-8176に移送された後、神話・民俗学部門の研究対象として各サイトに収容されます。

説明: SCP-1351-JPは箸墓古墳(奈良県桜井市)を中心とした半径約150 mの領域です。当該領域内では不定期にノウアスフィア上のミーム集合の具現化実体(SCP-1351-JP-Aに指定)が出現します。SCP-1351-JP-Aの出現は午前0時から2時の間に集中していることが各種記録から示唆されています。当該実体群が出現する原因として、三輪山・箸墓古墳間の現実流循環によって夜間の箸墓古墳周辺のヒューム値が上昇すること、箸墓古墳の被葬者である倭迹迹日百襲姫やまとととびももそひめが呪術的ミーム1を基にした強力な奇跡論行使能力・現実改変能力を有しており、陵墓に対して当該性質が付与されていることなどが挙げられています。

SCP-1351-JP-Aは日本国に伝承されている説話に登場する存在を基にして発生したと考えられている実体群です。現在までに記録されている実例の約90%はヒト (Homo sapiens) 以外の動物を模倣した実体であることが確認されています。また、各実体は古代日本における記憶を保持していることが確認されており、神話・民俗学部門はSCP-1351-JP-Aの供述内容が各種研究に大きく貢献する可能性を指摘しています。SCP-1351-JP-A実体群の大部分は蒐集院が過去に関知・収容していた実体であり、財団日本支部への体制移譲の際に収容状態が引き継がれました。

SCP-1351-JP-Aの各実例は現代日本語を用いた会話が可能であり、財団関係者を含めた人間に対して協力的な態度を示しています。財団による正常性維持の方針に対しても理解を示したことから、SCP-1351-JP-A実体群は収容違反の可能性が低いと判断され、日本国各地のサイトにおいてAnomalousアイテムとして管理されていました。しかしながら、実体群の約40%がSCP-1351-JP領域内で発見されていることに加え、SCP-1351-JP-1が発生させた一連のインシデントにおいて各実体とSCP-1351-JP-1との関係が深いと判断されたことから、SCP-1351-JPの収容体制への包含が決定され、改めてSCP-1351-JP-Aとしてナンバリングされました。

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SCP-1351-JP-1

SCP-1351-JP-1は異常性を有するニホンマムシ (Gloydius blomhoffii) 型実体です。SCP-1351-JP-1は現代日本語を用いた会話が可能であり、現在は財団関係者に対して協力的な態度を示しています。SCP-1351-JP-1は自身が箸墓古墳の被葬者である倭迹迹日百襲姫に侍従していた動物型実体の一つであり、陵墓の近傍で殉死したが、不明な方法で復活したと主張しています。SCP-1351-JP-1は遠隔地に対する転移及び小規模な現実改変が可能ですが、SRAを用いた現実性固定による防止が可能です。また、口頭によるミーム的情報の伝達が可能ですが、対抗ミーム/1351-JP-1の摂取による汚染の回避が可能です。


補遺1351-JP.1: インシデント1351-JP

2013/04/03、SCP-1351-JP領域内でSCP-1351-JP-1が発見されました。当初、SCP-1351-JP-1はSCP-1351-JP-Aの一種であると判断されていたため、従来の収容プロトコルに従い簡単なインタビュー実施の後にサイト-8176に移送される予定でした。しかしながら、SCP-1351-JP-1はインタビュー実施中に現実改変的操作を用いて消失しました。

以下に発見直後に行われたインタビューの記録を示します。

インタビュー記録1351-JP.1


日付: 2013/04/03
対象: SCP-1351-JP-1
インタビュアー: 車道 光行博士(SCP-1351-JP収容監督官、神話・民俗学部門所属)


<記録開始>

車道博士: 突然申し訳ありません。

SCP-1351-JP-1: [困惑した様子を示す]

車道博士: 落ち着いてからで構いませんので、あなたのことについて教えていただけますでしょうか。

SCP-1351-JP-1: ──私は──みささぎの傍で殉じたはずでは──

車道博士: 陵とはあの古墳のことでしょうか。

[SCP-1351-JP-1、現実改変的操作によって消失する]

<記録終了>

SCP-1351-JP-1の追跡は成功していません。当インシデントを受け、当該実体はSCP-1351-JP-1に指定され、SCP-1351-JP-Aに対する収容プロトコルが改定されました。


