SCP-1404-JP

SCP-1404-JP

評価: +119+x
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監督評議会命令
以下のファイルはレベル4/1404-JP機密情報です。
無許可のアクセスは禁止されています。
1404-JP




アイテム番号: 1404-jp
レベル4
収容クラス:
keter
副次クラス:
none
撹乱クラス:
amida
リスククラス:
notice

1404JP.jpg

SCP-1404-JPに接続する洞窟入口


特別収容プロトコル: SCP-1404-JPに接続する洞窟への通路は土砂崩れを名目に封鎖し、一般人の侵入を防ぎます。侵入者は機動部隊が確保したのち記憶処理を施して警察機関へと引き渡します。SCP-1404-JPに接続する洞窟の入口はコンクリートで封鎖し、交代で複数の機動部隊が常時監視します。

現在監視に割り当てられている機動部隊は以下の通りです:

  • 機動部隊を-1 (“黝のプレリュード”)
  • 機動部隊を-2 (“堊のスケルツォ”)
  • 機動部隊を-3 (“丹のアダージョ”)
  • 機動部隊を-4 (“漆のフィナーレ”)

緊急時にはこれら以外の機動部隊による増援がなされ、SCP-1404-JP-Fへの対応が行われます。また、機動部隊が駐屯する簡易施設にはSCP-1404-JP-Fとの交信を可能とする専用送受信設備が置かれ、交信と交渉の試みは監督評議会からの命令下でのみ行われます。

SCP-1404-JP-Fとの交渉に成功しなかった場合に備え、世界オカルト連合 (GOC) との連携による特別対処手順「ノンアタッカ・プロトコル」の策定が進行しています。当プロトコルは2027年までに、SCP-1404-JPと接続する洞窟内の時空間異常の完全除去あるいは断絶によってSCP-1404-JPを基底世界から完全に切り離すことを最終目標としています。

ノンアタッカ・プロトコルの実行は以下の懸念事項を含みます:

  • 洞窟という地形的制約。
  • 必要な時空間歪曲に伴い発生する現実性バーストとその二次災害への対策。
  • 断絶後に適用されるリード/アッペルモント時空間孔壅塞機構の開発1
  • リード/アッペルモント時空間孔壅塞機構の半永久的な維持。

この計画の遂行と懸念事項の解消ためにはパラテクノロジーの利用が不可欠であり、現在財団は3つの要注意団体の技術的協力を仰いでいます。また、2027年までにSCP-1404-JP-Fとの友好関係の構築に成功した場合、ノンアタッカ・プロトコルの知識はSCP-1404-JP-Fと共有され、基底世界とSCP-1404-JPとの接続除去のために利用されなければなりません。

SCP-1404-JP-Fとの交渉に成功しなかったうえでノンアタッカ・プロトコルが失敗した、あるいは効果がないと判明した際の代替手段として「フィーネ・プロトコル」の実行も計画されています。これは2031年9月時点までに実行されなければなりません。当計画の情報は監督評議会とセキュリティクリアランスレベル5/001を有する財団職員のみに開示されます。

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SCP-1404-JPの位置する羊蹄山

説明: SCP-1404-JPは2019/08/29にサイト-8197が傍受した微弱な無線信号2の解析の結果発見された、日本国北海道京極町に位置する羊蹄山の洞窟からアクセス可能な時空間異常です。SCP-1404-JPは財団が存在する世界 (“基底世界”と定義) に酷似する複製空間であり、財団に相当する団体 (SCP-1404-JP-Fに指定) の存在が確認されています。この団体は自身らの団体名を正式に「財団」と述べています。

SCP-1404-JPには基底世界に存在する各要注意団体や財団が収容している各異常存在が存在していない、あるいは相当する同団体や同存在が異常を発露していないという大きな相違があります。形而上学的概念等の無形の異常存在の有無については現在も確認されていませんが、収容担当のサイト-8197の見解ではこれらも存在していないか、その異常を発露していないものと考えられています。

