クレジット
タイトル: SCP-1481-JP - 筋トレ魔人
著者: leaflet
作成年: 2023
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SCP-1481-JP-A
アイテム番号: SCP-1481-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-1481-JP-Bは標準ヒト型実体収容セルに収容されます。SCP-1481-JP-Bが収容されたセルは、セルと平面図が相似かつ2倍の床面積を持つチャンバーの中心に配置されます。このチャンバーはSCP-1481-JP関連トレーニング機材の保管に利用されます。また、以上の手順をSCP-1481-JP-Aの収容手順とします。
説明: SCP-1481-JPはSCP-1481-JP-A及びSCP-1481-JP-Bの総称です。
SCP-1481-JP-Aは「筋トレ魔人」を自称する、身長約2m、黒のポージングパンツとサンダルを着用した筋肉質の男性ヒト型実体です。SCP-1481-JP-AはSCP-1481-JP-Bのパーソナルトレーナーであると主張しており、毎日6:00にSCP-1481-JP-Bの周辺1m以内に出現し、20:00に消失します。ただしSCP-1481-JP-Aが承諾した場合は20:00以降も出現し続けることが確認されており、出現可能時間の制限は無いものと考えられています。SCP-1481-JP-Aは物体を出現させる、物体を移動させる等の異常性の行使が可能ですが、これらの異常性はSCP-1481-JP-Bに筋力トレーニングを行わせる目的にのみ行使されます。また、財団との交渉により、SCP-1481-JP-Aは極力この異常性を行使しないことに同意しています。
SCP-1481-JP-Bは日本人男性、大森 ██(収容時41歳)です。SCP-1481-JP-Bは不死性、不老性、異常な肉体的回復能力を有しており、これらの異常性は後述する儀式1481-JPによって付与されたと断定されています。SCP-1481-JP-BはSCP-1481-JP-Aの指導の下、毎日決まったスケジュールで筋力トレーニングに取り組みます。このトレーニングのスケジュールはウォーミングアップ、クールダウンの時間を含めて12時間という異常なものであり1、また非常に負荷強度が高いにも関わらずSCP-1481-JP-Bが意欲的に取り組んでいることから、何らかの精神影響、もしくは強制力があると考えられています。このトレーニングの結果として、SCP-1481-JP-Bの身体は収容時に比べて非常に筋肉質になっています。
儀式1481-JPはSCP-1481-JP-Aと人間との間で結ばれる、「パーソナルトレーナーとしての契約」と称される儀式です。SCP-1481-JP-Aは「真のマンツーマン指導を行う」と主張しており、Dクラス職員を新たなSCP-1481-JP-Bとする全ての試みは失敗しています。
補遺1:初期インタビューログ 以下は収容初期に行われたインタビューの抜粋です。
インタビュアー: 古木博士
インタビュー対象: SCP-1481-JP-A
<ログ開始 [1993/05/16]>
古木博士: こんばんは。私は古木という者です。インタビューへの協力、ありがとうございます。
SCP-1481-JP-A: はっはっは! 何の問題もありません! 筋肉のことならなんでも聞いてください!
古木博士: えーっと、筋肉のこととは少し違う話をするのですが、大丈夫でしょうか。SCP-1481-JP-B……つまり大森氏との関係性について聞かせて頂きたいのですが。
SCP-1481-JP-A: 大森さんですね! はっはっは! 彼は素晴らしいですよ! ひたむきに、情熱的にトレーニングに取り組んでいて、彼は見込みがありますよ! 目標に向かってひたすら努力する! いつか必ずなりたい自分になれるはずです!
古木博士: あなたが彼に行わせているトレーニングは尋常ではない強度です。そこまでして叶えたい目標というのは一体何なのですか? なにか……例えば差し迫ったボディビルの大会に間に合わせなければならない、等の理由なのでしょうか?
SCP-1481-JP-A: はっはっは! 守秘義務です! 本人に聞いてください!