補遺1351-JP.2: SCP-1351-JP-Aに対するインタビュー記録

インシデント1351-JP以降SCP-1351-JP-1の捜索が継続されていました。この間、SCP-1351-JP-A-4、-5、-12、-21がSCP-1351-JP-1と思われる実体と接触したことを報告しました。以下に各実体に対するインタビュー記録を示します。

インタビュー記録1351-JP.2


日付: 2013/04/24
対象: SCP-1351-JP-A-4
インタビュアー: 車道博士


付記: SCP-1351-JP-A-4はアオダイショウ (Elaphe climacophora) 型実体であり、晡時臥山くれふしやま説話(出典: 『常陸国風土記』)を基に発生した実体であると考えられている。


<記録開始>

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SCP-1351-JP-A-4

[前半は省略]

SCP-1351-JP-A-4: あのマムシがそんなに重要なのですか?

車道博士: ええ。現在我々はあの蛇を追っています。

SCP-1351-JP-A-4: そうですか。毎度のことながらご苦労なことです。

車道博士: あなたはあの蛇を知っていましたか?

SCP-1351-JP-A-4: いいえ。いくら大和の女王の侍従と言っても、さすがに常陸からは距離があるので。でもあちらは僕を知っていたらしく、それで訪ねてきたようです。

車道博士: あの蛇とはどのような会話を?

SCP-1351-JP-A-4: なぜ自分が現世うつしよに蘇ることができたのかについて気になっていたようで、それについて聞かれました。

車道博士: あなたはそれに対して何と?

SCP-1351-JP-A-4: 民草が僕たちの話をすることによって、あの大市の地にその話を基にした実像が現われるらしいと言いました。あなたたちからの受け売りですけどね。

車道博士: それを聞いて、蛇はどんな様子でしたか?

SCP-1351-JP-A-4: 他の者にも聞いてくる、と言ってどこへともなく去っていきました。

車道博士: ありがとうございます。他には話したことはありますか?

SCP-1351-JP-A-4: ああ、あと女王が女王がと、女王についてひたすら気にかけている様子でしたよ。女王のために何かするんだ、蘇ったからには何かするべきだと。

車道博士: 女王ですか。

SCP-1351-JP-A-4: はい。彼はその女王にとてもかわいがられていたようで。

車道博士: ありがとうございます。貴重な情報です。

SCP-1351-JP-A-4: そうですか、よかった。それにしても、物好きな女王もいたものですね。

車道博士: どういう意味ですか?

SCP-1351-JP-A-4: だってマムシですよ。自分で言うのもなんですが、僕のような白い身体と赤い目を持ったではないんですよ。

車道博士: はあ。

SCP-1351-JP-A-4: 常陸の行方というところに夜刀神やとのかみというのがおりまして──いや、先生はご存じか。要するに、ああいう毒蛇って、割と民草に舐められるんですよ。退治されたりして。

車道博士: つまり?

SCP-1351-JP-A-4: あれはおそらく、元々は凡人ですよ、先生。人じゃないけど。

[以下は省略]

<記録終了>


インタビュー記録1351-JP.3


日付: 2013/05/12
対象: SCP-1351-JP-A-5
インタビュアー: 車道博士


付記: SCP-1351-JP-A-5はニホンジカ (Cervus nippon) 型実体であり、夢野いめのの鹿の説話(出典: 『摂津国風土記逸文』)を基に発生した実体であると考えられている。


<記録開始>

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SCP-1351-JP-A-5

[前半は省略]

SCP-1351-JP-A-5: 先生、檳榔あぢまさ肥長比売ひながひめをご存じでしょう?

車道博士: 存じていますが、それが何か?

SCP-1351-JP-A-5: いえ──なんで蛇という生き物は毎度毎度、あんなふうに同じ相手に執着するのかと思いまして。

車道博士: そんなに執着しているように見えたのですか?

SCP-1351-JP-A-5: ええ。しかも身分不相応です、ただの毒蛇が女王になんて。

車道博士: あなたは女王のことを知っていたのですか?

SCP-1351-JP-A-5: ええ。刀我野とがのは大和に近いですし、御威光は届いておりましたよ。

車道博士: あの蛇とはどんな話を?

