アイテム番号: SCP-1483-JP
オブジェクトクラス: Euclid Neutralized
特別収容プロトコル: SCP-1483-JPの発生は現在確認されていません。SCP-1483-JPとの関わりがあった全ての対象及びその保護者にはクラスA記憶処理を施しています。SCP-1483-JPと同じ現象が確認された場合を想定し、この報告書は保存されます。
SCP-1483-JPの発生は、その特性上阻止することが出来ません。実験及び被害者へのインタビューを行わない場合は、対象及びその関係者にクラスA記憶処理を施してください。対象ら・██中学校へはカバーストーリー「感染症による学級閉鎖」が流布されます。
説明: SCP-1483-JPは千葉県██市内で発生していた異常現象の総称です。SCP-1483-JPは千葉県██市内から無作為に選出された2001年生まれの人物(以下、対象と呼称)の元に発生します。
日没後対象が就寝したタイミングでSCP-1483-JP-Aが対象の室内に現れます。SCP-1483-JP-Aは『マントを着用した男性』のように見えるシルエットです。多くの場合カーテンにSCP-1483-JP-Aが浮かび上がりますが、窓がない場合テレビや鏡などからも浮かび上がります。SCP-1483-JP-Aは7・7・7・5音の言葉で対象に語り掛けます。対象は目を覚まし、SCP-1483-JP-Aの言葉を聞き続けます。対象が再び眠りにつくと、SCP-1483-JP-Aは消失します。
SCP-1483-JP終了後、対象は太陽光に恐怖を抱くようになります。対象を太陽光に曝す事により恐怖を取り除くことが出来ます。物理的な方法で取り除こうとすると対象は激しく抵抗します。
対象は太陽光に曝されると「苦痛」「肌が焼ける」などと主張し激しく苦しむ様子を見せますが、何の外傷も確認されず、SCP-1483-JPに暴露する前の状態に戻り関連する記憶も喪失します。
しかし、影響が取り除かれた対象のもとに再度SCP-1483-JPが発生します。このため完全にSCP-1483-JPの影響を取り除くことは不可能でした。SCP-1483-JPの影響を受けた対象は、SCP-1483-JP-Aを認知しています。SCP-1483-JP-Aについて話す際、語調に変化が発生します。
SCP-1483-JPは2014年に██市内の児童相談所へ「息子/娘が夜な夜ななにかをつぶやいていて不気味だ。」「原因が不明だが家の外に出ようとしなくなった。」という内容の相談が同時多発的に発生し、実際に██中学校2年生の生徒の出席率が著しく低下していた事実が財団の注意を惹きました。
カウンセリングという名目で各対象を調査した際、上記の異常性が発覚しました。以下はSCP-1483-JPについて調査した際のカウンセリング記録及び実験記録です。
カウンセリング記録1483
対象: 対象A
内容: カウンセリングを行うため、対象Aを相談所(財団サイト)に連れていく。
結果: 対象Aは激しく抵抗し、外に出ることを拒否。外に出た途端地面を転がり叫び始めた。対象Aは苦痛を感じたと主張し外出に対し恐怖を示さなくなった。
分析: SCP-1483-JPの影響の喪失が確認された初めての例。以後、カウンセリングは対象の家庭の室内で行う。
対象: 対象B
内容: 対象Bにインタビューを実施、SCP-1483-JPの内容を調査。
対象: 対象B
インタビュアー: カウンセラー
<記録開始>
カウンセラー: それではカウンセリングを開始します。██くんよろしくね。
対象B: はい。よろしくお願いします先生。
(生活や学校などについての一般的なカウンセリング、関連性が低いため中略)
カウンセラー: じゃあそろそろなんで外に出たくないのか教えてもらえるかな?
対象B: (ハッとした表情を浮かべる。5秒程度沈黙。)
対象B: よかろう。話してやろうではないか。
カウンセラー: え…?どうしたの██くん?
対象B: どうした?話を聞くのではないのか?
カウンセラー: い、いやあ…ちょっと。
対象B: あ…えっ聞かないんですか…、す、すみません。
カウンセラー: いっいえ、聞きます。聞きます。
対象B: では話してやろう。私は闇の住人だからだ。
カウンセラー: はあ。
対象B: 闇の魔王様から力をもらい、私は闇の中で暮らす種族となったのだ。
カウンセラー: (沈黙)
対象B: 闇の魔王様は夜に私に語り掛けてくる。私はその闇の言葉を聞きこの力を得たのだ。
カウンセラー: …なるほど!でもどうして外に出たくないのかな?
