アイテム番号: SCP-1416-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-1416-JP-1は排水機能を取り付けた特別収容室に収容されます。収容室は1日に一度室内のSCP-1416-JP-1の血液で汚染された物品を取り替え清掃されます。SCP-1416-JP-1が異常性の発現により内出血を起こした場合は負傷部位を切開し、出血した状態にします。SCP-1416-JP-2は武器になりうる物品を可能な限り取り除くように設計された特別人型収容室にて収容されます。職員との接触は最低限に制限されます。また実験時を除き刃物及びSCP-1416-JP-1との接触は禁止されます。
説明: SCP-1416-JPはSCP-1416-JP-1、SCP-1416-JP-2及びその2者間で発生する異常現象の総称です。
SCP-1416-JP-1は20██/██/██時点で失踪したと考えられている元木 ██という日本人女性、もしくはその存在を起源とする人型実体です。その肉体的組成は後述の転移イベントで発生する負傷を除き通常の人間との差異は発見されていません。
SCP-1416-JP-2は異常性発現まで白上 ██として生活していた日本人男性です。SCP-1416-JP-2が生存している人物(以下、被害者と記述)に対して出血、または内出血を伴う怪我を負わせた場合、SCP-1416-JP-1の転移イベントが発生します。
転移イベントが発生すると、SCP-1416-JP-1は瞬間的に消失し被害者がSCP-1416-JP-1に変異する形で再出現します。このとき消失した被害者は現在まで発見できておらず、その存在は完全に消失するものと考えられています。転移後、SCP-1416-JP-2の被害者に関する記憶が消失し、SCP-1416-JP-1の姿・言動のものと置き換えられます。再出現したSCP-1416-JP-1は転移イベント時の負傷を引き継ぎます。この負傷は出血・内出血の両方の場合で平均して毎時25mlの速度で出血が続き、再度転移イベントが発生するまで治癒される事はありません。SCP-1416-JP-1はこの出血によって失血死せず、その他の健康的被害も見受けられません。
発見経緯: 20██/██/██、██市警察署に「死んだはずの女が蘇って追い掛けてくる。」といった内容の通報が入り、駆けつけた警官が錯乱し逃げ惑う白上氏に頭部から出血した女性が付き纏っているのを発見。確保された両名の証言と女性の異常な出血から潜入エージェントが異常性の疑いありとして財団へ報告し、両名を財団管理下へ移行、その後数度の検証を経てSCP-1416-JP-1、SCP-1416-JP-2として収容されました。
以下はSCP-1416-JP-1、SCP-1416-JP-2に対するインタビュー記録です。
対象: SCP-1416-JP-2
インタビュアー: 石多博士
付記: 収容当初SCP-1416-JP-2は極度に錯乱しており、数度のカウンセリングを経て落ち着きを取り戻した後の始めてのインタビューです。SCP-1416-JP-2はSCP-1416-JP-1を極度に嫌悪しており、SCP-1416-JP-2と同様に収容されているという事実がSCP-1416-JP-2の精神に悪影響を与える可能性があり、かつSCP-1416-JP-2自体は異常存在ではなくSCP-1416-JP-1の異常性発生のトリガーであるという理由から、SCP-1416-JP-2を番号ではなく本名で呼称しています。
<記録開始>
石多博士: こんにちは、白上さん。
SCP-1416-JP-2: ああ、えーと、先生?多分前も聞いたと思うんですけど、俺っていつ帰れるんですか?……ていうかそもそも、ここって何の施設なんですかね?警察……ってわけでもなさそうだし。
石多博士: 申し訳ありませんが、それについては詳しくお答え出来ないことになっています。それで本日はSCP-1416-JP-1、つまり貴方と一緒にいたあの女性についてお聞きしたいのですが。
SCP-1416-JP-1: え……えーと、俺もよく知らないっていうか……まだ何が何だかよく分からなくて。
石多博士: 些細なことでもよろしいので。それがこの現象を解明する手掛かりとなるかもしれませんので。それに警察での調書などでは、貴方はあの女性と知り合いだったように見受けられるのですが。
SCP-1416-JP-2: え、ああ、えっと……まあ、そうですね……。あいつとは、昔付き合ってたんですよ、同棲してて。大学2年のときなんで、大体1、2年前かな。
石多博士: 交際関係にあったという事でしょうか。