SCP-1351-JP-A-5: 何やら、女王を蘇らせる、とかなんとか話していました。

車道博士: 詳しくお願いします。

SCP-1351-JP-A-5: 私たちが民草の話を基にあの地に現れることができるのであれば、女王が蘇るという話を民草に広めれば、あの地に女王が蘇ることができるのではないかと。忠告しますが先生、あの蛇は多分その芸当ができます。

車道博士: どういうことでしょうか。

SCP-1351-JP-A-5: あの蛇は女王から与えられた力を残しているようです。消えたり現れたりするのもそうですが、女王は言霊を操ることに長けていたようです。それで噂や巷説を管理して、民草を効率よく知ろしめていたのですが──あの蛇も多分それができます。

車道博士: ありがとうございます、非常に助かります。

SCP-1351-JP-A-5: 先生、頑張ってください。あの蛇は確かに女王を慕っていますが、彼女の気持ちを全然考えていない。自分の気持ちを押し付けているだけです。

車道博士: はあ。

SCP-1351-JP-A-5: 大体、彼女は巫女として、大物主櫛𤭖玉命おおものぬしくしみかたまのみことと神婚をしているじゃないですか。

車道博士: そうですね、三諸みもろの神の。

SCP-1351-JP-A-5: あの口ぶりや熱量、明らかに主従以上の気持ちにまでなっています。主従の愛だけなら美しいですが、私にはあれは──

車道博士: あなたの夫を想起させる、と?

SCP-1351-JP-A-5: 沈黙は金ですよ、先生。だからモテないんです。

車道博士: インタビューを終了します。

<記録終了>


インタビュー記録1351-JP.4


日付: 2013/05/26
対象: SCP-1351-JP-A-12
インタビュアー: 車道博士


付記: SCP-1351-JP-A-12はアオザメ (Isurus oxyrinchus) 型実体であり、恋山したひやま説話(出典: 『出雲国風土記』)を基に発生した実体であると考えられている。


<記録開始>

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SCP-1351-JP-A-12

[前半は省略]

車道博士: マムシがあなたのもとに訪れたとのことですが。

SCP-1351-JP-A-12: ああ。彼は我の盟友だ!

車道博士: あなたとあの蛇とは元々交流があったということですか?

SCP-1351-JP-A-12: いや、先生。あの時分に出雲と大和とで交流ができるわけがなかろう。我と彼とは先日盟友の契りを交わしたのだ!

車道博士: どういう経緯で?

SCP-1351-JP-A-12: 先生。人は同じ悩みを共有することで深い深いつながりができるのだ。我は玉日女命たまひめのみことに恋をした。彼女は大岩を据えたが、我はその岩の傍で慕い続けた。彼は女王を慕ったが、今や彼女は泉下にいる。彼は黄泉比良坂よもつひらさかに大岩が据えられているにもかかわらず、慕う気持ちを忘れられずに岩の傍で思いを募らせているのだ。同じではないか!

車道博士: はあ。それで、あの蛇とはどのような会話をしましたか?

SCP-1351-JP-A-12: 女王を蘇らせるために、あの墓に女王が現われるという巷説を広げるから、協力してほしいという話だ。

車道博士: それであなたは?

SCP-1351-JP-A-12: 協力する! 思いを遂げるために黄泉から蘇らせようとまでするとは、泣かせるではないか!

車道博士: そうですか。当方としては許すことはできませんが。

SCP-1351-JP-A-12: そうだろうな。もちろん、いくら協力すると言っても、君たちがいる限り我自身が力を貸すことはできないだろう。しかし外にはまだまだ当時を知る者たちが残っている。民草の暮らしに交じって生活を営んでいる者もいる。

車道博士: 実例を複数例関知しております。

SCP-1351-JP-A-12: 彼らのもとにも協力を仰ぎに行くと言っていた。彼のたくらみは案外簡単に達成されるかもしれんぞ。

車道博士: [沈黙]

