SCP-1355-JP
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アイテム番号: SCP-1355-JP

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル(現行版): SCP-1355-JPを覆うように建設された偽装サイト-8186内に於いて、機動部隊甲-91"ポーン"が侵入を試みた人物の拘束/終了業務を行っています。また、確認されている全てのSCP-1355-JP-1にも同様の施設が建設され、機動部隊が同様の業務を行っています。SCP-1355-JP及び全てのSCP-1355-JP-1は、現在レベルⅤ隔離区域に指定されています。SCP-1355-JP-1のリストは付録/1355を参照してください。

現在、SCP-1355-JP及びSCP-1355-JP-1への人的資源の投入は、実験/回収目的のものも含め全面的に禁止されています。SCP-1355-JP及びSCP-1355-JP-1へ侵入した人物は、2017/06/02前後問わず即時終了処分の対象となり、該当区域内で終了された遺体は無人探査機"クイーン"が回収します。イベント・タヂカラヲが発生した場合、機動部隊丙-91"ナイト"によって該当区域の隔離、及びSCP-1355-JP-2の確認が行われます。SCP-1355-JP-2は、カバーストーリーの流布や創作物の公開等により一般社会に浸透させます。

現在、異常概念学を専門とする研究員を加えた1355-JP合同研究チームが参集されており、SCP-1355-JP及びSCP-1355-JP-1や-2の研究・解析が進行中です。回収された曝露者の遺体は、研究の為1355-JP合同研究チームに引き渡されます。


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図1 発見当時、外部空間南東側から撮影されたSCP-1355-JP

説明: SCP-1355-JPは日本国神奈川県[削除済]に存在する、高さ最大7.0 m、広さ最大6,000 m2の異常空間です。おおよそ半球のような形状をしていますが、絶えず変形している為定まった形状は存在しません。SCP-1355-JP内の視点から3 m~6 mより先の様子は、光度/照度が非常に低い空間のように見えます(図1)。しかし、探査/1355/01(ログを参照)で計測された数値はSCP-1355-JP内が外部空間と同様の照度であることを示している為、SCP-1355-JPは認識災害的な影響を帯びていると推測されます。この影響は直接的・間接的問わず発生し、赤外線スコープ等を用いても解消されることはなく、薬品をはじめとした対抗方法も2017/03/17 2017/05/03 2017/06/02 2017/06/21現在まで未開発です。

特筆すべき特異性として、SCP-1355-JP内に侵入した人物(曝露者と呼称)には精神的な影響が発生します。その内容は以下の通りです。

  • ステージⅠ: 探査/1355/01前に判明していた症状です。侵入直後、曝露者は唸り声や叫び声といった暴力的な音声と、拍手、笑い声、呼び声といった非暴力的な音声が同時に聞こえると主張します。これらの音声は何れも映像機器等には記録されず、またそれぞれの曝露者が主張する音声の内容が異なる為、曝露者は幻聴を発症していると推測されています。確認されている曝露者の内約6割は、この幻聴に「親近感」を覚えると述べています。この段階でSCP-1355-JPから脱出した曝露者は、記憶処理やカウンセリングといった適切な処置を受けることで正常な精神状態へと復帰することが可能です。 補遺2を参照してください。
  • ステージⅡ: 幻聴の発症後更に約30分SCP-1355-JPに留まった曝露者は、「どこかで会ったことがある何者かに呼ばれている」と主張します。殆どの曝露者はSCP-1355-JPの中心部へ移動しはじめ1、他者による制止に対して抵抗します。このような強い欲求に反して、確認されている曝露者の内の約1/3は、SCP-1355-JPへの激しい恐怖を訴えています。ステージⅡ以降の曝露者がSCP-1355-JPから脱出した場合、記憶処理等の処置を受けても影響から脱することはできません。
  • ステージⅢ: ステージⅡ曝露者がSCP-1355-JPの中心部へ到達した場合、曝露者は幻聴とのコミュニケーションを開始します。この時、視覚や触覚といった聴覚以外の幻覚を体験しているように振る舞い、また幻覚への恐怖が喪失しているように見られます。曝露者は幻覚以外の一切に関心を向けず、自身への呼び掛け、拘束、攻撃といった干渉を受けた場合も反応/抵抗しません。この為、ステージⅢ曝露者をSCP-1355-JPの外部へと移動させるのは容易です。SCP-1355-JPから脱出したステージⅢ曝露者は、幻覚とのコミュニケーションが取れなくなったと主張し、ステージⅡへと症状が変化します。1度SCP-1355-JPの中心部へ到達したステージⅡ曝露者は、SCP-1355-JP外へ出た場合でも時間経過あるいは不明な要因によってステージⅢの症状を再発し、その後ステージⅡへと変化することはありません。

