SCP-1437-JP
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子実体を形成中のSCP-1437-JP

アイテム番号: SCP-1437-JP

オブジェクトクラス: Safe Euclid Keter

特別収容プロトコル: SCP-1437-JPは元素分析・質量計測などの手法によって非異常物体と区別されます。SCP-1437-JPが屋外・地中で発見された場合、発見した職員が周辺土壌に苦土石灰を散布した後、財団無機化学部門と財団鉱物学部門が洗浄とSCP-1437-JPの除去を実施します。

記録が一般社会に流出した場合、記録の抹消、あるいはカバーストーリーとして層序記録の誤同定や物質の誤検出の指摘を実施してください。発見された産地の買収が可能である場合、財団フロント企業は当該の土地を購入して秘匿し、一定区画を財団の管理下に置きます。

SCP-1437-JPは発見され次第、最寄りのサイトの低危険度物品収容セルに密閉収容されます。確保されたSCP-1437-JPは低危険度物品収容セルに保管されます。SCP-1437-JPの取り扱いに関し、温度圧力条件の変化を伴う実験は許可されます。酸性溶液による処理は固く禁じられており、収容セルへの酸性溶液の持ち込みは許可されません。



説明: SCP-1437-JPは分類未定の変形菌様生物です。SCP-1437-JPの細胞構造は他のアメーボゾアと類似しますが、大多数の真核生物が有するミトコンドリアを欠き、また核ゲノムの塩基配列は変異が大きいため既存の系統樹上に位置付けることが不可能です。加えて、SCP-1437-JPの生体アミノ酸はD体で構成されており、一般的な生物が示すL体のホモキラリティーに整合しません。

SCP-1437-JPは極限環境生物として振舞います。SCP-1437-JPは-230℃から1500℃の温度、真空から15GPaまでの圧力、3000Gyの放射線など、過酷な環境への極限耐性を持つことが確認されています。また、水中・地中をはじめとする無酸素環境下でも通常の生命活動を継続しており、通性嫌気性生物としての性質も示唆します。真核生物はごく僅かな例外を除いて全てが好気性生物であるため、無酸素環境下での生育が可能なSCP-1437-JPはこの点においても変形菌として極めて特異的です。

以下、SCP-1437-JPの生活環を各段階ごとに記述します。

SCP-1437-JP生活環

SCP-1437-JPの生活環は非異常の変形菌と類似しており、アメーバ細胞期・鞭毛細胞期・変形体期・子実体期を持ちます。以下、普遍的に見られる子実体から順に生活環を記載します。

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子実体(左上)、胞子(右上)、鞭毛/アメーバ細胞(右)、接合体(下)、変形体(左)

1. 胞子の放出
一般的な地球表層環境に置かれたSCP-1437-JPは胞子形成に向けた子実体の構造を維持します。SCP-1437-JPの子実体は、酸性環境に晒された場合、発泡しながら酸への溶解に類似する挙動を示します。これは核相1nの胞子の放出であることが顕鏡観察により確かめられており、実際には子実体および胞子は酸による有害な影響を受けていないことが判明しています。

2. 配偶子とその接合
放出された胞子は溶液中の受動拡散の過程で発芽し、配偶子の一形態である鞭毛細胞を生じます。鞭毛細胞は溶液中で能動的に運動しながら同じく配偶子であるアメーバ細胞に変化し、他のアメーバ細胞と核融合します。核融合の結果、核相2nの接合体が生じます。

3. 変形体
接合体は外部環境が十分に乾燥するまで休眠期に入ります。休眠期を終えたSCP-1437-JPは核分裂を開始し、数百万個の細胞から構成される変形体に変化します。変形体は滑らかな流動性を持ち、鉛直下向きに移動する正の重力走性を示し、這うように地表あるいはより低地へ移動します。

生活環のうち変形体の期間が占める割合は小さく、収容房での観察ではいずれも█日以内に子実体を形成しています。

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子実体の一例

4. 子実体
SCP-1437-JPの子実体は金色を呈します。また子実体は金属光沢、展性・延性、高い電気伝導性・熱伝導性を示し、金属に類似した性質を示す場合があります。この特性を利用してSCP-1437-JPは金属製品として振舞い、特に色調の類似する金・真鍮製の加工品に擬態します。

SCP-1437-JPは元素解析、密度の比較、酸への感受性の高さの評価などにより、金属との容易な識別が可能です。ただし、硬度や質感は一般的な金属と類似し、また一般的な生物が死滅する高温環境でも融解・燃焼・変性しない温度耐性を持つため、日常生活において察知されることは極めて稀と推測されます。