補遺1404-JP.1: 調査報告

2019/09/15、機動部隊を-1が時空間異常による複製空間の初期調査手順に基づきSCP-1404-JPに5日間派遣されました。この調査はSCP-1404-JPにおけるサイト-8197管轄地域で収容されている異常存在らの確認と、SCP-1404-JP-Fとの接触を目的として行われました。以下は機動部隊を-1隊長により作成された該当調査の報告書の転写です。

SCP-1404-JP調査報告 #1
2019/09/20


SCP-1404-JPにおける異常存在の差異について

当初の計画通りに、基底世界のサイト-8197周辺と同範囲の異常存在の有無や痕跡の差異を調査しました。今回確認した異常存在は昇順にSCP-1085-JP、SCP-1473-JP、SCP-1763-JP、SCP-1777-JPです。以下に表を掲載します。

アイテム番号 基底世界 SCP-1404-JP
SCP-1085-JP 北海道洞爺湖町に位置するクラスA霊体が異常な頻度で出現する2階建ての家屋。挾田という人物が在住していたが失神した状態で発見された。 挾田氏と同様の人物の在住が確認されるも、異常に関する知識を有していなかった。ハルトマン霊体撮影機とカーデック計数機を用いたが霊体は検出されなかった。この原因は不明。
SCP-1473-JP 北海道███町の██山で発見されたプレハブ式の小屋であり、侵入者の精神状況に応じた海景が内部に取り付けられている鏡に反映される。発見当時、水梨という人物が溺死した状態で発見された。 発見現場と同地点に同型のプレハブ小屋が設置されていたが、一般の土木作業員らが利用しており異常は見られなかった。水梨氏は生存していた。同型のプレハブ小屋に取り換えられたか、元々存在していない可能性がある。
SCP-1763-JP 北海道の████大学で発生した火災の後に発見された、室内に火災を起こす非常口誘導灯。異常な破壊耐性と転移能力を有する。 ████大学において火災が発生した記録が存在せず、同大学内で利用されていた非常口誘導灯はSCP-1763-JPのものと全て異なっていた。火災発生前に取り換えられたか、元々存在していない可能性がある。
SCP-1777-JP 北海道樺立峠に位置するSSUI2世界重複3指定のポータルとそこからアクセス可能な異常空間。内部ではモザイク状の非実体が出現する。 該当地点に異常はなく、ポータルは発見されなかった。双方を接続するポータルは他方の空間が消失することで不活性化するため、何らかの要因により異常空間が消失したか、元々存在していない可能性がある。

SCP-1404-JP-Fについて

前述の異常存在らの確認と同時にSCP-1404-JP-Fとの接触も試みました。

基底世界において、サイト-8197は北海道京極町の製氷工場地下に位置しています。SCP-1404-JPでも同様の製氷工場地下にサイト-8197に相当する財団サイトが存在していました。そのサイトは「サイト-81X」と呼ばれていました。自身らが先日の無線信号を傍受し調査を行いに来た他世界の財団職員である旨を告げると、私たちは一度拘束されそれぞれが個別の部屋へと連れ込まれ、尋問を受けました。その後機動部隊隊長である私のみが応接室へ入ることを許可され、そこで上級研究員階級の職員2名と鼎談することができました。職員の名前は「ハシモト」と「カガ」で、基底世界のサイト-8197の同名職員と容貌は同一に思われました。その後私のみがサイト内の許可された区画の視察をすることを許されました。

確認できた箇所のみですが、該当サイト内はサイト-8197とほぼ同様の設備が備えられており、その中で唯一明確に欠けているものがありました。異常存在の収容区画です。私は彼らに確保した異常存在はどう取り扱っているのかと率直な疑問を投げかけましたが、返答が得られることはありませんでした。

また、同存在の収容方法の擦り合わせも可能だろうと考え、SCP-1404-JPにおける異常存在らの収容をどのように行っているのかについても尋ねました。しかし、それについての回答も得られませんでした。こちら側の収容方法の提供も行おうと思いましたが、必要ないと断られました。


報告書作成者後記

結果として、今回の調査ではSCP-1404-JP-Fからほとんど特筆すべきような情報を得られませんでした。彼らはとにかく私たちの質問に答えることに消極的であるように見え、どことなく無機質な印象を受けました。そしてこれは私の考えですが、SCP-1404-JP-Fはその行動や収容方法などの情報をほとんど公開しようとせず、また私たちがその場で秘匿する形で収容している異常存在の痕跡が一切見当たらないことからも、基底世界の財団を遥かに上回る何らかの技術力を保有しているのかもしれません。