対象B: 私は闇の住人、光など求めない。
カウンセラー: 吸血鬼みたいな設定なの?
対象B: う…、そ、そうだ!闇の住人は灰になってしまうのだ。
カウンセラー: へー。
対象B: もう聞かぬのか…?
カウンセラー: そうですね…、今回のカウンセリングはこのくらいにしておきましょうか。ありがとうございました。
対象B: あ、はい…。
<記録終了>
分析: インタビュー中対象Bの不自然な語調の変化が確認された。事前の相談内容やこのインタビューから夜の時間帯にSCP-1483-JPが発生していると仮定する。これを受け、対象の部屋にカメラを仕掛け検証を実施する。
実験記録1483-1
対象: 対象A(SCP-1483-JPの影響は喪失している。)
内容: 影響の付与及びSCP-1483-JPの再発生の確認の為、対象の部屋にカメラを設置し監視する。
結果: SCP-1483-JP-Aの出現を確認、SCP-1483-JPの一連の流れが映像に記録された。対象Aは再度SCP-1483-JPの影響を受けた。
<記録開始>
22:05 対象Aが就寝したと思われる。
22:12:02 部屋内のカーテンにSCP-1483-JP-Aが出現。
22:15:23 SCP-1483-JP-Aが対象Aに語り掛け始める。
22:18:51 対象Aが起床。
22:19:02 ~ 02:22:08 SCP-1483-JP-Aの語りが継続して行われている。
02:23:01 SCP-1483-JP-Aの語りが終了し、対象Aが再び就寝。
02:23:11 SCP-1483-JP-Aが消失。
<記録終了>
分析: SCP-1483-JPの発生過程が観測された。SCP-1483-JPの発生を把握するため全対象の寝室にカメラの設置を実施する。
眠る子羊 夢幻世界の 迷い子たちよ 目を覚ませ
光の使者よ 目覚めたならば 我の話を 聞き給え
我は常闇 闇夜の王者 この世の影を 統べる者
混沌の衆 血を求む者 闇の魔物を 従える
(自身の説明が続く。重要では無い為中略。)
闇の力に 興味はないか 今宵汝に 問いかける
力を得れば 闇の住人 内の1人と なるだろう
(対象は頷く。)
良き選択だ 我の僕よ 闇の力を 与えよう
これで汝は 闇にのみ生き 光の下に 戻れない
我の使いよ 良き1日を 送り給えよ ではさらば
インタビュー記録1483-1
対象: SCP-1483-JP-A
実施方法: 対象Cの声を模した変声器を用い、SCP-1483-JP-Aとの会話を試みる。
対象: SCP-1483-JP-A
インタビュアー: ██博士(対象Cの口調を真似ている。)
<録音開始>
SCP-1483-JP-A: 眠りの姫よ 夜はまだ浅い 不服だろうが 起きなさい 。
(対象Cが身体を起こす。)
SCP-1483-JP-A: ああお嬢さん 目覚めたらまず 我の話を 聞きなさい (中略) 今宵貴女に 闇夜の力 欲するのなら 授けよう 。
██博士: こんばんは。
SCP-1483-JP-A: これは驚愕 我の姿を 恐れぬ者が 居ようとは 。
██博士: あなたは何をしているの?闇夜の力ってなんのこと?(貴方の目的は?その"力"とは何を指している?)
SCP-1483-JP-A: その問いかけの 答えは容易 我の僕を 増やすため 。
██博士: 仲間を増やすことなんだ。でも何のため?(影響者を増やすことですか。その目的は一体何なのですか。)
SCP-1483-JP-A: 君に教える 事は出来ぬぞ 紛れ隠れる 観測者 。
██博士: 気付いていたのですか。
SCP-1483-JP-A: 我は全能 闇の帝王 小細工なんぞ 通らない 。
██博士: インタビューは失敗です。
SCP-1483-JP-A: 汝の願い 聞き入れはせず 娘に力 与えるぞ 。
██博士: インタビューを終了します。
<録音終了>
分析: SCP-1483-JP-Aに我々の存在を認知されてしまった。SCP-1483-JPの影響を受けた対象を増やすことが目的だということが判明した。
補遺: 各対象を調査した際、SCP-1483-JPによる影響だと思われる対象の中に、SCP-1483-JP-Aの存在を認知していない・語調の変化が起こらない人物(██氏)が存在しました。以下は██氏の母親█氏に行ったインタビュー記録です。
インタビュー記録1483-21
内容: ██氏のSCP-1483-JPの影響を調べるためにインタビューを実施。
対象: █氏
インタビュアー: ██研究員
<記録開始>
██研究員: 最近ご子息になにか変わったことなどは御座いませんか。
█氏: そうねー。特に気になることはないわね。親のいう事を聞かなくなるのも年相応ですよね。
██研究員: なるほど。夜更かしなどはされていないですか?寝不足の兆候は…
█氏: いいえ。そんなこと全くありませんわ。██ちゃんは毎晩ぐっすり眠っています。
██研究員: わかりました。次は外出を控えていることについて、お話し辛いとは思いますがどうか聞かせて頂けないでしょうか。
█氏: あの子は生まれつき肌が弱いのよ…。小学2年の頃、皮膚が焼けただれて帰って来てね。だからそれからずっと外には出していないの。勉強も家庭教師に任せているわ。
██研究員: なるほど、昔から…。最後に1つ、お子さんから「魔王」や「闇」などという言葉を耳にしたりはしていませんか?