金は指輪・ブローチなどの装飾品、真鍮は5円硬貨・金管楽器などに広く利用されていることから、SCP-1437-JPは人間社会に広く生息することが示唆されます。これは当該の金属製品が人類による保護を受けたことにより、生存に有利な形態としてSCP-1437-JPが適応した結果である可能性が指摘されています。

SCP-1437-JPは財団による収容の遥か以前から人類と共存しました。財団による認知・収容は16世紀の錬金術の隆盛と19世紀の超常現象の確保収容に関する王立財団(HMFSCP)の設立を待つことになりましたが、最古の考古記録はイタリア・ナポリ近郊のポンペイ遺跡まで遡ることができ、腐敗消失した人体の痕跡や埋没した建造物の地下施設に伴って出土しています。人類とSCP-1437-JPが接触した最初の年代は未特定です。


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ピナツボ火山噴火の様子

インシデント: 1991年6月、フィリピン共和国ルソン島西部に位置するピナツボ火山で噴火活動が開始されました。6月10日には予想された財団設備への重篤な損害を鑑み、ルソン島の財団施設には避難命令が発令され、オブジェクトと必要最小限の人員を残して避難が完了しました。避難後、火山活動に伴う大規模な地震と空気振動が財団製観測機器の動作不良を引き起こし、また設備に物理的損害をもたらしました。

頻発する大規模噴火は複数回の火砕流を発生させましたが、最大の噴火は6月15日に山体崩壊を伴うVEI6相当の巨大噴火として発生しました。噴煙は成層圏に到達し、直径5cmに達する致死的な火山弾が周囲に飛散し、山頂から流下した大規模な火山泥流は100km2に亘って動植物相を破壊しながら谷を埋没させました。火山灰は約7万2,000戸の家屋を圧壊させ、罹災者数は120万人に達しました。

施設復旧後に財団火山学部門が調査を実施したところ、火山体には金に類似する鉱脈様物体による地表からの貫入が確認されました。当該の鉱脈はSCP-1437-JPに関連する可能性が指摘され、サンプルの分析により実証されました。本事案、および西暦79年のヴェスヴィオ山噴火で滅亡したポンペイにもSCP-1437-JPが確認されたことを踏まえ、SCP-1437-JPのオブジェクトクラスはEuclidへ変更されました。

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SCP-1437-JPが確認されたランゲリア・テレーン(黄)

追記1: 2019/12/08、財団地質学部門により、北アメリカ大陸西部とユーラシア大陸東部でのSCP-1437-JPの検出が報告されました。SCP-1437-JPは北米大陸においてアラスカ州南東部からブリティッシュコロンビア州西部に分布し、またユーラシアでは日本国西部とロシア連邦沿海地方で確認されました。当該地域でSCP-1437-JPは金や黄銅鉱などの鉱床の一部を占める形で地殻に挟在し、鉱床のSCP-1437-JP置換率は体積比にして約1█%におよびます。

特筆すべき点として、発見されたSCP-1437-JPの一部は地表付近で子実体を形成する一方、より深部のSCP-1437-JPは大部分が変形体の状態を維持しています。地震波トモグラフィーを用いて内部構造を探査した結果、SCP-1437-JPの変形体は地下██kmに亘って伸長していることが判明しました。

インシデントとの関連性および既知の範囲内でのSCP-1437-JPの行動から、変形体の繁殖行動に関して以下の推論が提唱されています。SCP-1437-JPは火山を利用した環境改変を行い、地表での子実体溶脱を容易にすることが推測されます。

行動段階 事象
降下 強固な高温耐性を持つSCP-1437-JP変形体は重力走性に従って地殻内部を降下する。この時、温度あるいはその微分(地温勾配)を外部刺激として変形体から子実体への移行が停止し、SCP-1437-JPは変形体を維持したまま運動を継続する。
混合 SCP-1437-JPが地殻-マントル境界あるいはマグマ溜まりに到達し、子実体を形成する。子実体の接触・脱水によりマントルあるいはマグマに不純物が供給される。マントルでは凝固点降下が発生し、マグマでは揮発性成分が発泡する。
噴火 マントルでは部分溶融が起こり、マグマ溜まりでは浮力を獲得したマグマが地盤を破砕しながら上昇する。子実体あるいはその破片を含むマグマが火山噴出物として地表に放出されると共に、莫大な二酸化炭素・二酸化硫黄が大気中に放出される。
降雨 酸性気体成分が大気中水分に溶解して炭酸イオン・硫酸イオンを生じる。当該のイオンを含む氷晶・水滴が地表に降り、表層環境の酸性化をもたらす。噴出した子実体、また地表付近に生息する子実体は酸を感知して胞子を産生し、繁殖・分布域を拡大する。
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海洋生物属の絶滅率。カーニアン期の絶滅事変は赤色。

