SCP-1469-JP
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アイテム番号: SCP-1469-JP

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: SCP-1469-JPの形状を3Dデータにしてサイト-81██の高機密有害情報保管室に収容してください。閲覧にはセキュリティクリアランスレベル4以上の職員3名からの許可が必要です。SCP-1469-JPに関する実験は永久に凍結されています。

SCP-1469-JPは通常持つ情報層より下に位置付けられます。これまでの実験により概念的に異常であるとみなされた事象を秘密裏に処理するため、財団形而上学部門は「水泳」「読書」「手話」の概念に注目してください。最終的にはこれらの概念が人類に存在しない/あらゆる人類が認識しない状態にしなければなりません。

説明: SCP-1469-JPは日本手話に類似した構成を持つキネトグリフです。手指動作と非手指動作の組み合わせにより、単語や文章を形成することでその内容に関連したキネト災害を発生させます。その多くは概念的属性の改変、消失、付与を行うことができ、予測不可能な異常現象を引き起こします。

SCP-1469-JPと通常の日本手話との差異は、形を示す際に5本以上の指や極端に長い腕などを必要とすることです。日本手話の動作と同じものも確認されていますが、必ずしもそれ単体で異常性を持ち得ません。外科手術などにより強制的に形を表現することで、SCP-1469-JPを再現する試みが再三なされていますが、期待された通りの異常性を発揮したのは6種類とその文法的に変化した組み合わせのみです。これ以外のSCP-1469-JPは既存の技術では再現できていません。

SCP-1469-JPでこれまでに確認された単語は動詞が56種類、名詞が60種類(うち12種が固計116種類です。これに手話で表される独特な文法マーカーである手話口形1と能動態や有方向詞2を組み合わせると、さらに複雑化したキネト災害を発生させることができます。その発生パターンは1000種類にも及ぶと考えられています。

以下に示すのはSCP-1469-JPの公開されたリストです。情報保持のため、再現するために必要な動作に隠された部分があることを留意してください。

意味 通常の手話 SCP-1469-JP
示指を自分の胸に向ける動作を行う。 全ての示指を自分の胸に向ける。通常の動作に加え手背に追加された6本の示指が必要とされる。その内1本は関節を4個以上有していなければならない。
あなた 示指を相手に向ける動作を行う。 全ての示指を相手に向ける。「私」と同様に6本の示指が必要とされる。その内1本は関節を4個以上有していなければならない。
リンゴ 示指を口の前で左から右に動かした後、両手で丸をつくる。 正確な丸を表現するために両手が即座に融合する必要がある。両手を互いに融合させながら独立して動く指(種類は問わない)を口の前で左から右に動かす。
歩く 中指と指示を右から左へ動かす。 中指と指示を右から左へ動かす。この時、中指と指示の関節が1つでなければならない(足の関節3の数に合わせるためだと考えられている)。
持つ 全ての指を折り曲げて持つ動作を行う。 全ての指が融合した左手を上から下に振り上げる動作を行う。詳しい概要は別紙を参照のこと。

以下に示すのはSCP-1469-JPと同時に行うことで異常性に変化を与える手話口形です。

名称 意味 異常性
U (ウ) 「〜する」現在形のマーカー。 文章に関連した物品を出現させる。
Ta(タ) 「〜した」過去形のマーカー。 現在を中心に過去改変を引き起こす。
Po(ポ) 「上手く〜」など。副詞的なマーカー。 動作の強制や概念的状態の固定を引き起こす。
Pa(パ) 「突然〜」副詞的なマーカー。 概念的な意味の喪失とそれに付随する行動規範の変化を引き起こす。4
Pa++(パパパパ) 「たくさん〜」副詞的なマーカー。 単語がその場に存在するものを指していた場合物体の物理的な消失、その場になかったものを指していた場合出現が引き起こされる。
nm(ンm) 「問題なく〜」副詞的なマーカー。 巨大な手に酷似した実体の出現。