SCP-1404-JP-Fの調査はこれ以降も積極的に行うべきでしょう。相互間での異常収容の協力体制を築くことができれば、私たちの異常存在収容に消費されるリソースの節減などに繋がるだろうと考えます。

── 機動部隊を-1隊長、アーティ

上記の調査ののちに他の機動部隊やエージェントによって複数回SCP-1404-JPの調査が行われました。結果として、SCP-1404-JPにはほとんどの異常存在がそもそも存在していないか、あるいはSCP-1404-JP-Fによって高度に秘匿/無力化されている可能性が浮上しました。SCP-1485などの異常性および財団に相当する団体が存在していない既知の世界と違い、SCP-1404-JPには異常が見当たらないにもかかわらず財団に相当する団体が存在することから、前述の予想は後者が有力と見られています。

また、これらの調査からSCP-1404-JP-Fと異常存在収容の協力体制を樹立することは困難であると判断されました。これはSCP-1404-JP-Fが徹底的な情報守秘を行っているためです。現在はSCP-1404-JPの調査よりもSCP-1404-JP-Fの調査に重点が置かれています。

補遺1404-JP.2: インシデント

2019/12/09、一切の告知もなくSCP-1404-JPからSCP-1404-JP-Fの機動部隊が基底世界に送られ、サイト-8197を急襲しました。このインシデントにより、サイト-8197の職員19名とアノマリー3体が消失しました。特筆すべきことに死者が出たのはSCP-1404-JP-Fの機動部隊隊員のみであり4、財団側の機動部隊隊員は軽傷を負ったか消失しています。生存しているSCP-1404-JP-Fの他の機動部隊隊員はSCP-1404-JPへと逃亡しました。

このインシデントを生還したサイト-8197の職員らの証言から、SCP-1404-JP-Fの機動部隊の情報が類推されました。以下は車田研究員へのインタビュー記録の転写です。インタビュアーはエージェント・鰆でした。

サイト-8197職員へのインタビュー記録の完全版はこちらを参照してください。

インタビュー記録 #1
2019/12/09


[記録開始]

Agt.鰆: 1404-JP世界の財団の機動部隊の特徴を、憶えている限りで構いませんから教えてください。

車田研究員: そうですね、そもそも使っている銃火器が違いました。普通のものもありましたが。

Agt.鰆: どのようなものでしたか。

車田研究員: 見た目は財団指定のものとはかなり違ってました。非常に無骨で、大きくてとても重そうに見えました。ですが向こうの奴らは軽々と持ち歩いていたので、見た目に反して異様に軽いか、それとも奴らが体を鍛え上げていたかのどちらかでしょう。

Agt.鰆: なるほど。

車田研究員: その銃からは鉛の弾丸は出ていなかったと思ってます。それから放たれた弾は白く、いや、青くでしょうか。なんにせよ明るく発光していました。そしてその弾が当てられた物体は目も開けられないほど輝いて、気づけば消失していました。これは映像記録に残ってるんじゃないでしょうかね。

Agt.鰆: 消失ですか。

車田研究員: はい。あれは明らかに異常な物品です。弾が当たったものは、ある程度の大きさがあれば消失してしまうようです。人はもちろんですが、例えばほら、周辺にあった木々も、胴の部分が消失した結果上部から落ちるように倒れてましたし、他にはサイトの壁に幾つか歪な丸い穴が開いていたと思いますが、あれも同じです。推測するに、当たった箇所から半径1.5m程度の範囲のものを消失させる効果があの弾にはあるようです。

Agt.鰆: わかりました。しかし、向こうの財団は我々以上に異常物品を使用することを厭わないのでしょうか。あるいは超常技術?