█氏: 何それ?そんなことは…ああ、そういえば。
██研究員: どうかされましたか?
█氏: ちょっと待ってくださいね。
(█氏が離席。数分後一冊のノートを手に戻る。)
██研究員: これは…?
█氏: ██が必死に描いてましてね…。ほら、ここ。闇がどうとか帝王とか書いてありますわ。
██研究員: (ハッとする。)これはもしかして…。
█氏: 私には見るなって言うんですけど、██ちゃんは絵も上手でしてね。将来は漫画家にでもなるかも知れないですねー。
██氏: ママ!僕の部屋に入るなっていつも言ってるじゃないか!
█氏: あら██ちゃん、勉強は終わったの?今ねカウンセラーの先生が。
██氏: あ!それ…み、見るな―――!(ノートを奪い取る)
█氏: あら…。
██研究員: ██君のことは大体分かりましたので、本日のカウンセリングはこのくらいにしておきます。ありがとうございました。
█氏: いえいえ、こちらこそ。ご苦労様です。
<記録終了>
分析: ██氏の皮膚を調査した結果、肌の疾患は確認出来ませんでした。██氏のノートにはSCP-1483-JP-Aのシルエットと似たキャラクターが描かれていました。SCP-1483-JPとの関連性が疑われています。
SCP-1483-JPの影響を受けていないと思われていた██氏ですが、就寝時の監視カメラの映像にSCP-1483-JP-Aが確認されました。通常のSCP-1483-JPと違い、██氏は起き上がらずSCP-1483-JP-Aによる語り掛けもありませんでした。
補遺2: SCP-1483-JPの起源を調査するため、██氏のもとに現れるSCP-1483-JP-Aにインタビューを実施しました。
対象: SCP-1483-JP-A
インタビュアー: ██研究員
付記: ██氏の声を模した変声器を使用しています。
<録音開始>
SCP-1483-JP-Aが出現。
██研究員: (沈黙)
SCP-1483-JP-A: 余を覗き見る 彼の観測者 我へ疑問が あるのだな 。
██研究員: やはり、あなたはこちらの存在を把握しているのですね。
SCP-1483-JP-A: 我は此の世の 統率者なり 全てを掴む 我がこの手 。
██研究員: 率直に聞きます。あなたは██氏が生み出した「魔王」のキャラクターですね。
SCP-1483-JP-A: 成程そうか 知り得たようだ しかし惜しいな 間違いだ 。
██研究員: ちがう?では一体…。
SCP-1483-JP-A: 魔界の旧き 宵闇の蛸 どうでも好きに 呼ぶがいい 。
██研究員: 蛸…。あのノートに確かに描かれていましたね。貴方の目的は何なのですか?██氏との関係は?
SCP-1483-JP-A: 我が使命こそ 主人の願い 叶えるために 類増やす 常闇の使者 魔帝のしもべ 影武者として 暗躍す 。
██研究員: それは迷惑なことですし、██氏も望んでいません。やめてください。
SCP-1483-JP-A: 貴様らなどに 邪魔される程 儂の力は 衰えぬ 。
(突如映像・録音機器共に障害が発生)
<録音中断>
分析: 機器類は██氏が目覚めるまで復旧が出来ませんでした。SCP-1483-JP-Aと██氏の間には関わりがあることが確認されました。
補遺3: カウンセリングの一環で█氏に██氏には肌の疾患が無い事を説明し、██氏を外出させました。その結果、対象が受けたSCP-1483-JPの影響が喪失しました。これ以後SCP-1483-JPの発生は確認されていません。オブジェクトクラスはNeutralizedに変更されました。
カウンセリングの最中、設置されていたままのカメラに蛸のシルエットが映っている映像が記録されていました。以下はその映像に記録されていた音声です。