アイテム番号: SCP-1442-JP
オブジェクトクラス: Anomalous Safe Euclid
特別収容プロトコル (改訂3版): SCP-1442-JPはサイト-8138の6m×6m×3mの専用収容室の中央に収容されます。収容室への進入はセキュリティクリアランスレベル3/1442-JPを保有する職員の許可が必要です。SCP-1442-JPを用いた実験は禁止されています。
SCP-1442-JP-Aは標準ヒト型実体収容室に目隠しおよび拘束された状態で収容され、常時は投薬による昏睡状態を維持されなければなりません。食事は与えず、点滴注射によってのみ栄養補給を行います。SCP-1442-JP-Aと会話する必要がある場合は投薬を一時的に停止し、変声器を用いて収容室外部から会話を行わなければなりません。SCP-1442-JP-Aに自身の姓名等の個人情報を伝えることは禁止されています。
SCP-1442-JP-Bの入口は小屋によって隠蔽し、1名の監視担当職員が交代で常駐します。一般人がSCP-1442-JP-Bの存在を知覚した場合、該当人物には記憶処理を行います。監視担当職員は定期的にSCP-1442-JP-B内部の状況を収容担当班へと連絡してください。新たなSCP-1442-JP-Bが発見された場合、機動部隊そ-12 (“モノアイ”) が確保に当たります。
SCP-1442-JPに関連し行方不明になった人物らへは、各々に適切な情報操作とカバーストーリーの適用を行います。
説明: SCP-1442-JPは作成者不明の10 cm×10 cm×1.0 cmの装置です。上面には9.2 cm×9.2 cmのディスプレイが付けられています。SCP-1442-JPは異常な耐破壊性を有しており、そのため構成物質の特定は成功していません。また、SCP-1442-JPは何らかの方法で溶接することによって組み立てられているようであり、分解も現在のところ不可能です。
SCP-1442-JPを中心とした推定半径約2.5 mの範囲で脳機能が完全に停止した人物 (総称として“SCP-1442-JP-A”に指定) は、機能停止から約10秒が経過した時点で全ての生命活動を再開します。身体の一部を欠損していた場合、生命活動が再開した時点から徐々に該当部位を再生させます。多くのケースで、再生は欠損した部位に関わらず約6秒で完了します。
SCP-1442-JP-Aは生命活動を再開させて以降、新たに脳機能が完全停止した場合に前述のものと同様のプロセスで生命活動を再開します。副次的に起こる欠損部位の再生も同様に発生します。これらの異常は恒久的に継続するものと考えられています。 現在この推測は否定されています。
SCP-1442-JP-Bは日本国宮城県[編集済]に位置する作成者不明の地下室です。SCP-1442-JP-Bへは深度約7.2 mのシャフトを通じて進入可能です。SCP-1442-JP-Bに関する更なる情報は補遺1442-JP.4を参照してください。
補遺1442-JP.1: 歴史
SCP-1442-JPは当初、異常な耐破壊性を有している以上の異常性が確認されておらず、サイト-8138にて2005年からAnomalousアイテムとして保管されました。
SCP-1442-JPの他の異常性は、2013/09/13にサイト-8138で発生した小規模収容違反の際にSCP-1442-JPの異常発生範囲内でエージェント・時田が死亡したことによって発覚しました。また、エージェント・時田の死亡に続きSCP-1442-JPのディスプレイに電源が入ったことが確認されました。収容違反の鎮静化後に前述の2つの事象の関連性が示唆されましたが、のちにエージェント・時田が他の異常存在を確保した際に攻撃を受け死亡すると同時刻にSCP-1442-JPのディスプレイにスマイリーフェイス1が約10秒間表示され、関連性が裏付けられました。これらの事実に基づき、SCP-1442-JPはサイト-8138管理者によってAnomalousからSafeへと再分類されました。
補遺1442-JP.2: 実験記録
エージェント・時田はサイト-8138管理者へ、SCP-1442-JPの実験を兼ねた危険性の高い異常存在の収容補助を申請し、これは承認されました。以下は実行された収容補助の試みの記録です。これらの試みは各異常存在の特別収容プロトコルから逸脱しない内容で行われています。
実験記録1442-JP.1
日付: 2013/10/28
対象: SCP-████-JP (Euclidクラス異常存在)