絶えず変形しているにも拘わらず、SCP-1355-JPは発見当時から4.8 m以上移動していません。その為、SCP-1355-JPの中心には常に、絵本作家の新田 要一(当時31)氏の自宅であった木造の民家が存在します。探査/1355/02が実施された時、新田邸の書斎の扉や窓等にはガムテープで目張りされていました。書斎内からは使用済の七輪と練炭、及び頭部が破裂した新田氏の遺体が発見されており、計測された書斎内の一酸化炭素(CO)濃度は約800 ppmでした。検死の結果、新田氏の死因は一酸化炭素中毒であり、頭部は死後に破裂したと判明しました。

新田邸から遺書は発見されませんでしたが、財団エージェントによる関係者へのインタビューにより、当時新田氏がスランプに悩んでいたという複数の証言が得られています。新田氏は異常芸術家アナーティストではなく、異常芸術家との交流も確認されていません。暗闇やそれに類するものを題材にした作品も存在しておらず、新田氏の死とSCP-1355-JPの関連は現在まで不明です。

補遺1: 2017/04/30、旧サイト-81██の併設精神病棟にて、鮫島隊員がステージⅢの影響を発症しました。当該病棟の医療スタッフがクラスB記憶処理及びクラスD記憶処理を行いましたが、鮫島隊員はステージⅢの影響から脱することができませんでした。以下は、この時監視カメラによって記録された映像の書き起こしです。

鮫島隊員が死亡した直後、併設精神病棟を中心に、旧サイト-81██にSCP-1355-JPと同様の性質の空間(SCP-1355-JP-1-1に指定)が出現しました(事案81██/1355に指定)。この影響により、サイト管理官を含む129名のステージⅠ曝露者が発生しました。全曝露者はサイト-8186の併設病棟へと移され、クラスA記憶処理とカウンセリングによって回復しました。

事案81██/1355を受け、日本支部理事会の指示の下でSCP-1355-JP-1-1の探査(探査/1355/03に指定)が行われました。以下はその内容です。

事案81██/1355及び探査/1355/03によって、曝露者の症状に更なる段階が存在することが判明しました。この段階はステージⅣに指定され、特別収容プロトコルは第二版に改定されました。以下はステージⅣの内容です。

  • ステージⅣ: 一部のステージⅢ曝露者には、発症から約1時間後に幼児退行の症状が見られるようになります。退行から数十秒程度経過すると、イベント・タヂカラヲに指定される事象が発生します。イベント・タヂカラヲが発生すると、曝露者は突如叫び始め、約10秒後に頭部が破裂して死亡します。この時、遺体の断面からは黒い霧状の存在3が噴き出すように出現し、遺体を中心にSCP-1355-JPに酷似した形状/性質を持つ異常空間(SCP-1355-JP-1に指定)が発生します。同時に、遺体の断面からは白色光を発する存在が出現し、上空へと約600 km/hの速さで移動、その後消失します。この白色光は認識災害の影響を受けず、正常に視認可能です。
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図2 エージェント・伍島が幻聴を発症した道路

補遺2: 2017/05/24、旧サイト-81██の元職員であり、事案81██/1355でステージⅠ曝露者となっていたエージェント・伍島いつしまが、幻聴を発症したと自ら報告しました。この時、クラスB記憶処理で忘却した記憶が復活していることが確認されました。当時エージェント・伍島は備品の返却の為サイト-8104へ向かっており、その道中の道路(図2)で幻聴を発症したと主張しています。当該道路に特異性は確認されませんでした。

エージェント・伍島に発生した症状を鑑みて、大石博士により元ステージⅠ曝露者も隔離すべきという内容の提言が日本支部理事会へ提出されました。理事会はこれを受理し、元ステージⅠ曝露者を財団管理下の精神病院に入院させました。

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図3 発見された「オマザン」の落書き

補遺3: 2017/05/01より、「オマザン(Omathan)」或いはそれに似た名前のキャラクターについて言及する1~7歳の幼児が、世界各国で多数確認されるようになりました。これに合わせ、アニメや絵本等の子供向けの創作物にも「オマザン」が登場するものが出現しました。財団はクラスA記憶処理等の対応を行いましたが、「オマザン」の記憶は消失しませんでした。その為、カバーストーリー"新しいディズニー映画のキャラクター"を流布し、ウォルト・ディズニー・カンパニーと連携して映画を制作・公開することで「オマザン」を定着させました。尚、確認されている全ての例に於いて、「オマザン」はひねくれた性格をしたピエロです。