SCP-1351-JP-A-12: また仕事が増えるな、先生。

車道博士: そうですね。

SCP-1351-JP-A-12: 気の毒に思うが──世の中には我らのような馬鹿な男がいるんだ。わかってやってくれ。君はまだそういうことは知らないかもしれんが。

車道博士: 余計なお世話です。

<記録終了>

各インタビュー記録を受けた調査の結果、インターネット上において以下のようなミーム汚染的性質を有する情報が発見されました。

  • 箸墓古墳に埋葬されている女王が、箸墓古墳周辺で夜間に徘徊している様子が目撃された。
  • 箸墓古墳に埋葬されている女王は近年復活する。

インタビュー記録の内容から、上記ミームの発生にはSCP-1351-JP-1の活動が大きく関係していることが示唆されています。ミーム部門の協力の下、現在インターネット上における上記ミームに対する対抗ミームの散布が行われています。しかしながら、ミーム汚染範囲が広大であること及び汚染対象の特定が困難であることから、審議の結果、上記ミーム汚染を要因として発生することが予想されるSCP-1351-JP領域内での現実改変への対応に注力することが決定されました。

2013年6月以降、SCP-1351-JP領域内において観測されるヒューム変動の振幅が有意に増大していることが示唆されています。当該ヒューム変動を通じて発生する現実改変によって、不明な人型実体(暫定的にPoI-1351-JPに指定)が箸墓古墳周辺に出現する可能性が指摘されています。現在、対現実改変・アキヴァ放射・奇跡論パルス装備を有するフィールドエージェント10名がSCP-1351-JP領域外周に配備されています。

インタビュー記録1351-JP.5


日付: 2013/07/29
対象: SCP-1351-JP-A-21
インタビュアー: 車道博士


付記: SCP-1351-JP-A-21はニホンノウサギ (Lepus brachyurus) 型実体であり、稲羽素兎いなばのしろうさぎ説話(出典: 『古事記』)を基に発生した実体であると考えられている。


<記録開始>

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SCP-1351-JP-A-21

[前半は省略]

SCP-1351-JP-A-21: 彼、めちゃくちゃはしゃいでたね。嬉々としてまくしたてられたよ。

車道博士: どのような内容をですか?

SCP-1351-JP-A-21: もうすぐ私と彼女の願いが叶う、そのときはぜひ箸墓に来てくれって。まあ気持ちはわからなくもないけど。

車道博士: 他に何か話したことはありますか?

SCP-1351-JP-A-21: うーん、一方的に話されただけだね。気づいたらいなくなってた。

車道博士: わかりました、ご協力ありがとうございました。

SCP-1351-JP-A-21: お安い御用だよ。──あ、ちなみに、博士。

車道博士: なんでしょうか。

SCP-1351-JP-A-21: 僕のとってもお世話になった大神と、あの蛇との関係はわかる?

車道博士: あなたを介抱した 大己貴命おおなむちのみこと和魂にぎみたま大物主おおものぬし神で、大物主神と倭迹迹日百襲姫は神婚をした──ということでしょうか。

SCP-1351-JP-A-21: そう。つまり、彼が必死になって会おうとしている彼女って、僕の大恩人の奥さんとも言えるんだよね。

車道博士: そうですね。

SCP-1351-JP-A-21: どう、僕のこの気持ちわかる? こればかりは、さすがの僕も恋の成就を予言することはできないよ。

車道博士: 大物主神は、あの蛇の活動内容についてどう思うでしょうか。

SCP-1351-JP-A-21: どうだろうね。あの方は色を好んでいらっしゃるから、そういう惚れた腫れたの話には案外共感するんじゃないかな。ああ、でも──

車道博士: なんでしょうか。

SCP-1351-JP-A-21: 正直、あの方のそっちの面に関しては、僕もよく知らないんだ。でも聞くところによると、結構祟り神としての側面が強いらしいね。

車道博士: 確かにそうですね。現に、倭迹迹日百襲姫は──

SCP-1351-JP-A-21: うん。大物主神の祟りで亡くなってるからね。

[以下は省略]

<記録終了>


補遺1351-JP.3: PoI-1351-JP及びSCP-1351-JP-1の収容記録

2013/08/15午前1時ごろ、SCP-1351-JP領域外周部においてモンゴロイド系女性型実体(PoI-1351-JPに指定)及びSCP-1351-JP-1が確保されました。PoI-1351-JPは50歳前後と観察され、古代日本における女性シャーマンに相応する衣装を着用しており、現代日本語を用いた会話が可能です。PoI-1351-JPは財団関係者に対して協力的であり、収容に対する抵抗は示しませんでした。またその後の調査によって、PoI-1351-JPは現実改変・奇跡論行使能力等の異常性を有さないことが確認されました。

