アイテム番号: SCP-1427-JP
オブジェクトクラス: Neutralized
特別収容プロトコル: SCP-1427-JPの異常性は喪失しました。SCP-1427-JP周囲の人間には病死のカバーストーリーを流布し、SCP-1427-JP-1の切断により影響を受けた人物にはダミーの遺留品を返還してください。
説明: SCP-1427-JPは発見時14歳であった日本人女性、水澤 ██氏です。
SCP-1427-JPは両手の指全てに赤い糸(以降、SCP-1427-JP-1)が結び付けられています。SCP-1427-JP-1は不明な組成からなる非実体であり、物質を透過するため、SCP-1427-JPによってのみ干渉が可能です。SCP-1427-JP-1はSCP-1427-JPを始点としていることは確認されていますが、約1m程の地点で消失しており終点は確認されません。
SCP-1427-JP-1はSCP-1427-JPと何らかの関係を持った人物が出現するたび増加します。この"関係"の判断基準は不明であり、1週間に約20本のペースで増加します。
前述の異常性によりSCP-1427-JP-1はSCP-1427-JPにのみ切断、結び合わせることが可能です。SCP-1427-JP-1の強度はSCP-1427-JPの協力下で行われた耐性実験により、一般的なナイロン紐と同程度であると推測されます。
SCP-1427-JP-1が何らかの形で切断された時点で、交通遅延、重度の疾患の発生、不慮の事故による死亡等により、切断されたSCP-1427-JP-1に対応する人物とSCP-1427-JPは一切の物理的接触及び存在の確認が不可能になります。これはSCP-1427-JP-1の接合により解消されますが、SCP-1427-JP-1は切断後処置を行わなかった場合、約1時間で消失することに留意してください。
SCP-1427-JPはSCP-1427-JP-1がどのような関係によって発生したものであるか、どのような人物が関係の対象であるかを認識しており、SCP-1427-JPはSCP-1427-JP-1の切断を躊躇する傾向にあります。これにより、SCP-1427-JP-1の減少は抑制される傾向にあり、この報告書作成時点でSCP-1427-JP-1は約2000本発生しています。
SCP-1427-JPは20██/██/██、兵庫県の民家で発見されました。当時は強い引きこもり状態にあり、パーソナリティ診断においては内向的な傾向にあることが確認されています。引きこもりに至った具体的な理由は判明しておらず、家庭環境及び周囲の環境は良好なものであったことが確認されています。
以下は異常性の起源を調査した際の聴取記録です。
聴取記録1427-JP - 日付 20██/██/██
インタビュアー: 渡辺研究員
対象: SCP-1427-JP
«再生開始»
(前半部は事実確認の為省略)
渡辺研究員: じゃあ水澤さんの指に糸が出始めたのは、だいたい中学一年生の終わりくらい?
SCP-1427-JP: はい。というより学校に行かなくなってから、です
渡辺研究員: 分かりました。じゃあ、学校に行かなくなった理由を聞いてもいいかな。嫌だったら答えなくてもいいよ
SCP-1427-JP: いや、たいしたことじゃないんです。ちょっとしたことで学校に少しの間行けなくなって、それでそのままなんとなく学校に行っても仕方ないかな、って。理由なんて特にないんです。元々一人が好きで、ほんのちょっとしたことで、なんだか動けなくなっちゃって
渡辺研究員: そっか、大変だったね
SCP-1427-JP: そんなこともないですよ。えっと、それで、閉じこもってたらこの糸が巻き付いてきて。最初は左手の小指だけだったから、運命の赤い糸かと思ってたんですけど
渡辺研究員: 全部の指に出てきたんだ
SCP-1427-JP: はい
渡辺研究員: それが誰に繋がってるかってのも分かるの?
SCP-1427-JP: なんとなくですけど。顔も知らない誰かとか、お父さんやお母さんとか、友達とか一度すれ違っただけの人とか。引っ張るとぼんやりと分かるんですよね。それで、切っちゃうともうその人には会えないんだ、ってざわざわするというか
渡辺研究員: 焦っちゃう感じかな
SCP-1427-JP: そう、そんなかんじですね。だから、やっぱりこれは運命の赤い糸なのかもしれないって最近思い始めました。私を繋ぎ止める、というか、引っ張ってくれる、というか。足や体に絡まってくるのは支え、というよりはそれこそ繋がりになってくれてます。少し生活には不便ですけどね。おかげさまで元気も出てきて、ここを出られれば、キャンプとか、海とかに行ってみたいです。行ったことなかったから
渡辺研究員: それはまだOKできないかな、でも何かそういった本くらいは差し入れできると思うよ。希望はある?
SCP-1427-JP: 本当ですか? ありがとうございます
«再生終了»
インシデントレポート1427-JP - 日付 20██/██/██
20██/██/██、SCP-1427-JPの収容ユニットの監視システムが突如停止、同時にユニットの施錠システムが誤作動を起こし、内部への侵入が不可能になりました。この事案時、サイト内外においてSCP-1427-JPを研究・調査していた職員の過半数が別個の理由で移動もしくは行動が不可能となりました。
ここから、SCP-1427-JPが意図的にSCP-1427-JP-1を切断したと推測され、内部に侵入可能な人員の招集が行われました。この際、招集された職員らの左手薬指からSCP-1427-JP-1と推測される非実体の糸が出現し、同時にSCP-███-JPの収容違反が発生。これを受け、SCP-1427-JP収容ユニットへの侵入が中断されました。収容違反はSCP-1427-JPが意図的にSCP-1427-JP-1を切断したことによる副次的なものであると推測されます。
SCP-███-JP再収容後、遠方のサイトに出向していた渡辺研究員がユニット内に侵入したところ、ユニット全体にSCP-1427-JP-1が発生しており、複数本のSCP-1427-JP-1を用いSCP-1427-JPが首を吊っている状態で中心部において発見され、その後死亡が確認されました。発見時、SCP-1427-JPの指に発生していたSCP-1427-JP-1は1本のみであり、周囲には約5000本のSCP-1427-JP-1が引きちぎられた状態で散逸していました。
追記: 当該インシデント後、SCP-1427-JPの認識が可能である職員らによる後続調査によって、SCP-1427-JPの死亡直前までSCP-1427-JP-1が発生し続けていたことが確認されました。これらのSCP-1427-JP-1はインシデント時の調査写真等からSCP-1427-JPを救出しようとしていたと推測されます。また、該当インシデント時にSCP-1427-JP-1が発生した職員の多数がSCP-1427-JPの保護に対する強い責任感を抱いていたことが判明しています。
以下は後続調査時、収容ユニット内において発見されたSCP-1427-JPによる文章です。
文書記録1427-JP - 日付 20██/██/██
先生、ありがとうございました。
この糸は運命の赤い糸じゃありませんでした。
糸を合わせれば紐になって、紐を合わせれば綱になります。
誰かが、私を助けようと、必死でこの綱を伸ばしていました。
お母さんも、先生も、顔の知らない出会うはずだった誰かも。思っていたより世界は優しかったんですね。
でも、その糸は合わさって紐になり綱になった。
命綱のつもりだったのかもしれませんけど、それは、とても息苦しかった。さようなら、嘘をついてごめんなさい。先生の糸だけは残します。
私と似たような子を助けてあげてください。
もう二度と会わない人たちへ伝えてください。
繋がりで私の首を締めつけるな。誰かの運命の赤い糸が私を絞め殺す前に、命綱で死んでやるんです。
当該インシデント以降、SCP-1427-JP-1が発生しないことからSCP-1427-JP-1の異常性は喪失したと推測されます。