車田研究員: そうかもしれません。

(沈黙)

車田研究員: もしそうならば、SCP-1404-JPに異常存在が全く見当たらないのも納得いきます。ひたすらああいうアイテムを使って消失させているのかもしれませんし。でも、例えば日本生類創研などの1404-JP世界の要注意団体が異常行動を示さないのはどういうことなのでしょう。機動部隊が見せたような技術によって異常物品の消失ができるなら、その技術を以て要注意団体を一度制圧して異常を除去し、記憶処理で事後処理?それとも実体を消さず異常のみを除去、いや、そんなことができるのか?

(沈黙)

車田研究員: うむ、憶測ばかりではよくありませんね。

Agt.鰆: 憶測ではなく推測です。そういうこともこのような状況では大事ですから。

車田研究員: そうですね。とにかく、私が憶えているのはこの程度です。他の職員にも続けてインタビューをお願いします。私はこれから諸々の事後処理がありますから。

Agt.鰆: ありがとうございました。

車田研究員: ただ、彼らを野放しにしておくと私たちの脅威になるのは間違いなさそうです。

Agt.鰆: はい。

[記録終了]

当インシデント後、緊急対応としてSCP-1404-JPに接続する洞窟をコンクリートを用いて封鎖し、SCP-1404-JP-Fの人員の基底世界への物理的干渉を一時的に不可能にする処置が行われました。

補遺1404-JP.3: 回収資料

補遺1404-JP.2に示されるインシデントの後、以降の対策の補強のためにSCP-1404-JP-Fの内部機密情報の不正アクセスによる取得が行われました。SCP-1404-JP-Fの内部サーバには財団が利用するものとは形式が異なるミームセキュリティが組み込まれており、機動部隊ミュー-4 (“デバッガー”) と機動部隊ロー-9 (“テクニカルサポート”) の合隊がこれの対応に当たりました。結果として複数の機密情報ファイルへのアクセスと取得に成功しましたが、SCP-1404-JP-Fが不正アクセスを感知したものと思われ、新たなセキュリティが内部サーバに施され以降のアクセスが困難かつ危険となりました。

SCP-1404-JP-Fより取得された機密情報ファイルは高度に暗号化されており、これらの解読が現在行われています。またこれらの中から基底世界および財団に関する情報を記載した文書が発見されました。以下はその文書および関連資料の転写です。下記資料には不自然なデータ欠落や解読が現時点では完了していない箇所があることに留意してください。現在解読されている機密情報ファイルの一覧はこちらを参照してください。

文書JP-1404番


指定番号: JP-1404番

収容レベル: Chokhmah5

概説: JP-1404番は日本国北海道京極町の羊蹄山の麓に存在する洞窟からアクセス可能な異世界である。JP-1404番には我々と同様に「財団」を名乗る団体が存在し、該当世界での異常存在の収容を行っていることが確認されている。当該団体を以降は「亜財団」と呼称する。2019年9月10日に亜財団より機動部隊が派遣され、初めての直接的干渉が行われた。干渉は繰り返し行われ、その中で亜財団は財団の最高機密である異常存在の収容方法についての知識を積極的に得ようと試みる姿勢が見受けられたため、Q7議会は亜財団を要注意団体に指定し、干渉を行う際には細心の注意を払うことを全職員へと命令した。

その後Q7議会で開催された定例会議において、JP-1404番には未収容状態にある異常存在が多数あること、および財団世界と羊蹄山の洞窟で接続しているという懸念事項から、財団世界へと複数の脅威が流出する恐れがあると判断された。加えて予想される異常存在の多さからそれらの全てを1つずつ収容することは現実的ではないと判断されたため、Q7議会の指令によりJP-1404番そのものを収容することが決定された。この判断は、亜財団が要注意団体に指定されたこととは無関係であることに留意されたし。

収容計画: JP-1404番の収容には、US-2935番とFR-280番の収容にも用いられたDa'atレベル異常存在のJP-1046番とJP-1153番の複合改良品、通称"CUBE"が使用される。また、収容計画の補助として同じくDa'atレベル異常存在であるJP-1599番の使用も検討されている。"CUBE"の安定した利用のためにはエトクリプスEthoclipse奇跡論的エネルギーの長期的な生成と充填が必要とされるため、JP-1404番の収容作戦の実行は現在のところ2031年9月が予定されている。"CUBE"の概要は文書JP-1046番に詳細に記載されているため、該当文書を参照せよ。