内容: SCP-████-JPの収容室内に出現するSCP-████-JP-1 (ヒト型実体) の終了。なお、SCP-████-JP-1は職員に対し非常に敵対的である。
結果: エージェント・時田はSCP-████-JP-1に右腕の一部を噛み千切られ重傷を負った。SCP-1442-JPのディスプレイに変化はなく、異常性も発現しなかった。外傷部は通常の治癒の兆候を見せた。
実験記録1442-JP.2
日付: 2013/11/02
対象: SCP-████-JP (Euclidクラス異常存在)
内容: SCP-████-JPの収容チャンバーに溜まる液体を専用ホースを用いて除去および中和処理で無力化する。なお、この液体は強アルカリ性である他、変形して生物に対し攻撃的な振る舞いを見せる特徴がある。
結果: 処理工程で液体に攻撃され、エージェント・時田は溺死した。SCP-████-JP収容担当職員によって液体から死体が取り出された約10秒後、エージェント・時田は生命活動を再開した。皮膚表面や体内に残留する液体の除去が行われていないにもかかわらず、これらはエージェント・時田の身体から検出されなかった。また、実験記録1442-JP.1における右腕の外傷が完治していた。
注記: この時点でエージェント・時田は3回死亡している。
実験記録1442-JP.3
日付: 2013/11/15
対象: SCP-████-JP (Keterクラス異常存在)
内容: SCP-████-JPと日本刀を用いて交戦する。勝敗は問われない。
結果: エージェント・時田は左腕と右足首を切断されたことによる出血性ショックで死亡した。死亡から約10秒後にエージェント・時田は生命活動を再開し、更に約6秒後に左腕と右足首が再生した。後に行われた検査では身体的異常は確認されなかった。
注記: この時点でエージェント・時田は4回死亡している。
実験記録1442-JP.4
日付: 2013/11/23
対象: SCP-████-JP (Euclidクラス異常存在)
内容: SCP-████-JPに捕食させる。
結果: SCP-████-JPはエージェント・時田を捕食した約10秒後に激しい苦痛を示し、様々な大きさの肉片や骨片を嘔吐した。続けてそれらが[データ削除済]し、エージェント・時田の身体が完成した。検査では一切の身体的異常は確認されなかった。SCP-████-JPの胃の中で噛み砕かれた身体が急速に再生を始めたために起こった事例と考えられる。
注記: この時点でエージェント・時田は5回死亡している。当事例に類似する実験は異常存在の無力化に繋がる可能性があるため、以降は実行されない。
実験記録1442-JP.5
日付: 2013/11/30
対象: SCP-████-JP (Safeクラス異常存在)
内容: [編集済]
結果: [編集済]。エージェント・時田は生命活動を再開した。
注記: この時点でエージェント・時田は6回死亡している。十分なデータが得られたため、実験は終了された。
補遺1442-JP.3: インタビュー
以下は実験1442-JP.5終了後に行われたエージェント・時田へのインタビューの転写です。インタビュアーは収容担当班の四辻博士でした。このインタビューはカウンセリングの目的も含まれていました。
インタビュー記録1442-JP.5
[記録開始]
四辻博士: それでは、インタビューを開始します。
Agt.時田: よろしくお願いします。
四辻博士: 体の調子は如何ですか?蘇生する前はかなりの重症に見えましたが。
Agt.時田: いつも通り、良いですね。
四辻博士: 違和感のようなものはありませんか?
Agt.時田: 生き返ったときはありましたが、今はもう何ともないです。
四辻博士: 実験は辛くありませんでしたか?
(沈黙)
Agt.時田: 辛くないと言えば嘘になります。でも……
四辻博士: でも?
Agt.時田: きっとあれが、SCP-1442-JPが勇気をくれるんです。異常存在に立ち向かう勇気を。
四辻博士: 勇気ですか。
Agt.時田: ええ。なんだか、こう、ここ数年会ってない家族や友人が応援してくれてるような気がするんです。表現が難しいですが、寄り添ってくれているような。
四辻博士: そうですか。
Agt.時田: あの実験、僕が液体に飲まれたときの奴ですね。あのとき収容担当の職員が転んでしまって、本当に焦りましたし、体が動かなくなってしまったんです。でも、「お前が助けないで誰が助けるんだ」と親父の声が聞こえたような気がして、気づいたら体が動いてて、彼の代わりに僕が溺死しました。
四辻博士: わかりました。では、他に何か言っておきたいことはありますか?