補遺1: 20██/█/██、SCP-1469-JPに関する実験が行われました。以下は実験で発生した異常現象をまとめたものです。

実験1469-JP.1


担当者: 山崎博士

被験者: D-16056 D-16057


00:00 D-16056とD-16057の2人はあらかじめ実験に必要な手術を受けている。そのため、D-16056は示指を13本(その内5本は関節を複数持っている)と拇指を5本持っている。担当の博士と研究チームは実験室のある場所から██km離れた場所から命令を行なっている。SCP-1469-JPの影響が実験範囲外に及んだ場合、機動部隊あ-3("マルクス主義")が事態の収束の任務を負う。

01:19 2人の被験者は隔離された実験室-2526に入った。実験室は5m×5mの窓のない小部屋で、2つの椅子と机が備え付けられていた。D-16056は入り口から見て右側の椅子に、D-16057はその反対側に座った。博士がD-16056にのみ命令をする。

山崎博士: それでは実験を始めたいと思います。まず、事前の練習の通り、「私は読書をします」とSCP-1469-JPで示してください。

02:03 D-16056が命令の通りSCP-1469-JPを実行すると室内の壁の一部が████出版社の児童小説に改変された。D-16056は「本と聞いて1番先にこれを思い出した」と証言し、ただちにこれを読み始めた。しかし、壁と本が完全に分離していないため、引き剥がすのに時間を要した。D-16057に命令が与えられた。

山崎博士: 次はD-16057お願いします。「私は上手く泳ぐことができます」とSCP-1469-JPで示してください。

02:51 D-16057がそれをSCP-1469-JPで示した瞬間、D-16057は高さ1mのところで浮遊した。しばらくは胡座を組んでいたが、まもなくしてクロールで室内を泳ぎ始めた。D-16056はなおも読書を止めることはなかった。

03:01 観察が10分間行われると機動部隊あ-3が介入した。その間D-16057はクロールを止めることなく、空中でクロールを行い続けた。博士が何故空中でクロールを行えるのかについて聞くとD-16057は「ではなぜあなたは生きるのですか」と答えた。D-16056とD-16057は機動部隊あ-3に回収された。

実験1469-JP.3


担当者: 山崎博士

被験者: D-16058 ██████


00:23 D-16058は3本目の腕を持っており、それぞれの腕が示指を6本ずつ有している(その内関節が複数あるものは7本)。██████は存在を有していない。その他について実験条件は同じであるが、事態の収束を担当する機動部隊が機動部隊ゆ-4("ピジン言語")に変更された。博士はD-16058に命令を行った。

山崎博士: それでは実験を始めます。まずは「D-16059が突然訪ねてきた。」とSCP-1469-JPで示してください。

01:38 D-16058は命令通りSCP-1469-JPを実行すると激しく動揺し始めた。博士が理由を聞くと「私はこの状況について理解しません。」と答えた。さらに質問を行うと「私は確かにSCP-1469-JPを行って、突然██████が訪ねてきたことについて言及しました。しかしそれには意味がないのです。」と答えた。D-16058は意味がないことを繰り返し発言しながら、その場で嘔吐した。博士は██████に命令をした。

山崎博士: では、██████。「そこにたくさんリンゴがある。」とSCP-1469-JPで述べてください。

02:25 [データ削除済]

03:57 D-16058が彼の若年時代の姿に変化する。

05:55 D-16058の頭部にどの動物のものとも一致しないツノが生える。

06:50 [データ削除済]

07:49 赤い霧が実験室内に出現し、D-16058は頭痛と室内の構成要素が欠損していることを訴えた。具体的には博士が述べた「そこには」の「そこ」が欠如しており、手話口形の「たくさん〜」で「そこ」が増加したため、欠損が占める割合が増加している。