SCP-1416-JP-2: まあ、1年ちょいくらいですけど。それで…………ある日……ちょっとした喧嘩しちゃった事あって、そんで……いきなり……別れ話を切り出されて、売り言葉に買い言葉って感じでホントに荷物纏め出して……で、結局戻ってくるだろうって高括ってたんすけど、マジで知り合いとかにも行き先告げずにどっか引っ越しちゃったらしくて。……そんでそのままフェードアウト、って感じですかね。
石多博士: それがSCP-1416-JP-1との最初の接触、というわけですね。
SCP-1416-JP-2: あ、はい……。それで、に……2回目……だと思うん……ですけど、あいつが出てってから半年くらい後で、バイト先であいつが……新しく入って来て、その……確かにあいつだったんですけど……そのときは、何でか全くそう思ってなくて……あいつ、思い出しても時々会話が噛み合ってなくて、「愛して」とか「ずっと一緒」とか……会話が支離滅裂なのになんでか俺も周りも全く気にしてなくてずっとにやにや笑ってたし……それで……その……なんでか付き合う事に……なったと思うん……ですけど……。
石多博士: 大丈夫ですか?落ちついて、矛盾していても自分が知覚した通りにお話し下さい。
SCP-1416-JP-2: はい……。それで、あいつが██って気付かずに付き合い続けてたんですけど、ある日喧嘩しちゃって……喧嘩の内容は、思い出しても会話が意味不明で分からないんですけど、それでその……思わず手を上げちゃって……そ、そしたら……いきなりそこにあいつがいて、っていうかずっとあいつだったんですけど、それがそうっていきなり気付いて、それに気付いたとき、あいつ見た事もないようなにやにや顔で……恍惚の表情っていうか……えっと、で、訳わかんなくなって……警察に電話して、ここに連れて来られて……って感じですね。
石多博士: なるほど、ちなみにSCP-1416-JP-1がそうなった心当たりや予兆みたいなものはありませんでしたか?
SCP-1416-JP-2: こ、心当たりとか言われても……確かに付き合ってたけど、それはあいつがあんな変な化物って知らなかったからで……ないですよそんなもの。
石多博士: そうですか、ちなみに通報や調書などでは、SCP-1416-JP-1の事を「死んだはず」と言われていたようですが、これは?
SCP-1416-JP-2: あ、えっと……ずっと、音信不通だったし……生きてたら帰ってくると思ってたんだけど帰ってこないからどっかで死んだんじゃないかと思ってて……。
石多博士: なるほど。本日はこれでインタビューを終了します。ありがとうございました。
<記録終了>
追記: インタビューを受けての検証調査により、白上██氏(現SCP-1416-JP-2)と元木██氏(現SCP-1416-JP-1)の交際の事実及び元木██氏の失踪が確認されました。当時、元木氏は白上氏より常日頃からDV・モラルハラスメントを受けており、それによる経済的暴力や社会的隔離などが原因で外部に親しい人物がおらず、また数少ない知人からは「白上氏のDVに堪えかねて逃亡した」とみられており、失踪届けが出されていませんでした。元木氏の失踪直後の足取りは掴めておらず、またその経緯にいくつか不明瞭な点があるため現在調査を継続中です。また、事件当時白上氏と交際関係にあった水方 ██氏の失踪が確認されており、交際関係にあったにも拘らず白上氏が水方氏の記憶を一切持っていなかったことからSCP-1416-JP-1の異常性の被害者となり、白上氏の記憶が改竄されたと推定されています。
対象: SCP-1416-JP-1
インタビュアー: 石多博士
<記録開始>
石多博士: こんにちは、SCP-1416-JP-1。これよりインタビューを開始します。
SCP-1416-JP-1: ねえ、██君(白上氏の下の名前)とは会わせてもらえないんですか?
石多博士: すみませんがそれにはお答えできません。まず確認したいのですが貴方は元木██氏本人という事でよろしいですか?
SCP-1416-JP-1: ええ、確かに私の名前は元木██です。
石多博士: 分かりました。それで、貴方の転移能力と記憶改竄能力についてお聞きしたいのですが。
SCP-1416-JP-1: えっと、それって██君の所にいけるあの力の事、ですか?確かによく考えたら、普通はあんな事出来ないですよね。お聞きしたい、って言われても自分でもどうやってるかよく分らないので……。
石多博士: ええ、その力の事です。能力の詳細についての自覚はない、と。それでは、貴方が█月█日に失踪してから白上氏の元へ能力を使用して現れた日までの経緯をお聞かせ願えますか?
SCP-1416-JP-1: 失踪、っていうのは私が死んだ日?って事ですか?
石多博士: ええとすみません。死んだ、というのは?
