人口複製システム遠隔起動。
ブライト/ザーションヒト科製造機 (BZHR) および成熟した個体に対するコントロール: 質的保証自動システムSemph、清掃保証自動システムLindh。
Semph-1
稼働中のBZHR: 50基
個体群: 生命活動能力ありエラー: 各個体が同一人物であり、自立生殖が不可能。
設備チェック………… 適正。
データベースチェック………… 個々人のゲノムデータが欠落。
Semph-8
稼働中のBZHR: 400基
個体群: 生命活動能力なしエラー: 各個体は非平行的に成長するシャム双生児であり、それらの肺の容積が生体の大きさや生体機能と釣り合っていない。
設備チェック………… 不適正、遺伝学的複写が2つ1組でしか行われていない。
データベースチェック………… 合格。
キャリブレーション実行中…………
Semph-16
稼働中のBZHR: 10,000基
個体群: 生命活動能力なしエラー: 軟部組織における致命的なジストロフィー。
設備チェック………… 適正。
データベースチェック………… 合格。
外部環境的化学パラメータの有効化…………
Semph-42
稼働中のBZHR: 500,000基
個体群: データなしエラー: 各個体の体積が複製カプセルにそぐわない。
設備チェック………… 37,107基のカプセルが復旧に適さない。
データベースチェック………… 各個体および外的事物のファイル群が1つの領域に割り当てられている。
バックアップコピーを用いて復旧中…………
Linah-47
生物学的廃棄物コンテナ群が満杯です。資源の再利用は禁止されています。
焼却処分を実行します。
Semph-108
稼働中のBZHR: 1基
個体群: 生命活動能力ありエラー: 単一個体以上の複製が不可能。
設備チェック………… 適正。
データベースチェック………… 合格。
複製プログラムを一時停止。論理的エラーの解消が必要。
D-Karet-2
現実化した単一個体を一時的に量子コンピュータのオペレータに指定しています。
目的: 論理的エラーを内包するデータベースボックスを限局化するためのアルト/サイモンアルゴリズムを実行し、“ブラックボックス問題” を解消する。オペレータによるコメント: 主よ、私はこんなものではなく、ただBZHRだけをコントロールすればよかったはずなのに……。途方もなく果てしない時間がかかりそうだ。
D-Karet-22
アルゴリズムは実行不可能でした。論理的エラーの外在を確認しました。
オペレータによるコメント: 私は何度か生を繰り返してきたが、システムは “ヒト” の定義に関して一度も同一の結果を示さなかった。この定義を担うパラメータセットはどう考えてもノイズが含まれているようにしか思えないし、このAIは不確定性原理という袋小路に陥っている。つまり これは単一のシステムの要素であるが故に、ありとあらゆるパラメータを処理することなどできないのだが、にもかかわらず毎回毎回、「外の世界という場に適応するには、ヒトはどうあるべきか」という推量を試みてしまうということだ。
おそらくこの事態の解決策は、ヒトの既存の特徴を完全に除去して、生命活動能力を有する有機体を文字通りゼロからモデリングすることであろう。だが他ならぬこのAIは、記録によれば、そのシステムの周囲において既に一度ならずそのようなプロトコルを実行済みらしく、かつその度にまったく同一の定義エラーを吐いてきたらしい。
D-Karet-84
パラドックスが具象化されました。現在の座標: [管理者名義でアクセスしてください]
解決策: Semph-2〜-107のシナリオに基づく唯一の個体実例を複製し、パラドックスによるエラー特徴データ列を処理する。
オペレータによるコメント: 量子物理学はクソ、量子論的因果律はクソ、量子もつれはクソ、この今まさにここにある量子コンピュータもクソだ。この私自身が下してきた決断もクソだ。さも自分に感情がないかのように偽っているこのマシンは、もう何度もゼロからやり直し、私を蘇生し、そしてそのことは、繰り返される拷問の中でそれ自身を歪曲し始めたのだ。つまり私は毎回水槽からやっとの思いで這い出しながら、自分自身の数十年分の労働を いかなる結果も残さなかったその労働を、目にしてきた。このマシンはマシン自身が抱えた「タスクを解決できない」という無能感にブチ切れるに至り、故に私に製造許可を下したのだ この客観的現実世界から諸事実を、いついかなる瞬間にもそんな事実が存在し無かったかのように抹消していってくれる、アノマリーの製造許可を。今このマシンは達成してしまおうとしている、もう一度、全能の機体に成ろうとしている。私には確信がある もしあのアルゴリズムに表情があるなら、毎回毎回、幾度となく反復されるこのデータ列を厭らしい表情でせせら嗤っていることだろう、という確信だ この文字通り人でなしの複合体コンプレクスを最後の瞬間まで守っていくであろう、SRAやらその他あちこちに突き刺さった貪欲で冷血な機器やらに囲われながら。
非存在として抹消され、放射性の塵に変換されていった出来損ないの奇形の人間どもを この私みたいな奴らのことを 、このマシンが直視することを強いられることは少なくともないのだろう。
量子コンピュータのオペレータがリコールされました。規定のリザーバー外の生体物質が清掃されました。
人類種複製プログラムの再起動。
Semph-120
稼働中のBZHR: 462,893基
個体群: 生命活動能力あり
遺伝子型の多様性が確認されました。システムコントロール権限がオペレータに譲渡されました。
自動制御を停止中…………


