SCP-1415-JP
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SCP-1415-JP

SCP-1415-JPによる幻覚の再現イメージ

アイテム番号: SCP-1415-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-1415-JPは絵画系アイテム収容庫で不透明な通気性のカバーに収めた状態で保管してください。平時の保管方法は標準的な油彩画の取扱方法に準じますが、SCP-1415-JPの図面を視認することは避けてください。SCP-1415-JPの図面を視認した職員は拘束の後クラスB記憶処理を施し、衝動的な行動傾向が確認されなければ解放してください。そうでない場合は終了してください。

説明: SCP-1415-JPは1枚の絵画です。SCP-1415-JPは要注意団体"Are We Cool Yet?"の構成員の制作物であると推定されています。

SCP-1415-JPは濃紺を基調とした背景の中を流星1のように見受けられるものが光を放ちながら尾を引いて飛んでいる場面が描かれたものであり、また、流星の中には小さく金属片や土くれ、紙くずなどが描き込まれています。

SCP-1415-JPの異常性はSCP-1415-JPを鑑賞する際に発現します。SCP-1415-JPの図面を視認した人物(以下"対象")は共通して特定の光景を幻視します。この幻覚は視覚的情報が主ですが、連動して温度や運動の感覚などを伴います。対象の見る幻覚はいくつかの場面が段階的に移ろう映像であり、内容は概ね以下の通りです。

  1. 暗い空間に自分が漂っている光景、及び感覚。
  2. その後次第に一方向(多くの場合対象に前方と認識される)へ動き出す。
  3. 徐々に速度が増していき、それに比例するように視界が赤みを帯びながら明るくなっていく。この段階から熱さを覚え始める。
  4. 加速が止まり("最高速に達した"と表現されることが多い)、視界もこの時点で最も明るく、眩しくなる。
  5. 数秒間上記の状態が続き、その後急速に視界が暗くなる。それと同時に移動している感覚も消える。
  6. 視点が変わり、夜空を見上げている光景。流星が光の尾を引いて夜空を流れていき、しばらくして燃え尽きる。流星が燃え尽きた段階で幻覚は終了する。

この幻覚を見た対象は、大抵の場合その後衝動的な活動を始めます。このとき対象は何かしらの物事をやりとげよう/やりとげなければならないといった衝動に駆られます。多くの場合対象は創作・表現活動や学問、社会運動などの建設的手段によって前述の衝動を昇華させようと行動しますが、破壊的な活動や客観的に見て無意義な行動に走る例もあります。前述の影響は、対象が生産的・建設的活動に従事していない人物であるほど強くなる傾向にあります。この影響は記憶処理により上述の幻覚に関する記憶を忘却させることで高確率で無効化できます。この影響を受けた対象者は往々にして「身体が熱い」「何かを成し遂げたくてしかたない」「活動をしていないとおかしくなりそう」といった旨の証言を行います。

対象の拘束、あるいは能力・機会・道具・設備の不足などの理由により対象の活動が制限されており、対象が自身の衝動の昇華を為せなかった場合、SCP-1415-JPを目撃してから一定期間2の後、対象の身体は不明な原理により不自然かつ突如として発火します(SCP-1415-JP-人体発火イベント)。このとき周囲への延焼は起こりませんが、対象は例外なく焼死します。SCP-1415-JP-人体発火イベントの前兆として対象の落ち着かない挙動、「もう爆発しそう/我慢できない/抑えられない」「燻って仕方がない」などといった旨の心情の吐露などが観測できることがあります。また対象が何らかの活動を行った場合、対象自身が達成感を得る、満足する結果に終わった際は対象はその時点での健康状態によらず不明な原因により生命活動を停止します。この生命活動の停止に苦痛は伴いません。反して、対象が自らの活動によって満足の行く結果を残せなかった場合、対象はSCP-1415-JP-人体発火イベントと同様にして焼死します。このケースにおいて対象が「あの流れ星のようにはなれなかった」と証言したことが認められています。

SCP-1415-JPは1枚のプレートと共に回収されており、その内容は以下の通りです。

燃えないゴミと燃えるゴミ、価値があるのはどちらだ。Are We Cool Yet?

