██ ████, 199█
無作為義務EIテストが新しいただの職員のルーチンじゃなかったとは、知っていればよかった。
██ ████, 199█
廊下で大人が2人口論しているのを見た。私は階段の近く、暗闇の中で縮こまっていた。叫び声は続き、ドアが乱暴に閉められ、誰かが階段を昇ったが私は動けなかった、なぜなら母は戻ってこないつもりだと知っていたし彼女は何度もその話をしていたから、しかし私には実際に起きるとは思えなかった、もう少しだけ一緒にいるだろうと、なぜなら彼らのどちらかが怒っている時にはいつも私と話すために居てくれたから。
██ ████, 199█
全ての記憶には一貫性がある。毎回、全ての実例において何者かが心の底からかつ絶望的に他者との交際を望んでいるシナリオだ、親しい者であれ単に他者であれ。SCP-1457が伝えると思われる情動は形容不能なものに近い; 孤独以上、見捨てられ感以上の何か。
██ ████, 199█
私は歩いていた、多分私の親友が乗っている頭上の飛行機を眺めながら。同じ近所で育って、何年も一緒に学校へ歩いて通った。彼には2度と会えないと分かっていたが、彼はとうとう世界に旅立つことになってとてもうれしそうだった。彼が私のことを忘れないでいてくれるといい。彼のアパートは今やもぬけの殻だ。私達が登った木も、駐車場も窓も何もかも空だ。
██ ████, 200█
どれだけのユニークな記憶をSCP-1457が“貯蔵”しているとみられるかだけでも奇妙だ。齢が未だ同定されていないため、数年、あるいは数十年存在していてもおかしくない。
██ ████, 200█
私は机に向かっていた。明日の締め切りが3つ、扶養家族は4人。ずっとこうしてきた、でもあと一晩早起きの時間に彼らが十分眠れるよう重い脚を引きずって出なければならないなら、彼らは気付かなくても、もう十分だ。もう十分でなくちゃいけない。彼らに心配をかける訳にはいかない。
██ ████, 200█
テストログに目を通した。これらの記憶は以前に出されたものだ。SCP-1457が同じヒトと複数回接触した場合、与えられる記憶はSCP-1457による獲得の逆順になり、最も近場で獲得された記憶が最初に伝達されるように見受けられる。つまり私が十分に長くこれを続ければ、記憶の尽きる時点が存在するということか?最初の記憶を受け取ったら気付くだろうか?
██ ████, 200█
私は独りでディナーを食べていた。これはパパがいない最初の彼の誕生日だった。テーブルにはまだ葬儀の手配の書類が散らばっていて、ラジオは彼がママに好んで歌った曲を流していた。外では空が灰色く、陰鬱で冷たい雨が降っていて、しかし少なくとも私は彼らがもはや独りじゃないと知っている。
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それがどうやって記憶と共に情動を転送するのか不思議でならない。鮮明さも奇妙に思う; 何故記憶は残存するのか。私はそれらが私のものでないと知っているが、にも拘らず、これらはありふれたシナリオ、ありふれたお涙頂戴だ。世界には常に絶望があり、それについて考えないようにしようとするのと同じぐらいに彼ら全員のことを気の毒に感じ、しかし私はSCP-1457が私に何を望んでいるのかを知らない、なぜなら毎回それが私に記憶を渡す時、私は何も感じないからだ。
██ ████, 200█
それは私に話しかけてきた。現実に。どのようにかは上手く思い出せないが、それが私の手に止まった時に頭の中で声が聞こえた。子供のささやき声のように聞こえ、「与えることも奪うこともない。分かち合うことだけがある」と。
██ ████, 200█
私は住宅エリアを見た。それはずいぶん素敵で、小奇麗に刈り込まれた芝生と健康な木と、茂みに花があった。しかしその時私は誰かが家の壁から何かを取り除くためにホースを使っているのを見た―蛹か?屋根や胴蛇腹にいくつか散らばっていた。私は自転車に乗った子供を見た、そして歩道に動かなくなった芋虫を見た。
██ ████, 200█
何故私はわざわざこれらの記録を書いているのか……私には何も出来ないのだから、この人々に同情するのは無意味だ……あまりに多くの人……
██ ████, 200█
“私と分かち合わせて。どうか。”
██ ████, 200█
私は森らしきものを見た、森の残りかす。木が1本倒れる、いや切り倒されている。機械の音を聞いたように思う。私の感覚受容器がどのようにしてか切り離されているように感じる。混乱する。記憶がどのような人物のものなのか考えられない。
██ ████, 200█
本日SCP-1457は通常するように私のところへ飛んでこなかった。この全ての期間、全ての悲哀、そしてそれは今日私の方へ飛ぶのを拒否する。苦痛は食料にしないのか?これが求めるものではないのか?最悪なのは収容エリアを去る時だった、もはやほんの欠片ほどしか同情心を持てなかった。あれらの記憶のことを誰が気にするというのか?何故わざわざ構う必要があるのか?私は努力した……
██ ████, 200█
“君はまだ分かっていない。”
██ ████, 200█
“でも、ありがとう。”