<抜粋終了>
付記: トレーニングによる達成目標はSCP-1481-JP-Bから聴取することが決定されました。
インタビュアー: 泉野研究助手
インタビュー対象: SCP-1481-JP-B
<ログ開始 [1993/05/16]>
泉野研究助手: こんばんは。私は研究助手の泉野です。突然のこのような事態になって困惑していると思われますが、お話を聞かせて頂けますでしょうか。
SCP-1481-JP-B: え、ええ……。もう何が何やら、魔人さんも一緒なので良かったですが……。
泉野研究助手: その魔人さんに関わる質問をいくつかさせて頂きたいのです。まず、あなたは一体何故あれほど過酷なトレーニングをしているのでしょうか? 我々の調査によると、あなたがボディビルやスポーツ等に関わっている記録は無く、あなたが市役所勤務であることを考えると、職業上必要とも考えにくいのですが。
SCP-1481-JP-B: その……なりたい自分になるために必要なんです、筋トレが。
泉野研究助手: なるほど。しかし、やはりトレーニング内容は常軌を逸しています。通常のトレーニングでは達成しえないということなのでしょうか。
SCP-1481-JP-B: はい……そうでしょうね。
<抜粋終了>
付記: SCP-1481-JP-Bはトレーニングの目的を明確にしませんでした。今後のインタビューでの優先調査事項に定められます。
補遺2:事案記録 収容初期において、数件の軽微な事案が発生しています。以下はその抜粋です。
事案1481-JP-001
概要: SCP-1481-JP-Aがトレーニング機材数点を出現させた。この際、サイト内の機動部隊トレーニングルームより数点の機材が消失しており、SCP-1481-JP-Aによって転移させられたと判明した。
対応: 全ての物品は元の場所に戻された。SCP-1481-JP-Aには物品の転移を行わないように要請し、SCP-1481-JP-Aはこれを承諾した。
事案1481-JP-002
概要: SCP-1481-JP-Aがトレーニング機材数点を出現させた。SCP-1481-JP-Aは無から生成したと主張した。
対応: 全ての機材は未知の物質で作成されていることが判明し、アノマラスアイテムとして分類された。SCP-1481-JP-Aには物品の生成を行わないように要請し、SCP-1481-JP-Aはこれを承諾した。
事案1481-JP-003
概要: SCP-1481-JP-Aが収容室の扉を消失させ、SCP-1481-JP-A及びSCP-1481-JP-Bが収容違反を起こした。SCP-1481-JP-Aは駆け付けた泉野研究助手にトレーニングルームの場所を尋ねた。
対応: SCP-1481-JP-Aには許可がない限り収容室を出ないように要請したが、SCP-1481-JP-Aはこれを拒否した。SCP-1481-JP-Aはトレーニングを行うための環境があれば承諾可能であると主張した。収容違反を避けるため、収容室の周囲にトレーニング機材を保管し、これらの機材に限っての転移が許可された。
事案1481-JP-007
概要: SCP-1481-JP-Bの肉体に関する実験中、SCP-1481-JP-Bが消失した。SCP-1481-JP-Bは収容室内に出現しており、トレーニングを開始していた。
対応: SCP-1481-JP-Aに実験中にトレーニングを開始しないよう要請したが、SCP-1481-JP-Aはこれを拒否し、トレーニングは何よりも優先しなければならない旨を主張した。中断を避けるため、全ての実験やインタビューはトレーニングのスケジュールに重ならないように行われることが決定した。なお、この際SCP-1481-JP-Bは全身麻酔を受けていたが、転移した際に麻酔効果は消え、血中からも検出されなかった。
これらの事案から、トレーニングは中断や妨害が不可能であると判断され、それらの試みはSCP-1481-JP-Aの異常性行使に伴う深刻な事故に繋がり得ることから、円滑にトレーニングを行わせることが収容における最優先事項となりました。
補遺3:映像記録 以下の映像記録は、当オブジェクトの収容計画を決定付けた資料です。
<映像開始 [1993/08/19]>
[SCP-1481-JP-Bはレッグプレスマシンを使用し、トレーニングを行っている。]
SCP-1481-JP-A: いいですよ! ハムストリングスを意識して! どうです! 効いてますか!? 入ってますか!?
SCP-1481-JP-B: は、はい! 効いて、ます!
SCP-1481-JP-A: 良いですよ! そのままあと50回!
[SCP-1481-JP-Bはレッグプレスマシンを使用し、トレーニングを続けている。]
SCP-1481-JP-B: あー、きつい! でも、こうやって、筋トレを、続けていれば、いつか、可愛い女の子に、なれますもんね!
SCP-1481-JP-A: そうです! 長い時間……きっと何十年もかかるでしょう! だが筋肉は決してあなたを裏切りません!