発見: SCP-1415-JPは日本国内にて行われた絵画展に出品されていました。展示開始初日の11/20に当該展示のSCP-1415-JP展示スペース周辺及び展示会場周辺において暴動や破壊的手段を含む芸術活動などが相次いだため現地の財団エージェントによりSCP-1415-JP対象者の拘束・関係者への記憶処理・会場の閉鎖などによる事態の鎮静化がなされ、その後SCP-1415-JPが発見・回収されました。SCP-1415-JP収容後に事後対処を兼ねて当該展示会にてSCP-1415-JPを鑑賞した人物に対する追跡、事情聴取及び経過観察が行われました。

補遺: 財団は発見されたプレートの内容から要注意団体"Are We Cool Yet?"との関連を疑い、SCP-1415-JPの出自に関する調査の一環としてSCP-1415-JPの出品者であった才成 走介氏3の追跡調査を行いました。その結果として、氏のアトリエと思しき建物から、彼の作品と見られるアノマリーを含むいくつかの絵画及び才成氏の死体と氏の手記と見られるメモが発見されました。

才成氏がいつの時期から芸術に興味を持っていたかは不明ですが、大学在学中学業の傍らで美術品の制作をしていたことが調査によって明らかになりました。彼の属していた芸術サークルのメンバーなど5は彼の絵に対して「特に上手でもなかったし、情熱もいま一つ足りなかった」「あまりパッとしなかった。本気ではあったのだろうけれどいまいち『死ぬ気でやろう』という気概が感じられなかった」「所詮アマチュアという甘えがどこかにあったような気がする」などと評しており、発見された作品の鑑定に携わった財団の鑑定士も概ね同様の見解です。

才成氏はアマチュア芸術家としての活動を続ける中で、ある時期から不明なルートにより"Are We Cool Yet?"との関係を持ち、異常な芸術品の制作を行っていたようです。

才成氏のアトリエから、氏の手記と見られるメモが回収されています。メモは二部に分かれており、それぞれSCP-1415-JP、流れ星を追いかけるように走る人物の絵を完成させた直後に書かれたものであると考えられています。

才成氏の手記

ようやくやり遂げた。俺はようやく描き上げた。払った代償は大きいが、それでも俺は成し遂げた。黄昏のときはあと一歩届かなかったが、今度こそやり遂げた。やってやったぞ。やってやったんだ。俺はついに、人の心を燃え上がらせるような絵を描き上げた。だからそう、今ならやり遂げられるはず。何回やっても駄目だった。いつも上手くいかなかった。何度挑戦しても駄作しか描けなかった。いつもゴミばかり生み出してきた。『情熱が足りない、上辺をなぞっているだけだ』なんていう批評家の連中の言葉は正しい。絵を描く上で、大事な物が欠けていた。そんなんだから俺はろくな絵の一つもかけない塵芥同然の凡人だった。それでも今ならやれる気がするんだ。今俺の胸は熱く滾っている。これがきっと、欠けていた物。今ならやれる。今まではきっと、甘えがあった。けれど今なら、あれが描きあがったら死んでもいいとさえ思ってる。今なら、名だたる先人や才能ある連中に追いつける気がするんだ。あの光が、俺の憧れだった。この胸を滾らせるのは、憧れた光の熱量だ。だから、一度だけ死ぬ気で走る。どんなクズでも、俺みてぇなクズ同然の冴えない奴でも、流れ星のように、一度だけ、燃え尽きるその瞬間の一度だけなら輝けるはずだから、見ていてほしい。

やり遂げた。昔からこんな絵が描きたかった。どうだ、Am I Cool Yet?

前述した流れ星を追いかけるように走る人物の絵6はイーゼルに立てかけられたままであり、完成直後の状態であったと考えられます。才成氏はアトリエの椅子に座ったまま、上記のメモを書き上げた直後と見られる姿勢で死亡していました。

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