以下にPoI-1351-JPに対するインタビュー記録を示します。

インタビュー記録1351-JP.6


日付: 2013/08/15
対象: PoI-1351-JP
インタビュアー: 車道博士


<記録開始>

車道博士: 落ち着きましたでしょうか。

PoI-1351-JP: はい。──こうやって当代の言葉を扱えるようになっているということは、私は何らかの手段で呼び出されたのでしょうか。

車道博士: 私たちもそう考えております。いくつか質問させていただきます。

PoI-1351-JP: ええ、なんなりと。

車道博士: ありがとうございます。ではまず、あなたは倭迹迹日百襲姫ですか?

PoI-1351-JP: いいえ。

車道博士: [沈黙]──では、あなたは誰ですか?

PoI-1351-JP: 当代では、卑弥呼という名前がわかりやすいでしょう。

[以下は省略]

<記録終了>

各種調査結果から、PoI-1351-JPは『魏志倭人伝』等に記述されている邪馬台国の女王・卑弥呼を基にして発生した実体であることが判明しました。現在PoI-1351-JPはサイト-8175に所在する人型実体用標準収容房に収容されています。PoI-1351-JPに関する収容記録については付属資料: PoI-1351-JPを参照してください。

PoI-1351-JPが倭迹迹日百襲姫のミーム集合に基づかなかった原因に関して、ミーム部門は以下のような考察を行っています。

  • 歴史上・神話上の人物として「倭迹迹日百襲姫」は日本国民に対する十分な知名度を有していない一方で、「卑弥呼」は十分な知名度を有していた。その結果、「卑弥呼」に関するミーム集合は「倭迹迹日百襲姫」に関するミーム集合と比較して非常に強大な影響をノウアスフィアに対して与えていた。
  • 邪馬台国が現在の奈良県付近に所在したという仮説(邪馬台国畿内説)は十分な時間をかけて議論されてきた議題であり、日本国民全体のノウアスフィアに十分に浸透・定着していた。当該仮説では、卑弥呼の墓は箸墓古墳であると認識されることが多い。
  • 以上2点から、「『箸墓古墳の被葬者』・『倭迹迹日百襲姫』が現われる」というミームが、「『卑弥呼』が現われる」というミームによって置換された。

また、SCP-1351-JP-A-21に対する面談記録から、神格「大物主神」による上述したPoI-1351-JPの発生に対する影響の存在が示唆されました。以下に面談記録の抜粋を示します。

インタビュー記録1351-JP.7


日付: 2013/08/18
対象: SCP-1351-JP-A-21
インタビュアー: 車道博士


<記録開始>

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収容区画内のSCP-1351-JP-A-21

SCP-1351-JP-A-21: 聞いたよ! マムシの彼が君たちに捕まったらしいね。

車道博士: それはどこで知ったのですか?

SCP-1351-JP-A-21: 最近大神にお会いしたんだ。

車道博士: 大物主神に?

SCP-1351-JP-A-21: うん。皮肉だよね。当時はあんなに蒼生と禽獣を従えて、多くの畏怖と崇敬を集めていた彼女が──今では別人と勘違いされるくらいに落ちぶれてるんだから。

車道博士: 大物主神はあの蛇のことをどう述べていましたか?

SCP-1351-JP-A-21: 彼の働きは逐一ご存じだったよ。それで、めちゃくちゃ笑ってた。

車道博士: 笑っていたのですか。

SCP-1351-JP-A-21: うん。今のご時世、倭迹迹日百襲姫よりも卑弥呼って人の名前の方がよっぽど有名だからね。学舎で皆習うし、最近は箸墓と卑弥呼とを関連付けて考える人も多いし。あんなに必死になっていたのに、滑稽なものだな、と大笑いしていた。だけど──[沈黙]

車道博士: [首肯して続きを促す]

SCP-1351-JP-A-21: あの方はスッと真顔に戻って仰った。私に恥をかかせたあの女を、改めて現世に蘇らせるなど、私が許すはずが無かろうと。あのマムシは、私の顔にさらに泥を塗る気かと。