3地域で発見されたSCP-1437-JPの鉱脈は、約2億7000万年前から約2億2000万年前にかけて当時のパンサラッサ海中央部で噴出した洪水玄武岩に関連するものと推測されます。後期三畳紀カーニアン期にあたる当時、海洋地殻を破壊して地表へ噴出した火山噴出物は体積約█.█×105km3に達したと推測されます。

カーニアン期における巨大火成岩岩石区(LIP)の形成は、当時の地球環境に甚大な変化をもたらしました。約200万年間に渡って全球の降水量が増大し、酸性雨による海洋酸性化が誘発されました。当該の環境変化により、特にウミユリ・外肛動物・アンモノイド類をはじめとする海洋生物相が打撃を受け、属レベルで33%の生物多様性が喪失したと目されます。この絶滅率は中生代において3番目に高く、将来的に放散する哺乳形類・ワニ形類・恐竜類への生態系シフトを駆動した、隠されたもう1つの大量絶滅事変と推定されます。

火山学部門・地質学部門・気象学部門は、現在の地球上に存在する鉱脈を同等の比率でSCP-1437-JPが占めると仮定し、SCP-1437-JPによるLIP形成イベントの影響を試算しました。

  • 各噴出地点から半径約█.█×102km圏内は高速で流動する火砕流あるいは直接的なマグマメルトに曝露し、範囲内の全生物が熱死する。火山灰は大陸規模で拡散し、その質量により市街地は力学的破壊を受け、その外部でもガラス粒子の堆積により機械類の障害・生物の呼吸器系疾患が発生する。
  • 放出されたエアロゾルは地球への太陽放射を遮蔽し、数十年に亘る地表の寒冷化に作用する。平均気温にして20℃の低下を示した地域も出現し、温帯・冷帯域には氷河氷雪が卓越し、熱帯域は大規模な旱魃に見舞われる。強力な環境変化により農作物と家畜は壊滅的な被害を被り、全球的な飢餓が到来する。
  • 放出された温室効果ガスはやがてエアロゾルの効果を相殺する。これは汎世界的な酸性雨の発生と海洋無酸素事変を誘発し、単純な温度変化との相乗効果で陸上・海洋生態系の衰退・崩壊をもたらす。この過程は顕生代第六の大量絶滅事変に相当し、数万年スケールで進行する。

この予測を受けてSCP-1437-JPのオブジェクトクラスはKeterへ変更されました。鉱脈の特定と土壌のアルカリ化による子実体溶脱阻害が急務とされます。


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金星

追記2: 2020/09/14、金星大気中からホスフィンの吸収線を検出したとする学術論文が発表されました。ホスフィンは地球において嫌気性微生物が産生する無機化合物であり、金星での生命の存在を示唆する証拠として解釈されました。当該研究がメディアに広く公開されたことから記録の抹消には至らず、財団はコンタミネーションやシグナルの誤検出を指摘しカバーストーリーを適用しました。

研究の封殺とともに財団外宇宙部門は金星大気の分光分析を実施し、中間層雲にホスフィンガスを確認しました。また、外宇宙部門から依頼を受けた微生物学部門はSCP-1437-JPが既知の嫌気性微生物と同様にホスフィン産生能力を持つことを確認しました。外宇宙部門はSCP-1437-JP様生物が金星にも存在した、あるいはSCP-1437-JPが金星に起源を持つ可能性を指摘し、高温高圧環境および酸性環境に適応したSCP-1437-JPの特性に言及しています。

金星は過去に暴走温室状態に陥り、その結果として表面温度約460℃という現状の高温環境が成立しています。金星の惑星進化パスには複数の仮説が存在しますが、かつて海洋が存在したとする仮説では、金星には最長約30億年に亘って生命の居住可能な環境が広がっていたとされます。金星が暴走温室状態を迎え全海洋蒸発に至った原因として、炭素循環を超過した同時多発的LIP形成イベントが挙げられます。

SCP-1437-JPが金星と同様の同時多発的LIP形成を誘発した場合、莫大な温室効果ガスにより地球は暴走温室状態を経て生命の居住不能な環境に突入するものと推測されます。SCP-1437-JPによる最悪のケースにXK-クラス:世界終焉シナリオを想定し、対応が協議されます。

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