SCP-1416-JP-1: あ、██君話してないんだ……でしたら最初からお話しますね。えっと、付き合い始めて1年くらいの間なんですけど、██君は頻繁に私を愛してくれて、でもその頃の私はそれが██君の愛なんだって気付いてなくて、怖がっちゃってたんですよね。だからかな、██君よく怒ってて。それでその失踪の日、いつものように██君を怒らせちゃって、業を煮やした██君が灰皿で私を強く殴ってくれたんですよ。それが今までにないくらいものすごい衝撃的で、頭から全身にかけてすごい感覚がびりびりと流れて来て、強い衝撃なんですけどそれがとっても温かくて、そこまでしてもらって初めて気が付いたんですよ。「ああ、これが██君の愛なんだな」って。そんなにも私を愛してくれた嬉しさとそれに今まで気付けなかった申し訳なさを伝えたかったんですけど、私喋れなくなってて、体も指一本動かせなくって、ああ私死んだんだなって気付いて、せっかく██君の愛に気付いたのにもう愛してもらえないんだって分かったらとっても悲しくなって、でも死んだはずなのに意識がずっとあってそうしていると頭に感じてた██君の愛が全身に広がっていく感覚がして、これが天国なのかなって思いながら██君の愛をずっと感じていたんです。
石多博士: それは、つまり……貴方は白上氏に頭部を殴打されて殺害された、という事でよろしいのでしょうか?
SCP-1416-JP-1: 殺が……あ!違うんです!██君は私を愛するためにそうしただけで……こういう場合も罪になるんですか?
石多博士: 落ちついて下さい、SCP-1416-JP-1。まずはその後の経緯についてお聞かせ下さい。
SCP-1416-JP-1: そう、ですね。……それでその後、██君の愛をずっと感じてたんですけど、唐突に……ちょっとうまく言葉にできないんですけど██君が他の誰かを愛している感覚?みたいなのがあって、██君に浮気された事がすごくショックで、それで気付いたら生きてあそこにいたんです。
石多博士: 浮気……ですか?
SCP-1416-JP-1: ええ、付き合ってるのに他の人を愛するなんて浮気でしょう?
石多博士: 分かりました。これにてインタビューを終了します。
<記録終了>
上記のインタビューを踏まえSCP-1416-JP-2に再度インタビューが行われました。
対象: SCP-1416-JP-2
インタビュアー: 石多博士
<記録開始>
(重要度が低いため割愛)
石多博士: 所で、前回のインタビューで貴方は「SCP-1416-JP-1は貴方の元から失踪した」と証言しましたが、SCP-1416-JP-1からは貴方に殺されたという証言が得られていますが、これについて何かありますか?
SCP-1416-JP-2: こ……あ、いや……貴方達はあんなのが言う言葉を信じるんですか?そんなの嘘に決まってるじゃないですか。
石多博士: あのですね、彼女の失踪に関しては不明瞭な点が多いんです。それに、我々には少々手荒ですが「本当の事」を聞きだす術もあります。
SCP-1416-JP-2: …………あー、いや…………そうっすよ確かに殺しましたよ!殺して山に埋めました!それがなにか悪いんですかね?
石多博士: なにか悪い、って……人を殺したんですよ?
SCP-1416-JP-2: 人?あんなの人じゃないだろ。むしろ化物を殺したんだからいい事でしょ?まあ、死んでなかったんだけど。
石多博士: …………分かりました。詳しい調書については後ほど専門の者が聞きますので。
<記録終了>
追記: SCP-1416-JP-2の証言を元にSCP-1416-JP-2の自宅から2km離れた██山を調査した結果、人一人分が土の中へ埋葬されていたと思しき跡とその内部に多量の血痕が付着したブルーシートが発見されました。
SCP-1416-JP-1・SCP-1416-JP-2の関係者から得られた証言では、交際時SCP-1416-JP-1はSCP-1416-JP-2に暴力やモラルハラスメントによった支配を受けており、これは現在のSCP-1416-JP-1の精神状態と一致しません。異常性の発現により精神の変容を被ったか、なんらかの要因により異常性と精神の変容が同時に発生したかは判明していません。
SCP-1416-JP-2については自己愛性パーソナリティ障害と診断されており、これは交際時点から一貫していると考えられています。
実験記録1416-JP-01:
対象: D-1416-01(男性)
実施方法: 拘束したD-1416-01にSCP-1416-JP-2がナイフで軽微な出血傷を付ける。SCP-1416-JP-1は別室で監視する。
結果: SCP-1416-JP-1は消失し、D-1416-01がSCP-1416-JP-1に変異した。SCP-1416-JP-1を撮影したハイスピードカメラはSCP-1416-JP-1が瞬間的に消失している事を示している。