Agt.時田: そうですね……僕は今の仕事に満足しています。人の役に立てることが本当に嬉しいんです。これからも職員の死のリスクを減らせるようなことができたらなと思ってます。以降の実験でもよろしくお願いします。
四辻博士: なるほど。ただ、一旦実験は終了することになりました。データが十分手に入りましたからね。少々働きづめでしょうから、あなたが数日ほど安静にするのを許可しました。
(エージェント・時田が僅かに顔をしかめる)
四辻博士: どうかしましたか?
Agt.時田: いえ、何でもありません。わかりました。ゆっくり休ませていただきます。
四辻博士: ではインタビューはここでひと区切りつけて、ここからはカウンセリングを主にします。
Agt.時田: よろしくお願いします。
[記録終了]
インタビュー後、エージェント・時田は必要に応じて危険性の高い異常存在の収容の補助を行うよう決定されました。また、収容担当班はエージェント・時田へのインタビュー記録と実験記録を分類委員会へと提出し、SCP-1442-JPをThaumielクラスに再分類することを提案しましたが、倫理委員会との協議の結果却下されました。
補遺1442-JP.4: SCP-1442-JP-Bの発見
2016/12/09、エージェント・時田が要請に応じてSCP-████-JPの収容を補助していた際に死亡しました。生命活動が再開されたとき、SCP-1442-JPのディスプレイに通常とは異なる文章が表示されました。この文章は1時間後に表示が終了しました。以下はその文章の転写です。
:'(
時田様にお知らせ
⚠️残機が半分消費されました⚠️
使い過ぎには十分ご注意を。
※残機は宮城県[編集済]にて直接ご確認ください。
残機はあなたにとって大切な人でも代用が可能です。
これを受け、機動部隊そ-12が表示されていた住所に該当する地点へと出動しました。該当地点には田畑があり建造物はありませんでしたが、捜索の結果SCP-1442-JP-Bへと通じるシャフトが発見されました。機動部隊がSCP-1442-JP-Bへと突入したところ、男女20名が床に取り付けられた拘束具に拘束された状態で死亡2、男女20名が同様の状態で生存していました3。
死亡者らの拘束具は外されており死体の回収には成功していますが、生存者らの拘束具は外されておらず、SCP-1442-JP-Bの構成要素および拘束具に異常な耐破壊性があることからも、床面ごと生存者らを回収するなどの試みには現在まで成功していません。また、生存者らは一貫して植物状態にあり、意思疎通は失敗しています。
SCP-1442-JP-Bで発見された人物らは、のちにエージェント・時田の親族あるいは友人であることが特定されました。これらの事実から、SCP-1442-JPを用いた実験とエージェント・時田による収容補助の試みは無期限に禁止されました。
補遺1442-JP.5: SCP-1442-JP-Bに関するインタビュー
SCP-1442-JP-Bについて、エージェント・時田へとインタビューが行われました。以下はそのインタビューの転写です。インタビュアーは四辻博士でした。
インタビュー記録1442-JP.6
[記録開始]
四辻博士: では、インタビューを──
Agt.時田: 家族のことですよね?
四辻博士: え、ええ。
Agt.時田: やっぱり。最近家族の声が聞こえなくなってしまったので、何かあったのかと。
四辻博士: どういうことですか?
Agt.時田: いえ……続けてください。
四辻博士: わかりました。実は、あなたのご家族とご友人が20名、死亡した状態で発見されました。ご家族については全員亡くなってました。
(沈黙)
Agt.時田: なぜ死んだんですか?
四辻博士: 彼らはあなたのと同じ死因で亡くなってました。恐らくは──
Agt.時田: 本当ですか……本当なんですか?
四辻博士: はい。心中お察しします。大丈夫ですか?
Agt.時田: いえ、大丈夫も何も、僕は嬉しいですよ! まさか、まさか本当に皆が支えてくれてたなんて!
(エージェント・時田は笑顔になり、体をよじらせている)
四辻博士: 時田君? 落ち着いてください。
Agt.時田: これが落ち着いてられるわけないでしょう? 本当なのか、みんな……みんなぁ!