SCP-1481-JP-Aが行わせるトレーニングには非常識な負荷強度であるものの異常性は無く、SCP-1481-JP-Bの筋肉も増加速度自体は異常であるものの非異常の筋肉であり、「可愛い女の子になる」という目標は達成不可能であると考えられています。また、トレーニングを継続させることで収容を確立できており、これらを総合しSCP-1481-JPは自己収容に近い状態にあると判断されました。
補遺4:管理体制記録 収容から1年の経過後も事故及び事案は発生せず、SCP-1481-JPは安定した収容下にあったことから、古木博士は当オブジェクトの直接の管理から外れ、泉野研究助手が管理業務の実質を担うことが決定されました。収容責任者は継続して古木博士となります。
(1999/4/1)古木博士のサイト-8181への異動に伴い、収容責任者は花村博士に変更されました。管理業務の実質は継続して泉野研究助手によって担われます。
(2006/11/13)花村博士の殉職に伴い、収容責任者は椿博士に変更されました。管理業務の実質は継続して泉野研究助手によって担われます。
(2014/4/1)椿博士のサイト管理官への任命に伴い、収容責任者は木戸博士に変更されました。管理業務の実質は継続して泉野研究助手によって担われます。
(2021/4/1)木戸博士の退職に伴い、収容責任者は若葉博士に変更されました。管理業務の実質は継続して泉野研究助手によって担われます。
補遺5:事故記録 2023年、新たなSCP-1481-JP関連イベントが発生し、泉野研究助手が異常性の影響下に置かれています。この事故を受け、当報告書は改訂が予定されています。以下は関連する記録です。
<映像開始 [2023/05/16]>
[SCP-1481-JP収容室に泉野研究助手が入室する。最も近くにある椅子に泉野研究助手が着席する。]
泉野研究助手: こんにちは、大森さん。大森さんのほうから私と面会を希望するとは、珍しいですね。
SCP-1481-JP-B: いやー、呼び出してしまって大変申し訳ないです。実は完成するんです、もうすぐ。泉野さんとは何十年もの付き合いですし、立ち会って欲しくて。
泉野研究助手: 完成?
SCP-1481-JP-B: つまり、なりたい自分になれる時が来たんです。ね、魔人さん!
[呼びかけに応じ、SCP-1481-JP-Aが出現する]
SCP-1481-JP-A: はっはっは! 遂に時が来ましたな!
[困惑する泉野研究助手をよそに、SCP-1481-JP-AとSCP-1481-JP-Bは労いの言葉を掛け合う。]
[SCP-1481-JP-Bの身体が発光し始める。(本来、この時点で泉野研究助手は緊急ボタンを作動させるべきだが、作動させていない。)]
泉野研究助手: こ、これは……。
SCP-1481-JP-A: 素晴らしい! 今こそ念願成就の時!
SCP-1481-JP-B: 魔人さん! 泉野さん! 筋肉の歓喜を感じます、私は、私は!
[SCP-1481-JP-Bの身体の極度の発光により、監視カメラ映像は完全に白飛びする。]
[轟音が鳴り響く、収容室内のセンサーが反応し、緊急事態を通知するアラームが作動する。]
[監視カメラ映像が収容室内を正常に映す。SCP-1481-JP-Bが消失しており、その場所には少女が出現している。(後の調査でこの少女はSCP-1481-JP-Bの精神や記憶を有していることが判明している。)]
少女: やったぞ! やっと叶ったんだ!
SCP-1481-JP-A: はっはっは! 全てあなたの努力の成果だ!
[SCP-1481-JP-Aと少女は抱き合う。]
[その場に立ち尽くしていた泉野研究助手は、何か閃いたような表情を見せ、SCP-1481-JP-Aに詰め寄る。]
泉野研究助手: あの! 今なら、今ならパーソナルトレーナーになってくれますか!? なりたい自分になれますか!?
SCP-1481-JP-A: はっはっは! もちろんだとも! ちょうど今私はフリーになったところだからね!
泉野研究助手: わ、私の願い、私を……私を世界で一番の博士にしてください! 若くて、イケメンで、天才的な! 全てに成功し、性格も良くて、皆に愛されて尊敬されるような、最高の博士に!
SCP-1481-JP-A: はっはっは! 素晴らしい目標ですね! 良いでしょう、一緒に頑張って行きましょう!
[SCP-1481-JP-Aと泉野研究助手は握手を交わし、収容室に轟音が鳴り響く。SCP-1481-JP-Aに肩を抱かれながら、少女が泉野研究助手を見つめている。]
[若葉博士と警備員が入室する]
若葉博士: 泉野さん! これは一体何が!? この女の子は何者ですか!?