備考: SCP-1416-JP-1の異常性に被害者の性別は問わないことが分かった。
実験記録1416-JP-02:
対象: D-1416-02
実施方法: 拘束したD-1416-02とSCP-1416-JP-2に簡単な会話をさせ、D-1416-02をSCP-1416-JP-1に変異させた後、SCP-1416-JP-1、SCP-1416-JP-2に会話の内容を回答させる。
結果: SCP-1416-JP-1は会話の内容を「知らない」と答えた。SCP-1416-JP-2はSCP-1416-JPは事前の記録と比べてSCP-1416-JP-2側の発言には相違がないがD-1416-02側の発言は全て脈絡のない愛を囁く言葉になっていた。
備考: SCP-1416-JP-1は過去を改変して被害者になり変わっているのではなく、あくまでSCP-1416-JP-2の記憶のみを改竄していると推測される。
実験記録1416-JP-03:
対象: D-1416-03
実施方法: 拘束したD-1416-03に局部麻酔を掛けて、SCP-1416-JP-2がその部分にナイフで軽微な出血傷を付ける。
結果: 変化なし
備考: SCP-1416-JP-1の証言から考えるに、恐らく痛覚をトリガーとして異常性を発生させていると思われる。
実験記録1416-JP-04:
対象: D-1416-03、D-1416-04
実施方法: 拘束した D-1416-03、D-1416-04をSCP-1416-JP-2が同時にナイフで軽微な出血傷を付ける。
結果: D-1416-03、D-1416-04が同時に変異を開始し、その途中で拘束をすり抜け溶けあうように融合した後SCP-1416-JP-1に変異する。これにより拘束されていないSCP-1416-JP-1がSCP-1416-JP-2に接触する事となった。SCP-1416-JP-2の記憶は D-1416-03、D-1416-04の両名ともSCP-1416-JP-1に変化していた。
備考: この実験によりSCP-1416-JP-2には数日のカウンセリングが必要となった。
追記: 数度の実験によりSCP-1416-JP-1の異常性に何度も晒された事によって、SCP-1416-JP-2の精神状態及び収容態度は収容初期と比べて明らかに悪化しています。現在実験は停止され継続的なカウンセリングが計画されています。
事件記録1416-JP-01
20██/██/██、SCP-1416-JP-2のカウンセリング中に、収容担当者である石多博士が入室したタイミングを見計らってSCP-1416-JP-2が逃走を試みました。カウンセラーの隣をすり抜け、入室中だった石多博士を突き飛ばして収容室から外に脱出しましたが、その際石多博士が扉枠の角に頭を打ち付けて出血し、石多博士はSCP-1416-JP-1に変異しました。その時点で室外に待機していた警備員に取り押さえられましが、SCP-1416-JP-2は記憶の改竄により強い恐慌状態に陥っており、鎮静剤が投与されSCP-1416-JP-1及びSCP-1416-JP-2は再度収容されました。
当事案以降、SCP-1416-JP-2は重度の抑欝症と人間不信の状態となっています。これは収容担当者であった石多博士の記憶がSCP-1416-JP-1に改変された事により、財団に対して強い不信感を持った事が原因とみられています。非対面型のカウンセリングが計画されていますが、現在までに有意なコミュニケーションをとることが出来ていません。
事件記録1416-JP-02
20██/██/██、SCP-1416-JP-2が錯乱状態に陥り収容室内を暴れまわる姿が監視カメラに記録されました。収容室内の備品を投げまわる、大声で叫ぶなどの行為を行い、最終的には収容室の壁に頭部を打ち付け始めました。その行為によりSCP-1416-JP-2が頭部から出血した時点でSCP-1416-JP-2はSCP-1416-JP-1に変異しました。警備員が駆けつけてくる頃にはSCP-1416-JP-1は収容室内で放心状態で収容室内に留まっていました。後のインタビューにより、SCP-1416-JP-1からは死亡日時と目されている日から今までの記憶とSCP-1416-JP-2に関する全ての記憶が消失していることが確認されました。SCP-1416-JP-1は自信の異常性及び財団に関する記憶を失っており、大規模な記憶の空白により精神的に不安定となっていたためカバーストーリー「交通事故及び植物状態からの回復」を適用しました。
SCP-1416-JP-2の記憶が消失したことにより、SCP-1416-JP-1の精神状態は異常性発現前の状態に戻っています。そのため現在のSCP-1416-JP-1は異常性を発揮しない状態となっていますが、SCP-1416-JP-1の異常性が消失したのか、依然と同一の条件が揃えば再度異常性を発生させるのかが判明していないため、Neutralized化は行われず収容は継続されます。