"CUBE"による収容が行われたのち、JP-1404番は他の異常存在と同様に収容サイト-コーダへと転送され、全収容工程は完了される。

また、収容計画のスムーズな実行を実現するため、亜財団の戦闘能力を[データ欠落]防衛策を考案する必要がある。これには最も近隣の財団サイトであるサイト-81Xに常駐する機動部隊ろ-7 (“箱掛け”) が充てられ、亜財団との試験的交戦を行う。これの実行は2019年12月9日が予定されている。

補填1: 判明済の亜財団内部情報

[閲覧制限 - 白き瞳は何を視るか?]




収容エリア-コーダ


概説: 収容エリア-コーダは財団が西暦1987年に作成した宇宙座標[データ欠落]に位置する財団運営の収容エリアである。外見はエトクリプス奇跡論的エネルギーを宇宙放射線より生成[データ欠落]黒色の地球の月と例えられる。当収容エリアは財団が有するものの中で唯一異常存在の安全かつ完全な収容を可能とする機構が搭載されたものである。エリア名は財団におけるその立ち位置と[データ欠落]、Q7議会により名付けられた。このため、現在の財団のシンボルマークはエリア-コーダの建設終了に従い新たなものへと変更された。

収容エリア-コーダの建造には以下のDa'atレベル異常存在の応用とパラテクノロジーの知識と技術が不可欠であった。これらは最重要要素のみを示したものであることに留意せよ。

  • 財団に不明な時点より試験運用されていたUS-4220番の実証効果に基づく、エトクリプス奇跡論的エネルギーの生成と充填機構。
  • 異常存在収容プロセスを実現する、US-3022番とDE-5525番およびKO-2981番の異常性を応用した物体転移機構。
  • 多数のDa'atレベル[データ欠落]時空間歪曲/維持技術。
  • [データ欠落]

収容エリア-コーダ内部は多数の正常/異常存在が融解し混合した状態となっているため、エトクリプス奇跡論的エネルギーによる維持が困難となり内部収容物が流出する恐れがある場合、地球上の生命体全ての緊急退避プロトコルの実行あるいは[データ欠落]。現在はエリア-コーダを他世界へと強制転移させ崩壊させることによりK-クラスシナリオの回避が行われる予定である。エリア-コーダの転移先である[データ欠落]候補は全て財団が存在する世界と接続せず、かつ異常性を有さない世界のみに限定される。

補填1: 収容エリア-コーダ転移先候補世界一覧

[閲覧制限 - 白き瞳は何を視るか?]

補填2: [データ欠落]

[閲覧制限 - 白き瞳は何を視るか?]



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画像資料: 文書「収容エリア-コーダ」に添付されていた
SCP-1404-JP-Fの正式なシンボルマーク

補遺1404-JP.4: 往復電子書簡

インシデントおよび補遺1404-JP.3に示される資料によりSCP-1404-JP-Fは最高懸念事項に指定され、監督評議会の判断により、財団はGOCと共同での対策案の策定を緊急で開始しました。また、監督評議会は交渉を目的に電子書類をSCP-1404-JP-Fへと送信し対話を試みました。その結果返信が得られ、財団同様にSCP-1404-JP-Fが交信を試みようとしていること、および交渉の余地があることが確認されました。以下はそのやり取りによって送受信された文書の転写です。


我々とは異なる世界の財団へ

先日の突然の襲撃により、我々財団は多くの人員を喪失する事態となった。我々もあなた方も同じく世界の正常性を維持するために活動する団体であると我々は推測していたが、あなた方はそうではないのか?

