アイテム番号: SCP-1364-JP
オブジェクトクラス: Safe Euclid
特別収容プロトコル: SCP-1364-JPはサイト-8181の零下20度を保った冷凍チャンバーに収容して下さい。SCP-1364-JPに対する実験・面接はサイト管理者により禁止されています。SCP-1364-JPと同様あるいは近似の性質のアノマリーが発見された場合、適宜カバーストーリー「救急病院搬送後の死亡」の流布と関係者の記憶処理を行い、SCP-1364-JPと同様の手順で収容して下さい。
説明: SCP-1364-JPは2019/██/██に東京都██区の██救急病院で発見された本名████という人物です。家族からの「2ヶ月ぶりに会いに行ったら、████氏が意識不明になっていた」との119番通報により救急病院に搬送され、精密検査の結果異常性が発覚し、財団に確保されました。財団はカバーストーリー「████氏の死去」の流布と関係者への記憶処理を行いました。
SCP-1364-JPは意識不明で、バイタルサインが一切検出されず、発見時通常の死体の死後1ヶ月の腐敗状態1にあり、常温環境下で腐敗しつつあり、体温も外気温と同等ですが、死体とは認識されません。財団は収容当初2から1周間、最新医療技術を用いた延命手段を図りましたが、一切の治療が効果をなさず、腐敗段階が進んでいくのを確認して後、現在の収容プロトコルを確立しました。
その後、2019/██/██に、SCP-1364-JPの異常性は財団技術をも欺瞞する認識災害ではないかという提言がなされました。以下はその提言です。
SCP-1364-JPの異常性に対する提言
SCP-1364-JPは医学上のあらゆる見地に基づいて死体でありながら、我々には死体として認知できません。論理的に考えるなら、SCP-1364-JPの異常性は「生きた死体」であることではなく「死体であるにも関わらず、生きていると錯覚させる」認識災害ではないでしょうか?
それならば、我々の研究方向はSCP-1364-JPが何故死体同然の状態にあるにも関わらず生存しているかではなく、認識災害の原因と異常性そのものの解明にあると考えられます。
現時点より、SCP-1364-JPを認識災害源として扱い、上記方針での研究を行うことを提言します。
提言者:財団医療部門 サイト-8181責任者 医学博士 天宮律子
上記提言を受け、財団はSCP-1364-JPの住居を「不審死による家宅捜索」のカバーストーリーの下で行った公安部特事課に資料請求を行いました。公安部特事課の資料によると、家屋そのものには異常性は発見されませんでしたが、GoI-██(”社会福祉法人四盤会”)が発行したと思われるパンフレットが発見されました。以下がパンフレットの第1ページの表記です。
永遠の命を手に入れてみたいと思いませんか!?
人生100年時代といわれる昨今ですが、人間という種の生存限界は120年とされています。これは生物学的に立証された物です。
人間はいつか死ぬ。しかしその事実に耐えられない方もおいでと思います。
そこで我が社会福祉法人四盤会は、人間がその生存限界を超え生き残るための方法を貴方に提供します。
これにより人類はその体という檻を逃れ、永劫無窮の存在として「生存し続ける」事ができるのです!
来たるべき死からの恐怖からの解放を、我々はお手伝い致します!
疑問点、申し込み手続きなどは以下フリーダイアル███-███-███へとお願い致します。(24時間営業)
また、パンフレットには四盤会の理念や活動についても説明されていました。以下はその説明部分です。
四盤会の設立理念と活動について
四盤会は「死」に繋がる「四」をあえて名称にいれた組織です。なぜならば、全ての人間はいつか死ぬ事が明らかだからです。
しかし、人間が死んだその先、果たしてどうなるのかは誰も体験し得ない未知の領域です。天国や地獄があるのかもしれませんし、全くの虚無なのかも知れませんし、意識だけが残り自らの死体が荼毘に付される苦痛や骨壷の中での永遠の暗闇を体験するのかも知れません。
そのような未知の領域に入るのではなく、あくまで既知の領域にとどまりたいという信念、生き続けたいという感情、すなわち人間の生命に対する飽くなき欲求を基盤とするという意味で、我々は「盤」の字を組織名に採用しました。
我々は人間の逃れようにない死という呪縛から解放され、確固たる不老不死の基盤を手にするため、日夜研究に勤しんでいます。そして我々は、不老不死を可能としました。奇跡論的技術――旧来の魔術をより洗練させた、「もう1つの科学」により、それは達成されたのです。新しいステージにゆくのは簡単、ちょっとした儀式と我々が提供する奇跡論的素材だけ!
さあ、貴方もまた、我々の同志として死の呪縛から解放され、永劫無窮の生を手に入れようではありませんか!
財団はフリーダイアル先に通信を試みましたが、応答は得られませんでした。また、パンフレットには内容を真実と認識させる認識災害効果3が存在しました。これを受け、財団がSCP-1364-JPの銀行口座を調査した所、2018/██/██に、日本円で100万円が社会福祉法人四盤会名義口座に振り込まれていることが判明しました。財団は当該口座の調査を行いましたが、SCP-1364-JPが入金すると同時に全額引き落としの上解約されていたことが判明しました。口座開設時の担当行員は口座開設時の記憶を持っていないことも判明しました。前述のパンフレット等から、社会福祉法人四盤会が、不死を販売するビジネスを広範囲に展開していると判断した財団は、オブジェクトクラスをEuclidに格上げしました。社会福祉法人四盤会のビジネスルートも引き続き調査中です。
補遺 2020/█/██、埼玉県██市の老人ホームにて、SCP-1364-JPと同様の性質を持つアノマリー、SCP-1364-JP-Aが8体発見されました。財団が捜索を行った結果、社会福祉法人四盤会のパンフレットと、8名の残した書状が発見されました。書状には大略して「永遠の命を求めるために四盤会と契約し、同時に不死儀式を行うこととした」と書かれており、財団の懸念は的中したことになります。
補遺2: 2020██/█/██、社会福祉法人四盤会の構成要員と思しき4体の非異常性の死体が東京湾にて発見されました。死体の衣服にはパンフレットに示された図像と「永遠の生から見放されよ」の焼印が押され、死亡前に暴行を受けた痕跡がありました。社会福祉法人四盤会内部での何らかの内部抗争に巻き込まれた可能性が大です。
補遺3: 2020██/██、社会福祉法人四盤会の拠点を発見した財団は、SCP-1364-JPと近似の性質を持つアノマリーSCP-1364-JP-Bを16体発見しました。いずれも失踪届がでていた人物ですが、SCP-1364-JP及びSCP-1364-JP-Aとことなり、バイタルサインはありませんが腐敗もしていませんし死体とは認識されません。拠点には社会福祉法人四盤会構成員の研究メモが残されていました。以下がメモの内容です。
未完成の儀式と素材を資金調達のために流出させたメンバーは粛清されたが、我々もまたその危険にさらされている。研究が行き詰まっているからだ。成果のために犠牲は必要だと云っても、現状は無駄な犠牲を積み上げているだけだ。
初期の実験例は死んでいないというだけでバイタルもなければ腐敗もするリビングデッドだったが、現在の実験例は腐敗の問題を乗り越えた。しかしこれでは同志の満足するサービスたり得ない。何しろ現在の状況では死んでない死体としか言いようのない代物だからだ。真に永遠の生を得るためにはどうすればいい? 手がかりがつかめない、五里霧中の状態だ。
上記メモにより財団は、社会福祉法人四盤会のメンバーもまた、認識災害に曝露し、なおかつ自覚していないと推測しました。原因は彼らの思想の狭隘性によるものと推測されています。