クレジット
タイトル: SCP-1413-JP - かつて神の宿った島
著者: ©︎Tutu-sh
作成年: 2022
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財団記録・情報保安管理局より通達
現在閲覧中の報告書はUAO (Unidentified Anomalous Organism) として分類されていた当時の版です。
現在当該アノマリーはSCPオブジェクトとして再分類されています。
— RAISA管理官、マリア・ジョーンズ
未同定異常生物番号: UAO-1413-JP
オブジェクトクラス: Uncontained
特別収容プロトコル: N/A
説明: UAO-1413-JPは、日本国青森県八戸市で初めて存在が示唆された未確認動物です。UAO-1413-JPは食肉目または霊長目ヒト科の大型哺乳類と推測されますが、その詳細は不明です。SCP-1413-JPの概形はヒト科の霊長類に類似しており、イヌ科動物と同様の四足歩行のほか、直立二足歩行を行う様子が観察されています。直立姿勢での身長は約1.6 - 1.9mに達すると推定されます。全身は灰色の体毛に被覆されていますが、食肉目に見られる吻部の発達は確認されていません。
UAO-1413-JPは1986/01/26の深夜に青森県八戸市の牧場を襲撃した際に存在が示唆されました。当該の牧場では飼育されていたホルスタインのウシ(Bos taurus taurus)のうち4頭が失踪しており、当初は肉食獣による被害と考えられましたが、監視カメラの映像に記録された生物の容姿・行動がツキノワグマほか現生の食肉目のものを逸脱していたことから当該動物は未確認動物として扱われました。
インタビュー記録01
インタビュアー: 矢野研究員
インタビュー対象: 及川 大樹 氏(47歳、男性)
日付: 1986/01/27 08:30 (JST)
付記: インタビューは青森県産業技術センターに非常勤研究員として潜入中の矢野研究員が実施。屋外にて、施設への移動中に実施された。
<記録開始>
矢野研究員: ご協力いただきありがとうございます。今回の被害ですが、失踪した個体以外の家畜、あるいは設備への被害を改めて確認したく思います。
及川氏: えー、そうですね。ウチは標識を付けて管理してますが、いなくなったのは4頭だけです。まあ、柵は破られてましたけどね。朝起きてみて、どうにも牛の様子がおかしくてですね。見てみたら、扉が外されてるわ、もぬけの殻になってるわで。[間] 敷地の柵なんか大きく曲がってて、その辺に捨てられてたんですよ。あれは人間業じゃありません。
矢野研究員: 猛獣の被害ということは?
及川氏: 祖母の代ならまだしも、山犬なんかもう居ませんから、考えるならクマでしょうかね。でも柵を千切って投げるクマなんて聞いたこともありませんよ。それに、そもそも形が違う。映像を見てびっくらこきましたよ。まるでこう、人を見ているようで。
矢野研究員: 失礼、先ほどは人間業ではないと。
及川氏: 人にあんな真似が出来るわけがありませんよ。でも、立った時の動きは人です。イヌや、オオカミみたいに歩いていたのに、急に立ち上がって。
矢野研究員: 映像をお見せいただけますか?
及川氏: 勿論、後でお渡ししますよ。ゆうべ満月でしたからね、カメラにも割とくっきり映ってます。
矢野研究員: ありがとうございます。拝見しますが、ご自分でお気づきの点などはありますか?
及川氏: [間] そうですね。アレは柵の外に立って、じっとバリケードを見つめていました。何か空き巣が物色するみたいで、触れても大丈夫なのを確かめていたような雰囲気ですよ。それで、いけそうだと分かると、一気に、引き裂くようにして。後は牧草地を突っ切って引き戸に指を突っ込んで無理矢理外して、中に入って来たんです。その後は順番に、不安がる牛に忍び寄りました。牛の威嚇を気にも留めないで、アイツは首を締めました。[間] ああ、締めたというよりは、塞いだ、と言う方が適切かな。
矢野研究員: 塞いだ?
及川氏: 口に手を当てると、牛が突然苦しみ始めたんですよ。脚をバタつかせて体を捩じって。酸欠もそうですが、まるで何かが入り込むのを嫌がっているようでした。他のヤツも興奮してましたが、ずっと抵抗していた牛は1回ビクンと、背中を波打たせるように大きく痙攣して、それから大人しくなりました。柵が壊れて出られるようになると、そのまま従うように出ていきましたよ。
矢野研究員: 牛を逃がした、ということですか。
及川氏: そうでしょうね。その後は同じことをそいつが3回繰り返して、やがて最後の牛と一緒に出て行きましたよ。
矢野研究員: 3回、ですか。
及川氏: [間] 何故4頭なのか、訝しんでらっしゃるようですね。
矢野研究員: [間] ええ、まあ。単純に考えれば十分量の確保が出来たということなのでしょうが、獲物の持ち運びをしなければその分のコストは減るわけですし、もっと捕獲しても良さそうなものではあります。勿論、その生物の普段の摂食量にもよりますがね。
矢野研究員: それに、野生動物であれば洗脳か何かをして連れ去ったというのも奇妙ではあります。その場で殺して食べれば良いはずなのに。人を警戒したのか。あるいはどこかに幼獣が居て、その餌を確保していたのか。4頭というのはかなり多いので、どこかに貯蔵していると考えても良い気はします。ちょっと分かりませんね。
及川氏: 動物が考えることなんて分かりませんよ。[間] ああ、そうだ。いや、全く確証なんてないんですけどね、ちょっと。
矢野研究員: 何でしょう?
及川氏: アレ、中の何かを避けたのかもしれないですね。本当はもっと、可能な限り取りたかったけど、諦めたとか。牛を運ぶのも、そんなに苦労してなかったようですし。
矢野研究員: 何か、ですか?
及川氏: ええ。これから中に案内しますけどね、まだクリスマスの飾りを外してなくてですね。丁度、連れ去られた4頭の柵の脇に、リースを付けてたんです。どうにもそこに近づこうとはしなかったみたいです。明らかに嫌そうな素振りをしてはいなかったんで、まあ関係なさそうですが。
<記録終了>
終了報告書: 及川氏の証言と映像記録との間に不整合は見られなかった。また、及川氏が修飾したリースはスコットランドから取り寄せられたものであり、ヤドリギ(Viscum album)が用いられていた。
補遺: 調査の進展に応じ、UAO-1413-JPはSCPオブジェクトとして再分類されます。