泉野研究助手: 若葉君、時が来たんですよ。大森さんの夢は叶った、今度は私の夢を叶えてもらう番が来たんです。
若葉博士: まさか……泉野さん、オブジェクトの私的利用を……? バカなことを。
泉野研究助手: ……ええ。しかし私としては賢明な選択をしたつもりです。
若葉博士: 何を言ってるんですか。このまま行けばあなたは収容されるか、処分されるか。
泉野研究助手: 若葉君……、30年ですよ。30年ずっと研究助手だったんです。……君は30になる前にもう主任博士ですか。ははっ、君が生まれる前から私は研究助手なんだ。
若葉博士: 泉野さん、そのことは分かっています。資料にも記載がありますし。
泉野研究助手: 違う。若葉君、君は分かってない。知ってるだけだ。資料には確かにその情報があるでしょう。でも私の30年分の思いなんて君にも、誰にも分からないんだ。
事故後対応: 泉野研究助手はSCP-1481-JP収容室に収容されています。泉野研究助手が新たにSCP-1481-JP-Bに分類予定です。また、このイベント中に出現した少女はSCP-1481-JP-Cと分類予定であり、新たな標準ヒト型実体収容セルに収容されます。これらの表記は分類終了後、報告書改定時に刷新されます。
インタビュアー: 若葉博士
インタビュー対象: SCP-1481-JP-Bが変異したと考えられる少女(以下、少女と記述)
<ログ開始 [2023/05/16]>
若葉博士: こんにちは。大森さん、でよろしいでしょうか?
少女: そうです、この姿になりましたが。SCP-1481-JP-Bと呼ばれていた大森です。
若葉博士: 私の名前が分かりますか?
少女: はい、若葉博士。何度かお会いしています。
若葉博士: なるほど、そうですね。確かに私はSCP-1481-JP-B……つまり大森さんと何度かお会いしています。……ところで、以前は否定されていましたが、あなたは何らかの精神的影響により強制されてトレーニングに取り組んでいたのではないですか? 我々はその否定すらも精神的影響によるものだと考えているのですが。
少女: 洗脳も何もされてませんよ。自分の意思です。
若葉博士: しかし腑に落ちません。筋肉量が増えるにつれてトレーニングは楽になっていったかもしれませんが。
少女: 若葉さん。世の中には努力だけではどうにもならないことが沢山あるじゃないですか。勉強にしても、仕事にしても、ただ頑張りや苦しみを重ねただけでは結果が出ないこともある。私はここに来る前の40年ちょっとの人生で、沢山の報われない努力をして来たんです。それに比べれば、普通に考えて絶対に叶わない夢が努力だけで確実に叶うと考えれば難しいことじゃなかった。私にとって可愛い女の子になることは、これだけの努力をする価値がある夢だったんです。
若葉博士: しかし、叶う保証は無かったはずです。中年男性が筋トレで少女になるなど、通常はあり得ません。
少女: ははっ! 私も契約前は半信半疑でしたよ。いや、契約してしばらくしてからも信じ切れてなかったですね。それでも、不老不死になったことに気付いたら、これがもう信じる理由として十分でした。これだって通常はあり得ないことでしょう。
若葉博士: ……なるほど、確かにそうですね。
付記: 後に行われた検査によって、少女にはSCP-1481-JP-Bの記憶や精神を有している以外に異常性は無いことが明らかになった。
<映像開始 [2023/05/18]>
[泉野研究助手はローイングマシンを使用し、トレーニングを行っている。]
SCP-1481-JP-A: いいですよ! 広背筋を意識して!
泉野研究助手: き、きつい……。きついです……。
SCP-1481-JP-A: 大丈夫ですよ! やれます! あと10回!
[泉野研究助手はローイングマシンを使用し、トレーニングを続けている。]
泉野研究助手: 魔人さん……わ、私も30年、トレーニングすれば……。夢が、叶うんですよね……?
SCP-1481-JP-A: はっはっは! 大森さんより目標が遠いですからね! より長い時間……きっと何百年もかかるでしょう! だが筋肉は決してあなたを裏切りません!
泉野研究助手はトレーニングの中止をSCP-1481-JP-A、及び財団に求めていますが、SCP-1481-JP-Aは「努力すれば夢は叶うため諦めるべきではない。」という主旨の主張をし、これを拒否しています。また、泉野研究助手がSCP-1481-JP-Aの長期間の収容に有用であることや、トレーニングの妨害は収容違反に繋がること、将来的に発生するイベントによって財団にとって有益な人材が得られる見込みがあること、泉野研究助手自身の財団の資産としての価値が低いことから、財団によって泉野研究助手を影響下から離脱させる試みは行われません。