車道博士: それは──

SCP-1351-JP-A-21: うん。さすがに僕も背筋が寒くなったというか、あんな大神の顔初めて見たよ。あれが祟り神たる大物主神の側面なんだろうけど。もしかしたら女王の復活が失敗したのも、あの方の差し金があるかもしれない。

車道博士: 貴重な情報をありがとうございます。

SCP-1351-JP-A-21: どういたしまして。さすがに君たちに大神が何かするってことはないと思うけど、博士の耳に入れておくべきだなって。多分──めちゃくちゃ怒ってるから。

[以下は省略]

<記録終了>

SCP-1351-JP-1はPoI-1351-JPの近傍において発見されました。その後SRAによる現実性固定を用いることで、SCP-1351-JP-1の確保が確認されました。発見時、SCP-1351-JP-1はPoI-1351-JPに対して何らかの内容を詰問している様子が観察されました。また、SCP-1351-JP-1は財団関係者に対して抵抗を示しませんでした。

以下に収容後に行われたSCP-1351-JP-1に対するインタビュー記録を示します。

インタビュー記録1351-JP.8


日付: 2013/08/16
対象: SCP-1351-JP-1
インタビュアー: 車道博士


<記録開始>

車道博士: 落ち着きましたか?

SCP-1351-JP-1: [沈黙]

車道博士: あなたのこの4か月間における活動の内容に関しては、協力者の供述から大部分を把握しています。後ほどその内容についても改めて確認しますが──

SCP-1351-JP-1: そうか。なら、私を笑うか?

車道博士: そんなことはいたしません。あの時、彼女と何を話していたのですか?

SCP-1351-JP-1: [沈黙]

車道博士: まずは気持ちを落ち着けることを優先するべきですね。お望みがあればお申し付けください。可能な限りお応えいたします。

[車道博士、退出する]

[約30秒間沈黙]

SCP-1351-JP-1: 卑弥呼なんて女──私は知らない!

[以下は省略]

<記録終了>

SCP-1351-JP-1は現実性固定された状態で現在サイト-8176の動物型実体用標準収容房に収容されています。

2013年9月初旬以降、SCP-1351-JP-1による積極的な行動(壁を上ろうとする、高い場所から落ちて身体を打ち付ける、壁に頭を叩きつけるなど)が観察されるようになりました。SCP-1351-JP-1の行動には自傷行為が多く認められることから、SCP-1351-JP-1の収容状態の不安定化が懸念されました。これを受け、精神活動および収容状態の安定性を維持する目的で、3日に1度SCP-1351-JP-1に対する担当職員による面談が設けられました。

以下にSCP-1351-JP-1に対する定期面談記録の抜粋を示します。

インタビュー記録1351-JP.9


日付: 2013/09/10
対象: SCP-1351-JP-1
インタビュアー: 車道博士


<記録開始>

車道博士: 気分はどうでしょうか。

SCP-1351-JP-1: [沈黙]

車道博士: ──よろしければ、あなたと女王との関係について教えていただけますでしょうか。

SCP-1351-JP-1: ──私は──ただの蛇だ。本当に何でもない、ただ三諸の山に棲んでいただけのマムシだった。

車道博士: どのような転機があったのでしょうか。

SCP-1351-JP-1: 妙な力を持つ一団があの地にやってきた。頭は御間城入彦みまきいりびこ2という。彼らは三諸の西麓に瑞籬宮みずかきのみやを構えたが、その時大市の地に居を構えたのが──

車道博士: 倭迹迹日百襲姫ですね。

SCP-1351-JP-1: ああ。彼女もまた、不可思議な術を用いた。まじかんなぎだと言っていたが──それだけの力ではないだろう。

車道博士: なぜその地に住み始めたのでしょうか?

SCP-1351-JP-1: あの地は三諸の神奈備かむなび3の気が夜に集まる地だ。色々と都合がよかったのだろう。

車道博士: つまり、三諸の神──大物主神と女王とは深い関係があったと?

SCP-1351-JP-1: そうだ。やがて神と女王は結ばれた。その際、女王の世話をするために禽獣がいくつか見繕われた。そのうちの一つが私だった。

車道博士: 彼らは皆、あなたのように力を得るようになったのですか?