我々はあなた方と友好関係を築き、ともに異常存在の収容を協力して行えるようになることを望んでいた。それは繰り返し行った干渉によってそちらも把握しているはずだ。そして、あなた方の世界は見事なまでに異常が存在せず、まさに正常な世界であると言える状態にあることを我々は知った。我々はあなた方の世界が如何にして正常に保たれているのかについて知るべきだと判断し、何度も機動部隊やエージェントを送り語らおうと試みた。しかしあなた方は決して手の内を見せようとはしなかった。

そして、あなた方は我々の世界に脅威となるような振る舞いを行った。それも明らかに異常と言える手法によって。

我々は我々の世界の脅威となる存在の行いを許容することはできない。気づいているようだが、我々はあなた方の内部サーバにアクセスして幾つかの情報ファイルを取得した。そこに記載された計画を見て、我々はあなた方を最高懸念事項に指定しなければならなくなった。現在、我々は複数の他団体とあなた方の計画を阻止するための対策を練っているところだ。

しかしながら、あなた方が我々の世界を何らかの手段で収容しようとしないのならば、双方穏便にことを済ませることができるのではないだろうか。今の状況は決して正しいとは言えないと断言できる。手を取り合えば、恐らく異常存在の確保も、収容も、保護も、双方今まで以上に確実なものとできるだろう。それこそが理想であり、実現されるべき未来だ。

我々は不必要な報復をすることを厭う。どうか、互いにあるべき様になれるような判断を検討していただきたい。返信を期待する。


敬具
財団O5評議会代表、O5-01





O5-01へ

まず、貴方たちには告知もなく機動部隊を送り込んだことについて謝罪をしなければならない。多くの被害が出たことだろう。そして貴方たちが些細な切っ掛けで我々の世界へと赴き我々との友好関係を築こうと尽力していたにもかかわらず、それは我々のポリシーに違反するために不可能であったことにも心より謝らなければならないと感じる。

大変申し訳ないことをした。

一方で、我々は貴方たちにある種の疑問がある。これには答えてもらわなくても構わない。ただ、貴方たちの姿や振る舞いを見てこういった疑問が浮かんだということを伝えたいだけなのだ。

何故、貴方たちは異常存在の収容に消極的なのだろうか?見たところ、貴方たちも我々と同様に異常存在を収容し、研究し、時に上手く活用しているようだ。しかしそれでも、どうして異常存在を積極的に活用しようとしないのだろうか。火に怯えていた人類がいつしかそれをコントロールし始めたのと同じように、人類はもはや恐怖から逃げ隠れることをしなくなったのみならず、恐怖そのものを手中に収めた。そうだろう?

貴方たちの世界には確実な収容がされていない異常存在があまりにも多すぎる。そして、貴方たちは既に収容している異常存在を有効に用いれば、それらに無意味に怯える必要がなくなることも解っているはずだ。そうしないからこそ、貴方たちの世界の蒼氓は恐怖に怯え、無闇にその命を落としているのではないだろうか。

散々に言ったが、我々も貴方たちの理念は理解しているし、それを咎めようというわけでもない。確保、収容、保護。その観点から見れば、何故貴方たちが異常存在の利用に消極的なのかは理解できる。しかし理念は往々にして衝突するものである。

我々の場合、極限まで異常存在を理解し、応用し、活用する。現にそうすることで、あらゆる異常存在の脅威から我々の世界を護ることができている。エリア-コーダが完成し利用され始めてから、我々はもはや光に敵はなく、暗闇に立って未知と戦う必要もないのだ。

貴方たちが取得した文書に書かれていることは全て事実だ。残念なことに、貴方たちの世界と我々の世界は忌々しい洞窟で接続されていた。そして更に残念なことに、貴方たちの世界にはあまりにも多くの異常存在が光の中に蔓延っていた。そして、我々も生存することに必死であるゆえに、貴方たちの世界をそのまま収容しなければならなくなってしまった。何故ならば、貴方たちの世界は依然異常であるからだ。

我々はポリシーに従い、我々以外の異常を決して許容しない。如何なる規模の異常であろうとも徹底的に捜索し、利用可能な異常はどんなにリスクがあろうとも徹底的に活用し、どんなに些細な異常であろうとも異常を以て徹底的に封じ込め、二度と光へとその姿を曝させなどはしない。

この文書は我々からの慈悲だ。我々は今までにも数度、世界そのものの収容を行ってきた。それらのどれもがかつて我々の世界に接続していて、それでいてあまりにも異常であった。しかしその世界の人々に罪はない。もちろん貴方たちが異常の収容を怠っていたと言いたいわけでもなく、貴方たちに罪があるわけでも決してないと断言しよう。我々の世界と接続する世界には異常が存在せず道理の通るものはごまんとある。そして我々が貴方たちの世界を収容するのは、ただ貴方たちの世界が“異常だったから”だ。だからこそ、貴方たちにはどうか世界が終結部に至るまでを有意義に過ごしてもらいたいと考えるのだ。

我々は理念の下に、死を退けるため悪にすらなる。どうか容赦願いたい。

我々は収容する。We contain.