08:00 D-16058がさらに苦しみ始め、吐瀉物と共に5cm×5cmの立方体を吐いた。立方体は赤く光っており、英語で「無効なコマンドが実行されようとしています。」と記述されていた。現在この立方体はSCP-1469-JP-Aに指定してサイト-8186で保管中。

実験1469-JP.5


担当者: 山崎博士‬

被験者: D-16060 D-16061

付記: 前回の実験で「欠損」が実験室を覆ったため、今回の実験は別の場所で行われた。


00:23 D-16060とD-16061はそれぞれ同様の手術を受けている。拇趾と示指が6本ずつあり、その内5本が複数の関節を有している。2人の被験者が室内に入ると互いに向き合って椅子に座った。博士が命令を行う。

山崎博士: D-16060は「私は問題なく手話をしました。」と表現してください。

01:00 D-16060が問題なく実行すると赤い霧が実験室内に出現した。また、被験者の2人は地震に似た揺れを感じたと述べた。

01:53 研究チームの面々がアラームに似た幻聴を経験する。山崎博士がカジカガエル(学名:Buergeria buergeri)の入れ子構造について言及するとアラームがさらに激しくなった。実験室にあった机の上で赤色の炎色反応を伴った火が燃え上がり、D-16060が消火のために覆いかぶさろうとすると爆発した。D-16060は「過去を参照するな。」と複数回述べたあと大量の血液を吐き出した。D-16061はD-16060にとどめをさすため、椅子で彼の頭部を激しく殴打した。

02:12 実験室の表面がヒト(学名:Homo sapiens)の表皮組織の性質を帯び始め、弾力性を有する壁面から1mほどの毛髪が生えた。この壁は振動し、人間の手に酷似した会話のための器官を生み出した。以下はD-16061が行なった即席のインタビューである。

インタビュー記録1469-JP


インタビュアー: D-16061

対象: 実験室内に出現したヒトの表皮細胞に酷似した壁面。理由は不明だが、会話が可能である。


<記録開始>

インタビュアー: D-16060が死んだのは俺が殺したからじゃない。椅子は致命的だったが、奴はもうすでにないものを探していたんだ。

対象: エックス。一眼のないレンズと完全な礼拝コマンドがオーバードーズ。歯ブラシと開催する。

インタビュアー: コミュニケーションの通じない相手にはどうしたらいいと思う。

対象: 毒を盛れ。

インタビュアー: 一体あなたはなんなんだ?

対象: 手。

インタビュアー: もしかしてこれは世界に干渉しているのではないのか?

対象: 是。

インタビュアー: 俺たちはずっと手話で会話していたのか?お前たちと。

対象: 否。

インタビュアー: じゃあこの言語は何のためにあったのか?

対象: 構成のため。

インタビュアー: 世界に干渉して構成するための言語?

対象: 是。

インタビュアー: 「読書をする」といえば再設定される?その個人に?

対象: 是。

インタビュアー: それは永久に?

対象: 否。再設定は可能。

インタビュアー: 失われたものは戻ってこない?

対象: 是。再設定は可能。

インタビュアー: なぜこんな馬鹿ばかしいコマンドがある?

対象: なければ構成できない。

インタビュアー: 何のために虚無がある?

対象: 存在しない設定のため。

[壁面の開口部から大量の血液が噴き出す]

インタビュアー: 設定されていないものは存在するか?

対象: 是。限定的に。

インタビュアー: 我々が設定されていないものを認識できるのはなぜか?

対象: 行動は残る。とても繊細。前後関係、因果関係の齟齬が生じる。推奨される使用方法以外のコマンド。我々は否定。

インタビュアー: 誰かがいなくなってもその者に行なったことは消えない。

対象: 是。

インタビュアー: 私は虚無に物事を行える。

対象: 是。

インタビュアー: これでインタビューを終了します。

対象: 可。

20██/██/██、日本支部理事会の命令によりSCP-1469-JPに関する実験は凍結しました。

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