SCP-1351-JP-1: 違う。私一人だ。私だけが女王に選ばれ、力を授けられた。

車道博士: なぜあなたが?

SCP-1351-JP-1: [沈黙]

車道博士: 大丈夫ですか?

SCP-1351-JP-1: わからない。なぜ私が選ばれたのか。私はマムシだ。神性を持たない、平々凡々とした、それどころか人に忌み嫌われるだけの──

車道博士: ──お話しいただきありがとうございます。

SCP-1351-JP-1: ──私のような者が現世にいても、何をするべきかわからないのだ。考えた結果、女王を黄泉からお呼びしようとしたが──あの通り失敗した。ならばいっそのこと、私も泉下に赴き、彼女の世話を続けることが──

車道博士: 申し訳ありませんが、それは我々も困るのです。後に居室を変更させていただきます。何かお望みがあればお申し付けください。

SCP-1351-JP-1: ──ここを出ることは?

車道博士: 許しかねます。

[以下は省略]

<記録終了>

インタビュー実施後、SCP-1351-JP-1は高所の存在しない、壁及び床に緩衝材を設置した収容房に移送されました。


補遺1351-JP.4: 収容体制の変更

2013/12/01、SCP-1351-JP-1に関する収容プロトコルが改定されました。以下に関連するインタビュー記録を示します。

インタビュー記録1351-JP.10


日付: 2013/09/15
対象: SCP-1351-JP-A-5
インタビュアー: 車道博士


付記: 本項目はSCP-1351-JP-A-5に対する定期面談記録の抜粋である。


<記録開始>

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収容区画内のSCP-1351-JP-A-5

[前半は省略]

SCP-1351-JP-A-5: 女王の復活は失敗したと。

車道博士: はい。

SCP-1351-JP-A-5: まあ、そうですよね。黄泉戸喫よもつへぐいもありますし。その後の彼の様子はどうですか?

車道博士: 女王のもとに向かおうと自傷行為を繰り返したため、身体の保護を優先して収容しています。

SCP-1351-JP-A-5: [沈黙]

車道博士: 現在は精神面の安定を重視して対応していますが、対応策は検討中の状態です。

SCP-1351-JP-A-5: 不器用ですね、彼は。

車道博士: 不器用とは?

SCP-1351-JP-A-5: 別に慕うのはいいんです。自分の気持ちを優先するあまり、彼が女王の気持ちに寄り添って考えようとしないところが問題だと、私は思っているのです。

車道博士: しかし、女王は既に──

SCP-1351-JP-A-5: ええ。ならば死者たる彼女に対して彼は何をするべきかということです。

車道博士: 何をするべきか、ですか。

SCP-1351-JP-A-5: はい。思うに、彼は難しく考えすぎなのだと思います。もっと単純に、幽世かくりよの女王のためにできることがあると思うのです。

車道博士: 例えば?

SCP-1351-JP-A-5: それは彼が見つけるべきことです。ただ──私が心配しているとお伝えください。愚かな真似をして命を落とすのは、うちの愚夫だけで十分ですから。

[以下は省略]

<記録終了>


インタビュー記録1351-JP.11


日付: 2013/09/17
対象: SCP-1351-JP-A-4
インタビュアー: 車道博士


付記: 本項目はSCP-1351-JP-A-4に対する定期面談記録の抜粋である。


<記録開始>

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収容区画内のSCP-1351-JP-A-4

[前半は省略]

SCP-1351-JP-A-4: そうですか。そのようなことになっているのですね。

車道博士: はい。

SCP-1351-JP-A-4: 先生。僕は彼が──うらやましいんだと思います。

車道博士: それはなぜですか?

SCP-1351-JP-A-4: あの時、ヒトの胎から生まれた僕が、なぜあのような末路をたどったか──先生はどう思われますか?

車道博士: 蛇の身体を持っていたから、ですか?