鮫島隊員の自宅や実家を捜索したところ、実家に残っていた住宅情報のチラシの裏に「あくのピエロおうさま[原文ママ]オマザン」と題されたキャラクターの落書きが発見されました(図3)。鮫島隊員の両親や幼少期の友人へのインタビューでは、「悪役に憧れていた」という内容の証言が得られています。これを受け、日本支部理事会は「オマザン」が事案81██/1355に関係する存在であるとしてSCP-1355-JP-2-1に指定、更に特別収容プロトコルを第三版に改定しました。現在、世界各地で確認されている起源不明のキャラクターの数は███であり、内██はSCP-1355-JP-2に指定されています(詳細は付録/1355を参照)。

補遺4: 2017/06/16、葛西甲-91隊長がステージⅠを発症、忘却していたはずの記憶が復活しました。当時、葛西隊長はサイト-81██の併設精神病棟に入院しており、病棟内に暗闇やそのように見えるものは存在していませんでした。発症後、葛西隊長は自らインタビューを要求し、日本支部理事会の許可の後に大石博士がインタビューを実施しました。以下はその内容です。

補遺5: 2017/06/21、SCP-1355-JP報告書を閲覧した磯谷いそや博士により、以下の内容の提言がO5評議会へと提出されました。

我々が扱う薬品の1つに、記憶補強剤というものがあります。これを服用した人間は — その程度は種類によって異なりますが — 自身の記憶の忘却が阻害されるようになります。これにより、財団は反ミームをはじめとする記憶に干渉する存在に対抗しています。

SCP-1355-JPは、記憶補強剤と部分的に類似する影響を曝露者へと及ぼしているのではないでしょうか。どこまでも続く暗闇を見た人間は、その中に「何か」が存在すると想像することでしょう — 意識的、無意識的問わず。本来であれば、そのような発想アイデアの多くは脳からこぼれ落ち、中には、結果的にそのような想像を全くしない人間さえいます。しかし、SCP-1355-JPは脳からアイデアが逃げることを許さないのです。脳はいびつな形で残留するアイデアに対し想像による肉付けを行い、やがてアイデアは極めてリアルな幻覚となって曝露者を襲うのです。

このような異常な環境で、アイデアは暴走を始めています。アイデアは溢れ、減ることなく脳を埋め尽くします。曝露者が外部からの情報を遮断し始めるのが、この影響によるものなのかはわかりません。しかし、少なくとも脳内のアイデアは最早正常なものではなくなっています。母体である曝露者の精神に居座り、最終的には脳を食い破るように外へ出て — 世界中の脳に居座り始める。

これは最早日本支部だけの問題ではありません。イベント・タヂカラヲはあまりにも多くの人間に対し、甚大且つ完全な隠蔽が不可能な被害をもたらすのですから。加えて、外へ出たSCP-1355-JP-2たちが、再び巣である脳を食い破らない保証がどこにあるでしょうか。故に、これ以上のイベント・タヂカラヲの発生を防ぐ為にも、全曝露者の終了措置を提案します。

— 磯谷博士

これを受け、ステージⅠ曝露者の脳をMRIスキャンしたところ、血流量等の点において海馬と前頭葉の一部がクラスW/Y記憶補強剤服用時と類似する反応を示していたことが判明しました。この結果から、O5評議会は異常概念の専門家の研究協力が必要と判断し、特別収容プロトコルを現行版に改定しました。また、入院していた曝露者及び元曝露者は全員例外なく終了されました。

補遺6: 2017/08/08、[削除済]にてSCP-1355-JP-1が発見されました。内部からは3体の頭部が破裂した遺体が回収されており、検死の結果全てが頭部破裂により死亡したことが判明しています。また、付近の住人1名がステージⅡの症状を訴えていた為拘束・終了し、関係者にカバーストーリー"行方不明"が流布されました。この空間はSCP-1355-JP-1-█に分類され、既に収容施設が建設されています。また、新たに2つのSCP-1355-JP-2が確認された為、現在創作物の作成等の収容手順が進行しています。

同日03:42、イベント・タヂカラヲの際の白色光が3つの監視カメラに記録されています。全てのデータは財団エージェントが回収しており、クラスA記憶処理が関係者全員に施されました。その後財団クローラーによるインターネット走査が実施されましたが、画像/映像/文章問わずこの光に関する情報は確認されていません。

内部で発見された遺体は何れも財団関係者や元曝露者ではなく、また住人へのインタビューからも有力な情報は得られていない為、イベント・タヂカラヲの発生原因は不明です。

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