敬具
財団Q7議会代表、Q7-01





Q7-01へ

返信に感謝する。あなた方が理性的であり、理念に基づいて我々の世界を収容しようとしていることは理解できた。それはまさに財団としてあるべき姿勢であり、ある意味では正しいものだと考えられる。

我々はその考えを否定はしないが、決して受け入れもしない。

確かに我々は異常存在の利用には消極的である。それは利用することによって起こるリスクやリソースの損失を危惧し、濫用することは決してあってはならないと考えているからだ。そして、我々の世界の正常性が完全に維持されていないというのも否めないことである。異常存在の収容のために多くの職員や無辜の人民の命が惜しくも失われることも少なくない。

それでもあなた方が我々に疑問を抱いたように、我々もあなた方に対して疑問がある。

あなた方が異常存在の収容に重きを置いているのは間違いではない。しかし結果として、他世界への影響を一切考えないあなた方の振る舞いはあまりにも独善的だ。そうではないのか?果たして我々の世界が、あなた方の世界をすぐにでも滅ぼす程の影響を及ぼすだろうか。否、それは断じてない。何故なら我々財団が、そうなることを防ぐために日夜異常存在を封じ込めているからだ。あなた方はその仕方に疑問を浮かべたようだが、我々から見ればあなた方の仕方にも疑問がある。自身らの世界を護るためなら、他の世界などどうでもいいと言えるのだろうか?

我々はそうは思わない。逆の立場なら、我々はあなた方の世界が発見され社会が混乱しないようポータルを“確保”し、洞窟への人々のアクセスを防ぐため“収容”し、そして何より、あなた方の世界を“保護”するためにあらゆる手段を以て尽力していただろう。一方、あなた方が行おうとしているのはもはや我々の世界の“破壊”とすら言えるような行いだ。しかしそれこそあなた方の考える最良の方法なのかもしれない。

やはりあなた方の言うように、理念は往々にして衝突するようだ。

だが決して分かり合えないということもないはずだ。あなた方の高度な知識と技術を提供してもらえれば、我々の世界の正常性維持は格段に容易となり、あなた方の世界へ悪影響を及ぼすことも防止できるだろう。我々は世界の更に安全な保護を実現し、あなた方もまた自身らの世界の保護を実現できる。つまり、双方にメリットがあると考えられるのではないだろうか?双方を繋ぐ時空間異常の除去技術の開発なども、きっと可能であるはずだ。

どうか考え直して頂きたい。たとえ理念が食い違おうとも、人々は手を取り合えることを我々は知っている。

しかしそれでも不可能なら、我々もまた生存することに必死であるゆえに、あなた方の世界に何らかの対処をしなければならないだろう。我々が真に行わなければならないことは、我々の世界の未来を保証することだ。そして未来が途絶えるようなことは、たとえ如何なる理由で同存在が行うものであったとしても、徹底的に阻止しなければならない。

我々の財団の管理者の言葉を引用する: “人類は恐怖から逃げ隠れていた時代に逆戻りしてはならない”。我々はあなた方のような未曾有の恐怖に立ち向かわなければならない。たとえ不可避の死が我々に訪れようと、たとえ絶対的な悪が我々に降り掛かろうとも、我々は立ち向かい続ける。連綿と続いてきた愛する世界が不条理にも終結することは許されない。これこそが、我々財団の総意である。

そして最悪の場合、我々もまたリスクを顧みずに死を退けるため悪とならなければならない。それは今までもそうであった。

以上。双方の栄えある未来のため、我々とあなた方が全くの無意味に敵対する日の訪れないことを祈る。

確保、収容、保護。Secure, Contain, Protect.


敬具
財団O5評議会代表、O5-01

以降SCP-1404-JP-Fからの返答はありません。交渉の努力は継続されています。


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