SCP-1351-JP-A-4: 違います。神性を持っていたからです。僕は神の子とあがめられ、実際にそのような力を披露してしまいました。その結果、僕は愛する母親に疎まれ、母親のもとを追い出され、あろうことか傷つけられて──本当の父親のもとにも帰ることができなくなってしまった。あのようにひとりぼっちになったのは──ひとえに僕が神の力を持っていたからです。

車道博士: [首肯]

SCP-1351-JP-A-4: 以前、僕は彼のことを平凡だと言って見下していました。でも考えてみると──本当は彼がうらやましかったのかもしれません。

車道博士: ──そのように特別な力を持っていると、孤独になってしまうからですか。

SCP-1351-JP-A-4: はい。しかも、彼には自分を愛してくれる相手がいる。僕にはそんな人はいないというのに。

車道博士: [沈黙]

SCP-1351-JP-A-4: 失礼、湿っぽくなってしまいましたね。

車道博士: いえ、お聞かせいただきありがとうございます。

SCP-1351-JP-A-4: それで──僕は考えるんです。もし、その倭迹迹日百襲姫という女王が僕のような、あるいは僕よりもずっと強大な力を持っていた人だとするならば──

車道博士: [首肯]

SCP-1351-JP-A-4: ──そばに置きたいと思うのは、平凡だけど一途な誰かだろうなって。

[以下は省略]

<記録終了>

審議の結果、以上のインタビュー内容は要約の上、面談中にSCP-1351-JP-1に対して伝達されました。

2013/11/22、SCP-1351-JP-1は収容プロトコルの改定を提案しました。関連する面談記録の抜粋を以下に示します。

インタビュー記録1351-JP.12


日付: 2013/11/04
対象: SCP-1351-JP-1
インタビュアー: 車道博士


<記録開始>

[前半は省略]

SCP-1351-JP-1: 田道たじという男を知っているか? 最初の上毛野かみつけの国造の弟の。

車道博士: 存じ上げております。武勇に優れていたようですね。

SCP-1351-JP-1: あの者の墓を守っていた蛇は、どういう思いで墓を守り、侵入者を殺していたのだろうな。

車道博士: 道半ばで蝦夷に敗れた田道の執念や妻の恨みが具現化したものなのかもしれません。

SCP-1351-JP-1: 具現化か。他人事には聞こえないな。

車道博士: それにならうならば──あなたは誰の、どんな思いが具現化したものなのでしょう。

SCP-1351-JP-1: そうだな。

車道博士: ──あなたは箸墓の陵墓の傍で殉死したと述べていましたね。どのような思いでそれを決めたのですか?

SCP-1351-JP-1: それは──彼女は私の全てだったし、彼女が神去かむさった後の現世なんて興味がないと──

車道博士: [首肯]

SCP-1351-JP-1: それで──願わくは黄泉路の供を務め、彼女のもとに傅き続けたいと思ったからだ。

車道博士: あなたのその思いが基になった、ということは考えられませんか?

SCP-1351-JP-1: 私の思いごときで──いや、あるいは──

車道博士: 何ですか?

SCP-1351-JP-1: いや、少し──大それたことを考えていた。

[以下は省略]

<記録終了>


インタビュー記録1351-JP.13


日付: 2013/11/22
対象: SCP-1351-JP-1
インタビュアー: 車道博士


<記録開始>

[前半は省略]

車道博士: 話したいこととは何でしょうか。

SCP-1351-JP-1: ああ。私の収容房とやらを、あの陵に移してほしい。

車道博士: 理由をお聞きします。

SCP-1351-JP-1: 結局、なぜ私が当代に蘇ったかはわからないが──蘇った私がするべきことは何かをずっと考えていた。それで──結局平凡な私がするべきことは、彼女のことを弔い、静かに墓を守ることだと考えたのだ。

車道博士: わかりました。こちらで審議いたします。結果は後日お伝えいたします。

SCP-1351-JP-1: ああ。いい返事を期待している。

[以下は省略]

<記録終了>


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SCP-1351-JP-1収容房(画像中央付近。樹木による隠蔽済み)

インタビュー記録を受けた審議の結果、SCP-1351-JP-1の精神状態の安定が期待されること、箸墓古墳内における十分な設備の配備が可能であることなどから、SCP-1351-JP-1の収容設備が箸墓古墳陵墓内に移築されました。現在、箸墓古墳の陵墓敷地内は特別収容サイト/1351-JPに指定されており、関連収容設備が建造されています。現在まで3日に1度SCP-1351-JPに対する担当職員による面談が設けられていますが、各種記録からSCP-1351-JPの収容状態が十分安定していることが示唆されており、特別収容サイト/1351-JPの収容に対する有効性が確認されています。

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