(エージェント・時田は更に興奮し、机に頭部を繰り返し打ち付け始める)
四辻博士: 落ち着いて、時田君! 時田! クソっ、警備員来てください! 早く!
Agt.時田: 嬉しい! 嬉しい! 嬉しい! 嬉しい! 嬉しい!
(警備員が3名入室する)
四辻博士: 取り押さえて!
(警備員がエージェント・時田を拘束する)
Agt.時田: 離してください! 僕は─ (机の角に頭部を打ち付ける) ─嬉しいんです! (嗚咽) ああっ、僕は──
(エージェント・時田が意識を失う)
[記録終了]
エージェント・時田はすぐさま医務室へと運ばれましたが、脳挫傷によって死亡しました。生命活動を再開したのち、エージェント・時田は標準ヒト型異常存在収容室に拘束されました。その後精神状態を確認するため、四辻博士が収容室外部から再びエージェント・時田へとインタビューを行いました。以下はそのインタビューの転写です。
インタビュー記録1442-JP.7
[記録開始]
四辻博士: さて、エージェント・時田。あなたが言った「嬉しい」という言葉について答えてください。
Agt.時田: そのままの意味です。博士、僕は嬉しいんです!
四辻博士: 家族や友人が死んだことが、嬉しいと?
Agt.時田: みんなはただ死んだんじゃない! 僕のために死んでくれたんです! ねえ、そんなの嬉しいに決まってるじゃないですか! もっと死にたいって、思うじゃないですか!
四辻博士: あなたは家族や友人が行方不明になっていることを知ってたのですか?
Agt.時田: はい。警察から連絡が来て。
四辻博士: なぜ報告しなかったのですか?
Agt.時田: はい? だって、家族の声がするって言ったじゃないですか。なので問題ないかなーと思ったんです。僕にとっては傍にいるも同然でしたし。
四辻博士: そうですか。あなたが危険性の高いSCiPに携わりたいと言ったのは、死にたかったからですか?
Agt.時田: いえ、あのときは違いますよ。みんなが僕のために死んでくれてるなんて知りませんでしたし。ただただ財団のために役立てたらなという思いからです。善意ですよ!
四辻博士: 本当ですか?
Agt.時田: そうですよ! そう、です……あれ? そうです、よね?
四辻博士: 時田君?
(沈黙)
Agt.時田: はい。いえ、大丈夫です。
四辻博士: 死ぬな、と言っても今のあなたには無理な相談でしょう。
Agt.時田: ええ。大切な人たちのためにも、死なないわけにはいきませんから。
四辻博士: そうですか。では、あなたにはそこで拘束され続けてもらわないといけません。これでインタビューを終了し──
Agt.時田: ちょっと待ってください!
四辻博士: どうかしました?
Agt.時田: 博士が、SCP-1442-JPの、僕の収容責任者ですか?
四辻博士: はい。ご存知でしょう?
(エージェント・時田は笑顔を浮かべ、カメラの方向に向き直る)
Agt.時田: そうでしたね。これからもよろしくお願いします。
[記録終了]
これらの結果から、SCP-1442-JPはSCP-1442-JP-Aとなった人物の精神に作用し、最終的にエージェント・時田のような異常行動を取らせるものと考えられました。また、SCP-1442-JP-Aは積極的に自傷行為や自殺を試みることが予想されたため、特別収容プロトコルはこれに対処できる内容へと改訂されました。
SCP-1442-JPのオブジェクトクラスはEuclidに再分類されました。
補遺1442-JP.6: インシデント
インタビュー記録1442-JP.7に示されるインタビューが行われてから1週間後、四辻博士を含むSCP-1442-JP収容担当班の職員4名が失踪しました。このインシデントについてSCP-1442-JPおよびエージェント・時田の関与が疑われ、SCP-1442-JP-Bの監視を担当する職員がSCP-1442-JP-B内部を確認したところ、4名が拘束具に拘束された状態で発見されました4。失踪者らは全員エージェント・時田と複数回顔を合わせたことのある職員であり、当インシデントはエージェント・時田への接触が招いたものと考えられています。
当インシデントに基づき、特別収容プロトコルが更に改訂されました。